『逆行。』

篠崎俊樹

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第36話。

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 昼からの会議は、どことなく、憂鬱さを伴っていた。婦警が、テーブルの各席に、順次コーヒーを置いていく。会議の主眼は、君島次郎を逮捕するか否かの件と、彼に対して、殺害を仄めかした人物の特定だった。華はどうやら、君島の潜伏先を突き止めたらしい。凄腕のやり口だ。丘の上に造成された、この島のニュータウンに、彼らはいるはず、と踏んでいた。
 会議開始直前に、階下のカフェで、気付けのコーヒーを飲みながら、そう思っていた。別に、コーヒーは目覚ましだ。それ以外の何物でもない。犯人逮捕への筋道が、少しずつ、しかも慎重に慎重を重ねながら、明かされていく。それも、手順通りだった。
     *
 以前から聞き込み捜査をしていた、現地警察刑事課の刑事にも、「ニュータウンで、君島らしき人物を目撃した」との目撃情報が、何件か寄せられていた。これは、確かな事実だ。
     *
「泳がせておかないで、いっそのこと、逮捕しちゃいましょうよ!」
 華が会議冒頭で、強くそう言ったが、今回ばかりは、そう簡単にいくものじゃない。会議は迷走し、一時収拾のつかない状態にまでなった。
     *
「よし。明日、君島を任意同行しよう。容疑が固まり次第、逮捕へと踏み切る」
 ペルソナの一声は、さすがに、総監の鶴の一声だったらしく、効果絶大で、会議はたちどころに一決した。会議は迷走を振り切って、ようやく妥結したようだ。
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