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3rd ワイ、レベルアップしたん?
蜘蛛釣り
しおりを挟む元都市031に接続された北門を開くと向こうの南門とつながった。これにより、巨大な都市047が誕生した。見覚えのある細目のニヤついた男が出迎えた。
「へへへっ、その節はどうも~」
「狸、お前以外に責任者はいないん?」
「ヤ・モ・トです。マスター、カシワルというものがいたのですが……」
「ああ、例の死んだ騎士団長ね、しゃーない、狸に管理を任せるか」
「私にですか?」
「まあ、ワイらが管理するより狸の方がそっちの人らも納得するやろ?」
「はい、喜んでお受けします!」
ヤモトさん、もう狸と呼ばれることに抵抗しないんだ。完全に何度も狸と連呼されても、うれしさの方が勝っていて、狸呼ばわりされても気にしなくなった。
元都市031と508が接続されたことによって、エリア長の再配分を行った。元都市031が北エリアでエリア長が狸ことヤモト。そして元都市508が中央エリアという呼び方に変更になった。中央エリアのエリア長は元中央街のゴマスに任せることにした。
これにより、他街のエリア長だった人たちは役職が外れたが、クロが新しくポストを用意していた。
まず、西街のクロウドは都市047の騎士団団長。父親のモラオは副団長に指名された。次に南街の美少年ミモリが使節団団長、彼の右腕である白装束のヒルヨが副団長となった。使節団というのは元いた世界でいう外交官のようなもので他都市との交渉や情報収集を行い、周辺都市との間で友好関係を築き、不用な争いを回避するための重要な役割を果たすそうだ。
そして、各工場や工房などを取り仕切るギルド長にボーリング、副ギルド長に弟のサンプラーのガス兄弟に任せることになった。
北街に帰ってきたフラメル・ド・アレは魔導技術機関の機関長、北街を一時的にクロに管理を任せられていた長身瘦躯のトルナーデ・レイフはその補佐の任に着いた。
ちなみに西街のモラオに不幸にも買われてしまった少女ユイエは、その両親がクロのところに迎えに来たが、追い返してしまった。金のために子どもを手放すような親はロクでもないというのが理由。ユイエに尋ねると「父も母も仕方がなかったんです」と話している。だが、何年か経てば自分がいかに幼い頃から両親から洗脳を受けていたことに気づくはずだとクロがユイエに伝えた。そのため、フラメルに預け魔導技術機関で彼の弟子として錬金術を学びながら働くことになった。
「たっ、大変ですギルド長と副ギルド長が!」
中央エリアの西側に都市マスターが自由にできる広い土地がある。そこに騎士団副団長モラオが組長をしている建築、土木を手掛けるダイゴロウ組を10人近く派遣してもらっている。彼らに建築技術を教わりながら、私とクロのマイホームを建てていると中央エリア長ゴマスからの使者が息を切らしてやってきた。
ボーリングさんとサンプラーが大けがをした!?
彼らは現在、ダンジョン内での鉱脈探しと坑道の再構築に取り掛かっていたはず。それというものダンジョンが【接続】を行ったことにより、都市が移動したため、地下にあるダンジョンにつながる入り口が変わったことによるもの。
彼らは現在、ダンジョン内での鉱脈探しと坑道の再構築に取り掛かっていたはず。それというものダンジョンが【接続】を行ったことにより、都市が移動したため、地下にあるダンジョンにつながる入り口が変わってしまったため。
私とクロは建築作業を中断し、急いで二人が運ばれた診療所へ向かった。
「大丈夫なん?」
「クロとシロか、なんとか生きておるわい」
ボーリングさんは左腕を骨折して、右耳が包帯で塞がれている。サンプラーもお腹と左足をやられたらしく、ふたりとも痛々しい姿だった。
「シロ」
「うん、まかせて」
この世界には絶対なる「神」というものが存在しない。その代わりに自然や物などに精霊が宿るとされており、私の魔法はそういった精霊の力を借り受けて使っている。光属性で癒しの力を持つ精霊の力を私の魔力で変換して治癒魔法を発動させた。
「おお、これはすごい」
2国間戦争が終わって、傷病者を治療するヒーラーの数が足りず、私も駆り出されたが、魔女の大鍋という魔力が常人の30倍以上も保有できるチートスキルがあるため、役に立てた。治癒効果も他のヒーラーとは一線を画していて、欠損部が指の1本や2本くらいなら元に戻すことができる。ボーリングさんの右耳や左腕の骨折、サンプラーの怪我も完全に治すことができた。
「で、ダンジョンでなにがあったん?」
「うむ、実は……」
昨日から行われている鉱脈探し。大規模な捜索隊が組まれ、10パーティーに分かれて鉱脈を探していたそうだ。ボーリングさんも鉱脈探しが一流であるため、討伐隊とともにダンジョンをマッピングしながら、鉱脈を探していたそうだ。
そして昨日の夕方、その日の探索を終えてセーフティエリアである地下1階に引き返そうとしたところ、サンプラーが仲間たちの列から離れてフラフラと脇の通路へと入っていったそうだ。
急いで後を追ったボーリングさんたちはそこで大量の蜘蛛の魔物に襲われて、怪我を負いながらも命からがら地下1階までたどり着けたそうだ。
「で、なんで脇の道に入ったん?」
「こっ、声がしたんです」
透き通るような女性の声。
サンプラーはその声を聞いた途端、意識が朦朧としてきたと話す。
気がついたら、周囲を大量の蜘蛛の魔物に囲まれていて、ボーリングさんたちに助けられたそうだ。
「5人は目の前でやられたのを見た」
ボーリングさんとサンプラー以外に10人討伐隊員がいたが、5人は目の前で魔物に襲われ命を落としたのをみたそうだが、残り5人の生死は不明だという。
「他にも3組ほど負傷した人間がここに運び込まれています」
診療所で働くヒーラーの一人が教えてくれた。どうやらダンジョンの中に見過ごせない程、危険な魔物がたくさんいるようだ。
「しゃーない、救助に行くか」
クロがそう決めると、ワサビと使節団副団長のヒルヨさんに使いの者を出した。ワサビは西街にある狩猟協会で凄腕のハンターとして、働いていて、ヒルヨさんは普段は南街の畑で農作業をしている。
「なぜこの4人なのですか?」
ダンジョン地下1階で待機してまもなく、ワサビとヒルヨさんのふたりが合流した。
「少数精鋭じゃないと二次災害が起きるんよ、それに……」
今回の相手は蜘蛛の魔物。身軽な者たちと火力特化した私の組み合わせがもっとも効果的だとクロはいう。
診療所に運び込まれた人たちの共通点はダンジョン地下5階より下。
地下2階から4階までは特に問題なく進んで途中で他の鉱脈を探す隊とも会ったが、怪我している人たちがいないか探しながらダンジョンを出るようにクロが指示を出した。
「おるね、この先に」
ある場所でクロが立ち止まった。
周囲には襲われた人たちの装備品や道具が散乱しているが、人の姿はない。
人がひとり通るのがやっとの狭い通路がある。
クロが擬人化した小石たちの体にそれぞれロープを巻かせた。
「よし、1号から3号行きます!」
「命綱の意味ッ!」
「なかなか、ええツッコミやん」
私が指摘したのにニヤリと笑って「釣りやねん」と答えるクロ。ぐるぐるに巻かれた3本のロープがどんどん出ていくが、そのうちの2本は急に垂れ下がって動かなくなった。
残りの1本が急にロープが出ていくスピードが速くなる。クロに巻き上げる他の擬人化した小石たちが指示するとロープが悲鳴をあげつつも徐々にこちらに引っ張っていった。
「来るで!」
狭い通路から物音が近づいてきたかと思えば、擬人化した小石のひとりを2本の足で抱えた人間並みに大きな蜘蛛が狭い通路から飛び出してきた。
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