『逆行。』

篠崎俊樹

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第18話。

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 東京に戻り、タカのマンションに帰り着いたジミーが、
「すまん。こんなことになってしまって」
 と一言詫びた。
「いいよ。こうなることは、想定内だった」
「想定内って?」
「予測できてた。こうなった以上、第三、第四の殺人を実行しなければならない」
「ターゲットは決まってるのか?」
「もちろん」
 そう言ったタカが、手元のノートパソコンに取り込んでいた資料を、ジミーに見せた。裏堅気の男の商売道具は、仰々しい。また、物騒な代物だと思う。
 そこに、ニューストゥディキャスターの佃仁史と、社会自由党幹事長の高畑優の名前があった。どちらも、著名人だ。こいつらを、次は狙うらしい。汚い輩であることには、違いはないだろうが……。タカの浮かべた不敵な笑みに、ジミーは気が滅入ってしまう。そして、次は自分も殺人に加わると言った。大丈夫か?正気なのか?正気とは思えないのだが……。
 タカのビジネスは、裏のそれだった。汚いことをして回る。実際、棘があった。
 タカが、預金通帳一通と、引き出し用の暗証番号が走り書きされたメモ用紙を手渡して、言った。
「明日見て来い。場所は、京成銀行北新宿支店。現金で、一千万入ってるからな」
 成功報酬らしい。多額すぎて、全く見当が付かない。
 ジミーが通帳の中を見ると、未記帳のため、金額の数字はどこにも見当たらない。暗証番号が記された紙を見ると、吐き気を覚えた。最低だなと思う。
 黙って、通帳をポケットの中に仕舞い込む。こんな自分が悔しい。歯噛みするしかなかった。
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