29 / 51
亀裂 4
しおりを挟む
果てたままの姿で毛布を胸元まで引き上げると、海翔は腕の上に朋の頭を乗せて、天井を見つめながら言った
「まだいじけてる?」
「うるさい」
海翔の指先が朋の髪を弄ぶ
言葉を続けようとして口を開いた海翔が、一瞬躊躇ってため息をつく
「なに」
「いや・・・あのさ」
「言ってよ」
朋が仰向けになっていた体を海翔の方に向ける
「そうだな・・・」何かを考えているようにゆっくり瞬きをする海翔の睫毛に朋が手を伸ばした
「なっ・・・邪魔」
小さく笑って朋の手を払うと、海翔は顔を朋の方に向けて言った
「犬飼さんな・・・」
「うん」
朋の表情が一瞬強張る
・・・内緒って言われたけど・・・
「好きらしいよ」
「えっ」
朋がまた誤解して泣き出さないように海翔は続けた
「俺とお前が」
「はっ?何それ」
朋が困惑した顔で海翔を見つめる
「俺もそう思ったし、犬飼さんも自分の気持ちが分からないみたいな事言ってたけどさ・・・」
海翔はそこまで言うと、朋の額に唇を当ててからまた天井を見た
言葉を探すように、朋の髪をクルクルと自分の指に巻き付けていた海翔の手が止まる
「・・・何か、分かるような気がしない?」
「何が?」
「犬飼さんが俺たちの事『すき』っていう気持ち」
朋は何にも答えずに海翔の睫毛をみながら、そう言われてみれば・・・と思った
初めて会った日に犬飼が朋に向けた笑顔には大きな安心感があった
この人の前なら、ありのままで自分でいれるんだ、と感じた
だから、不安だった寮生活も犬飼さんがいるから大丈夫、そう思っていた
『朋君がそうしたいなら、そうすればいいんです』
どんな愚痴や相談事を持ちかけても、犬飼は必ず最後にそう言ってくれる
でも・・・
「でもさ・・・」
朋は海翔を見つめるのをやめると、仰向けになって海翔と同じように天井を見つめた
「それって別に、僕たちだけって訳じゃないでしょ」
「ん?」
「管理人として、僕や海翔や陸たちを大切に思ってくれてる、それは分かるよ」
「だから、そいう事だろ。大切で特別で、好きって事なんじゃないの?」
「じゃあそれって、僕が海翔を好きっていうのと同じなの?違うの?」
問い詰めるような朋の言葉に海翔は黙り込んだ後、空いていた片方の腕を大きく伸ばして伸びをして勢いよくベッドから起き上がった
海翔の腕に乗っていた朋の頭が枕の上に沈み込む
「なんだよ」
「まぁ、分かんない」
海翔はニヤリと笑うと、ベッドの下に脱ぎ捨ててある下着を手に取り足を入れた
「分かんないけど、俺は犬飼さんの気持ちを聞いたからって何かが変わったりしないから」
そう言うと、立ち上がって朋が被っていた毛布を引き剥がした
「朋だってそうだろ?」
「それは、そうだけど・・・」
「俺は、犬飼さんと楽しそうに話してる朋も好きだよ」
拾った朋の下着を投げつけながら海翔が笑う
「僕も・・・そうだけど・・・」
「大切に思ってもらえて光栄だろ?」
「う・・・ん・・・」
海翔はズボンのベルトを閉めると
「犬飼さんには、内緒って言われてるんだ。俺が話した事、内緒な」
不満気な表情のまま洋服を着ている朋が上目遣いに海翔を見て、分かった・・・と小さな声で答えた
海翔はフッと笑うと朋に近づいて強く腰を掴むと朋の体を持ち上げた
「うわっ。何?海翔、痛いよ、痛いって!」
高く持ち上げられた朋が海翔の頭を数回叩く
「俺、腹減ったわー。朋君、美味しいもの買ってきてくれたじゃん?」
「あ・・・」
暴れていた朋が動きを止める
「あれ、食べよ」
「・・・うん」
朋が海翔の髪に顔を埋めると、海翔がゆっくりと朋を下ろして朋を抱きしめた
「俺、ホント好きだから」
「うん」
「お前を誰にも渡さないから」
「うん・・・」
「だから・・・」
朋を抱きしめた腕を緩めると、海翔は朋の顔を覗き込んで真剣な表情で言った
「今度はお前の番」
「・・・え?」
「お前に告ったっていう奴の話聞かせろよ」
そんな事すっかり忘れていた・・・
海翔の真剣な黒くて深い瞳から目が離せないまま、朋がコクリと頷いた
「まだいじけてる?」
「うるさい」
海翔の指先が朋の髪を弄ぶ
言葉を続けようとして口を開いた海翔が、一瞬躊躇ってため息をつく
「なに」
「いや・・・あのさ」
「言ってよ」
朋が仰向けになっていた体を海翔の方に向ける
「そうだな・・・」何かを考えているようにゆっくり瞬きをする海翔の睫毛に朋が手を伸ばした
「なっ・・・邪魔」
小さく笑って朋の手を払うと、海翔は顔を朋の方に向けて言った
「犬飼さんな・・・」
「うん」
朋の表情が一瞬強張る
・・・内緒って言われたけど・・・
「好きらしいよ」
「えっ」
朋がまた誤解して泣き出さないように海翔は続けた
「俺とお前が」
「はっ?何それ」
朋が困惑した顔で海翔を見つめる
「俺もそう思ったし、犬飼さんも自分の気持ちが分からないみたいな事言ってたけどさ・・・」
海翔はそこまで言うと、朋の額に唇を当ててからまた天井を見た
言葉を探すように、朋の髪をクルクルと自分の指に巻き付けていた海翔の手が止まる
「・・・何か、分かるような気がしない?」
「何が?」
「犬飼さんが俺たちの事『すき』っていう気持ち」
朋は何にも答えずに海翔の睫毛をみながら、そう言われてみれば・・・と思った
初めて会った日に犬飼が朋に向けた笑顔には大きな安心感があった
この人の前なら、ありのままで自分でいれるんだ、と感じた
だから、不安だった寮生活も犬飼さんがいるから大丈夫、そう思っていた
『朋君がそうしたいなら、そうすればいいんです』
どんな愚痴や相談事を持ちかけても、犬飼は必ず最後にそう言ってくれる
でも・・・
「でもさ・・・」
朋は海翔を見つめるのをやめると、仰向けになって海翔と同じように天井を見つめた
「それって別に、僕たちだけって訳じゃないでしょ」
「ん?」
「管理人として、僕や海翔や陸たちを大切に思ってくれてる、それは分かるよ」
「だから、そいう事だろ。大切で特別で、好きって事なんじゃないの?」
「じゃあそれって、僕が海翔を好きっていうのと同じなの?違うの?」
問い詰めるような朋の言葉に海翔は黙り込んだ後、空いていた片方の腕を大きく伸ばして伸びをして勢いよくベッドから起き上がった
海翔の腕に乗っていた朋の頭が枕の上に沈み込む
「なんだよ」
「まぁ、分かんない」
海翔はニヤリと笑うと、ベッドの下に脱ぎ捨ててある下着を手に取り足を入れた
「分かんないけど、俺は犬飼さんの気持ちを聞いたからって何かが変わったりしないから」
そう言うと、立ち上がって朋が被っていた毛布を引き剥がした
「朋だってそうだろ?」
「それは、そうだけど・・・」
「俺は、犬飼さんと楽しそうに話してる朋も好きだよ」
拾った朋の下着を投げつけながら海翔が笑う
「僕も・・・そうだけど・・・」
「大切に思ってもらえて光栄だろ?」
「う・・・ん・・・」
海翔はズボンのベルトを閉めると
「犬飼さんには、内緒って言われてるんだ。俺が話した事、内緒な」
不満気な表情のまま洋服を着ている朋が上目遣いに海翔を見て、分かった・・・と小さな声で答えた
海翔はフッと笑うと朋に近づいて強く腰を掴むと朋の体を持ち上げた
「うわっ。何?海翔、痛いよ、痛いって!」
高く持ち上げられた朋が海翔の頭を数回叩く
「俺、腹減ったわー。朋君、美味しいもの買ってきてくれたじゃん?」
「あ・・・」
暴れていた朋が動きを止める
「あれ、食べよ」
「・・・うん」
朋が海翔の髪に顔を埋めると、海翔がゆっくりと朋を下ろして朋を抱きしめた
「俺、ホント好きだから」
「うん」
「お前を誰にも渡さないから」
「うん・・・」
「だから・・・」
朋を抱きしめた腕を緩めると、海翔は朋の顔を覗き込んで真剣な表情で言った
「今度はお前の番」
「・・・え?」
「お前に告ったっていう奴の話聞かせろよ」
そんな事すっかり忘れていた・・・
海翔の真剣な黒くて深い瞳から目が離せないまま、朋がコクリと頷いた
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
元会計には首輪がついている
笹坂寧
BL
【帝華学園】の生徒会会計を務め、無事卒業した俺。
こんな恐ろしい学園とっとと離れてやる、とばかりに一般入試を受けて遠く遠くの公立高校に入学し、無事、魔の学園から逃げ果すことが出来た。
卒業式から入学式前日まで、誘拐やらなんやらされて無理くり連れ戻されでもしないか戦々恐々としながら前後左右全ての気配を探って生き抜いた毎日が今では懐かしい。
俺は無事高校に入学を果たし、無事毎日登学して講義を受け、無事部活に入って友人を作り、無事彼女まで手に入れることが出来たのだ。
なのに。
「逃げられると思ったか?颯夏」
「ーーな、んで」
目の前に立つ恐ろしい男を前にして、こうも身体が動かないなんて。
真冬の痛悔
白鳩 唯斗
BL
闇を抱えた王道学園の生徒会長、東雲真冬は、完璧王子と呼ばれ、真面目に日々を送っていた。
ある日、王道転校生が訪れ、真冬の生活は狂っていく。
主人公嫌われでも無ければ、生徒会に裏切られる様な話でもありません。
むしろその逆と言いますか·····逆王道?的な感じです。
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる