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第55話。
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その夜、夢でうなされて、ベッドの中で、独りのた打ち回るジミーを、亜季が介抱した。
「どうしたの?」
「実は今、夢の中に警察が出てきて、俺を捕まえ、法廷みたいなところで裁判に掛けてたんだ」
「そう」
「そしてその法廷で、裁判長みたいなやつが、俺に『死刑に処す!』なんて言ってさ。そしたら、傍聴席のど真ん中に座ってたタカが、ほくそ笑みながら『裏切り者には、死という名の制裁を!』なんて大声で叫んじゃってさ。ホント、不気味で怖かったよ」
「そんな夢だってたまには見るわよ。それより……」
「どうした?」
「あたし……」
一呼吸置いた亜季が、口を開く。
「妊娠してるの、あなたの子供を。まだ一ヶ月なんだけど」
「ホントか?そりゃよかった」
そう言い交わした二人は、喜びのあまり、いつまでも抱き合っていた。いつの間にか、亜季は妊娠していたのだ。
六月のオーストラリアの夜は、一際寒い。飽きるまで、ベッドの中で抱き合った二人は、厚手の毛布に包まって、静かに、異国の朝を迎えた。
その夜、夢でうなされて、ベッドの中で、独りのた打ち回るジミーを、亜季が介抱した。
「どうしたの?」
「実は今、夢の中に警察が出てきて、俺を捕まえ、法廷みたいなところで裁判に掛けてたんだ」
「そう」
「そしてその法廷で、裁判長みたいなやつが、俺に『死刑に処す!』なんて言ってさ。そしたら、傍聴席のど真ん中に座ってたタカが、ほくそ笑みながら『裏切り者には、死という名の制裁を!』なんて大声で叫んじゃってさ。ホント、不気味で怖かったよ」
「そんな夢だってたまには見るわよ。それより……」
「どうした?」
「あたし……」
一呼吸置いた亜季が、口を開く。
「妊娠してるの、あなたの子供を。まだ一ヶ月なんだけど」
「ホントか?そりゃよかった」
そう言い交わした二人は、喜びのあまり、いつまでも抱き合っていた。いつの間にか、亜季は妊娠していたのだ。
六月のオーストラリアの夜は、一際寒い。飽きるまで、ベッドの中で抱き合った二人は、厚手の毛布に包まって、静かに、異国の朝を迎えた。
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