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第17話。
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JR舞浜駅で降りた二人が、駅から十五分ほど歩いて、ゲートから東京ディズニーシーへと入る。園内は、混雑していた。人の渦だ。実際、大混乱しかねない。
色鮮やかにコーディネートされたアトラクションを外から眺めながら、どれに乗ろうかと思う。実際、どれに乗っても、様になる。互いに、意気投合していた。どこにでもいるカップルのように、変わったところは全くない。また、あるわけもない。
「今のところ、異状ありません」
尾行を続ける華が、無線に向かって、囁く。その声は、冷ややかだ。
無線越しに、八田が言う。
――おい、片桐。君島次郎はどうしてる?
「凶暴な殺人犯には見えませんよ。警部補の思い違いなんじゃないですか?」
――そんなはずないよ。仮に俺の思い違いだったとしたら、方針変更じゃないか?
「どうやら、そのようですね。完全にシロです」
――そんな……。
「勘弁してくださいよ。こんな服着せられて」
――任意で、聴取しろ!
「はい」
華が、すぐさま二人に近付き、ジミーの前に立つと、金の刺繍が入った警察手帳を見せて、言った。これが、本物の刑事である証だ。
「警視庁の者です。君島次郎さんですね?ちょっと、事情を伺ってもよろしいでしょうか?
すぐさま、ジミーが華の手を振り払う。そして、一路、まっしぐらに逃げ出す。
「待ちなさい!」
ジミーは、逃げられるところまで逃げよう、と思い、全力疾走した。走る速度が上がる。実際、遠慮ない。
「止まりなさい!」
華が背後からそう言って、携帯していた拳銃を取り出し、空中に向かってまず一発、威嚇射撃した。パーンという銃声が鳴り響き、園内が、たちまちパニックになる。辺りにいた人たちが、一斉に怯え出した。
ジミーは、出入口ゲートから、勢いよく外に飛び出すと、スマホを取り出して、タカの番号に繋いだ。そして言う。
「おい、付けられてたぞ!なぜだ?」
――いいから落ち着け。すぐに、俺のマンションに戻って来い。
「分かった。でもその前に、亜季を」
――ほっとけ!子供じゃないんだから、一人で帰れるだろ!
「そういう問題じゃなくて」
――今は、自分の身を守ることだけ考えろ!
「分かった」
スマホを切り、舞浜駅まで、汗だくで失踪する。自分でも、これだけ走ったのは、高校の時以来だと思った。それぐらい、渾身で走った。実際、疲れ果てる。
そして、東京方面のホームに来ていた電車に飛び乗った。これで、逃げ延びた、と思った。
「取り逃がしたわね」
追い付いた華が 歯軋りする。悔しそうに、一つ舌打ちした。
息を弾ませながら、やっと追い付いた亜季が、
「どういうことなんでしょうか?」
といぶかしむと、
「あなた、知らないの?あの男は、亡くなった甘利健吾民慈党幹事長殺しの犯人かもしれないのよ」
亜季は一瞬、我を疑った。よく見ると、ヒールの踵が、走った勢いで折れてしまっている。そして、次には、どうしようもない念が沸き起こった。一気に、だ。
JR舞浜駅で降りた二人が、駅から十五分ほど歩いて、ゲートから東京ディズニーシーへと入る。園内は、混雑していた。人の渦だ。実際、大混乱しかねない。
色鮮やかにコーディネートされたアトラクションを外から眺めながら、どれに乗ろうかと思う。実際、どれに乗っても、様になる。互いに、意気投合していた。どこにでもいるカップルのように、変わったところは全くない。また、あるわけもない。
「今のところ、異状ありません」
尾行を続ける華が、無線に向かって、囁く。その声は、冷ややかだ。
無線越しに、八田が言う。
――おい、片桐。君島次郎はどうしてる?
「凶暴な殺人犯には見えませんよ。警部補の思い違いなんじゃないですか?」
――そんなはずないよ。仮に俺の思い違いだったとしたら、方針変更じゃないか?
「どうやら、そのようですね。完全にシロです」
――そんな……。
「勘弁してくださいよ。こんな服着せられて」
――任意で、聴取しろ!
「はい」
華が、すぐさま二人に近付き、ジミーの前に立つと、金の刺繍が入った警察手帳を見せて、言った。これが、本物の刑事である証だ。
「警視庁の者です。君島次郎さんですね?ちょっと、事情を伺ってもよろしいでしょうか?
すぐさま、ジミーが華の手を振り払う。そして、一路、まっしぐらに逃げ出す。
「待ちなさい!」
ジミーは、逃げられるところまで逃げよう、と思い、全力疾走した。走る速度が上がる。実際、遠慮ない。
「止まりなさい!」
華が背後からそう言って、携帯していた拳銃を取り出し、空中に向かってまず一発、威嚇射撃した。パーンという銃声が鳴り響き、園内が、たちまちパニックになる。辺りにいた人たちが、一斉に怯え出した。
ジミーは、出入口ゲートから、勢いよく外に飛び出すと、スマホを取り出して、タカの番号に繋いだ。そして言う。
「おい、付けられてたぞ!なぜだ?」
――いいから落ち着け。すぐに、俺のマンションに戻って来い。
「分かった。でもその前に、亜季を」
――ほっとけ!子供じゃないんだから、一人で帰れるだろ!
「そういう問題じゃなくて」
――今は、自分の身を守ることだけ考えろ!
「分かった」
スマホを切り、舞浜駅まで、汗だくで失踪する。自分でも、これだけ走ったのは、高校の時以来だと思った。それぐらい、渾身で走った。実際、疲れ果てる。
そして、東京方面のホームに来ていた電車に飛び乗った。これで、逃げ延びた、と思った。
「取り逃がしたわね」
追い付いた華が 歯軋りする。悔しそうに、一つ舌打ちした。
息を弾ませながら、やっと追い付いた亜季が、
「どういうことなんでしょうか?」
といぶかしむと、
「あなた、知らないの?あの男は、亡くなった甘利健吾民慈党幹事長殺しの犯人かもしれないのよ」
亜季は一瞬、我を疑った。よく見ると、ヒールの踵が、走った勢いで折れてしまっている。そして、次には、どうしようもない念が沸き起こった。一気に、だ。
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