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38.ねらわれた?僕(笑)
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遅くなってすみません<(_ _)>
****************
結局ギルメンの勇者1人強制ログアウトしちゃったもんで、大罪都市(裏)に行くのは後日という事になった。
そして皆に別れを告げてオレはログアウトする。
「ふう………」
僕はHMvrDを外して上を見上げて息を吐く。
まーた面倒な事になったもんだ。
まぁやると決まったからには、責任もって受け持つつもりではある。
「さてっと、明日の(授業)の用意しとかなきゃな」
僕は学校に教材を取り置きをせず、その日その日の時間割に合わせて準備する。(まぁ教科書なんかは端末内あるから必要ない。ノートとかそれぐらい)
「明日は体育かぁ………。ダンスじゃなきゃなあ~~………」
走るとか球技とかならどうにかこうにか熟せるんだが、ダンスだけはなんでか僕には厳しいものがあったのだ。いや、動きは分かるんだよ?うん、分かるんだ………。
ただ、どうにも拍子がとれなかったりしてしまう。
だから皆との動きと、やや?(いやかなり)遅れたり速かったりしてしまう。生徒全員で一斉にやると目立つこと目立つこと………はぁ。
………いや、大丈夫だろう。
明日の担当教員は脳筋の田中だ。あれ、いきなり腕相撲とか対戦させるし、面倒臭くなると校庭走らせるしな。
そんな予定された明日の事を思い描きながら、ベッドへと横になったのだった。
…………まじかー。
「はい。本日田中先生が風邪でお休みしましたので、今日は私が授業を担当します」
おぅふ………。
浅葉先生―――通称アサセンは、ダンス担当の体育教員だ。
国立体育大卒の新任教員で、校内でも何かと騒がれる美人さんだとか。(某クラスメート談)
ただ、この人やたらと僕に厳しい。
腕をもっとビシッと伸ばせっ!だめ、タイミングが遅い!
もっと速く!速過ぎだ!もっと周りを見ろ!とか、散々だ。
他にも遅れてたりタイミングがずれてる奴はいるのにも拘らず、僕ばかりを頭ごしに注意して来る。
しかも、僕を見るその目はとっても厳しい。美人とか周りは言うけど、僕にしたらおっかないのひと言しかない。
「まともにダンスも踊れない。君は私の授業を馬鹿にしてるのか?」
「……………」
とあからさまに見下すような言葉を投げつけて来る。
いや、そういう生徒を導くのが教師の仕事なんじゃね?
とか思っても言わない。こういう輩に対しては、無言で付き合うのに尽きるのだ。
「ちょっ―――」
いつもの運動部女子組がそれに異を唱え声を上げようとするのを、僕は小さく手を振り制止する。チャイムが鳴ったので、どうせ授業は終わりだ
こちらを軽く睨んでから、そのままスタスタと体育館を去って行くアサセン。(どうやら興奮したのか頬が赤く染まっていた。いや、或いはドSだからかも、うんきっとそうだ)
「ちょっと~~~~っ!何で止めんのよっ!?アレちょっと酷いじゃんかっ!!」
「なんなん?あれっ、あれえっ!?」
僕が止めたとは言え、こっちに突っかかって来るのはなんとも理不尽ではある。………仕方ないか、はぁ。
「いーんだよ。あんなのにいちいち付き合ってられないから」
「………はぁ、大人なんだね、君ってばさ!」
そう言って彼女達がパシンと軽く叩いてくる。いや、女子が尻叩くなよ。
まぁ、これを乗り切ったんだから、後は楽ちんですな。
「……………」
などと思っていた時期が僕にもありました。
「「ちっ………」」
おーい、女子2人組。そんなあからさまに顔を顰めなさんな。
きっと、今日はこういう日なんだよ。
4限目の体育が終わりまったりと昼食を摂って休んだ後に5限目の数学の時間になると、予想外?の人物がやって来た。
「本日、数学のオッフェン先生がお休みした為、小テストを行います」
「ええ~~?」というクラスメートの声を耳にしながら、僕も少しばかり落胆する。つーかなんで体育教師が数学の授業に出張って来るんっ?
今日は厄日か?
つい胸の内でそんな事を毒づきつつも表情には出す事なく、端末に表示されるテストを待ち構える。
この手のテストに関しては紙に記載するのではなく、端末を使ったものになっている。
もちろん解答に関しては手書きであることに変わりはない。だがこの手の煩雑で面倒なものに限っては、処理がし易い方式になってるって訳だ。
「………ん?んんっ!?」
表示された問題群を見て僕は首を捻る。
一応僕は解けはするけど、これは授業範囲外であるのが丸分かりのものだった。
だから思わず僕が周囲を見回してみても、特に何の疑問もないようで問題を解き始めていた。
ん?あれ?こいつ等そんなに優秀だったっけ?ってか、あのいつもの宿題移させて2人組も端末に集中してるのが目に入る。
たとしたら―――
別に僕自身に不備があるのならば甘んじでそれを受けるのも吝かでないのだが、これはちょいとその域を超えている。
という訳で、僕は挙手をして|浅葉教諭へと質問する。
「先生、すいませんが問題が授業範囲外なんですので解く事が出来ません」
「………はぁ?あなたの理解力がないのを、そんな言い訳にするのですか?あなた私を馬鹿にしてるんですかっ!?」
僕の言葉にアサセンがこっちを見下す様にねめつけて来た。
なに?僕いつの間にこの人に敵認定されたん?
その言動にクラス内の人間がざわつく。本来だったらあら、そう?なんて事を言ってこっちの問題を調べるのが通常なんだが………となれば―――
僕は端末隅にある緊急報知のマークをタップする。
ピリリとSEが鳴ると共に、警告の文言がホロウィンドウに表示される。
【生徒による緊急報知が申告されました。状況を確認しますので確認しますのでしばらくお待ち下さい】
申告者と被申告者に対して表示されるこの告知は、校内において問題があった場合における救済措置のようなものだ。
とかく学校ってのは、いろんな問題が噴き上がって来る。
それはいじめとかヒエラルキーとか、まぁそんな人間の内面を攻撃するようなものに関する様々なものだ。
実際の問題だと、生徒同士の揉め事なんかで適用されるものであるが、生徒教員の場合もたまにあるって訳だ。今回みたいに。
まぁこうもあからさまにやられるとは、僕自身思わなかったけども。
「あ、あなたっ!一体何をやってるのっ!!」
僕の行動に慌てふためきながら、声を上げるアサセン。
結局この後やって来た学年主任と専任判定員により小テストはなかった事になる。
「結局、何だったの?あの人」
放課後事情聴取の後ようやく戻ってきたところ、いつもの女子2人組に問い詰められて僕は渋々話をする。
彼女がやった事と言えば体育の授業時間に罵倒した事と、小テストの問題を授業範囲外のものにすり替えた事だけだった。(だけどと言うのもどうかではあるけど)
ただ何故そんな行為に及んだとかは、本人は口を噤むばかりで分からず終いだった。
僕としてはこうもあからさまな行為に及ぶってのは、どうにも理解しがたいものがあった。
一応社会人なんだから、それなりの節度を持っては欲しいとは思うのだ。
結果としては、無期限の謹慎と反省文の提出でとりあえず済ます事になったようだ。(ぷぷ、大人なのに反省文とかどことリストラ要員なのやら)
僕自身としては大した被害もないので、そこまで大事にするつもりもなかったんだけど、限界点というのはあるものなのだ。
専任判定員に連れられて行く彼女はこちらを睨み付けていたのが、なんとも印象的であった。
そして、その原因というか理由が判明したのは、その日のバイト先での事であった。
「おー御曹司。悪かったなぁ~」
僕が新人達に基礎を叩きこんでると、筋骨隆々の肌黒の壮年男性がやって来る。
「っ!総教官殿に礼っ!!」
『『『『『『おはようございますっ!!』』』』』』
この業界(に限らないが)なんでか夕方でも挨拶は“おはようございます”なのである。
「どうしたんですか?ガンジーさん」
僕は一旦新人達に休憩を指示してから、総教官と呼ばれた壮年男性へと訊ねる。
元はインド陸軍の特殊工作部隊の人間だったのを、爺さんがスカウトして招聘した人物だ。
アッシュブロンドの髪を短く刈り上げ、もみ上げから伸びる顎髭を奇麗に調えているイケオジってヤツだ。(ん?これって死語か?)
普段はからかい気味の僕へと対する物言いは、なんだか今日はちょっとばかり精彩を欠いてる(それでもボンはやめて欲しい………なぁ)
「学校で揉め事あったろ?あれ、原因こっちのせいなんだわ」
「は?」
つーか情報まわんの速くね?今日の今日だっての。
………まぁうちの事だからありえなくないもが、んー僕の周囲に誰かいるのかな?
少しばかり眉を顰め考えていると、ガンジーさんは右手を横に振り振り苦笑しながら言って来た。
もしかして、うちで仕掛けたのかな?
「偶々だ。タマタマ(笑)。ほれ、うちに面接に來る奴って落としても、事後の身上調査をするんだわ。下手にうち出身とか騙られても困るんでな」
「へー………んん?」
―――って事は、あの教員のうちん会社の面接受けてたって事か。てなると………。
「えーと、もしかして?」
「おう、思いっきりボンは見られてんな」
「あーん~………なるなる」
入社試験と面接の後に、必ず新人研修の様子を見る事になっている。
そういう時は、まず僕が指導役を務める訳だ。
新人と言っても、警察か国防隊を退職した人間や、格闘経験者などであるから年齢もまちまちである。
そしてそれを指導するのが、いくら身体がでかくて顔がアレでも年若い少年(笑)と言ってもいい人間。
であるならばそれを見た人間の反応は、大体2つに別れるものだ。
“察する”か“察しない”かのどちらかだ。
前者であれば視線は僕に集まるし、後者に至っては見下す様な視線を僕に向けてから新人達へと向けていくのだ。
稀にあのガキがなんであの方達を教えてるんだとか、突っかかって来る輩もいたりする。
それが最初の試金石だと気付かずに、だ。
なので、後者の人間は資格なしとみなされ“今後の活躍をお祈り申し上げます”ってなる訳だ。
そんな“祈られた”人間が偶々勤める学校の中で僕を見つけてしまった。
となればそんな僕に対して何かを思わない事は無いだろう。
だからと言って、僕に八つ当たりをされてもって話なんだけどなぁ。
正直僕としては穏便にって気持ちがあるんだけど、まぁ無理だよなぁ。
目の前のガンジーさんは笑ってないし。
だからと言って僕がそれを止めるなんて事はできないって話だ。………やれやれだ。
「………穏便にお願いします」
「そ・れ・は、ムリ♪」
ですか~。
僕が若いからとそんな感情を抱くのも仕方ないとも思うんだけど。
そんな事をガンジーさんへと告げると、呆れた様に溜め息を吐きながら言って来る。
「いやいや、彼女君より年上だから」
「………まぁ、そこら辺は経験値の差って事で?」
一応であるが、僕だって伊達にこの会社にいる訳じゃない。という話だ。
小っさい頃からじーちゃんに鍛えに鍛えられ、会社の古参のおっさん等に教えこまれて来た身としては、当然と言えば当然の事って訳なのだ。
すなわち、下手な経験者だとしても僕に敵わなかったりするのだ。
だからそれを若年だからとその本質を理解できない人間は、会社に採用されたりはしないだ。(という事らしい)
さすがに自身の担当教科で生徒を罵倒するのは仕方ないとして(ないのか?)も、他教科で小テストの中身を変えるのは少しばかり拙いんだろうなとは僕にも理解できる。
うん、彼女の未来に幸あらんことを………。
僕にできるのはそんな事ぐらいだ。
現実の事はともかくここまでって事にして、とりあえずはゲームの事に己の意識を注力しよう。(現実逃避ともいう)
バイトを終えて家に帰ってひと通りの事を済ませて、HMVRDを被りライドシフトしてVRルームからログインしギルドホームのマイルームへと降り立つ。
そしてマイルームを出て広間へと出ると、大罪都市(裏)へと向かう予定のギルメンとフィアーナはすでに準備万端って待ち構えていたのだった。
結果的に言えば途中モンスは出て来たものの、(全部フィアーナが片付けてしまって)何の問題もなく大罪都市(裏)へと入る事が出来てしまったのだった。
正直オレ的にはなんで何もないん?はぁ!?ありえねぇんですけど?と口には出さなかったが思いはしたのであった。
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結局ギルメンの勇者1人強制ログアウトしちゃったもんで、大罪都市(裏)に行くのは後日という事になった。
そして皆に別れを告げてオレはログアウトする。
「ふう………」
僕はHMvrDを外して上を見上げて息を吐く。
まーた面倒な事になったもんだ。
まぁやると決まったからには、責任もって受け持つつもりではある。
「さてっと、明日の(授業)の用意しとかなきゃな」
僕は学校に教材を取り置きをせず、その日その日の時間割に合わせて準備する。(まぁ教科書なんかは端末内あるから必要ない。ノートとかそれぐらい)
「明日は体育かぁ………。ダンスじゃなきゃなあ~~………」
走るとか球技とかならどうにかこうにか熟せるんだが、ダンスだけはなんでか僕には厳しいものがあったのだ。いや、動きは分かるんだよ?うん、分かるんだ………。
ただ、どうにも拍子がとれなかったりしてしまう。
だから皆との動きと、やや?(いやかなり)遅れたり速かったりしてしまう。生徒全員で一斉にやると目立つこと目立つこと………はぁ。
………いや、大丈夫だろう。
明日の担当教員は脳筋の田中だ。あれ、いきなり腕相撲とか対戦させるし、面倒臭くなると校庭走らせるしな。
そんな予定された明日の事を思い描きながら、ベッドへと横になったのだった。
…………まじかー。
「はい。本日田中先生が風邪でお休みしましたので、今日は私が授業を担当します」
おぅふ………。
浅葉先生―――通称アサセンは、ダンス担当の体育教員だ。
国立体育大卒の新任教員で、校内でも何かと騒がれる美人さんだとか。(某クラスメート談)
ただ、この人やたらと僕に厳しい。
腕をもっとビシッと伸ばせっ!だめ、タイミングが遅い!
もっと速く!速過ぎだ!もっと周りを見ろ!とか、散々だ。
他にも遅れてたりタイミングがずれてる奴はいるのにも拘らず、僕ばかりを頭ごしに注意して来る。
しかも、僕を見るその目はとっても厳しい。美人とか周りは言うけど、僕にしたらおっかないのひと言しかない。
「まともにダンスも踊れない。君は私の授業を馬鹿にしてるのか?」
「……………」
とあからさまに見下すような言葉を投げつけて来る。
いや、そういう生徒を導くのが教師の仕事なんじゃね?
とか思っても言わない。こういう輩に対しては、無言で付き合うのに尽きるのだ。
「ちょっ―――」
いつもの運動部女子組がそれに異を唱え声を上げようとするのを、僕は小さく手を振り制止する。チャイムが鳴ったので、どうせ授業は終わりだ
こちらを軽く睨んでから、そのままスタスタと体育館を去って行くアサセン。(どうやら興奮したのか頬が赤く染まっていた。いや、或いはドSだからかも、うんきっとそうだ)
「ちょっと~~~~っ!何で止めんのよっ!?アレちょっと酷いじゃんかっ!!」
「なんなん?あれっ、あれえっ!?」
僕が止めたとは言え、こっちに突っかかって来るのはなんとも理不尽ではある。………仕方ないか、はぁ。
「いーんだよ。あんなのにいちいち付き合ってられないから」
「………はぁ、大人なんだね、君ってばさ!」
そう言って彼女達がパシンと軽く叩いてくる。いや、女子が尻叩くなよ。
まぁ、これを乗り切ったんだから、後は楽ちんですな。
「……………」
などと思っていた時期が僕にもありました。
「「ちっ………」」
おーい、女子2人組。そんなあからさまに顔を顰めなさんな。
きっと、今日はこういう日なんだよ。
4限目の体育が終わりまったりと昼食を摂って休んだ後に5限目の数学の時間になると、予想外?の人物がやって来た。
「本日、数学のオッフェン先生がお休みした為、小テストを行います」
「ええ~~?」というクラスメートの声を耳にしながら、僕も少しばかり落胆する。つーかなんで体育教師が数学の授業に出張って来るんっ?
今日は厄日か?
つい胸の内でそんな事を毒づきつつも表情には出す事なく、端末に表示されるテストを待ち構える。
この手のテストに関しては紙に記載するのではなく、端末を使ったものになっている。
もちろん解答に関しては手書きであることに変わりはない。だがこの手の煩雑で面倒なものに限っては、処理がし易い方式になってるって訳だ。
「………ん?んんっ!?」
表示された問題群を見て僕は首を捻る。
一応僕は解けはするけど、これは授業範囲外であるのが丸分かりのものだった。
だから思わず僕が周囲を見回してみても、特に何の疑問もないようで問題を解き始めていた。
ん?あれ?こいつ等そんなに優秀だったっけ?ってか、あのいつもの宿題移させて2人組も端末に集中してるのが目に入る。
たとしたら―――
別に僕自身に不備があるのならば甘んじでそれを受けるのも吝かでないのだが、これはちょいとその域を超えている。
という訳で、僕は挙手をして|浅葉教諭へと質問する。
「先生、すいませんが問題が授業範囲外なんですので解く事が出来ません」
「………はぁ?あなたの理解力がないのを、そんな言い訳にするのですか?あなた私を馬鹿にしてるんですかっ!?」
僕の言葉にアサセンがこっちを見下す様にねめつけて来た。
なに?僕いつの間にこの人に敵認定されたん?
その言動にクラス内の人間がざわつく。本来だったらあら、そう?なんて事を言ってこっちの問題を調べるのが通常なんだが………となれば―――
僕は端末隅にある緊急報知のマークをタップする。
ピリリとSEが鳴ると共に、警告の文言がホロウィンドウに表示される。
【生徒による緊急報知が申告されました。状況を確認しますので確認しますのでしばらくお待ち下さい】
申告者と被申告者に対して表示されるこの告知は、校内において問題があった場合における救済措置のようなものだ。
とかく学校ってのは、いろんな問題が噴き上がって来る。
それはいじめとかヒエラルキーとか、まぁそんな人間の内面を攻撃するようなものに関する様々なものだ。
実際の問題だと、生徒同士の揉め事なんかで適用されるものであるが、生徒教員の場合もたまにあるって訳だ。今回みたいに。
まぁこうもあからさまにやられるとは、僕自身思わなかったけども。
「あ、あなたっ!一体何をやってるのっ!!」
僕の行動に慌てふためきながら、声を上げるアサセン。
結局この後やって来た学年主任と専任判定員により小テストはなかった事になる。
「結局、何だったの?あの人」
放課後事情聴取の後ようやく戻ってきたところ、いつもの女子2人組に問い詰められて僕は渋々話をする。
彼女がやった事と言えば体育の授業時間に罵倒した事と、小テストの問題を授業範囲外のものにすり替えた事だけだった。(だけどと言うのもどうかではあるけど)
ただ何故そんな行為に及んだとかは、本人は口を噤むばかりで分からず終いだった。
僕としてはこうもあからさまな行為に及ぶってのは、どうにも理解しがたいものがあった。
一応社会人なんだから、それなりの節度を持っては欲しいとは思うのだ。
結果としては、無期限の謹慎と反省文の提出でとりあえず済ます事になったようだ。(ぷぷ、大人なのに反省文とかどことリストラ要員なのやら)
僕自身としては大した被害もないので、そこまで大事にするつもりもなかったんだけど、限界点というのはあるものなのだ。
専任判定員に連れられて行く彼女はこちらを睨み付けていたのが、なんとも印象的であった。
そして、その原因というか理由が判明したのは、その日のバイト先での事であった。
「おー御曹司。悪かったなぁ~」
僕が新人達に基礎を叩きこんでると、筋骨隆々の肌黒の壮年男性がやって来る。
「っ!総教官殿に礼っ!!」
『『『『『『おはようございますっ!!』』』』』』
この業界(に限らないが)なんでか夕方でも挨拶は“おはようございます”なのである。
「どうしたんですか?ガンジーさん」
僕は一旦新人達に休憩を指示してから、総教官と呼ばれた壮年男性へと訊ねる。
元はインド陸軍の特殊工作部隊の人間だったのを、爺さんがスカウトして招聘した人物だ。
アッシュブロンドの髪を短く刈り上げ、もみ上げから伸びる顎髭を奇麗に調えているイケオジってヤツだ。(ん?これって死語か?)
普段はからかい気味の僕へと対する物言いは、なんだか今日はちょっとばかり精彩を欠いてる(それでもボンはやめて欲しい………なぁ)
「学校で揉め事あったろ?あれ、原因こっちのせいなんだわ」
「は?」
つーか情報まわんの速くね?今日の今日だっての。
………まぁうちの事だからありえなくないもが、んー僕の周囲に誰かいるのかな?
少しばかり眉を顰め考えていると、ガンジーさんは右手を横に振り振り苦笑しながら言って来た。
もしかして、うちで仕掛けたのかな?
「偶々だ。タマタマ(笑)。ほれ、うちに面接に來る奴って落としても、事後の身上調査をするんだわ。下手にうち出身とか騙られても困るんでな」
「へー………んん?」
―――って事は、あの教員のうちん会社の面接受けてたって事か。てなると………。
「えーと、もしかして?」
「おう、思いっきりボンは見られてんな」
「あーん~………なるなる」
入社試験と面接の後に、必ず新人研修の様子を見る事になっている。
そういう時は、まず僕が指導役を務める訳だ。
新人と言っても、警察か国防隊を退職した人間や、格闘経験者などであるから年齢もまちまちである。
そしてそれを指導するのが、いくら身体がでかくて顔がアレでも年若い少年(笑)と言ってもいい人間。
であるならばそれを見た人間の反応は、大体2つに別れるものだ。
“察する”か“察しない”かのどちらかだ。
前者であれば視線は僕に集まるし、後者に至っては見下す様な視線を僕に向けてから新人達へと向けていくのだ。
稀にあのガキがなんであの方達を教えてるんだとか、突っかかって来る輩もいたりする。
それが最初の試金石だと気付かずに、だ。
なので、後者の人間は資格なしとみなされ“今後の活躍をお祈り申し上げます”ってなる訳だ。
そんな“祈られた”人間が偶々勤める学校の中で僕を見つけてしまった。
となればそんな僕に対して何かを思わない事は無いだろう。
だからと言って、僕に八つ当たりをされてもって話なんだけどなぁ。
正直僕としては穏便にって気持ちがあるんだけど、まぁ無理だよなぁ。
目の前のガンジーさんは笑ってないし。
だからと言って僕がそれを止めるなんて事はできないって話だ。………やれやれだ。
「………穏便にお願いします」
「そ・れ・は、ムリ♪」
ですか~。
僕が若いからとそんな感情を抱くのも仕方ないとも思うんだけど。
そんな事をガンジーさんへと告げると、呆れた様に溜め息を吐きながら言って来る。
「いやいや、彼女君より年上だから」
「………まぁ、そこら辺は経験値の差って事で?」
一応であるが、僕だって伊達にこの会社にいる訳じゃない。という話だ。
小っさい頃からじーちゃんに鍛えに鍛えられ、会社の古参のおっさん等に教えこまれて来た身としては、当然と言えば当然の事って訳なのだ。
すなわち、下手な経験者だとしても僕に敵わなかったりするのだ。
だからそれを若年だからとその本質を理解できない人間は、会社に採用されたりはしないだ。(という事らしい)
さすがに自身の担当教科で生徒を罵倒するのは仕方ないとして(ないのか?)も、他教科で小テストの中身を変えるのは少しばかり拙いんだろうなとは僕にも理解できる。
うん、彼女の未来に幸あらんことを………。
僕にできるのはそんな事ぐらいだ。
現実の事はともかくここまでって事にして、とりあえずはゲームの事に己の意識を注力しよう。(現実逃避ともいう)
バイトを終えて家に帰ってひと通りの事を済ませて、HMVRDを被りライドシフトしてVRルームからログインしギルドホームのマイルームへと降り立つ。
そしてマイルームを出て広間へと出ると、大罪都市(裏)へと向かう予定のギルメンとフィアーナはすでに準備万端って待ち構えていたのだった。
結果的に言えば途中モンスは出て来たものの、(全部フィアーナが片付けてしまって)何の問題もなく大罪都市(裏)へと入る事が出来てしまったのだった。
正直オレ的にはなんで何もないん?はぁ!?ありえねぇんですけど?と口には出さなかったが思いはしたのであった。
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