『盆綱引き』

篠崎俊樹

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第7話。

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     7
 私は、健三の臨終に際しても、一応、同情するような顔をしたが、実質、軽蔑しきっていて、相手にしなかった。汚いし、体も臭い。はっきり言って、最低最悪だった。先にお風呂に入られれば、加齢臭が充満して、臭いし、はっきり言って、鼻が潰れるような臭気が辺りに充満して、最悪だと思えた。死んでも、線香一本上げてやりたくないというのが、本当のところだった。
 私は、健三のことが本質的に嫌いなのだ。邪魔ばかりして、すぐに、特定の人間ばかりに味方する。嫌いというより、もう、お互いに、顔を合わせたくなかったのだった。辟易する。それだけだ。何かあれば、すぐに逃げるだけだし、あれが人間かと思う。私は、勝手に、スーパーに買い物に行くし、健三のことは、もうどうだっていいのだった。公共料金等も滞納するし、はっきり言って、生理的に嫌いなのが、本質だ。
 もう、健三のことは、どうだっていいと思えたし、すぐに、精神病の子供のことを馬鹿にするから、相手にしたくはないのだった。現に、あの人間と関わるのは、無駄そのものだ。今でも、十分そう思える。私は、ものが足りないときは、自分で買い物に行って、全部買い揃える。はっきり言って、亡き父のことは、どうだってよかった。今でも、そう思っている。汗を掻けば、自分でお風呂に入って、綺麗にするし、スーパーにも自力で行く。何のあてにもならない、と思えた。
 いや、嫌いという感情じゃ済まないだろう。そう思える。特定の人間ばかりに味方して、自分は何もしない。飽きれ果てていた。これは、盆綱引きとは話が逸れるが、みんな、健三のことが嫌いだったのだ。現に、みんなで嫌い抜いていた。私も、あの人間のことが大嫌いで、しょうがない。まあ、別にいい。もう捨てていたし、すでに他界している。いつも、朝は台所を占領して、ラジオを聴くのが、亡き父の習慣だった。ハア?と思えた。何それ?と言いたかった。
 健三の加齢臭は、六〇代のころから、すでに始まっていた。臭いし、鼻が潰れる。私は、大嫌いでしょうがなかった。今でも、そう思っている。現に、健三のことは、死んだときから、全く覚えていない。一切、シカトで通していた。私にとって、まるで用のない人間だったのだ。まあ、お互いに反りが合わないということだろう。今でも、十分そう思っている。うちの近くに、地元で営業する、信用組合の支店が一軒あるが、そこにいる、ダサい格好をした支店長と、まるで同じだった。もう、何と言うか、顔を合わせるのさえ、嫌だった。私が、部屋にいて、こうやって小説を書くのも、健三から逃げ回るためだ。そう思ってもらって、構わない。現に、必要になれば、買い物ぐらい、自分で行く。(以下次号)

 
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