大嫌いな私、守りたい彼

選択

走って走ってやっと湖の近くまでやって来た。

でも、これからどうしよう。

一気に冷静さが戻ってきて、どうしようも無くなってその場にあった木に背を預けてへたりこんでしまう。

ロイがあのライだったなんて……

あの瞬間、忘れていたはずのある記憶が予想通りいらない感情とともに蘇ってきた。

ライは私の唯一の幼なじみ。

そして、憎い相手。

嫌すぎて顔まで本当に記憶から消していたほど大嫌いな男。

「最悪・・・」

「どんまい！」

突然の声に驚いて後ろを振り返るとそこには普段通りの顔をしたチガヤが木の陰から顔を覗かせていた。

「チガヤ副団長・・・」

「もう騎士団じゃないんだ。チガヤでいいぜ」

そう言いつつ、チガヤはミズキの正面に移動し、無言で手を差し出す。

ミズキは立ち上らせてくれるのかとその手を取った。

すると、あっという間に強い力で腕を引かれ、気が付いたらチガヤの腕の中にいた。

「へ？ち、チガヤ副団長、何を・・・」

「チガヤだ」

ミズキを抱きしめる腕に力を込めながら、チガヤはいつもよりも低いまじめな声で言った。

「ライさんと何があったのかは知らねーが、そんなに嫌なら一緒に逃げちまうか？」