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亀裂 4

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果てたままの姿で毛布を胸元まで引き上げると、海翔は腕の上に朋の頭を乗せて、天井を見つめながら言った

「まだいじけてる?」

「うるさい」

海翔の指先が朋の髪を弄ぶ

言葉を続けようとして口を開いた海翔が、一瞬躊躇ってため息をつく

「なに」

「いや・・・あのさ」

「言ってよ」

朋が仰向けになっていた体を海翔の方に向ける

「そうだな・・・」何かを考えているようにゆっくり瞬きをする海翔の睫毛に朋が手を伸ばした

「なっ・・・邪魔」

小さく笑って朋の手を払うと、海翔は顔を朋の方に向けて言った

「犬飼さんな・・・」

「うん」

朋の表情が一瞬強張る

 ・・・内緒って言われたけど・・・

「好きらしいよ」

「えっ」

朋がまた誤解して泣き出さないように海翔は続けた

「俺とお前が」

「はっ?何それ」

朋が困惑した顔で海翔を見つめる

「俺もそう思ったし、犬飼さんも自分の気持ちが分からないみたいな事言ってたけどさ・・・」

海翔はそこまで言うと、朋の額に唇を当ててからまた天井を見た
言葉を探すように、朋の髪をクルクルと自分の指に巻き付けていた海翔の手が止まる

「・・・何か、分かるような気がしない?」

「何が?」

「犬飼さんが俺たちの事『すき』っていう気持ち」

朋は何にも答えずに海翔の睫毛をみながら、そう言われてみれば・・・と思った

初めて会った日に犬飼が朋に向けた笑顔には大きな安心感があった
この人の前なら、ありのままで自分でいれるんだ、と感じた

だから、不安だった寮生活も犬飼さんがいるから大丈夫、そう思っていた

『朋君がそうしたいなら、そうすればいいんです』

どんな愚痴や相談事を持ちかけても、犬飼は必ず最後にそう言ってくれる

でも・・・

「でもさ・・・」

朋は海翔を見つめるのをやめると、仰向けになって海翔と同じように天井を見つめた

「それって別に、僕たちだけって訳じゃないでしょ」

「ん?」

「管理人として、僕や海翔や陸たちを大切に思ってくれてる、それは分かるよ」

「だから、そいう事だろ。大切で特別で、好きって事なんじゃないの?」

「じゃあそれって、僕が海翔を好きっていうのと同じなの?違うの?」

問い詰めるような朋の言葉に海翔は黙り込んだ後、空いていた片方の腕を大きく伸ばして伸びをして勢いよくベッドから起き上がった
海翔の腕に乗っていた朋の頭が枕の上に沈み込む 

「なんだよ」

「まぁ、分かんない」

海翔はニヤリと笑うと、ベッドの下に脱ぎ捨ててある下着を手に取り足を入れた

「分かんないけど、俺は犬飼さんの気持ちを聞いたからって何かが変わったりしないから」

そう言うと、立ち上がって朋が被っていた毛布を引き剥がした

「朋だってそうだろ?」

「それは、そうだけど・・・」

「俺は、犬飼さんと楽しそうに話してる朋も好きだよ」
拾った朋の下着を投げつけながら海翔が笑う

「僕も・・・そうだけど・・・」

「大切に思ってもらえて光栄だろ?」

「う・・・ん・・・」

海翔はズボンのベルトを閉めると

「犬飼さんには、内緒って言われてるんだ。俺が話した事、内緒な」

不満気な表情のまま洋服を着ている朋が上目遣いに海翔を見て、分かった・・・と小さな声で答えた
海翔はフッと笑うと朋に近づいて強く腰を掴むと朋の体を持ち上げた

「うわっ。何?海翔、痛いよ、痛いって!」

高く持ち上げられた朋が海翔の頭を数回叩く

「俺、腹減ったわー。朋君、美味しいもの買ってきてくれたじゃん?」

「あ・・・」

暴れていた朋が動きを止める

「あれ、食べよ」

「・・・うん」

朋が海翔の髪に顔を埋めると、海翔がゆっくりと朋を下ろして朋を抱きしめた


「俺、ホント好きだから」

「うん」

「お前を誰にも渡さないから」

「うん・・・」

「だから・・・」

朋を抱きしめた腕を緩めると、海翔は朋の顔を覗き込んで真剣な表情で言った

「今度はお前の番」

「・・・え?」

「お前に告ったっていう奴の話聞かせろよ」

 そんな事すっかり忘れていた・・・

海翔の真剣な黒くて深い瞳から目が離せないまま、朋がコクリと頷いた

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