上 下
31 / 159
魔人族ヴァン、ロレウ編

Chapter 028 班編成を見直せませんか?

しおりを挟む
「……という訳で、明日から強化合宿が始まるが、何か意見はあるかね?」

 俺たちは特別指導コースについて「」学院長直々に説明を受けている。

「はい、学院長! この特別指導コースの目的を教えてください、初代からこうしろと言われても私たちにはなぜなのか?このメンバーはどうしてこうなったのかを教えてください」

 ローズさんがいつものように、必要なことを質問してくれた。

「うむ、この十人を選んだのは、色々と〝〟が大きいため推薦されたそうだ。特別指導コースの目的はその伸びしろの関係で各々がより“高み”を目指せるものに集中的なカリキュラムを組んで能力を開花させるためだそうだ。他に質問のある人は?」

 場所はビルドア帝国首都ビヨールから北西へ約五日程徒歩で移動したところにある自由国オルオとの国境付近で、広大な面積を誇る「ブイリの森」。
 ここは昔から魔物の巣窟として有名な場所で定期的にビルドア帝国の軍隊が演習として、魔物狩りを行っている。

 そんな国家が演習場として使用するようなところに今、選抜メンバー特別指導コースの十人は向かっている。

 歩くと五日、馬車だと三日くらいの行程となるが、今、に乗って目的地にかなりの速度を維持したまま、突き進んでいる。

 想力を使った特殊な仕様で、御者が座る席のところに船を操船する舵輪だりんみたいなのと前進アクセル抑止ブレーキを操作する棒のようなものが下から突き出している。

 結構な速度が出ているのにあまり揺れを感じない。
 車輪の部分に何か仕掛けがあるようだ。

 制御は特に誰もしていない。
 勝手に動いてる。
 どういった原理なのかは分からない。

 初代学院長のやることなすことすべて規格外すぎて、理解の範疇になかなか追いつけない。

 次に〝安全圏生成陣セーブポイント〟というこれまた全く聞いたこともない未知の品物である五つの杭を受け取った。
 これを森の外に設置しておくと、HPがゼロになったものは自動でこの設置した場所に、けが等が無くなった健康な状態で、この場所に戻ることができるそうだ。

 だが、あまりお世話になりすぎると記憶障害、ステータス減少の副作用があるから気をつけるようにと忠告を受けた。

 ちなみに学院の敷地内だけ有効なはずの超高等スキル【個人情報保護術フィルター&ボイスチェンジャー】は、それぞれに一時的に掛け直したらしく、外に出ても依然、ぼかしフィルタリング自動変声ボイスチェンジャーが作用している。

 あとは回復薬ポーションだが、通常、ガラスの瓶に入っているものだが、手渡されたのはなにやら、豆粒くらいの大きさの薄い皮膜に包まれた丸薬になっていて名称が〝〟と〝V〟でそれぞれ体力と想力の回復効果があり、市場に出回っているものより高回復が期待できるらしい……名前がアレだが、それをたくさんもらった。

 武器、防具、食料も追走してきている他の荷車に山のように積まれている……。
 いったい俺たちはこれから何をさせられるんだ??

 その日に着くのかな? と思えるほど足の早い荷車だったが、早朝に出発し、翌日の朝に到着した。

 魔物との遭遇エンゲージなど特に何もなかったが途中、ビルドア帝国の首都ビヨールと自由国オルオ「首都マイティーロール」を結ぶ主要街道までは敷石で整備された道路だったが、途中から主要街道を外れ、砂利道に入ってからは路面の凸凹が目立ち行進速度が大幅に落ちた。

 しかし、自動操縦で荷車上で仮眠を取ったままずっと進み続けたのでこれでも大分早いはずだった。

「ブイリの森」の入口に到着した一行は、入口の手前で当面のベース基地を作り始める。
 初代学院長から指示のあった〝安全圏生成陣セーブポイント〟を設置し、森の入口を拠点にし、攻略アタックするためだ。

 テントやタープを張り、荷物をベース基地に移し終えたところで次の指示を仰ぐべく基地を作成したら開くように事前に手渡されていた巻物を開く。

 開くと、文字が書いてあるのかと思いきや、開いた面が光りはじめて、その上に立体的で少し半透明な初代学院長ザ・ナートが浮かび上がる。

「着いた? それじゃあこれから君達には、この森に巣くっている特定の魔物の討伐と、荷物の中に私が入れといた宝箱の中の『白い玉』をある場所に納めるということをしてもらいたいんだけど……」

「実技を見せてもらったところ、まだ力不足なところが否めないので、とりあえず七日間、二人一組で魔物をひたすら倒しまくってね」

 半透明に浮かび上がる学院長の動きはちょっと老人の動きに見えない。
 説明はまだ続いている。

「事前に腕輪を五つ渡したと思うけど、一組ずつどちらか腕に着けて腕輪が光ったら”十分”の合図なので本拠地に戻って一旦、他の班が七日間終わるまで待機ね」

 うーん、なんか初代学院長の見た目威厳たっぷりと中身がかみ合ってないんだよなぁ。
 なんか女性的な口調な気が……。

 組み合わせも決めているらしい。読み上げてもらった内容はこうだ。

 A班 No1ノビリス、No48マイネ
 B班 No2ローズ、No18シャワー
 C班 No4タワー、No22シュート
 D班 No5オニギリ、No9ドクター
 E班 No3プリンス、No8ミラー

 No48の人マイネさんだっけ? 
 なんでこの人が選ばれたんだろ? 
 不思議だ……。

 ん? いや……E班どうなんだ? 
 もしかして、これってワザじゃないか?

 みると、アチラプリンスも凄い過反応オーバーリアクションで膝をつき天を見上げている。
 アホか!?

「あっ、あとそれから~」と、初代学院長から追伸があった。

「先生達もいないから君たちがいつも使ってるニックネームで呼び合ったらいいよ~」

 バレてる……。
 まあ相手が伝説の学院長だしな……。

「んじゃ、君たちの健闘を祈る……ポチッとな」



 ……なんだ最後の言葉は??
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

アルヴニカ戦記 ~斜陽国家のリブート型貴種流離譚~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,293pt お気に入り:54

異世界ゆるり紀行 ~子育てしながら冒険者します~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:39,596pt お気に入り:35,502

月影の盗賊と陽光の商人

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:5

モルリント王国戦記

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:83

処理中です...