陰陽絵巻お伽草子

松本きねか

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いつか会える日まで

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翌朝、京の町では大騒ぎになっていた。

在御門家があった場所だけが、黒く燃えて無くなっていたからである。
誰も気付かなかったことだけに、気味悪がられて、最初は興味本位で近づいていた野次馬達も、日が昇るにつれて居なくなっていった。

焼け跡からは一体の黒焦げの遺体だけが発見された。

当主の忠保のものだと判明されると、余計に人々は祟られるのを恐れて近寄らなくなった。


その様子を空の上から眺めている存在があった。

妖狐のあやめ、そして、今は霊体となった忠保である。

『忠保様、これでよかったんでしょうか』

「よかったんだよ、今は大騒ぎのこの出来事も、人はいつか忘れてしまうものだからね」

しばらく忠保とあやめは、人が右往左往する下の世界を見下ろしていた。
すると、突然、あやめの耳がピンと立った。

『忠保様、そろそろあの方のお迎えがありますよ』

次の瞬間、まばゆいばかりの光が差し込んできた。
忠保が目を細めて見ると、そこには龍様。
一緒に女性の霊体を従えている。

「え? 葵?」

「お待ちしておりました」

霊体の忠保と葵は自然に抱き合った。


二人を見守っていたあやめに龍様が話しかける。

『あの二人は、今後生まれ変わっても、何度でも出会って結ばれていくよ、何があろうとね』

龍様の粋な計らいに、あやめはニヤリとする。

『私はどうなるのですか?』

『まあ、元が狐だったから、いろいろと生まれ変わることになるかな。 人としてのたくさんの人生を歩むことになるけれど、あやめならきっと乗り越えられるよ』

『そうですね、どんなことでも乗り越えていきますよ』

『1000年後に、雪明のことを忘れないように…』

あやめの額の印が輝く。

『じゃあね、龍様』

あやめは龍様に手を振ると、人の姿になって、あの世の橋を軽やかに渡って行った。


『赤山大明神様』

龍様の傍に、いつのまにかおばばが立っていた。

『おばば、この二人にこれを渡して』

龍様がおばばに手渡したのは、二葉葵の葉。
対で葉を二枚生やす二葉葵。

おばばは、それぞれ葉を1枚ずつ、忠保と葵に手渡した。

『生まれ変わったら、この二葉葵がお前たちを導いてくださるよ』

龍様の声が優しく響き渡る。

忠保と葵は葉を受け取ると、お互いに微笑み合った。
それから、二人は、手を取り合って仲良く橋を渡って行ったのでした。


【終わり】
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