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第9話。

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 蓮の沼に着くと、足をそっと動かしながら、沼を渡り始めた。蓮はひと際、軽く、足を踏み外すと、沼の下へと、落下してしまう。沼の中は、足元を掬う泥水に加え、ドロドロの泥があり、落ちれば、一溜まりもない。俺は慎重に渡り始めた。あくまで、落ちないように。蓮は軽く、全身がフラフラとなりかねない。体の重心を支えながら、慎重に動き、沼を渡っていく。
 沼の下には、泥が浮いていて、相当しつこいぐらいに、溜まっていた。蓮は、今にも、浮きそうで怖い。踏み外して落ちると、とんでもないことになる。この沼は、落ちれば、たちまち、まずいことになってしまう。俺も十分気を付けていた。仮に落下して、踏み外せば、俺は、沼に棲んでいる魚の餌食になる。俺自身、十分気を付けていた。まあ、ここは、ゆっくりと歩いていくしかない。
 やがて、蓮の沼を渡り切った。一安心する暇もなく、今度は、次なる目的地へと向かって、全力疾走する羽目になる。疲れはあった。全身が倦怠するような疲労だ。次の地は、実際、ここ天国におけるトライアルでも、最期の場所だ。手には、さっき、極楽の丘で手に取った、勾玉を抱えている。これを持ち帰って、王に献上し、任務は終わりだ。もう一息である。この天国一周レースが終わるまで……。(以下次号)
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