29 / 49
✜29 栄枯盛衰
しおりを挟む
(古龍カリエテを倒しに行くそうじゃの?)
おっと、この声は和装サキュバス。なにか用でもあるのかな?
(あれはこの世界の理を大きく逸脱しておる)
ところでサクラは誰から古龍カリエテ討伐の話を聞いたのだろう……先ほどまでいた異空間【カリエテの箱庭】までサクラの念話が届くとは思えないけど……。
(なにその小鳥に録音をしてもらっておったのじゃよ)
「ピッ!」
いつの間に仲良くなったんだ? それとも元々知り合いだったとか……いや、ピコンは目の前で卵から孵ったのを見たんだけど?
でも、ピコンって、年齢が1万歳超えてたんだっけ? カリエテさんと同じ古龍……エンシェントドラゴンだし。
ピコンのことはいくら考えても今は答えが出そうもないので、とりあえず後回しにする。それよりサクラが何か知っていそうなので、古龍攻略のために情報を求めた。
(汗舐めの権利10回で教えてやろう)
「ぶっ飛ばされたい?」
(くっ、なんと不義理な男……妾のカラダを散々、弄んでおいて)
いや、顔面にアイアンクローをお見舞いしただけだが? よし、今度会った時に絶対、メキメキ言わせてやる!
(しょうがないのぅ、1回にまけてやるのじゃ)
……まあ、普通にイヤだが、約束は後で反故にするとして、了解したフリして話を進めるよう促す。
(ヤツには古傷があっての)
通常、ドラゴンと言えば喉仏のところに火炎袋があってそこを突き刺せば一撃でK.Oできることで有名だ。だが、エンシェントドラゴンは永い時間を生きているだけあって、喉の部分にある火炎袋を分厚い鱗で覆っていてドラゴン共通の弱点を克服しているそうだ。
そうなると、まさしく厄災でしかなく、「ひと」がどうこうできるレベルではない。
そもそもドラゴンという種は強靭な肉体と、鋼よりも硬い鱗を持ち、全てを燼滅せしめる圧倒的な火力を誇るブレスと揃っちゃいけない3つがセットになっている無理ゲー的な存在。それなのに唯一の弱点を補った上位のドラゴンって戦っちゃダメなヤツじゃん。
(ウサギとタコには会ったじゃろう?)
ウサギとタコさん……ヴァ―ルギュントの第1と第2試練にいた巨大なタコと音速で突っ走るウサギのことかな?
(妾達、【役割を持つ存在】は、キヨマサによって作られたのじゃが、実はもうひとりおったのじゃ)
名を「ボンテン」と言い、ヴァ―ルギュントきっての武闘派で、他の3人? が止めるよう呼び掛けたのに人格を失った古龍に戦いを挑んで敗れてしまい、存在自体が消滅してしまったそうだ。
(じゃが、傷を負わせた)
それが古傷、失明した左目と破れてしまった右の翼……。
(あと、古龍が根城にしている溶岩湖の奥の壁に槍が突き刺さっておる)
ボンテンが、キヨマサより貰ったUR武器「金剛杵」が形態変化し、槍の状態で岩壁に刺さっているそうだ。
その槍が古龍に傷を負わせた唯一の武器だそうだ。ちなみになぜ無謀な戦いを挑んだのかを尋ねた。キヨマサが亡くなった後、カリエテは外からやってくる侵入者に対し、キヨマサを想うあまり彼が創った世界を壊されたくない思いからチートすぎる存在となった。
だが、ボンテンは主……キヨマサの望み、目指していた世界は、侵略行為もまた彼が過去に生きた日本の戦国時代において、栄枯盛衰こそが世界の理であり、ひとの儚さをこのダンジョン島という小さな箱庭の中で再現しようとしていたと語り、あまりにも強大になり過ぎたカリエテの骸に対し、負けると分かっていて勝負を挑み、手傷を負わせたとサクラはため息交じりに話した。
「シュリとヤコはクリエの街で待っていてほしい」
「アラタ様、どうしてですかッ!?」
「そんなにアタイ達が頼りないってことか?」
ふたり同時に詰め寄ってきたが、はっきりと伝える。
「たぶん、カリエテとの戦いは簡単には決着がつかない」
遥かに格上の相手に対して自分が取れる戦法は持久戦……。ボンテンと古龍の戦いは三日三晩続いたという。冒険者の最高峰、白金等級の資格を持つ者達と比較しても、はるかに高いステータスをふたりとも備えている。だが、それでも伝説の龍を相手にする資格は彼女たちにはない。──それと言うのもあまりにもリスクが高すぎる。自分をこれまで支えてきてくれた大事なかけがえのないふたりを戦いの中で失うわけにはいかない。
ヤコは舌打ちしつつも、大人しく引き下がった。だけどシュリは……。
「──ッ!?」
シュリの手が自分の首に回され引き寄せられた。唇と唇が軽く触れるくらいの優しいキス……互いの顔が離れると、閉じていた瞳がすこし濡れているのに気が付いた。
夕日に照らされた桜の花びらのように、ほんのりと赤く染まった頬。その表情は、春の風がそっと吹き抜けるような、恥ずかしさと優しさに満ちていた。
「どうかご無事で」
「う、うん……」
どうしよう? シュリの顔が真っすぐ見れない。たぶん他の人が今の自分を見たら、きっと真っ赤なリンゴかトマトみたいだと思うに違いない。
おっと、この声は和装サキュバス。なにか用でもあるのかな?
(あれはこの世界の理を大きく逸脱しておる)
ところでサクラは誰から古龍カリエテ討伐の話を聞いたのだろう……先ほどまでいた異空間【カリエテの箱庭】までサクラの念話が届くとは思えないけど……。
(なにその小鳥に録音をしてもらっておったのじゃよ)
「ピッ!」
いつの間に仲良くなったんだ? それとも元々知り合いだったとか……いや、ピコンは目の前で卵から孵ったのを見たんだけど?
でも、ピコンって、年齢が1万歳超えてたんだっけ? カリエテさんと同じ古龍……エンシェントドラゴンだし。
ピコンのことはいくら考えても今は答えが出そうもないので、とりあえず後回しにする。それよりサクラが何か知っていそうなので、古龍攻略のために情報を求めた。
(汗舐めの権利10回で教えてやろう)
「ぶっ飛ばされたい?」
(くっ、なんと不義理な男……妾のカラダを散々、弄んでおいて)
いや、顔面にアイアンクローをお見舞いしただけだが? よし、今度会った時に絶対、メキメキ言わせてやる!
(しょうがないのぅ、1回にまけてやるのじゃ)
……まあ、普通にイヤだが、約束は後で反故にするとして、了解したフリして話を進めるよう促す。
(ヤツには古傷があっての)
通常、ドラゴンと言えば喉仏のところに火炎袋があってそこを突き刺せば一撃でK.Oできることで有名だ。だが、エンシェントドラゴンは永い時間を生きているだけあって、喉の部分にある火炎袋を分厚い鱗で覆っていてドラゴン共通の弱点を克服しているそうだ。
そうなると、まさしく厄災でしかなく、「ひと」がどうこうできるレベルではない。
そもそもドラゴンという種は強靭な肉体と、鋼よりも硬い鱗を持ち、全てを燼滅せしめる圧倒的な火力を誇るブレスと揃っちゃいけない3つがセットになっている無理ゲー的な存在。それなのに唯一の弱点を補った上位のドラゴンって戦っちゃダメなヤツじゃん。
(ウサギとタコには会ったじゃろう?)
ウサギとタコさん……ヴァ―ルギュントの第1と第2試練にいた巨大なタコと音速で突っ走るウサギのことかな?
(妾達、【役割を持つ存在】は、キヨマサによって作られたのじゃが、実はもうひとりおったのじゃ)
名を「ボンテン」と言い、ヴァ―ルギュントきっての武闘派で、他の3人? が止めるよう呼び掛けたのに人格を失った古龍に戦いを挑んで敗れてしまい、存在自体が消滅してしまったそうだ。
(じゃが、傷を負わせた)
それが古傷、失明した左目と破れてしまった右の翼……。
(あと、古龍が根城にしている溶岩湖の奥の壁に槍が突き刺さっておる)
ボンテンが、キヨマサより貰ったUR武器「金剛杵」が形態変化し、槍の状態で岩壁に刺さっているそうだ。
その槍が古龍に傷を負わせた唯一の武器だそうだ。ちなみになぜ無謀な戦いを挑んだのかを尋ねた。キヨマサが亡くなった後、カリエテは外からやってくる侵入者に対し、キヨマサを想うあまり彼が創った世界を壊されたくない思いからチートすぎる存在となった。
だが、ボンテンは主……キヨマサの望み、目指していた世界は、侵略行為もまた彼が過去に生きた日本の戦国時代において、栄枯盛衰こそが世界の理であり、ひとの儚さをこのダンジョン島という小さな箱庭の中で再現しようとしていたと語り、あまりにも強大になり過ぎたカリエテの骸に対し、負けると分かっていて勝負を挑み、手傷を負わせたとサクラはため息交じりに話した。
「シュリとヤコはクリエの街で待っていてほしい」
「アラタ様、どうしてですかッ!?」
「そんなにアタイ達が頼りないってことか?」
ふたり同時に詰め寄ってきたが、はっきりと伝える。
「たぶん、カリエテとの戦いは簡単には決着がつかない」
遥かに格上の相手に対して自分が取れる戦法は持久戦……。ボンテンと古龍の戦いは三日三晩続いたという。冒険者の最高峰、白金等級の資格を持つ者達と比較しても、はるかに高いステータスをふたりとも備えている。だが、それでも伝説の龍を相手にする資格は彼女たちにはない。──それと言うのもあまりにもリスクが高すぎる。自分をこれまで支えてきてくれた大事なかけがえのないふたりを戦いの中で失うわけにはいかない。
ヤコは舌打ちしつつも、大人しく引き下がった。だけどシュリは……。
「──ッ!?」
シュリの手が自分の首に回され引き寄せられた。唇と唇が軽く触れるくらいの優しいキス……互いの顔が離れると、閉じていた瞳がすこし濡れているのに気が付いた。
夕日に照らされた桜の花びらのように、ほんのりと赤く染まった頬。その表情は、春の風がそっと吹き抜けるような、恥ずかしさと優しさに満ちていた。
「どうかご無事で」
「う、うん……」
どうしよう? シュリの顔が真っすぐ見れない。たぶん他の人が今の自分を見たら、きっと真っ赤なリンゴかトマトみたいだと思うに違いない。
43
お気に入りに追加
502
あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!!
僕は異世界転生してしまう
大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった
仕事とゲームで過労になってしまったようだ
とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた
転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった
住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる
◇
HOTランキング一位獲得!
皆さま本当にありがとうございます!
無事に書籍化となり絶賛発売中です
よかったら手に取っていただけると嬉しいです
これからも日々勉強していきたいと思います
◇
僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました
毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる