1 / 10
第1話
しおりを挟む
時は平安、都が京都に遷都された後のこと。
これは、風変わりな一人の娘の恋物語。
春が間近に迫った冬も終わり。
都の賑やかな喧噪とは裏腹に、大通りを神妙な顔つきで歩く一人の女がいた。
年の頃は十六歳ほど。
立ち止まって、周りをキョロキョロと見回して、再びトボトボと歩き出す。
その女人は、名前を千尋という。
周りの者たちからは千の君と呼ばれていた。
実は、つい先日、下級役人であった父を亡くしたばかりなのである。
「千の君さま~」
遠くから同じくらいの年頃の女人が声をかけてきた。
隣には少し年上の男も一緒にいる。
「左之助~、山吹~」
泣き笑いを浮かべる千尋。
「よかったです、見つかって」
山吹と呼ばれた女人は微笑んだ。
「はぐれてしまった時は慌てましたよ」
左之助もホッとした顔で声をかけた。
山吹と左之助は包みを持っている。
「しかし、本当に手放してしまわれて良かったのですか」
山吹が指している物が包みの中身であることは、千尋には伝わっていた。
実はこれは、千尋の家に保管してあった書物なのである。
元々、千尋の祖父は陰陽師。
そして、曾祖父は大津海成という陰陽師で、陰陽助まで務めた下流貴族だったのだ。
しかし、祖父までは代々陰陽家であった家柄なのに、父は才能に恵まれなかったため、稼業を継がなかった。
そんな父でも、官位は低かったが、役人として立派に仕事に就いていた。
千尋は一人娘だった。
遅くに恵まれた子で、早くに母を亡くしたので、寂しい思いもした。
けれど、先祖から引き継いだ小さな邸で父と娘と少しの使用人達とで、楽しく生活していた。
しかし、突然父が死んでしまったのだ。
「生きていくためだもの、仕方ないわ。……二人とも、ありがとう。私のところに残ってくれて」
父の死後、元々少ない使用人もそのほとんどが出て行ってしまい、残った使用人も、左之助と乳姉妹である山吹だけだった。
「なにを仰るのですか。千の君様とは生まれた時から一緒なのです。そのような水臭いこと、仰らないでください」
「そうですよ! この左之助、千の君様を決してお一人になんてさせませんよ」
左之助はそう言って、千尋を励ますように快活に笑った。
これから先、生きていくための金策を考えていかなければならない。
幸い、ご先祖からの陰陽道の書物や道具などがたくさん残っていたので、それを買い取ってもらいに行く途中だった。
千尋は、邸から文献の一部を持ち出して、見てもらってから、全部を買い取ってもらうつもりでいた。
なんとか祖父のつてを頼りに、陰陽寮に勤めている人物に声かけをしていたら、賀茂忠行という人物が所望してくれた。
賀茂家と言えば、陰陽道の名家だ。
先祖を辿れば役小角とも言われている家柄。
今は上流貴族達からも引く手あまただと聞いている。
もしかしたら、高値で買い取ってくれるかもしれない。
先祖の残した文献を手放すのは忍びないけれど、背に腹は代えられない。
それに、貴族の間では妻問婚が一般的であった平安時代。
千尋は年頃ではあったが、もはや後ろ盾を亡くした女子などに殿方が通って来ることはないだろう。
『評判の美女というならいざ知らず、私はこの通り十人並みの容姿だし』
そして、女性でありながら陰陽道の書物を読み漁ってきた千尋は、山吹や左之助以外の使用人達からは少し変わり者と見られていた。
「千の君様、この御屋敷のようですよ」
流石は飛ぶ鳥を落とす勢いの陰陽師の邸だ。
立派な門構えだった。
「没落貴族のウチとは違って立派なお屋敷だこと…」
父に才能があったなら、そして、自分が男だったなら…と考えて、千尋はため息をついた。
山吹と左之助が賀茂家の使用人に取り次ぎを頼んでいる間、門の前で待っていると、ゆっくりと門が開き、賀茂家の牛車が一台出ていくところだった。
入れ違いに千尋達も中に入れてもらって、屋敷の中に通された。
山吹と左之助は、身分を考えて、荷物だけ千尋に託すと、外で待機してくれていた。
通された部屋に1人残された千尋は、ちょっと心細くなってしまったが、すぐに、さらさらと衣擦れの音がしたので、頭を下げて、その人物を待った。
目の前に立てられた几帳の向こうで、座るような音が聞こえる。
『私だけでなく、山吹と左之助の生活もかかっているのだから…』
そう考えると、千尋はドキドキと心臓の鼓動が早まるのを感じた。
頭を下げたまましばらく待った。
「どうぞ楽にしてください」
几帳の向こうから柔らかな声をかけられた。
おや? と千尋は思った。
賀茂忠行といえば、結構年配の殿方だ。
なのに、この声はまだ若いようだった。
「父は突然仕事が入りまして、息子の私が対応させていただきます」
千尋は顔を上げた。
「賀茂保憲と申します、私も陰陽師です」
千尋は慌てて挨拶を返した。
「こ、この度はありがとうございます、私は大津海成が曾孫にございます」
この時代、女人が結婚する相手以外に名前を名乗ることはあまりない。
保憲が傍の女房に声をかけると、女房は千尋達が持って来た荷物を一つ手に取って、保憲に手渡した。
几帳の向こうで書物を広げる音がした。
千尋は几帳を見つめながら、またもやドキドキ。
『気に入っていただけるかしら』
「これは素晴らしい記述ですね、どの文献も」
その言葉を聞いて、千尋の顔に赤みが差してきた。
「自邸には、陰陽頭を務めた大津首が残した資料もございます。曾祖父よりももっと前の先祖です!」
周りの女房がクスクス笑い出した。
千尋はつい、張りのある声で言ってしまって、しまったと、恥ずかしくなった。
この時代は奥ゆかしい女性がいいと言われている。
大声を出して話す女性などは、はしたないとたしなめられてしまうだろう。
しかし、保憲は気にしていない様子で、砕けた感じで千尋に言った。
「全て買い取らせていただくよ」
「あ、ありがとうございます」
千尋は深々と頭を下げた。
「後日、改めてあなたのお邸の方へ伺わせていただきます。今日は私の牛車で送らせましょう」
破格の対応に千尋は驚いてしまった。
「い、いえ、使いのものと一緒に来ておりますので、大丈夫です」
保憲はクスリと微笑むと、
「外に居た使いの二人には先に帰ってもらいました」
さらに千尋は驚いて、何も言葉が出てこない。
その時、几帳の垂れ布がさらりと揺れて、保憲が千尋の目の前に姿を現した。
驚いた千尋は慌てて顔を袖で隠す。
「思った通り!」
保憲は右手の人差し指と中指を立てて刀印の形をとると、口元でフッと小さく息を吐いた。
気が付くと傍にいた女房達の姿が消えていた。
千尋はもしかしてと思う。
そして、思ったことが口から出てしまった。
「…式神?…」
「その通りです、私の式神達ですよ」
保憲は年は千尋よりも少し年上に見える。
スラリとした見た目で、切れ長の目元、顔にはいたずらっぽい微笑みが漂っていた。
平安時代の美男とは言い難いけれど、見つめてくる瞳には、知的探求心がたっぷりと輝いていた。
賀茂邸から牛車が一台。
夕暮れ時の空には、翼を広げたカラスが鳴いている。
皆が家路に急ぐ時間だが、牛車は大路をゆっくりと走っているように感じた。
窓からちらりと見ると、薄暗がりの中でも何故か牛車も牛も童子も光輝いているように見える。
牛車には、千尋と保憲が乗っていた。
千尋は扇を広げて無言のまま、かしこまってちんまりと座っている。
保憲のほうは、手に持っている蝙蝠扇を弄びながら千尋を興味深そうに見つめていた。
口を開いたのは保憲のほう。
「今日持って来ていただいた書物は、私の興味をそそるような物ばかりでした」
千尋はドキっとした。
「たくさんある文献の中から、あの選択をされたあなたは、どこまでご存じなのかな…陰陽道を」
千尋は『ひゃー』と目を瞑った。
本来、陰陽道とは、国家機密の秘術もある。
千尋が読んできた文献は、奈良時代からの陰陽道の極意まで様々だったから、普通の人が知らない情報まで知識として持っているのだ。
全てが国家機密でないため、今回千尋が持って来た文献の中に明らかに秘術とされるようなものも含まれていた。
しかも、今目の前にいる人は、中務省陰陽寮の陰陽師という国家のお役人だった。
夕暮れ時の牛車の中は二人きり。
保憲の香に酔ったのか、千尋は頭の中がクラクラしてきた。
『わ…わたし口封じに消されちゃうかも…ああ、儚い人生だったな…』
そんな事を考えながら悲観的になっているとき、牛車がピタッと止まった。
『一体どこに連れてこられたんだろう』
そう思ったのだが、
「あなたのお邸ですよ」
意外にも保憲は微笑みを浮かべたまま、千尋に声をかけた。
これは、風変わりな一人の娘の恋物語。
春が間近に迫った冬も終わり。
都の賑やかな喧噪とは裏腹に、大通りを神妙な顔つきで歩く一人の女がいた。
年の頃は十六歳ほど。
立ち止まって、周りをキョロキョロと見回して、再びトボトボと歩き出す。
その女人は、名前を千尋という。
周りの者たちからは千の君と呼ばれていた。
実は、つい先日、下級役人であった父を亡くしたばかりなのである。
「千の君さま~」
遠くから同じくらいの年頃の女人が声をかけてきた。
隣には少し年上の男も一緒にいる。
「左之助~、山吹~」
泣き笑いを浮かべる千尋。
「よかったです、見つかって」
山吹と呼ばれた女人は微笑んだ。
「はぐれてしまった時は慌てましたよ」
左之助もホッとした顔で声をかけた。
山吹と左之助は包みを持っている。
「しかし、本当に手放してしまわれて良かったのですか」
山吹が指している物が包みの中身であることは、千尋には伝わっていた。
実はこれは、千尋の家に保管してあった書物なのである。
元々、千尋の祖父は陰陽師。
そして、曾祖父は大津海成という陰陽師で、陰陽助まで務めた下流貴族だったのだ。
しかし、祖父までは代々陰陽家であった家柄なのに、父は才能に恵まれなかったため、稼業を継がなかった。
そんな父でも、官位は低かったが、役人として立派に仕事に就いていた。
千尋は一人娘だった。
遅くに恵まれた子で、早くに母を亡くしたので、寂しい思いもした。
けれど、先祖から引き継いだ小さな邸で父と娘と少しの使用人達とで、楽しく生活していた。
しかし、突然父が死んでしまったのだ。
「生きていくためだもの、仕方ないわ。……二人とも、ありがとう。私のところに残ってくれて」
父の死後、元々少ない使用人もそのほとんどが出て行ってしまい、残った使用人も、左之助と乳姉妹である山吹だけだった。
「なにを仰るのですか。千の君様とは生まれた時から一緒なのです。そのような水臭いこと、仰らないでください」
「そうですよ! この左之助、千の君様を決してお一人になんてさせませんよ」
左之助はそう言って、千尋を励ますように快活に笑った。
これから先、生きていくための金策を考えていかなければならない。
幸い、ご先祖からの陰陽道の書物や道具などがたくさん残っていたので、それを買い取ってもらいに行く途中だった。
千尋は、邸から文献の一部を持ち出して、見てもらってから、全部を買い取ってもらうつもりでいた。
なんとか祖父のつてを頼りに、陰陽寮に勤めている人物に声かけをしていたら、賀茂忠行という人物が所望してくれた。
賀茂家と言えば、陰陽道の名家だ。
先祖を辿れば役小角とも言われている家柄。
今は上流貴族達からも引く手あまただと聞いている。
もしかしたら、高値で買い取ってくれるかもしれない。
先祖の残した文献を手放すのは忍びないけれど、背に腹は代えられない。
それに、貴族の間では妻問婚が一般的であった平安時代。
千尋は年頃ではあったが、もはや後ろ盾を亡くした女子などに殿方が通って来ることはないだろう。
『評判の美女というならいざ知らず、私はこの通り十人並みの容姿だし』
そして、女性でありながら陰陽道の書物を読み漁ってきた千尋は、山吹や左之助以外の使用人達からは少し変わり者と見られていた。
「千の君様、この御屋敷のようですよ」
流石は飛ぶ鳥を落とす勢いの陰陽師の邸だ。
立派な門構えだった。
「没落貴族のウチとは違って立派なお屋敷だこと…」
父に才能があったなら、そして、自分が男だったなら…と考えて、千尋はため息をついた。
山吹と左之助が賀茂家の使用人に取り次ぎを頼んでいる間、門の前で待っていると、ゆっくりと門が開き、賀茂家の牛車が一台出ていくところだった。
入れ違いに千尋達も中に入れてもらって、屋敷の中に通された。
山吹と左之助は、身分を考えて、荷物だけ千尋に託すと、外で待機してくれていた。
通された部屋に1人残された千尋は、ちょっと心細くなってしまったが、すぐに、さらさらと衣擦れの音がしたので、頭を下げて、その人物を待った。
目の前に立てられた几帳の向こうで、座るような音が聞こえる。
『私だけでなく、山吹と左之助の生活もかかっているのだから…』
そう考えると、千尋はドキドキと心臓の鼓動が早まるのを感じた。
頭を下げたまましばらく待った。
「どうぞ楽にしてください」
几帳の向こうから柔らかな声をかけられた。
おや? と千尋は思った。
賀茂忠行といえば、結構年配の殿方だ。
なのに、この声はまだ若いようだった。
「父は突然仕事が入りまして、息子の私が対応させていただきます」
千尋は顔を上げた。
「賀茂保憲と申します、私も陰陽師です」
千尋は慌てて挨拶を返した。
「こ、この度はありがとうございます、私は大津海成が曾孫にございます」
この時代、女人が結婚する相手以外に名前を名乗ることはあまりない。
保憲が傍の女房に声をかけると、女房は千尋達が持って来た荷物を一つ手に取って、保憲に手渡した。
几帳の向こうで書物を広げる音がした。
千尋は几帳を見つめながら、またもやドキドキ。
『気に入っていただけるかしら』
「これは素晴らしい記述ですね、どの文献も」
その言葉を聞いて、千尋の顔に赤みが差してきた。
「自邸には、陰陽頭を務めた大津首が残した資料もございます。曾祖父よりももっと前の先祖です!」
周りの女房がクスクス笑い出した。
千尋はつい、張りのある声で言ってしまって、しまったと、恥ずかしくなった。
この時代は奥ゆかしい女性がいいと言われている。
大声を出して話す女性などは、はしたないとたしなめられてしまうだろう。
しかし、保憲は気にしていない様子で、砕けた感じで千尋に言った。
「全て買い取らせていただくよ」
「あ、ありがとうございます」
千尋は深々と頭を下げた。
「後日、改めてあなたのお邸の方へ伺わせていただきます。今日は私の牛車で送らせましょう」
破格の対応に千尋は驚いてしまった。
「い、いえ、使いのものと一緒に来ておりますので、大丈夫です」
保憲はクスリと微笑むと、
「外に居た使いの二人には先に帰ってもらいました」
さらに千尋は驚いて、何も言葉が出てこない。
その時、几帳の垂れ布がさらりと揺れて、保憲が千尋の目の前に姿を現した。
驚いた千尋は慌てて顔を袖で隠す。
「思った通り!」
保憲は右手の人差し指と中指を立てて刀印の形をとると、口元でフッと小さく息を吐いた。
気が付くと傍にいた女房達の姿が消えていた。
千尋はもしかしてと思う。
そして、思ったことが口から出てしまった。
「…式神?…」
「その通りです、私の式神達ですよ」
保憲は年は千尋よりも少し年上に見える。
スラリとした見た目で、切れ長の目元、顔にはいたずらっぽい微笑みが漂っていた。
平安時代の美男とは言い難いけれど、見つめてくる瞳には、知的探求心がたっぷりと輝いていた。
賀茂邸から牛車が一台。
夕暮れ時の空には、翼を広げたカラスが鳴いている。
皆が家路に急ぐ時間だが、牛車は大路をゆっくりと走っているように感じた。
窓からちらりと見ると、薄暗がりの中でも何故か牛車も牛も童子も光輝いているように見える。
牛車には、千尋と保憲が乗っていた。
千尋は扇を広げて無言のまま、かしこまってちんまりと座っている。
保憲のほうは、手に持っている蝙蝠扇を弄びながら千尋を興味深そうに見つめていた。
口を開いたのは保憲のほう。
「今日持って来ていただいた書物は、私の興味をそそるような物ばかりでした」
千尋はドキっとした。
「たくさんある文献の中から、あの選択をされたあなたは、どこまでご存じなのかな…陰陽道を」
千尋は『ひゃー』と目を瞑った。
本来、陰陽道とは、国家機密の秘術もある。
千尋が読んできた文献は、奈良時代からの陰陽道の極意まで様々だったから、普通の人が知らない情報まで知識として持っているのだ。
全てが国家機密でないため、今回千尋が持って来た文献の中に明らかに秘術とされるようなものも含まれていた。
しかも、今目の前にいる人は、中務省陰陽寮の陰陽師という国家のお役人だった。
夕暮れ時の牛車の中は二人きり。
保憲の香に酔ったのか、千尋は頭の中がクラクラしてきた。
『わ…わたし口封じに消されちゃうかも…ああ、儚い人生だったな…』
そんな事を考えながら悲観的になっているとき、牛車がピタッと止まった。
『一体どこに連れてこられたんだろう』
そう思ったのだが、
「あなたのお邸ですよ」
意外にも保憲は微笑みを浮かべたまま、千尋に声をかけた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
蒼雷の艦隊
和蘭芹わこ
歴史・時代
第五回歴史時代小説大賞に応募しています。
よろしければ、お気に入り登録と投票是非宜しくお願いします。
一九四二年、三月二日。
スラバヤ沖海戦中に、英国の軍兵四二二人が、駆逐艦『雷』によって救助され、その命を助けられた。
雷艦長、その名は「工藤俊作」。
身長一八八センチの大柄な身体……ではなく、その姿は一三○センチにも満たない身体であった。
これ程までに小さな身体で、一体どういう風に指示を送ったのか。
これは、史実とは少し違う、そんな小さな艦長の物語。
徳川家基、不本意!
克全
歴史・時代
幻の11代将軍、徳川家基が生き残っていたらどのような世の中になっていたのか?田沼意次に取立てられて、徳川家基の住む西之丸御納戸役となっていた長谷川平蔵が、田沼意次ではなく徳川家基に取り入って出世しようとしていたらどうなっていたのか?徳川家治が、次々と死んでいく自分の子供の死因に疑念を持っていたらどうなっていたのか、そのような事を考えて創作してみました。
紀伊国屋文左衛門の白い玉
家紋武範
歴史・時代
紀州に文吉という少年がいた。彼は拾われっ子で、農家の下男だった。死ぬまで農家のどれいとなる運命の子だ。
そんな文吉は近所にすむ、同じく下女の“みつ”に恋をした。二人は将来を誓い合い、金を得て農地を買って共に暮らすことを約束した。それを糧に生きたのだ。
しかし“みつ”は人買いに買われていった。将来は遊女になるのであろう。文吉はそれを悔しがって見つめることしか出来ない。
金さえあれば──。それが文吉を突き動かす。
下男を辞め、醤油問屋に奉公に出て使いに出される。その帰り、稲荷神社のお社で休憩していると不思議な白い玉に“出会った”。
超貧乏奴隷が日本一の大金持ちになる成り上がりストーリー!!
炎の稲穂
安東門々
歴史・時代
「おらたちは耐えた! でも限界だ!」
幾多も重なる税金に、不作続きの世の中、私腹を肥やしているのはごく一部の人たちだけだった。
領主は鷹狩りや歌に忙しく、辺境の地であるこの『谷の村』のことなど、一切知る由もない。
ただ、搾取され皆がその日を生き抜くのが精いっぱいだった。
そんなある日、村一番の働き手である 弥彦は 村はずれにある洞窟である箱を見つけた。
そこには、言い伝えでその昔に平家の落ち武者が逃げて隠れていたとされた洞窟で、刃の無い刀がいくつか土に埋まっている。
弥彦は箱を調べ、その場で開けてみると、中にはいくつもの本があった。 彼は字が読めないが村に来ていた旅の僧侶に読み書きを習い、その本を読み解いていく。
そして、時はながれ生活は更に苦しくなった。
弥彦の母は病におかされていた。
看病のかいもなく、他界した母の現場に現れた役人は告げた。
「臭いのぉ…。 悪臭は好かんので、ちと税を払え、皆の迷惑じゃ」
それを聞いた弥彦含め、村人たちの怒りは頂点に達し、どうせ今生きていても死ぬだけだと、自分たちの人生を賭け蜂起を決意した。
そして、村長が指名した村人たちを束ね導く存在に弥彦を。
そんな彼らの想いが駆け巡る。 歴史の中で闇に消えた物語。
狐侍こんこんちき
月芝
歴史・時代
母は出戻り幽霊。居候はしゃべる猫。
父は何の因果か輪廻の輪からはずされて、地獄の官吏についている。
そんな九坂家は由緒正しいおんぼろ道場を営んでいるが、
門弟なんぞはひとりもいやしない。
寄りつくのはもっぱら妙ちきりんな連中ばかり。
かような家を継いでしまった藤士郎は、狐面にていつも背を丸めている青瓢箪。
のんびりした性格にて、覇気に乏しく、およそ武士らしくない。
おかげでせっかくの剣の腕も宝の持ち腐れ。
もっぱら魚をさばいたり、薪を割るのに役立っているが、そんな暮らしも案外悪くない。
けれどもある日のこと。
自宅兼道場の前にて倒れている子どもを拾ったことから、奇妙な縁が動きだす。
脇差しの付喪神を助けたことから、世にも奇妙な仇討ち騒動に関わることになった藤士郎。
こんこんちきちき、こんちきちん。
家内安全、無病息災、心願成就にて妖縁奇縁が来来。
巻き起こる騒動の数々。
これを解決するために奔走する狐侍の奇々怪々なお江戸物語。
KAKIDAMISHI -The Ultimate Karate Battle-
ジェド
歴史・時代
1894年、東洋の島国・琉球王国が沖縄県となった明治時代――
後の世で「空手」や「琉球古武術」と呼ばれることとなる武術は、琉球語で「ティー(手)」と呼ばれていた。
ティーの修業者たちにとって腕試しの場となるのは、自由組手形式の野試合「カキダミシ(掛け試し)」。
誇り高き武人たちは、時代に翻弄されながらも戦い続ける。
拳と思いが交錯する空手アクション歴史小説、ここに誕生!
・検索キーワード
空手道、琉球空手、沖縄空手、琉球古武道、剛柔流、上地流、小林流、少林寺流、少林流、松林流、和道流、松濤館流、糸東流、東恩流、劉衛流、極真会館、大山道場、芦原会館、正道会館、白蓮会館、国際FSA拳真館、大道塾空道
桜華の檻
咲嶋緋月
歴史・時代
【楼主×死神】
吉原にある藤乃屋。楼主の最澄(もずみ)は、吉原では珍しい京言葉を使う。ある日、競争店である菊乃屋の花魁が殺された。裸体の花魁の首を鋭利な刃物で切り裂いた犯人。疑われたのは、最後の客では無く、最澄だった————。
「人と違うとあかんのか?」
彼の前に現れたのは、自分を死神だと名乗る少女だった。
自分の生い立ちに不満を抱えた最澄。追い討ちをかける様に犯人だと罵られる。自分の身の潔白を証明出来るのは、少女だけ————。親から継いだ藤乃屋を守る為、楼主である最澄は、真犯人を追う事を決めた。
生きる意味を模索する楼主と死神の少女が送る和風ミステリー。人の欲が入り乱れる吉原で、真犯人は見つかるのか?!!
北武の寅 <幕末さいたま志士伝>
海野 次朗
歴史・時代
タイトルは『北武の寅』(ほくぶのとら)と読みます。
幕末の埼玉人にスポットをあてた作品です。主人公は熊谷北郊出身の吉田寅之助という青年です。他に渋沢栄一(尾高兄弟含む)、根岸友山、清水卯三郎、斎藤健次郎などが登場します。さらにベルギー系フランス人のモンブランやフランスお政、五代才助(友厚)、松木弘安(寺島宗則)、伊藤俊輔(博文)なども登場します。
根岸友山が出る関係から新選組や清河八郎の話もあります。また、渋沢栄一やモンブランが出る関係からパリ万博などパリを舞台とした場面が何回かあります。
前作の『伊藤とサトウ』と違って今作は史実重視というよりも、より「小説」に近い形になっているはずです。ただしキャラクターや時代背景はかなり重複しております。『伊藤とサトウ』でやれなかった事件を深掘りしているつもりですので、その点はご了承ください。
(※この作品は「NOVEL DAYS」「小説家になろう」「カクヨム」にも転載してます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる