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第6話
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「おはよう亜理紗!」
「おはよう」
教室に入った田中亜理紗のもとへ真っ先に近寄ってきたのは親友の水戸 麗音。ハーフツインのいかにも優等生といった見た目をしている。
「昨日も大変だったね」
「うん、まあ……」
麗音……配信中は「ハチワレ猫ちゃま」という名前でログインしていた彼女が気にしているのは土曜日に起きた事故の後。
ダンジョン配信アプリに登録してまだ1週間も経っていないのに先ほどフォロワーが10万人を超えた。
ウィンスタには、問い合わせやダンジョンを買いたいという申し出のほか、記者を名乗る人たちから取材の申し込みが殺到しており、ひとりで捌ける量ではなくなってきている。
土曜日にダンジョンで気を失った後、鳴りやまないスマホの着信音で目が覚めた。いつの間にか自分の部屋の床に寝転がっていて電話に出ると麗音からだった。
スライムに襲われてすぐに意識を失ってしまったので、自分がその後どうなったか知らなかった。公開設定に切り替わってしまってたことや、直後の大爆発で一躍有名人となってしまったことを聞いて軽くめまいを覚えた。
ライブ配信を録画したユーザーがMy Tubeにあげた動画を見ると、すでに自分が気を失った状態でそこから姿が消えて、直後に大爆発が起きた。
My Tubeに動画をあげた人は、一瞬横切った黒い線を超スローモーションモードに切り替えて、黒い影が映った瞬間を静止し、拡大、編集をしていた。
誰なの、この人?
明らかに向こうの世界……ダンジョンの住人。
青金色の髪に紫水晶の瞳。
彫りが深く目鼻がはっきりしていて力強さを感じる太くて雄々しい眉。
亜理紗は自分を助けてくれた人物をまじまじと見て思わずため息をつく。
見惚れていた自分に気がつき、慌てて画面をスワイプする。
今、世間を騒がしているダンジョンの謎の住人。
自分が服を溶かされそうになった話なんてニュースサイトやSNSには微塵も載っていない。それよりこの謎の最強かつ超絶イケメンを配信で見せろと世間がうるさくてたまらない。
「亜理紗ちゃん、今日、家に遊びに行っていーい?」
「華ちゃん……」
仁科 華、去った土曜日の配信で間違って非公開設定を公開設定に切り替えた子。本人はワザとじゃないと言っているので、あまり深く追求しなかったけど……。
「もしかして、配信するのか? スゲー俺も行きたい」
「なら、一緒に行っちゃうし!?」
クラス内で陽キャ系に属する男子ふたり。
来馬 鬨人と小路 雷汰。
配信では数学苦手マンとアルマ二郎という名で書き込んでいたふたりは断れられるという可能性はまったく疑っていない目で亜理紗を見ている。
「ちょっと3人とも亜理紗の都合もちゃんと考えなさいよ」
亜理紗の親友、水戸麗音が口を挟んだ。
「えー、行きたい行きたい~! ダメなの亜理紗?」
「ケチってんじゃね?」
仁科 華は麗音に目もくれず、亜理紗へ甘えた声で懇願する
仁科華に乗じて小路 雷汰が煽りとも取れる発言をする。
「……いいよ」
「ホント、やったー、亜理紗ちゃん大好き!」
「いいの亜理紗? なら私も行く」
決まってしまった。
華が喜び、麗音が気を遣って自分も行くと言い出した。来馬 鬨人は亜理紗の顔色を見ていたが、行けることになって表情が明るくなった。
「ただいま~、あれ、お父さん?」
「おかえり亜理紗、お友達もいらっしゃい」
「「「「お邪魔します」」」」
父親の一郎が、めずらしく夕方前にもかかわらず家にいた。
母親は仕事へすでに出たらしく、クラスメイトを自分の部屋へ案内する。
「じゃあ早速、潜っちゃう?」
「いいね、平日だから時間もあんまないしな!」
「茶とか普通出てくんじゃね?」
「亜理紗ちゃんの部屋、かわいいね」
麗音と来馬 鬨人は、あまり長居しすぎないようにさっさと用件を済まそうと提案してきたが、雷汰が当然のように飲み物を要求してきた。華はベッドに飾ってあるぬいぐるみを触りだして気になってしょうがない。
幸い麗音がいるから部屋を離れても大丈夫だろうが、あまり部屋を出たくない気分。
「亜理紗、お友達とよかったら食べて」
ノックの後、父一郎が部屋へ入ってきた。こんなのこの家のどこにあったのか? と思うほどお洒落なお菓子がトレーに載っている。
それより気になったのは飲み物。中は緑茶なのだが、コップがやけに小さい。氷も入ってるので量としては、普通のコップの数分の1しか入ってない。
飲み残しが無いように気を使ったのかな? 一応、注ぎ足せるようにペットボトルのお茶も用意されていた。
「じゃあいくよ」
コップが空になったところで皆に声をかけて、ダンジョンコアを床に置く。コアから青白い光が浮かび上がるとダンジョンゲートが現れたので門をくぐった。
ダンジョンゲートを通った際にダンジョン世界でのアバターに自動で切り替わる。
「私も自分のスマホで配信しちゃっていい?」
「うん、別にいいけど」
「だったら皆、配信すればいいじゃん」
ダンジョン配信アプリ「Stream Of Dungeon」は、他の人のダンジョンでも問題なく配信できる。最初に華が言い出して、小路 雷汰がその話に便乗した。
別々に5つの配信を同時に行うと亜理紗のライブ配信はすぐに5千人近くの視聴者がついた。
「エイチ、エーを2回、8、7、8、7のhaNaViチャンネルも皆さん是非見てくださーい」
視聴した人間は、あとで抽選で高音質なワイヤレスイヤホンをプレゼントすると言い出した。
これが目的だったんだ。フォロワーの多いライブ配信に出て自分のチャンネルを宣伝するのはよくあることらしいのであまり気にはならない。でもこんなに詳しいなら前回の公開設定間違えたのって本当に故意ではないのかな?
名無し
:じゃあ、haNaViちゃんのとこへ行ってくるわw
名無し
:行てら~、ワイはアリサちゃん推しだからいいや
名無し
:次配信で帰ってくる説www
急増していた視聴者の数も落ち着いてきたところで、ダンジョン攻略を始めた。
「おはよう」
教室に入った田中亜理紗のもとへ真っ先に近寄ってきたのは親友の水戸 麗音。ハーフツインのいかにも優等生といった見た目をしている。
「昨日も大変だったね」
「うん、まあ……」
麗音……配信中は「ハチワレ猫ちゃま」という名前でログインしていた彼女が気にしているのは土曜日に起きた事故の後。
ダンジョン配信アプリに登録してまだ1週間も経っていないのに先ほどフォロワーが10万人を超えた。
ウィンスタには、問い合わせやダンジョンを買いたいという申し出のほか、記者を名乗る人たちから取材の申し込みが殺到しており、ひとりで捌ける量ではなくなってきている。
土曜日にダンジョンで気を失った後、鳴りやまないスマホの着信音で目が覚めた。いつの間にか自分の部屋の床に寝転がっていて電話に出ると麗音からだった。
スライムに襲われてすぐに意識を失ってしまったので、自分がその後どうなったか知らなかった。公開設定に切り替わってしまってたことや、直後の大爆発で一躍有名人となってしまったことを聞いて軽くめまいを覚えた。
ライブ配信を録画したユーザーがMy Tubeにあげた動画を見ると、すでに自分が気を失った状態でそこから姿が消えて、直後に大爆発が起きた。
My Tubeに動画をあげた人は、一瞬横切った黒い線を超スローモーションモードに切り替えて、黒い影が映った瞬間を静止し、拡大、編集をしていた。
誰なの、この人?
明らかに向こうの世界……ダンジョンの住人。
青金色の髪に紫水晶の瞳。
彫りが深く目鼻がはっきりしていて力強さを感じる太くて雄々しい眉。
亜理紗は自分を助けてくれた人物をまじまじと見て思わずため息をつく。
見惚れていた自分に気がつき、慌てて画面をスワイプする。
今、世間を騒がしているダンジョンの謎の住人。
自分が服を溶かされそうになった話なんてニュースサイトやSNSには微塵も載っていない。それよりこの謎の最強かつ超絶イケメンを配信で見せろと世間がうるさくてたまらない。
「亜理紗ちゃん、今日、家に遊びに行っていーい?」
「華ちゃん……」
仁科 華、去った土曜日の配信で間違って非公開設定を公開設定に切り替えた子。本人はワザとじゃないと言っているので、あまり深く追求しなかったけど……。
「もしかして、配信するのか? スゲー俺も行きたい」
「なら、一緒に行っちゃうし!?」
クラス内で陽キャ系に属する男子ふたり。
来馬 鬨人と小路 雷汰。
配信では数学苦手マンとアルマ二郎という名で書き込んでいたふたりは断れられるという可能性はまったく疑っていない目で亜理紗を見ている。
「ちょっと3人とも亜理紗の都合もちゃんと考えなさいよ」
亜理紗の親友、水戸麗音が口を挟んだ。
「えー、行きたい行きたい~! ダメなの亜理紗?」
「ケチってんじゃね?」
仁科 華は麗音に目もくれず、亜理紗へ甘えた声で懇願する
仁科華に乗じて小路 雷汰が煽りとも取れる発言をする。
「……いいよ」
「ホント、やったー、亜理紗ちゃん大好き!」
「いいの亜理紗? なら私も行く」
決まってしまった。
華が喜び、麗音が気を遣って自分も行くと言い出した。来馬 鬨人は亜理紗の顔色を見ていたが、行けることになって表情が明るくなった。
「ただいま~、あれ、お父さん?」
「おかえり亜理紗、お友達もいらっしゃい」
「「「「お邪魔します」」」」
父親の一郎が、めずらしく夕方前にもかかわらず家にいた。
母親は仕事へすでに出たらしく、クラスメイトを自分の部屋へ案内する。
「じゃあ早速、潜っちゃう?」
「いいね、平日だから時間もあんまないしな!」
「茶とか普通出てくんじゃね?」
「亜理紗ちゃんの部屋、かわいいね」
麗音と来馬 鬨人は、あまり長居しすぎないようにさっさと用件を済まそうと提案してきたが、雷汰が当然のように飲み物を要求してきた。華はベッドに飾ってあるぬいぐるみを触りだして気になってしょうがない。
幸い麗音がいるから部屋を離れても大丈夫だろうが、あまり部屋を出たくない気分。
「亜理紗、お友達とよかったら食べて」
ノックの後、父一郎が部屋へ入ってきた。こんなのこの家のどこにあったのか? と思うほどお洒落なお菓子がトレーに載っている。
それより気になったのは飲み物。中は緑茶なのだが、コップがやけに小さい。氷も入ってるので量としては、普通のコップの数分の1しか入ってない。
飲み残しが無いように気を使ったのかな? 一応、注ぎ足せるようにペットボトルのお茶も用意されていた。
「じゃあいくよ」
コップが空になったところで皆に声をかけて、ダンジョンコアを床に置く。コアから青白い光が浮かび上がるとダンジョンゲートが現れたので門をくぐった。
ダンジョンゲートを通った際にダンジョン世界でのアバターに自動で切り替わる。
「私も自分のスマホで配信しちゃっていい?」
「うん、別にいいけど」
「だったら皆、配信すればいいじゃん」
ダンジョン配信アプリ「Stream Of Dungeon」は、他の人のダンジョンでも問題なく配信できる。最初に華が言い出して、小路 雷汰がその話に便乗した。
別々に5つの配信を同時に行うと亜理紗のライブ配信はすぐに5千人近くの視聴者がついた。
「エイチ、エーを2回、8、7、8、7のhaNaViチャンネルも皆さん是非見てくださーい」
視聴した人間は、あとで抽選で高音質なワイヤレスイヤホンをプレゼントすると言い出した。
これが目的だったんだ。フォロワーの多いライブ配信に出て自分のチャンネルを宣伝するのはよくあることらしいのであまり気にはならない。でもこんなに詳しいなら前回の公開設定間違えたのって本当に故意ではないのかな?
名無し
:じゃあ、haNaViちゃんのとこへ行ってくるわw
名無し
:行てら~、ワイはアリサちゃん推しだからいいや
名無し
:次配信で帰ってくる説www
急増していた視聴者の数も落ち着いてきたところで、ダンジョン攻略を始めた。
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