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第34話。
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ジミーが職探しをし始めた。今は、ネットの時代だ。職安を回る人間は、ほとんどいない。しかし仕事は、実際、そう簡単に見つかるもんじゃない。
その日、午前中から昼食を挟んで、日が暮れるまで、職を探し回ったが、結局、一件も見つからなかった。
頭を切り替えて、アルバイト探しに掛かる。フリーでも、何でも、仕事さえしていればいいと思い、ネットを駆使して、サイトをチェックし始めた。
“あった、あった”
島の六番街のクラブマーブルでの、給仕の仕事だった。給仕というのは聞こえがいいだけで、実際はホストの仕事だ。接客だけど、やれないことはないと思いながら、善は急げで、すぐに電話を掛けてみた。
*
電話越しに挨拶すると、女性の声が聞こえてくる。電話口の相手は、どうやら若い女性らしい。
ジミーが挨拶を返し、
「そちらでアルバイトをしたいんですけど……」
と日本語で言うと、その女性も、相手が日本人だと分かったらしく、
――いいですよ。早速明日、お店に来ませんか?
と、日本語で返してきた。
「分かりました。是非伺います。どうぞよろしく」
――お名前は何て仰るの?
「ジミーって呼んでください」
――ジミーね。分かったわ。
女性の声を最後までちゃんと聞き届けてから、電話を切り、続けて、家にいる亜季に告げる。
「バイト決まりそうだよ」
「そう。……何の仕事?」
「クラブの給仕」
「ホスト?」
「まあ、大差ないけどね」
「あなたに、接客できるかしら?」
「大丈夫。俺、こう見えても、大学時代、新宿でバーテンのバイトしてたんだぜ」
「じゃあ、やれるわね」
そう言った亜季が、笑みを零して喜ぶ。互いに、一体化していた。同居している以上、カップルでも、もはや夫婦同然だ。
*
その日、ジミーと亜季は夕食を取って、食事後、入浴し、同じベッドで眠った。そろって、至福の時を過ごす。追っ手は、そんな二人にも、確実に迫っていた。
ジミーが職探しをし始めた。今は、ネットの時代だ。職安を回る人間は、ほとんどいない。しかし仕事は、実際、そう簡単に見つかるもんじゃない。
その日、午前中から昼食を挟んで、日が暮れるまで、職を探し回ったが、結局、一件も見つからなかった。
頭を切り替えて、アルバイト探しに掛かる。フリーでも、何でも、仕事さえしていればいいと思い、ネットを駆使して、サイトをチェックし始めた。
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ジミーが挨拶を返し、
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と日本語で言うと、その女性も、相手が日本人だと分かったらしく、
――いいですよ。早速明日、お店に来ませんか?
と、日本語で返してきた。
「分かりました。是非伺います。どうぞよろしく」
――お名前は何て仰るの?
「ジミーって呼んでください」
――ジミーね。分かったわ。
女性の声を最後までちゃんと聞き届けてから、電話を切り、続けて、家にいる亜季に告げる。
「バイト決まりそうだよ」
「そう。……何の仕事?」
「クラブの給仕」
「ホスト?」
「まあ、大差ないけどね」
「あなたに、接客できるかしら?」
「大丈夫。俺、こう見えても、大学時代、新宿でバーテンのバイトしてたんだぜ」
「じゃあ、やれるわね」
そう言った亜季が、笑みを零して喜ぶ。互いに、一体化していた。同居している以上、カップルでも、もはや夫婦同然だ。
*
その日、ジミーと亜季は夕食を取って、食事後、入浴し、同じベッドで眠った。そろって、至福の時を過ごす。追っ手は、そんな二人にも、確実に迫っていた。
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