『盆綱引き』

篠崎俊樹

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第6話。

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 井戸に落とされていた頭蓋骨は、かわいそうな存在として、丁重に葬られるのだが、健三は逆だ。私は、自分の親だったとしても、許さない。実際、健三は最低最悪だった。それは、顔を見ていて分かる。あと、目つきも。何となく、一緒にいて、嫌な感じがしたのだ。私の個人的な述懐は別として、実際、亡き父の人間性は、最低だった。
 私は人間の価値を、顔つきと態度に置く。どんなに立派な経歴を持っていても、この二つがだめなら、捨てることにしている。実際、健三はどっちもだめだった。言わずもがなだったのだ。何と言うか、精神病を患っている子供のことが分からなかったらしい。現に、この人は何もしてない。この世の中において。別に、私も、一人の人間として、この人間を軽蔑しきっていたのだ。
 ある意味、素が出るらしい。人間性というものは。やってきたことが何もないから、評価など、されない。亡き父に関して、この一点だけだ。今だって、そう思っている。十分すぎるぐらい、十分に。人間性が悪かったから、そうなった。そうとしか言いようがない。
 人の評価というものをし切れないらしい。何か、勘違いというか、そういった感じだった。ずっと、そう思って見てきた。私が、二〇代ぐらいのころからすでにおかしくなり、もう、それから先の人生は、暗澹としていた。一発で分かったのだ。あの目つき、顔つき、態度……、もう、何も言うことはない。
 盆綱引きは、人を懐旧に赴かせる。私には、そう思えた。実際、過去を振り返るということが、私にとって、痛いほど分かったのだ。別に、こういった行事を経なくても、分かる人には分かるのだろうけど……。何もしない人というのは、罪だ。実際のところ。私は実際、露骨までにそう感じていた。特に、盆綱引きでも、綱の揺れや掛け声の掛かり方、そして、頭蓋骨を引き上げる行事を見ていると、それが分かる。ある意味、それが人間世界の生き様だと思う。人は、何かしてこそ、人間なのである。私は、自分が精神病だから、そういったことが人一倍分かる。何と言うか、当たり前に、と言うか?また、私にとって、健三のような人間は、全くの問題外的存在なのだ。人間としての務めをまるで果たさないし、落ちこぼれ以下だと、レッテルを貼ってやりたい。心からそう思える。つまり、私は亡父に関して、一切投げている。何と言うこともなしに……。(以下次号)
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