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まなざし 2
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犬飼は、海翔を部屋へ連れて行き着替えをさせてから休ませるように朋に伝え、キッチンで水と冷凍庫に常備してある保冷枕を取り出してから海翔の部屋へと向かった。
階段を上がり廊下のちょうど真ん中にある海翔の部屋から朋の声が聞こえてくる。
「だから僕がちゃんと薬出しといたのに、なんで持っていかなかったの?」
「一緒に帰るって言ったのに」
「大体海翔はいっつも僕の話をちゃんと聞いてないからこういう事になっちゃうんだよ?分かってるの?」
海翔の部屋に入ると、上半身はTシャツ姿でベッドに仰向けになって寝ている海翔のズボンを、小言を言いながら脱がしている朋の姿があった。
必死な朋の様子に思わずくすりと笑いながら、
「朋君」と、犬飼が小さな声で呼ぶ。
「ん?なにー?」
朋はようやくズボンを脱がし終えて、ベッドから降り犬飼を振り返った。
「寝てますよ」
「え?」
「海翔君、寝てます」
「あ・・・・」
朋の小言が心地よかったのだろうか。
海翔は落ち着いた呼吸で眠り込んでいた。
「もう・・・ホント腹立つ」
脱がしたズボンをパタパタと伸ばして几帳面にハンガーに掛けながらそう言った朋の声は震えている。
「朋君・・・」
手にしていたグラスを机の上に置き、犬飼が朋の頭を後ろからそっと撫でると、朋は黙り込んで下を向いたまま、自分の袖口で涙を拭った。
「海翔君は朋君の気持ち、ちゃんと分かってると思いますよ」
「そうかな・・・」
「もちろん」
犬飼の言葉に朋はようやく顔をあげると朋は照れくさそうに笑った。
「よく寝てるようですが、薬は飲ませた方がいいですね」
犬飼はそう言うと、海翔の肩をそっと叩いて「海翔君、薬だけ飲んで下さい」と海翔を起こした。
ふーっと大きく息を吐いた海翔が薄っすらと目を開けると、「ほら、薬!飲むの!」と、すかざず朋が海翔の背中に腕を入れグッと海翔の体を持ち上げる。
犬飼は、はい、口開けて、はい、これ飲んで、と朋が世話を焼いている様子を見守った後「海翔君、氷枕使いますか?」と再びベッドに寝かされた海翔に尋ねた。
「うーん・・・いらない・・・かな・・・」
呟くように言いながら海翔が目を閉じる。
薬を飲ませた事で少し安心した様子の朋が、呆れたような表情で犬飼に見せた。
「じゃあ、食堂に戻りましょうか」
ベッドからずり落ちそうになっていた毛布を海翔に掛け、朋が脱がせた衣服を手に取ると、犬飼は佇んだままの朋を促して部屋を出た。
「今日は夕食、朋君だけですし、今夜は私もここに泊まりますから夕飯はお寿司をとりましょう」
部屋を出て廊下を歩きながら犬飼が声を潜める。
「え?ほんとに?」
朋が嬉しそうに笑って、犬飼の腕に自分の腕を巻き付けた。
「うわっ」
急に体重がかかって、犬飼がよろめくと「犬飼さん、しっかりー」と朋がクスクス笑いながら、でもギュッと巻き付けた腕は離さないままで2人は並んで階段を降りた。
階段を上がり廊下のちょうど真ん中にある海翔の部屋から朋の声が聞こえてくる。
「だから僕がちゃんと薬出しといたのに、なんで持っていかなかったの?」
「一緒に帰るって言ったのに」
「大体海翔はいっつも僕の話をちゃんと聞いてないからこういう事になっちゃうんだよ?分かってるの?」
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朋はようやくズボンを脱がし終えて、ベッドから降り犬飼を振り返った。
「寝てますよ」
「え?」
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「あ・・・・」
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「もう・・・ホント腹立つ」
脱がしたズボンをパタパタと伸ばして几帳面にハンガーに掛けながらそう言った朋の声は震えている。
「朋君・・・」
手にしていたグラスを机の上に置き、犬飼が朋の頭を後ろからそっと撫でると、朋は黙り込んで下を向いたまま、自分の袖口で涙を拭った。
「海翔君は朋君の気持ち、ちゃんと分かってると思いますよ」
「そうかな・・・」
「もちろん」
犬飼の言葉に朋はようやく顔をあげると朋は照れくさそうに笑った。
「よく寝てるようですが、薬は飲ませた方がいいですね」
犬飼はそう言うと、海翔の肩をそっと叩いて「海翔君、薬だけ飲んで下さい」と海翔を起こした。
ふーっと大きく息を吐いた海翔が薄っすらと目を開けると、「ほら、薬!飲むの!」と、すかざず朋が海翔の背中に腕を入れグッと海翔の体を持ち上げる。
犬飼は、はい、口開けて、はい、これ飲んで、と朋が世話を焼いている様子を見守った後「海翔君、氷枕使いますか?」と再びベッドに寝かされた海翔に尋ねた。
「うーん・・・いらない・・・かな・・・」
呟くように言いながら海翔が目を閉じる。
薬を飲ませた事で少し安心した様子の朋が、呆れたような表情で犬飼に見せた。
「じゃあ、食堂に戻りましょうか」
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「今日は夕食、朋君だけですし、今夜は私もここに泊まりますから夕飯はお寿司をとりましょう」
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「え?ほんとに?」
朋が嬉しそうに笑って、犬飼の腕に自分の腕を巻き付けた。
「うわっ」
急に体重がかかって、犬飼がよろめくと「犬飼さん、しっかりー」と朋がクスクス笑いながら、でもギュッと巻き付けた腕は離さないままで2人は並んで階段を降りた。
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