ダンジョン島へようこそ! 創造スキル持ちの転生者、ダンジョン島を改造し、ほのぼのライフを満喫したい! 

あ・まん@田中子樹

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✜29 栄枯盛衰

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(古龍カリエテを倒しに行くそうじゃの?)

 おっと、この声は和装サキュバス。なにか用でもあるのかな?

(あれはこの世界の理を大きく逸脱しておる)

 ところでサクラは誰から古龍カリエテ討伐の話を聞いたのだろう……先ほどまでいた異空間【カリエテの箱庭】までサクラの念話が届くとは思えないけど……。

(なにその小鳥に録音をしてもらっておったのじゃよ)

「ピッ!」

 いつの間に仲良くなったんだ? それとも元々知り合いだったとか……いや、ピコンは目の前で卵から孵ったのを見たんだけど?

 でも、ピコンって、年齢が1万歳超えてたんだっけ? カリエテさんと同じ古龍……エンシェントドラゴンだし。

 ピコンのことはいくら考えても今は答えが出そうもないので、とりあえず後回しにする。それよりサクラが何か知っていそうなので、古龍攻略のために情報を求めた。

(汗舐めの権利10回で教えてやろう)

「ぶっ飛ばされたい?」

(くっ、なんと不義理な男……妾のカラダを散々、弄んでおいて)

 いや、顔面にアイアンクローをお見舞いしただけだが? よし、今度会った時に絶対、メキメキ言わせてやる!

(しょうがないのぅ、1回にまけてやるのじゃ)

 ……まあ、普通にイヤだが、約束は後で反故にするとして、了解したフリして話を進めるよう促す。

(ヤツには古傷があっての)

 通常、ドラゴンと言えば喉仏のところに火炎袋があってそこを突き刺せば一撃でK.Oノックアウトできることで有名だ。だが、エンシェントドラゴンは永い時間を生きているだけあって、喉の部分にある火炎袋を分厚い鱗で覆っていてドラゴン共通の弱点を克服しているそうだ。

 そうなると、まさしく厄災でしかなく、「ひと」がどうこうできるレベルではない。

 そもそもドラゴンという種は強靭な肉体と、鋼よりも硬い鱗を持ち、全てを燼滅じんめつせしめる圧倒的な火力を誇るブレスと揃っちゃいけない3つがセットになっている無理ゲー的な存在。それなのに唯一の弱点を補った上位のドラゴンって戦っちゃダメなヤツじゃん。

(ウサギとタコには会ったじゃろう?)

 ウサギとタコさん……ヴァ―ルギュントの第1と第2試練にいた巨大なタコと音速で突っ走るウサギのことかな?

(妾達、【役割を持つ存在ヴァ―ルギュント】は、キヨマサによって作られたのじゃが、実はもうひとりおったのじゃ)

 名を「ボンテン」と言い、ヴァ―ルギュントきっての武闘派で、他の3人? がめるよう呼び掛けたのに人格を失った古龍に戦いを挑んで敗れてしまい、存在自体が消滅してしまったそうだ。

(じゃが、傷を負わせた)

 それが古傷、失明した左目と破れてしまった右の翼……。

(あと、古龍が根城にしている溶岩湖の奥の壁に槍が突き刺さっておる)

 ボンテンが、キヨマサより貰ったUR武器「金剛杵ヴァジュラ」が形態変化し、槍の状態で岩壁に刺さっているそうだ。

 その槍が古龍に傷を負わせた唯一の武器だそうだ。ちなみになぜ無謀な戦いを挑んだのかを尋ねた。キヨマサが亡くなった後、カリエテは外からやってくる侵入者に対し、キヨマサを想うあまり彼が創った世界を壊されたくない思いからチートすぎる存在となった。

 だが、ボンテンはあるじ……キヨマサの望み、目指していた世界は、侵略行為もまた彼が過去に生きた日本の戦国時代において、栄枯盛衰こそが世界の理であり、ひとの儚さをこのダンジョン島という小さな箱庭の中で再現しようとしていたと語り、あまりにも強大になり過ぎたカリエテの骸に対し、負けると分かっていて勝負を挑み、手傷を負わせたとサクラはため息交じりに話した。

「シュリとヤコはクリエの街で待っていてほしい」
「アラタ様、どうしてですかッ!?」
「そんなにアタイ達が頼りないってことか?」

 ふたり同時に詰め寄ってきたが、はっきりと伝える。

「たぶん、カリエテとの戦いは簡単には決着がつかない」

 遥かに格上の相手に対して自分が取れる戦法は持久戦……。ボンテンと古龍の戦いは三日三晩続いたという。冒険者の最高峰、白金等級の資格を持つ者達と比較しても、はるかに高いステータスをふたりとも備えている。だが、それでも伝説の龍を相手にする資格は彼女たちにはない。──それと言うのもあまりにもリスクが高すぎる。自分をこれまで支えてきてくれた大事なかけがえのないふたりを戦いの中で失うわけにはいかない。

 ヤコは舌打ちしつつも、大人しく引き下がった。だけどシュリは……。

「──ッ!?」

 シュリの手が自分の首に回され引き寄せられた。唇と唇が軽く触れるくらいの優しいキス……互いの顔が離れると、閉じていた瞳がすこし濡れているのに気が付いた。
 夕日に照らされた桜の花びらのように、ほんのりと赤く染まった頬。その表情は、春の風がそっと吹き抜けるような、恥ずかしさと優しさに満ちていた。

「どうかご無事で」
「う、うん……」

 どうしよう? シュリの顔が真っすぐ見れない。たぶん他の人が今の自分を見たら、きっと真っ赤なリンゴかトマトみたいだと思うに違いない。




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