34 / 49
✜34 ザ・エデン
しおりを挟む
ここは……。
「ふむ、今日の客人は異世界人のようじゃの」
風が強い、気が付いたら人工的なタイルの上に立っていた。水路が横を通っていて、その先はなにもない。遠くを見るとこの場所がはてしなく高い場所であることがわかった。
正面に立っているのは、とんがり帽子を被り、片眼鏡をしていて、白く立派な髭をたくわえている。どこからどうみても魔法使いか賢者って感じのご老人。
「ここはどこですか?」
「ふむ、ここは管理塔、管理者権限の資格を得たものが辿りつける塔じゃ」
管理塔? ──なにそれ、初めて聞く名だ。
「あなたは?」
「ワシはシロワ・ランドール、訳あってここへ住んでおる」
シロワと名乗った老人が視線で案内したのは、おとぎ話に出てきそうな巨大なキノコの家。こんなところに住んでるんだ。不便じゃないのかな?
「ちょっとした『あるばいと』じゃ、お主をこれから管理塔の中へ送る」
あるばいと、か。めちゃくちゃ聞き覚えのある単語だな。
「シロワ……さんは、もしかして地球から来たんですか?」
「いんや、ワシはこの世界の生まれじゃ、どれ? もう送るぞ」
「え、ちょっと待っ……」
このシロワって爺さん、せっかち過ぎん? あっという間に知らない場所へ転移した。
これが管理塔の中?
長い廊下があって、左側に等間隔で部屋がある。部屋一つひとつには30人くらいのアンドロイドが椅子へ座って机にある端末を操作している。全員、同じ方向を向いていて、その先には巨大なモニターがある。日本の学校の教室をイメージすると分かりやすいかも。
自分の方を誰も見向きもしない。あるアンドロイドの端末を覗くと小さな画面がコマ割にされていて、ひとつの画面に20枠くらいあった。画面の一個一個には、第3者視点のようにいろんな人物が一個の画面にひとり映っており、まるでその人物を監視しているようにも見えた。画面は5秒おきくらいに1回スキップされて、また違う20枠が映し出されている。
そして部屋の前方にあるモニターは人物が固定されていた。映画やアニメでよく見る王様っぽい人物が映し出されている。
同じような部屋が何個も続く。
廊下ひとつにつき、ちょうど20部屋ある。行き止まりのところに階段があるので上がってみると、また同じ長い廊下と20個の部屋があった。
3階、4階、5階と行き止まりに着いては階段を上がっていく。
数えるのも億劫になった頃、おそらく100階あたりでようやく違う光景に変わった。
丸い部屋で、周囲の壁には7つの巨大なモニターがある。
そして、その巨大なモニターのうちのひとつに自分がまさに今、リアルタイムで映し出されていた。
「やあ、よくここまで来たね」
アンドロイドが、10体ほど働いている傍ら、人間がひとりだけ中央にある偉い人が座るっぽいところで、お茶を愉しんでいた。
「ボクはタバサ、上位天使だ。ヨロシクね!」
上位天使? なるほど確かに頭の上に輪っかが浮いている。
「えーと、日本から来たんだっけ?」
「はい」
「じゃあ異世界的説明は省略っと」
「いや、いろいろ知りたいですけど」
「 たとえば?」
この世界は、小説や漫画でいう異世界なのか、それともゲームの世界なのか、そしてここはいったいなんなのか?
「簡単にいうと別の惑星だね。異世界とかゲームの世界だって、ぷぷっおもしろ♪」
いやいや、別の惑星でも十分驚きなんだが?
この管理塔はこの惑星を文字通り管理している場所で、いろんな惑星から連れてきた種族を定住させ、異世界っぽくしているそうだ。
「ボクは別の惑星からこの惑星を管理しているんだ」
今、目の前にいるのは、ホログラムで実体は何万光年も離れた所にいると話す。
「何のためにそんなことを?」
そう、いったいなんでそんなことをする必要があるのか。
「ボクの上司の趣味だね」
彼女には上司がいて、自分たち人間からはこう呼ばれていると言う。
〝神〟と……。
神の娯楽、か。いかにも永遠の生命を持つものが、考えそうな話だ。
「それで自分はなぜこの塔に呼ばれたんですか?」
核心に触れる。わざわざこんなところへ呼び出したんだ。意味があるに違いない。
「え、キミが、資格を得て来たんでしょ?」
「え?」
「え?」
会話が噛み合っていない?
上位天使タバサが言うには、この惑星のいくつかの管理者権限があって、古龍を倒したので、その資格を自発的に得てこの塔へ来たと思ったそうだ。
でもじゃあ、サーバーってなに?
侵略者の連中……自分のようなプレイヤーが、別の異空間からやってきてるんじゃ?
「それは地球の神の仕業だね、ウチの主に色々とちょっかい出してくるヤベー神 」
まあ、あっちはあっちで別の思惑があるから気にするなと言われた。いや気にしないでって無理でしょ?
「いけない、主に用事を頼まれてたんだった、キミの件はちゃちゃっと済ますとしよう」
え、なんか雑……。
天使タバサがキーボードを操作すると、右手の甲に変な印が刻まれた。
「じゃあ、くれぐれもも他所の連中に負けんな?」
「ちょっとまだ聞きたいこ……」
皆、人の話を聞かないな……強制的に転移させられた。
目を開けると、クリエの街にある自分の部屋のベッドだった。
「ふむ、今日の客人は異世界人のようじゃの」
風が強い、気が付いたら人工的なタイルの上に立っていた。水路が横を通っていて、その先はなにもない。遠くを見るとこの場所がはてしなく高い場所であることがわかった。
正面に立っているのは、とんがり帽子を被り、片眼鏡をしていて、白く立派な髭をたくわえている。どこからどうみても魔法使いか賢者って感じのご老人。
「ここはどこですか?」
「ふむ、ここは管理塔、管理者権限の資格を得たものが辿りつける塔じゃ」
管理塔? ──なにそれ、初めて聞く名だ。
「あなたは?」
「ワシはシロワ・ランドール、訳あってここへ住んでおる」
シロワと名乗った老人が視線で案内したのは、おとぎ話に出てきそうな巨大なキノコの家。こんなところに住んでるんだ。不便じゃないのかな?
「ちょっとした『あるばいと』じゃ、お主をこれから管理塔の中へ送る」
あるばいと、か。めちゃくちゃ聞き覚えのある単語だな。
「シロワ……さんは、もしかして地球から来たんですか?」
「いんや、ワシはこの世界の生まれじゃ、どれ? もう送るぞ」
「え、ちょっと待っ……」
このシロワって爺さん、せっかち過ぎん? あっという間に知らない場所へ転移した。
これが管理塔の中?
長い廊下があって、左側に等間隔で部屋がある。部屋一つひとつには30人くらいのアンドロイドが椅子へ座って机にある端末を操作している。全員、同じ方向を向いていて、その先には巨大なモニターがある。日本の学校の教室をイメージすると分かりやすいかも。
自分の方を誰も見向きもしない。あるアンドロイドの端末を覗くと小さな画面がコマ割にされていて、ひとつの画面に20枠くらいあった。画面の一個一個には、第3者視点のようにいろんな人物が一個の画面にひとり映っており、まるでその人物を監視しているようにも見えた。画面は5秒おきくらいに1回スキップされて、また違う20枠が映し出されている。
そして部屋の前方にあるモニターは人物が固定されていた。映画やアニメでよく見る王様っぽい人物が映し出されている。
同じような部屋が何個も続く。
廊下ひとつにつき、ちょうど20部屋ある。行き止まりのところに階段があるので上がってみると、また同じ長い廊下と20個の部屋があった。
3階、4階、5階と行き止まりに着いては階段を上がっていく。
数えるのも億劫になった頃、おそらく100階あたりでようやく違う光景に変わった。
丸い部屋で、周囲の壁には7つの巨大なモニターがある。
そして、その巨大なモニターのうちのひとつに自分がまさに今、リアルタイムで映し出されていた。
「やあ、よくここまで来たね」
アンドロイドが、10体ほど働いている傍ら、人間がひとりだけ中央にある偉い人が座るっぽいところで、お茶を愉しんでいた。
「ボクはタバサ、上位天使だ。ヨロシクね!」
上位天使? なるほど確かに頭の上に輪っかが浮いている。
「えーと、日本から来たんだっけ?」
「はい」
「じゃあ異世界的説明は省略っと」
「いや、いろいろ知りたいですけど」
「 たとえば?」
この世界は、小説や漫画でいう異世界なのか、それともゲームの世界なのか、そしてここはいったいなんなのか?
「簡単にいうと別の惑星だね。異世界とかゲームの世界だって、ぷぷっおもしろ♪」
いやいや、別の惑星でも十分驚きなんだが?
この管理塔はこの惑星を文字通り管理している場所で、いろんな惑星から連れてきた種族を定住させ、異世界っぽくしているそうだ。
「ボクは別の惑星からこの惑星を管理しているんだ」
今、目の前にいるのは、ホログラムで実体は何万光年も離れた所にいると話す。
「何のためにそんなことを?」
そう、いったいなんでそんなことをする必要があるのか。
「ボクの上司の趣味だね」
彼女には上司がいて、自分たち人間からはこう呼ばれていると言う。
〝神〟と……。
神の娯楽、か。いかにも永遠の生命を持つものが、考えそうな話だ。
「それで自分はなぜこの塔に呼ばれたんですか?」
核心に触れる。わざわざこんなところへ呼び出したんだ。意味があるに違いない。
「え、キミが、資格を得て来たんでしょ?」
「え?」
「え?」
会話が噛み合っていない?
上位天使タバサが言うには、この惑星のいくつかの管理者権限があって、古龍を倒したので、その資格を自発的に得てこの塔へ来たと思ったそうだ。
でもじゃあ、サーバーってなに?
侵略者の連中……自分のようなプレイヤーが、別の異空間からやってきてるんじゃ?
「それは地球の神の仕業だね、ウチの主に色々とちょっかい出してくるヤベー神 」
まあ、あっちはあっちで別の思惑があるから気にするなと言われた。いや気にしないでって無理でしょ?
「いけない、主に用事を頼まれてたんだった、キミの件はちゃちゃっと済ますとしよう」
え、なんか雑……。
天使タバサがキーボードを操作すると、右手の甲に変な印が刻まれた。
「じゃあ、くれぐれもも他所の連中に負けんな?」
「ちょっとまだ聞きたいこ……」
皆、人の話を聞かないな……強制的に転移させられた。
目を開けると、クリエの街にある自分の部屋のベッドだった。
55
お気に入りに追加
505
あなたにおすすめの小説
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる