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第6章 闘技都市

第26話 Re:プレイ

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「こふッ」
「おい、いったいなにを……」

 剣を引き抜かれたボクは、そのまま横向きに倒れて、事の顛末を一部始終、目撃した。

 先ほどから率先して目的地に向かっていた騎士が、もう一人と先頭を変わった直後、ボクを背中から剣で突き刺し、近くで呆然と突っ立っていた王女を斬り捨てた。先頭にいた騎士が問い詰めるが、返事はなく斬り合いになった。すると先頭にいた騎士はボクの倒れたところからみえない位置にいた何者かに背後からナイフを投げられ、首に刺さり絶命した。

 ボクは、胸から大量の血を流し、薄れていく意識のなかで必死にもう一人の正体を目に焼き付けようとしたが、先に自分の意識が途絶えてしまった。

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 ゲームオーバー 〝10〟
 
 ▶リトライする
  ゲームをやめる
 ※選ばない場合は10秒後に自動でリトライとなり、直前にセーブした状態に戻る
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 またか……。でもあの仮面の男以外にふたりも敵がいることがわかった。
 もし・・次があるのであれば、対策を打てばいい。


 ✟


「それでは神プレイヤの祝福があらんことを」
「はい、ありがとうございました」
「ええ……」

 神官戦士ロノさんにお礼を伝えると、少し戸惑った表情をみせる。本当に心から礼を伝えた。ロノさんと会っていなかったら、祝福を受けていなかったらボクはあの森の入口で、短い人生を終えていた。

 急いで移動しながらふと手の平を〝┐〟の文字が浮かび上がっていた。前回と違う。いったいこれはなんだろう? 考えても答えなんてでてくるはずもなかった。それよりも今回、どうやって裏切り者の騎士を倒すかと、3人目を先に見つけて倒すかがカギになる。

 まず、森の入口までやってきた。2回目と同じで木が倒れておらず、王女一行や仮面の男もまだきていない。ボクは兵士を8体出して、4体ずつに分けて、森のなかに潜んでいるはずの3人目の捜索と、1km先の仮面の男の足止めにそれぞれ向かわせた。
 今回、4体の兵士に「1km先で待機して仮面の男を見つけたら攻撃せよ」と伝えた。

 しばらく森のなかを捜索していると、森に潜んでいた方が先に見つかった。森に溶け込めるよう深緑色の身軽そうな服に身を包んだ男。兵士が2体やられたが、ボクと兵士2体、そして隠し玉の騎士を1体出して倒すことに成功した。残念ながら投降するよう呼びかけに応じず、服毒して自害したので情報を何ひとつ聞き出せなかった。一度、兵士2体と騎士を収納して、王女一行を待つ。

 やがて馬に乗った状態で、王女一行のみが森の入口までやってきた。しかしそのまま通過せず、一度、馬から降りて尻を叩いて3頭の馬を先に行かせた。

 ボクは2回目と同じく問い詰められたが、ここは同じように説明して、同行を許可された。
 途中でボクは、先頭を歩く裏切り者の男が怪しい素振りをみせる前に背後から斬り捨てた。

 王女の悲鳴があがる。ボクはすぐに事情を説明し始めたが、背後に気配を感じた瞬間、首の激痛を感じながら意識を失った。

 そうか、他の騎士からしたら、ボクが仮面の男の仲間だと思われたのか……。


 ✟


 4回目、手のひらには〝┬〟の文字が浮かんでいた。
 神官戦士ロノさんにすばやくお礼を伝え、森の入口までやってくると、森のなかに隠れているあの3人目の男のところに迂回して向かう。カラダがなんだか以前より気のせいか重く感じる。だが支障はない程度なので、考えるのをやめて、走ることに専念した。

 前回で潜伏している場所がわかっていたので、背後からの奇襲に成功した。

 ──数の暴力。
 兵士8体で強引に取り押さえ、毒を飲ませないように袖に仕込んでいた小瓶を奪い、遠くへ放って、スキル【蝕魂(AA)】で死なない程度に殴り、魂を奪い、洗脳に成功した。

 男の自白によると、王都ファルカの暗殺者ギルドに所属している暗殺者アサシンをやっていて、ギルドのなかでもかなりの腕利きだそうだ。複数の〝言伝屋〟を通して、依頼と多額の前金を受け取ったそうで、依頼主がどこの誰かはこの暗殺者も知らなかった。

 ただ、依頼内容として日時と場所が指定されており、仮面を被った男と、裏地が赤いマントを羽織っている騎士以外のものを暗殺せよという指示書を受けていたそうだ。
 その指示書のなかに真っ黒な宝石が埋め込まれた指輪が同封されていて、この黒い指輪が、敵勢力からみて仲間である印になっているそうだ。

 【蝕魂】の効果は、あまり使ったことがなかったので、どれくらい洗脳がもつのか分からないが、とりあえず暗殺者が自分で持っていた縄を使ってぐるぐる巻きにして、森のなかに転がしておいた。

 先ほど男を取り押さえ、洗脳が成功した時点で兵士を4体、1km先に向かわせ、仮面の男の足止めに向かわせた。

 するとほどなくして、王女一行が現れ、前回と同じく馬を乗り捨てる。ふたりの騎士がボクを詰問するが、例の裏切り者の男が、他のふたりを止めた。ボクの指にはめられている指輪を見て……。

 ボクは、いつでも応戦できるように、離れたところに待機させていた兵士4体を尾行させて、なにか起きれば挟撃できるようにと対策を練っていたが、王女を守る近衛が2人だと分が悪いと思ったのか、赤い裏地のマントを羽織っている裏切り者の男は、森のなかで行動を起こさなかった。
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