『盆綱引き』

最終話。

　　　　　ＦＩＮ
　実際、私が、今回の盆綱引きで感じたことは、一連の行事が全て、自分の、ものを見る目を育て、養ってくれたことだ。これは、井戸から頭蓋骨を引き上げる行事で分かったし、盆綱を引く作業でも分かったことだった。私は、この日の体験で、十分分かった、大事なことがある。それは、人間が生きるということは、大変だということだ。井戸から引き上げられた頭蓋骨は、供養へと回されたが、それは、それでいいと思う。実際、かなり古い頭骨があったが、別に、それはそれで、供養されれば、元の状態へと帰る。
　一晩が終わり、夜が明けた。また、朝倉市は動き出す。この『盆綱引き』という小説は、ここら辺りで、話を結んで、結稿しようと思う。たった一晩の出来事を綴っただけだが、私にとっても、この行事の意義が十分分かった。他に書くことはない。私は、この日の朝、明け方に、自宅である藤原家に帰ってきて、昼過ぎまで眠った。眠り過ぎたと思う。後から振り返ってみれば。そして、昼過ぎに起きたこの日、自室でテレビを見ながら、考えていた。あの行事は、ここ朝倉市にとって、何の意義があるのかと。仮に、大して意義はないにしても、地元に古くから根付く行事として、尊重されているのだろう。この小説に、最高の結びを作るために、ここら辺りで、物語を終わりとしたい。また、来年以降、つまり、二〇一八年以降も、この盆綱引きを見ることになると思う。その時は、その時で、大いに楽しみだ。それでは、その来年以降の盆綱引きに期待しつつ、稿を結ぶこととする。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（了）