25 / 159
小人族マカロニ編
Chapter 022 かくれんぼ
しおりを挟む
黒いゴブリンの首領……黒ゴブリンリーダーは手下の黒ゴブリン五百匹を率いて小さなあの生き物を追って、例の石像が守る黒い玉のある場所に突撃した。
憎らしいことに小さな生き物は、体から糸のようなものを出して、洞窟内を上下左右にちょこまかと動き、手下どもの攻撃を難なく躱している。
周りの石像は、例の生き物どもより少し大きいくらいだが、数十体はいる。徐々に動き始め周りに散らばっている手下を襲い始めた。手下の黒ゴブリン共は石像に襲われ混乱したが、一体に複数匹で取り囲むようにと、素早く的確に指示を飛ばす。
この際、石像もまとめて葬ってくれる。
手下のゴブリン達はリーダーに指差して指示された通りに石像を取り囲み攻撃を始める。混戦となり、たちまちのうちに石像と黒ゴブリン双方に被害が出始める。
小さな生き物に多くの黒ゴブリンが群がっているが、捕まる様子は一切感じられない。手下どもは一匹ずつがこの洞窟にいた他の魔物よりも強いうえ、今は五百匹ほどの数となっており、十分の一にも届かない石像群は脅威ではあるが、甚大な犠牲を覚悟してしまえばこちらが数で勝る
段々と石像側の分が悪くなり徐々に数が減り始める。そんな中、例の小さな生き物が手下の攻撃を躱しながら片手に何かを取り出し、それを口に銜えた。
音が鳴り始めると周囲の手下がふらつきはじめ、中にはそのまま倒れてしまうものも出てきた。その間、ゴブリン達の攻撃の手が緩まり、石像群が勢いを取り戻し、今度は黒ゴブリンを蹂躙する。
しばらくすると、例の小さな生き物は音を鳴らすのをやめた。すると、ふらついていた手下どもが気を取り戻し、石像群と激しく衝突する。小さな生き物は何度か謎の音を鳴らして止めてを繰り返す。
この小さな生き物は……もしかして!!
リーダーは、マカロニの思惑に気づき、自らマカロニに向かって突撃する。
リーダーが向かってきたのを見て、マカロニは【呪奏】用に手にしていた小型のオカリナをポケットにしまう。
恐らく笛を吹く余裕がもう無くなるからだ。
黒ゴブリンリーダーは他の黒ゴブリンと違って、この洞窟の宝物庫に眠っていた大きな戦槌を振りまわし、大空洞とは違い、やや狭いこの部屋の空間においてのマカロニの回避エリアを潰しに掛かってきた。
驚くべきことに戦槌は一振り毎に周囲の空間に歪みを生じさせており、巻き込まれると何かしら影響を受けてしまうリスクがあり、更にマカロニに回避距離が余分に加わり負担となる。
リーダーが加わったことで、マカロニ包囲網の攻撃がこれまでよりも過熱している間に戦況を決定づけた。
互いに削り合っていた、黒ゴブリンと守護者の戦いは黒ゴブリンが百体をきったところでようやく石像群すべてを破壊した。残った黒ゴブリンは皆一様に傷つき激しく疲弊しているか、気を失っているかのどちらかだ。
だが、小さな生き物もさすがに長時間、避け続けて肩で息をしている。糸から地に降り立ち呼吸を整えようとしている。
しかし、もうそんなに保たないだろう。黒ゴブリンのリーダーは他の手下どもと包囲網を狭めつつ、着地して武器を構えた小さな生き物に己の手にした得物を突き付け、これから断末魔を上げるだろう小さな生き物を見下ろす。
すると、疲労を隠せないマカロニはニコッと笑顔を作り「いや~ちょっと遅いかな?」とひとり言を漏らし、包囲の輪から糸を繰り出し、洞窟の後方へ大きく宙返りする。
『メリメリッ!!』──リーダーは体が突然、重くなり、前のめりに倒れそうな自分に驚いた。
背中と太ももにありったけの力を注いで何とか踏みとどまる。
みると、ほとんどの手下がその場で膝をついたり、這いつくばってしまっている。
かろうじて後ろを振り返ると、石像群と戦っていた他の黒ゴブリン達は痙攣し倒れてしまっている。
入口側を見ると、忌々しい生き物といずれ自分の地位を脅かす存在となり得るあの〝灰色の小童〟が何もないところから姿を現した。
同族であるため、いきなり処刑することはさすがに他の黒ゴブリンの目を憚った。
そのため一度追放し、折をみて始末するつもりだった。
灰色の小童の能力は〝重力〟……。
今まさにあの小さな生き物を包囲していたリーダーと他の手下が受けているものだ……。
だが、他の黒ゴブリン達がなぜ倒れたのかが分からない。
リーダーはもう一度小さな生き物の方を振り返ると、小さな生き物はこの部屋の更に奥にある通路へ待避し、重力攻撃から運よく逃れた数体の黒ゴブリンの追撃を小さな細い武器を取り出し応戦していた。
リーダーは急に意識が遠のき始めるのを感じた。こちらにもその見えない攻撃が届き始めたようだった。
必死に抵抗する。周囲のゴブリンは痙攣し、どんどん倒れていく。
『ズドッ!』──リーダーは後頭部に鈍い衝撃が走り、前のめりに倒れ伏した。
★
よし、おおむね順調だったな……。
マカロニが投じたナイフで群れのボスを倒したことを確認した俺はその後、倒れていてまだ息をしている黒ゴブリンがいないか確認し、トドメを刺してまわる。
「掻っ攫ってぶつける」──マカロニが名付けた作戦はうまく成功した。
手筈として、まずヒルメイに〝擬態〟を掛けてもらったマカロニが自分のスキルの糸で変身帯皮を奪う。その帯皮を餌にそのままこの場所へおびき出し、守護者群にぶつけ、互いにつぶし合ってもらうという狙いだった。
守護者が勝てばそのまま黒い玉だけ奪って離脱。黒ゴブリンが勝つようであれば〝呪奏〟で少しでも数を減らし、この部屋入口前の脇道に前もって〝擬態〟で潜んでいた俺、ヒルメイ、ペンネが回り込み入口側で、ヒルメイが空気を司る精霊の力を借り〝窒息〟を発動させる。
窒息は発動時間や発動後も作用時間が掛かるため、その間の動きをペンネの〝重力〟で封じるという二段構えで抜かりなく倒す計画を立て無事うまくいった。
だが、マカロニをあれほど群れのボスが追い込むとは予想外で結構焦ってしまった……。
「結果オ~ライッ~~皆、よく頑張ったね~~!」
それでもマカロニは明るくふるまう……。
なんかたまにコイツが自分より大人に見えたテラフだった。
憎らしいことに小さな生き物は、体から糸のようなものを出して、洞窟内を上下左右にちょこまかと動き、手下どもの攻撃を難なく躱している。
周りの石像は、例の生き物どもより少し大きいくらいだが、数十体はいる。徐々に動き始め周りに散らばっている手下を襲い始めた。手下の黒ゴブリン共は石像に襲われ混乱したが、一体に複数匹で取り囲むようにと、素早く的確に指示を飛ばす。
この際、石像もまとめて葬ってくれる。
手下のゴブリン達はリーダーに指差して指示された通りに石像を取り囲み攻撃を始める。混戦となり、たちまちのうちに石像と黒ゴブリン双方に被害が出始める。
小さな生き物に多くの黒ゴブリンが群がっているが、捕まる様子は一切感じられない。手下どもは一匹ずつがこの洞窟にいた他の魔物よりも強いうえ、今は五百匹ほどの数となっており、十分の一にも届かない石像群は脅威ではあるが、甚大な犠牲を覚悟してしまえばこちらが数で勝る
段々と石像側の分が悪くなり徐々に数が減り始める。そんな中、例の小さな生き物が手下の攻撃を躱しながら片手に何かを取り出し、それを口に銜えた。
音が鳴り始めると周囲の手下がふらつきはじめ、中にはそのまま倒れてしまうものも出てきた。その間、ゴブリン達の攻撃の手が緩まり、石像群が勢いを取り戻し、今度は黒ゴブリンを蹂躙する。
しばらくすると、例の小さな生き物は音を鳴らすのをやめた。すると、ふらついていた手下どもが気を取り戻し、石像群と激しく衝突する。小さな生き物は何度か謎の音を鳴らして止めてを繰り返す。
この小さな生き物は……もしかして!!
リーダーは、マカロニの思惑に気づき、自らマカロニに向かって突撃する。
リーダーが向かってきたのを見て、マカロニは【呪奏】用に手にしていた小型のオカリナをポケットにしまう。
恐らく笛を吹く余裕がもう無くなるからだ。
黒ゴブリンリーダーは他の黒ゴブリンと違って、この洞窟の宝物庫に眠っていた大きな戦槌を振りまわし、大空洞とは違い、やや狭いこの部屋の空間においてのマカロニの回避エリアを潰しに掛かってきた。
驚くべきことに戦槌は一振り毎に周囲の空間に歪みを生じさせており、巻き込まれると何かしら影響を受けてしまうリスクがあり、更にマカロニに回避距離が余分に加わり負担となる。
リーダーが加わったことで、マカロニ包囲網の攻撃がこれまでよりも過熱している間に戦況を決定づけた。
互いに削り合っていた、黒ゴブリンと守護者の戦いは黒ゴブリンが百体をきったところでようやく石像群すべてを破壊した。残った黒ゴブリンは皆一様に傷つき激しく疲弊しているか、気を失っているかのどちらかだ。
だが、小さな生き物もさすがに長時間、避け続けて肩で息をしている。糸から地に降り立ち呼吸を整えようとしている。
しかし、もうそんなに保たないだろう。黒ゴブリンのリーダーは他の手下どもと包囲網を狭めつつ、着地して武器を構えた小さな生き物に己の手にした得物を突き付け、これから断末魔を上げるだろう小さな生き物を見下ろす。
すると、疲労を隠せないマカロニはニコッと笑顔を作り「いや~ちょっと遅いかな?」とひとり言を漏らし、包囲の輪から糸を繰り出し、洞窟の後方へ大きく宙返りする。
『メリメリッ!!』──リーダーは体が突然、重くなり、前のめりに倒れそうな自分に驚いた。
背中と太ももにありったけの力を注いで何とか踏みとどまる。
みると、ほとんどの手下がその場で膝をついたり、這いつくばってしまっている。
かろうじて後ろを振り返ると、石像群と戦っていた他の黒ゴブリン達は痙攣し倒れてしまっている。
入口側を見ると、忌々しい生き物といずれ自分の地位を脅かす存在となり得るあの〝灰色の小童〟が何もないところから姿を現した。
同族であるため、いきなり処刑することはさすがに他の黒ゴブリンの目を憚った。
そのため一度追放し、折をみて始末するつもりだった。
灰色の小童の能力は〝重力〟……。
今まさにあの小さな生き物を包囲していたリーダーと他の手下が受けているものだ……。
だが、他の黒ゴブリン達がなぜ倒れたのかが分からない。
リーダーはもう一度小さな生き物の方を振り返ると、小さな生き物はこの部屋の更に奥にある通路へ待避し、重力攻撃から運よく逃れた数体の黒ゴブリンの追撃を小さな細い武器を取り出し応戦していた。
リーダーは急に意識が遠のき始めるのを感じた。こちらにもその見えない攻撃が届き始めたようだった。
必死に抵抗する。周囲のゴブリンは痙攣し、どんどん倒れていく。
『ズドッ!』──リーダーは後頭部に鈍い衝撃が走り、前のめりに倒れ伏した。
★
よし、おおむね順調だったな……。
マカロニが投じたナイフで群れのボスを倒したことを確認した俺はその後、倒れていてまだ息をしている黒ゴブリンがいないか確認し、トドメを刺してまわる。
「掻っ攫ってぶつける」──マカロニが名付けた作戦はうまく成功した。
手筈として、まずヒルメイに〝擬態〟を掛けてもらったマカロニが自分のスキルの糸で変身帯皮を奪う。その帯皮を餌にそのままこの場所へおびき出し、守護者群にぶつけ、互いにつぶし合ってもらうという狙いだった。
守護者が勝てばそのまま黒い玉だけ奪って離脱。黒ゴブリンが勝つようであれば〝呪奏〟で少しでも数を減らし、この部屋入口前の脇道に前もって〝擬態〟で潜んでいた俺、ヒルメイ、ペンネが回り込み入口側で、ヒルメイが空気を司る精霊の力を借り〝窒息〟を発動させる。
窒息は発動時間や発動後も作用時間が掛かるため、その間の動きをペンネの〝重力〟で封じるという二段構えで抜かりなく倒す計画を立て無事うまくいった。
だが、マカロニをあれほど群れのボスが追い込むとは予想外で結構焦ってしまった……。
「結果オ~ライッ~~皆、よく頑張ったね~~!」
それでもマカロニは明るくふるまう……。
なんかたまにコイツが自分より大人に見えたテラフだった。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
41
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる