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決断

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「ライさんと何があったのかは知らねーが、そんなに嫌なら一緒に逃げちまうか?」

そう言われ、一瞬理解が追い付かなかった。

しかし、一度理解してしまうと反射的に反論していた。

「・・・そんなことっ――」

「もう騎士団の中ではないんだ。追われる身ではあるが、自分の好きなように生きてもバチは当たらないと思うぜ?」

「・・・」

そんなこと、していいはずがない。

そう言おうとしていたが、チガヤの言葉で迷いが生じた。

本当にしてはいけないのだろうか?

相手はあのライだ。

私の憎い相手。

あいつのしたことは許せない。

・・・でも、

「チガヤさん、あの時助けに来てくれてありがとうございました。あなたが来てくださらなかったら、私たちは牢に連れ戻されていたかもしれません」

「お?じゃあ、一緒に行くか?」

私はゆっくりチガヤの胸から顔を離しながら、はっきりと言う。

「いえ、ライを置いてはいけません。確かにあいつのことは憎い。ですが、私のために追われる身になってまで来てくれた。そんなあいつを一人置いて行くなんてやっぱりできません」

「・・・そうか」

言い切ると、チガヤはそれだけ言ってすんなり腕を解いてくれた。

やっと見えたチガヤの顔は、思っていたよりもずっと優しい顔をしていた。

まさか・・・

「もしかして、試しました?」

「7割は本気だったけどな」

つまり、3割は試す気だったわけだ。

この腹黒男。

「ちなみに、私は合格ですか?」

「ああ、もちろん。ミズキの気持ちは分かったよ」

「はぁ。あと、言っておきますけどチガヤさんもですからね」

「ん?」

「あなたもどういうわけかここまで来てくれたんですから、から手を離すことはありませんから。あ、離れたくなったときは言ってください。それじゃ、私はあっちでこの服に着替えてきますので付いて来ないでくださいね」

「・・・」
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