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✜42 ダンジョン島改造組合

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「喰らえぇぇぇ!」

 影の部隊による集中砲火が始まる。戦車、歩兵、砲撃兵、狙撃兵からなる銃弾と砲弾の嵐……。

「はぁはぁ、これだけ喰らえば、どんなヤツでも……なぁっ!?」
「え、もう終わり?」

 撃ち続けること10分、ようやく魔力が枯渇して弾切れになったみたい。濛々とした土煙が晴れていくなかで涼しい顔で立っている自分を見て、ダイハチロウ含め、観戦者全員の顔が蒼ざめる。

「ちくしょぉぉ!」

 ダイハチロウの能力「シャドウ・レギオン」は影を出現させた最初の時点で必要な魔力を消費するタイプらしく、魔力が尽きかけ、残弾が無くなっても影の部隊を突撃させるのはできるみたい。

 影の軍団がこちらへ向かって殺到する。だけど、空間干渉で影たちをスルーしてダイハチロウのそばへ転移した。驚きすぎて固まっているところを軽く小突いたら決闘が終わった。筋力が555もあるので、手加減がなかなか難しい。彼らがいかに優れた技術を持っていても、ステータス差がありすぎるので話にならない。

「まとめて、かかってきなよ?」
「……」

 一撃で首から上をロストして、復活中のカウントダウンが始まっているダイハチロウの横で軽く煽ってみたが、誰も向かってくる者はいなかった。

 頼んだ件は早めによろしく、とエーイチに話し、サーバー016を後にした。

 ダンジョン島へ戻って、すぐ地図作りに取り掛かる。ガーゴイル2体に両脇を抱えてもらい空から撮影するスタイル。ちょっと不格好に傍から見えるかもしれないが大丈夫。そういうのはあまり気にならない。

 今回、空撮をするための秘密兵器「キャプチャ機能」は半透明になっているステータスウインドウに映っている背後の画面がそのまま切り取られる仕様になっている。

 撮影しようとしたが、問題が生じた。島が大きすぎるし、そこまで高度を上げられないので、全体どころか島の一部しか入らない。

 うーん、と悩んでいてスマホ画面を触れるように両手でピンチアウトして縮めたら島が半分くらい入ったのでキャプチャする。もう半分も同じように撮影したので、2つの画像を組み合わせれば、いちおう島全体は納まっている。だけど引き続き、島を何周も周回して画像を撮ることにした。

 これは写真の知識になるが、自分の視点がAという斜め上の位置から電車を見ると、縦に長い長方形にみえる。だけどBという電車の横方向から見ると電車は横に伸びた長方形にみえる。

 さらにAの視点に近い電車の先端が運転席だとすると、Bの視点では左右どちらかの端っこに運転席が見えることになる。

 視点の情報から電車の運転席の位置を知りたい場合、Aでは写真の中心、Bだと左右に大きくずれる。この位置がずれることを中心投影という。なので、より正しい電車の位置や形を押さえるためには色んな角度から見ることが必要になる。そのため視点場が多ければ多いほど電車の形が、よりはっきり詳しく分かるといえる。

 これをダンジョン島にある山で考えると、ある一か所から撮っただけでは、山の位置を正確に掴めない。そのため、周囲の数か所の位置から撮影すると山の輪郭がより正確に把握できる。

 そう考え、キャプチャをしまくること数百枚……これを図面にするのは1日や2日で終わる作業じゃないなと覚悟した。

 ✜

「ピコンの進化?」
「ふむ、正確には本来の龍姿化ドラゴンフォームを含めた変身が可能となるのじゃ」

 1ヵ月以上、顔を見せていなかったサクラがクリエの街外れに新たに興した「ダンジョン島改造組合ギルド」の事務所へやってきた。

 ダンジョン島の改造を手伝うと言っておきながら、音沙汰がなかったが、彼女らヴァ―ルギュントは彼女らなりに色々と動いてくれていたようだ。

「今は地図作りが優先じゃろうが、いずれは古龍の力が必要になるのでの」

 古龍カリエテが使っていた七色のブレスのことかな? たしかにあれはヤバかった。

「それで、こちらは何をすればいいの?」
女帝蟻エンプレスアントをまず捕まえてくるのじゃ」

 聞いたことのない魔物の名前……この島には一度だけ女王蟻クイーンアントがいる拠点を見つけたことがあるが、洞窟の中からすごい数の兵隊蟻ソルジャーアントやらそれを束ねる隊長蟻キャプテンアントが湯水のように湧いて出てきて、あまりの数の多さにゴーレムを大量に生成して迎え撃ったのを思い出す。

「女蟻って、あの幻の魔物ですか?」

 ふたりで話しているところで、ダンジョン島改造組合の組合長をしてもらっている元冒険者ギルドマスターの男性が話の中へ入ってきた。

 組合長の話だと、女王蟻を産むのがその女皇蟻で、蟻系に属する魔物の生態系の中において頂点であり、その姿を目撃した冒険者は、皆無で歴史書を紐解いてもほとんど出てこないというすごくレアな魔物らしい。だが、ここはダンジョン島、生態系が各大陸ともかなりかけ離れているため、女皇蟻がいてもおかしくはないと教えてくれた。

「それで、その女皇蟻エンプレスアントを捕まえてどうするの?」
「繭を吐き出させるのじゃ。それも極上の」
「へー、それで?」
「その繭で、寝台を作り……」

 繭でベッド? 羽毛布団みたいにフカフカしてそうで気持ちよさそう。──でも。

「なんで寝台なんか作るの?」
「妾と寝て、夜中に寝汗を下からゆっくりと舐め上げ……いたたたっ冗談じゃよ、冗談」

 冗談に聞こえないんだよな……久しぶりにアイアンクローを顔面にめり込ませてやった。










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