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小人族マカロニ編

Chapter 018 いざ潜入!

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 日も暮れ始め、松明トーチをかざし進んでいると、マカロニが戻ってきて合流した。
 俺とヒルメイが進んで来たこの場所は、黒ゴブリンが領域テリトリーとしているところからかなり近い。
 松明の灯りでこちらの位置がバレるので「松明は消して」とマカロニに言われた。

 マカロニによるとこの先に黒いゴブリンの拠点らしき所があり、大きく口を開いた洞窟を囲うように粗末な建物が、数件建っていたそうだ。この腕利きの斥候の見立によると、黒いゴブリンは洞窟周辺の建物だけでも十匹程度はいるのではないかとのことだった。

 また黒いゴブリンは遠目で見ても普通のゴブリンとは明らかに動きが違っていて、個体でも並の冒険者くらいの強さはあるだろうとのこと。

 もし、見つかって囲まれたら、そしてもたついている間に応援でも呼ばれたら、さすがにヤバイ……。いつもなら何も考えずに突撃するイメージのあるマカロニだが慎重な判断をした。

 今は夜なので山の中腹からの吹きおろしの風が吹いているため、ここより少し山を下りて回り込むように風下から近づいた方がいいだろうと決まり、俺たちは今いる場所から少し山を下り始めた。

 ★

 さて、どうしようか?
 黒いゴブリンの拠点である洞窟はミルミウ山の支稜しりょう近くにあり、俺達は現在、その下腹部にあたる鞍部あんぶ側の岩陰に潜んでいて、テラフは望遠鏡を覗き込み、マカロニはスキル【遠視】を使い、拠点の様子を覗っている。

 この場所からだと距離はまだ結構ある。黒ゴブリンの拠点とそばの洞窟まで、今、隠れている場所から先は大きな岩陰がほとんどなく、潜みながらこれ以上近づくことは難しい。

「ヒルメイさん、なんか透明になる力とか貸してくれる妖精さんってこの場所にいない?」

「はい、完全に透明とまではいきませんが、周囲に視覚で気づかれにくくなる【擬態】であれば大地の精霊様から借り受けできると思います」

 マカロニがヒルメイに質問すると、ちょうどいい精霊がいるらしくすぐに返事をした。

「でも、音や匂いはそのままで、動くとどうしてもが出るのでじっと見られるとすぐバレてしまいます」」

 ヒルメイがこれから交信しようとしている妖精は澄んだ空気のところであれば交信可能な妖精らしく、この場所なら使用可能とのこと。効果時間は、魔法をかける際に消費する想力量の上乗せにより変動し、短くて一時間からヒルメイさんの想力を限界まで注ぎ込めば五時間くらいまで効果時間を延ばせるそうだ。

「オッケ~。じゃあ余裕もって二時間でお願い。ボクに【擬態】をかけてくれたら、ひとりで洞窟の中の様子を見てくるよ」

 ヒルメイがマカロニに【擬態】をかけるとそのまま足音を立てず、マカロニは尾根側に登り始めた。

 ★ 

【神の箱庭、監視室にて、とある女神のつぶやきツイート

 いやぁ、小人族のマカロニって器用だね~。
 なんでもできちゃう……それにお利口だし。

 真っ正直に自分の気持ちを他者ひとを選ばず伝えるなんて、すごくいいよね~。
 私が神社会で真似して同じことしたら多分、生意気だなんて言われて意地悪な神達に目をつけられちゃいそう……。
 いいなぁ、ああいう生き方。
 まぁ、私には到底無理だけどね。

 あと、森の中でのドロップキック面白かったわ~。
 人族の子テラフ思いきり顔が歪んで、腹がよじれちゃった。 

 それにしても人族の子テラフ
 割と抵抗値高いのにあの手の精神作用系の術にあそこまでみごとに掛かるとは……。

 まぁ、あれだね。
 人族の女の子ヒルメイに軽蔑されてもしょうがないよね……。
 あれは自業自得というものだ。

 ところで、あの洞窟、例の黒い函から出てきたやつだけど、あの黒いゴブリンって他の強化種とは違って函から変形する前に掃き出された魔物達とは違うんだよね~。
 そういえば海底宮殿の時も黒い霧の魔物もなんかよく分からなかったし……。
 いったい何なんだろうね?

 あ、そろそろお風呂入らなきゃ。
 お肌に悪いし、風呂上りにお肌保護スリーピングパックして早く寝よ。

 ということで続きは明日、観よっと。

 マカロニ君頑張れ~!!
 ポチポチして寝まーす。


 そーれっ、ポチっとな!





【スキル解説】──────────────────

【遠視<想力:強化系>】遠くのものを見る能力
【擬態<想力:自然魔法系>】自然精霊「コタア」から借り受けて発動、持続時間は一時間~想力量に応じて延ばすことが可能。身体を周囲の色に同調させ、視認しにくくなる。
【罠探知<想力:探知系>】扉や宝箱等の罠の有無を確認。(第八話)
【音波探知(ソナー)<想力:探知系>】海の中の地形や魚影を概ね確認する(第六話)
【呪奏(カースリサイタル):夢路<想力:特殊系>】奏者以外の精神に影響を及ぼし昏倒させる(第十四話)


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