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33.つくレポ!チャーシュー麺
しおりを挟む『『『『『…………………』』』』』
ギルドホームの中央にある作業台に置かれた食材の数々を見て、グルメン達は唖然と言葉なくそれらを見ている。
それはそうだろう。この目の前にある食材は、今まで見たこともないものばかりだったのだから。
オレがあの大罪都市を巡りまくって購入したもの。それはこんな感じのものだ。(その一部)
ポークシャーボーン:骨
ビッフサッシボーン:骨
チキナンボーン:骨
ディアマンテボーン:骨
ラビタンズボーン:骨
ドドードボーン:骨
ボークシャーミート:肉(ヒレ)
ビッフサッシミート:肉(サーロイン)
チキナンミート:肉(ムネ)
ラビタンズミート:肉(モモ)
ドドードミート:肉(モモ)
うんうん。みんなが黙りこくるのもよく分かる。分かるよ。
オレだってあの大罪都市でこれらを見たときは、顎が外れるかと思うくらいに口を開け放ったもんだ。
どうやらPCとNPCの間では食材とかアイテム等の消耗品の扱いが、全くというか180度違っているということが分かった。
これ掲示板炎上案件だはな。
とは言え、そっちは他の奴等に任せることにして、オレは集まってくれたギルメンに礼と指示を出すことにする。
「え~~………。とりあえずフィアーナの要望で、チャーシュー麺を作ることになったんだが、ほんとに協力してくれるん?」
ここでオレが疑問形になったもの無理はないのだ。
だってギルメン等って協力とか協調とかに1番無縁な奴等ばかりだからだ。
「「「「「「「ったり前だろっ!フィアーナちゃんの頼みだからなっ!!」」」」」」
「……………」
。
あぁそうかい。FFF《フィアーナファンフェデレーション》は平常運転ってとこか。
本来はオレ自身1人で色々とやるのが常なんだが、今回ばかりは仕方ないってとこだな。
なんともこれら食材の出処を聞きたそうにしてる奴らを後目に、オレはこれからの作業の説明を改めて始める。
「とりあえず、これから皆には3つの班に分かれて作業をしてもらいたい」
「「「「「「おうっ!!」」」」」」
「お~~っ!」
「「「「「「「おおおおおおぉ~~~~~~~~~っっっ!!」」」」」」
オレの説明に声を上げるとギルメンが応じ、それに呼応するようにフィアーナも声を上げると、更に声を高らかにギルメンは達が声を上げ吠える。
正直暑苦しい。
最初はひとまとめの人数で工程一個づつをこなそうと思ったたんだが、十数人のギルメンの協力が得られた今なら、それぞれ担当を決めてやったほうが効率がいいと思ったのだ。
ラーメンってのは要は麺とスープと具で構成されている。なので、それらを分担して貰おうと考えたのだった。
いま少し深く考えてやってればよかったと思わないでもない。
つ-かオレ1人でやってれば、特にこだわりがない分サクッと作り上げてたと思う。
………お前等、凝りすぎだっ!
麺担当のギルマスは強力粉、薄力粉(そうあったのだ)の配分とかん水(らしきもの)の量を事細かく記録しながら練り上げいくつものタネを作り上げ、更に細麺、太麺、ちぢれ麺を作り上げていく。
店でも出すんか!?ギルマスは。
スープ担当のドワーフのレドルフは、調理スキルは持ってるだけで普段は鍛冶をメインにやってるギルメンだ。
こいつもFFFの一員らしく集まったもののそれ程乗り気じゃなさ気だったんだが、骨の山を見てギラリと目を輝かせて俺が炊くと立候補してきた。
オレ的にはやってくれるんであれば有難くあり、特に否やはなかったので任せたもののやっぱりこいつも生産馬鹿だった。
オレが買ってきた骨を、これでもかって言うほど寸胴鍋に突っ込んで炊き出したのだ。その数4。
この時点でどうにもオレが考えていたことと、完全に道が外れてる気がしたのだった。
俺がもーやだーと思っても、今更後の祭りである。
今は恙無く事が終わることを願おう。
そしてオレは具の担当だ。
現実であれば、様々な具をトッピングするのだろう。
例としてあげれば、シナチク、ナルト、海苔にほうれん草に、煮卵等など。
だがここは現実じゃない。やるにしてもある程度の試行錯誤が必要となってくる訳だ。
そして具の他にも1番必要なものがある。
「な~ピロぉ~。しょーゆとか味噌とか、どうするん?」
そうラーメンを作るのにあたって、それが重要になってくる。
現在《いま》んとこ、オレ達がゲームで分かってる調味料ってのは塩と胡椒くらいなものだ。あと魚醤か。
大罪都市の商店にも、さすがに味噌とか醤油は見つけられなかった。
だがそれの原材料に類するものは見つけられた。
「お前等【発酵】は使えるよな?」
「たりめぇだろうが。つっても使い途が今ンとこねぇけどな」
そう、オレ達料理スキル持ちでLvが上がると、【発酵】ってのが生えてくる。
この生えるってのが結構な曲者で、どういう条件で使えるのかが全くわからないのだ。
いくら現実と似たような環境と言っても、微生物や細菌が存在してるとは考え難い。
そんな事をやってた日には、データ容量がどんだけあっても堪らないって話だ。
だから何につけても、この世界の法則《ルール》を見つけ出すことが肝要になる。
ま、そういうのを見つけるのが面白いんだけどな。
ある程度、現実に則してる部分はあるので、その辺は試行錯誤するって訳になる。
プップクの言葉にオレも頷く。
オレ達が手にすることが出来る食材は、モンスターからのドロップだ。
その大半は肉がメインになってくる。
だが、あの大罪都市(裏)としとこか、にはオレ達が望むべきものが!そう!たくさんたくさん売られていたのだ。!!
金があるのならば、オレが買わない訳がないのだ。
「まぁ、まずは見てくれや」
オレが メニューを出してアイテムを次々と出して行く。
「………っ!こ、これはっ!?」
ここでオレも断定することなく、事実のみをギルメン達へと伝えようと思ってる。
あっちのアイテムって鑑定してもあまり意味がないものなのだ。
パラメーター上昇下降もなく、ただ名称だけが書かれたものが殆どだからだ。
そこら辺も要検証といったところか。
そうなると問題はギルメンを大罪都市(裏)に連れて行く必要が出てくる。
つってもなんと説明すりゃいいのか、 今のところさっぱりだ。とりま、こっちの事は棚上げっつうことで、オレは取り出した素材の説明を―――
「「「「「大豆じゃねぇ~~~かっ!!!」」」」
目を剥いてギルメン達が吠える。
まぁ、大豆に似た何かなんだが。
で鑑定するとこんな風に出る。
ソイソイビー:豆
何も言うまいって話だ。
「―――ってな訳で、まずは現実に則したやり方でやってみね?」
ある意味悪魔の囁きってやつ。
オレの黒い笑みを見て、ギルメン達は言葉なく首を縦に振りまくる。
実際【発酵】が生えた時点で、オレ達もいろいろ試行錯誤はしていたのだ。
米とか小麦とかを砕きペースト状にしてから【発酵】をかけたものの、全部が全部ゴミと化してしまったのだった。
もちろん熟成肉なんかも現実でもあったんでこっちも試してみたんだが、やっぱりゴミとなる。あん時はマジへこんだ。
今回も同様の結果が出るような気がしないでもないが、とりまやってみようって事だ。
ソイソイビーを水でうるかし時間短縮をかけて馴染ませる。
それからそれらを細かく砕き液体状にして煮ていき、他に色々と素材を加えて【発酵】スキル持ちが交代で発酵をかけていった。
そして――――
「「「「「…………おぉおおおお、ぉおおおおっっ!!」」」」」
しばらくの間は失敗続きで、ゴミばかりが量産されていった。
それから何度目かの試行錯誤の末に、ようやく作り上げることが出来た。
ソイビーソースαX:ソイソイビーに各種素材を混ぜ合わせ発酵をかけて作られたもの
あらゆる料理にそれなりに合ったりするかも知れないと思う
使いすぎに注意(血圧的に)
HP+5
ff 3%回復
wf 3%回復 (作成者:プップク)
mew saw:ソイソイビーを基に各種素材を煮詰めた後に過剰に発酵を施して
作り上げられたもの
野菜につけた食べるとステータスが向上することがままあるだろう
HP+8
ff 8%回復
wf 1%回復 (作成者:ピロキシ)
「「「「「「……………」」」」」」
鑑定の結果を見た見たオレ達は、なんとも微妙な気分に陥る。
一辺殴っていいよな?この運営…………。
何はともあれ、醤油と味噌は出来上がった。
具材に関しては、この調味料ズを使って作り上げていった。
まずはメインのチャーシュー。
オークからドロップした肉を使い現実の則した形でチャーシュを作っていき、時間がもったいないので【時間短縮】かけてこっちは問題なく完成する。
拍子抜けもいいとこだ。
オレ達の班の作業は一段落したので、他の班の様子を見てみることにする。
「……………」
オレ、思わず膝落ち崩れそうになってしまう。
「おめぇら、やり過ぎだ………」
確かに買ってきた食材好きに使っていいって言ったよ?調子に乗って買った分だけ出したのはオレだよ?
でもさー、ある分全部使っちまうってのはねぇと思うんだよ?
「いやいや、だって僕達が全く知らない食材だよ?それならとことん調べて調べて調べつくさないとダメだよね?」
ギルマスがそんな事をしれっと言ってくる。
くっ、正論なんだよな。クラフターズナゲットではだけど。
ギルマス達だってそれなりに対価を払っているのは理解はできる。でもなぁ………。
目の前にあるのは、失敗作の数々と出来上がった麺の数々だ。
つーか数が多過ぎだ。
「でもギルマスよー………。これ作り過ぎじゃね?」
「………まぁ?………ほら、僕達の業ってやつ?」
「……………」
そう言われてしまえば、オレとしても何を言えるものでもない。
しょせん同類。同じ穴のムジナってことだ。
で、ギルマスの班が作ったの麺は、面が5種類(細麺、中太麺、太麺、ちぢれ麺、卵黄麺)
そしてレドルフ担当のスープが3種類。(トンコツ、白湯、ダブルスープ)寸胴鍋の1つはゴミと化していた。
そしてオレが作ったチャーシュー(醤油と香味野菜で煮込んだやつ)とネギと葉野菜(ほうれん草っぽいもの)を茹でたもの。
オレ達はこれらを見ながら、どうしたもんかと思案にくれる。
作ったのはいいが、どれを選べばいいのやらという選択に迫られた訳だ。
「どうしよっか?」
「「「「………………」」」」
よもやこんな贅沢な悩みを抱えることになるとはな。
まぁこんなもんを任せられる人間は1人しかいない。
「フィアーナ、好きなもん選びな。スープと麺とチャーシューな」
「はい!了解です!」
みんなの作業をニコニコと笑顔で見ていたフィアーナに丸投げすると、出来上がったものを矯めつ眇めつじっくりと見ていく。
麺に関しては、その感触を触れたり伸ばしたりして見ていき、スープはスプーンで掬って味を確かめて、調味料もしっかりとなめて確認していった。
そしてしばらく沈思黙考をしてからフィアーナが決める。その間ギルメン達の間に緊張が張り詰めた。
「えっと、これとこれ、あとこれでお願いします!」
フィアーナが自信満々にそれらを指差す。
そしてフィアーナが選んだのは、トンコツとちぢれ麺、そしてソイビーソースαXだ。もちろんチャーシューも。
どっちかってぇとオレは味噌味の方が好きだけどな。
「「「「よしっ!」」」」
「「「「おっしゃあっ!!」」」」
「「「「うぉおおっ!!」」」」
「「「「……………くぅっ」」」」
フィアーナが選んだものを作った奴らは拳を高らかに上げ、そうでない奴等は膝落ち崩れ涙する。
いや、そこまでのことっ!?
まぁものが決まれば後はちゃっちゃと作っていくだけだ。
麺を茹で、丼に醤油を入れてトンコツスープを流し入れ茹で上がった麺を泳がせる。
オレ自身の手で作り上げられるこれらを見てちょっとだけ感極まる。
馬鹿馬鹿しいとは思う。だけど、そうだけど、オレの世界で、オレの好きなものが作り上げられるってのはやっぱ感動するものなのだ。
最後に少し厚めに切ったチャーシュ-を麺が見えなくなるまで載せて、葉野菜とネギを真ん中に置いていく。
よし出来上がり!
「チャーシュー麺、お待ちっ!!」
「ふぉわぁ~~………」
フィアーナは目の前に出されたチャーシュー麺を見て、感嘆の声を上げる。
その後はギルメンの人数分のラーメンをひたすら作っていった。いや、手伝えよ!お前等。まぁスキルLvが上がってるからいーけど。
フィアーナは簡易椅子に座ってフォークで麺をすすり、チャーシューを頬張り満面の笑みを浮かべている。
そんで全員がラーメンを手にすると、オレも自分の好みのラーメンを作っていく。
ちなみにオレはダブルスープの味噌チャ-シューだ。
ちなみに鑑定するとこんな感じ。
栄光と情熱のmew sow
Le men!:今世に存在しない技術で作られた調味料を元に
スープに細長くした小麦を浸し煮付けた肉を
のせた異世界の料理
ff 100%回復
wf 50%回復
状態異常回復 (微)
耐寒付与 (小)
STR +10%
VIT +10%
テキスト分に悪意を感じるし、色々と生えてるけど気にしない気にしないっ!
まずはスープ口にしてしばし味わう。
「…………くぅ~~」
味噌うめぇ~~~現実でも色々食べ歩いたけど、これはそれにも負けないものだなぁと手前味噌(ダジャレじゃない)なことを考えながら、オレはあふあふと麺を啜っていく。
「んふぅ~~~………んふぅ~~~………!はえが、ひゃ~~しゅ~うへん、あんですえ?」
口の中いっぱいに麺を含んで、オレへとフィアーナが言ってくる。その表情は愉悦に満ち満ちていた。
「あえ?いろあんの、あらしろとりあいます?」
麺をズルズルと啜りながら、オレの丼を見てそんな事を聞いてくる。
「食ってみっか?」
「あいっ!」
「「「「「っっっっっっっっっっっつ!!!?」」」」
オレが丼をフィアーナの前に差し出すと、遠慮会釈なくフォークを突っ込んで麺を掬って食べていく。
その様子を見たギルメンたち額ハット表情を変えて、オレを睨みつけてくる。う、………やっちまったか!?
「ふぉおおおっっ!!これも美味し~~~ですっ!ピロさんっ!」
ぬふーぬふーと鼻息も荒く麺を咀嚼しながらフィアーナがそんなことを言って来た。
ギルメン等の視線が痛い。窮余の策としてオレはフィアーナに勧めてみる。
「よかったら他の奴等のも味見させて貰ったらどうだ?それにこれだけ集まってくれたれいも言ったほうがよくね?」
「「「「っっ!!」」」」
「あっ、そうですね!じゃあ行ってきます!」
オレがそう言うと、フィアーナが皆のとこへと行く前に、何故か奴らが丼を持って並び始める。………。なんなん、それ。
その様子に呆れながら、オレが残りの麺を啜っていると、そこにさっちんが口元に涎をつけながら言ってきた。
『か、仮主よ。我にもそれを食させるが良いのじゃ。ほれほれ」
丼の前にやって来て両手を伸ばして招き寄せるよ仕種をしてくる。いわゆるカモンカモンってやつだ。
つーか今まで静かにして出てこなかったっけな、こいつ。
「ずいぶん静かだったけど、どうしたんだ?」
『う、我は人見知りすんじゃ!異ーからはよ、はよっ!』
オレの問にさっちんが目を逸して答えてくる。
人見知りするアイテムとか、需要なさそうだな。
まぁ、約束でもあるしと、オレは箸で麺を掬ってさっちんの口元へと運ぶ。
『はぅ、あ~~んじゃな。あ~~~んっ!………んっんんっ!?』
あ~んじゃねぇよ。さっちんが麺を咥えると、次の瞬間じゅるちゅちゅ~んと丼の中の麺を一気に啜ってしまう。
「あっ!てっめっ!」
オレ、ちょっとしか食ってねぇってのに。
そしてさっちんはこともあろうに丼へとダイブする。
『これは美味いのじゃ、うくうくうく、ぶっはっ!はぐはぐはぐっ、うむっ、この肉も格別なのじゃ!仮主よっ!』
丼の中で麺を啜り、チャーシューを貪るさっちん。
はぁ…‥…もう食う気失せたわ。
『仮主、仮主!もっと食したいのじゃっ!早う作りやっ!』
丼の中を平らげ終えると、さっちんはそんな要求をしてくる。
オレは半ば諦めるように何かいいのかを聞く。
「はぁ~………。どれがいいんだ?」
『うむっ!ではこれと――――』
さっちんが麺とスープを選ぼうとした時、聞きなれない声がフィアーナ達の方から聞こえてきた。
『妾にもそれを食させるのじゃあ~~~~~~~~~っっ!!』
え?誰?
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