『今すぐ、会いたい』

第3話。

　　　　　３
　俺が敵に回したのは、周囲の大人だけじゃない。妹も、いつの間にか、敵に回った。いや、敵というより、口を利かない仲となった。俺にとって、妹も、早稲田大学などを出ていて、苦労などの言葉とは、全く無縁だったから、放擲の対象となったのだ。妹も、妹の夫、つまり義理の弟も、苦労などしてない。いつも、いいとこ取りで、俺のような労苦がない。俺は、大学在学中に、家庭教師のアルバイトをして、学費を全額稼いだ。父親が、俺の大学入学前に、学費を全部、競馬で使い込んだのだ。それで、俺は、入学早々、働かないと、大学には一日も通えない学生となった。当時、洗濯機は、アパートに、佐川急便が届けてくれて、自作して使った。本体が二万五千円で、配送費が三千二百円。〆て三万円弱で洗濯機が一台そろった。俺は父親に関しては、相当迷惑を被った。何と言うか、父親の認知症は、もう、俺の大学在学中から始まっていて、手の付けようがなかったのだ。競馬場に行って、大枚を摺ってくる、地元の酒場や風俗店などに行って、キャバ嬢や風俗嬢と遊ぶ……、俺の家族がどれだけ迷惑したかは、これだけ書けば、分かるだろう。慶応義塾大学などと、偏差値の高い大学を出たようだが、はっきり言って、専門の知識もあやふやだし、適当。これだけ言えば、俺が父親のことを、茶の間ジジイ呼ばわりするのも、頷けると思う。（以下次号）