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第4話。

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 俺の体に突き刺さった針は、腰に刺さっていた。痛い。呻きながら、前を見据えると、箱に入った、薬らしいものがある。手に取って、薬の蓋を開け、腰の患部に塗った。痛みが取れる。少しだけだが……。だが、疲れは癒えない。疲労は蓄積されている。体が重たい。針は、腰に深く突き刺さっている。針を抜いて、痛みを取った。
 針の山を越えると、今度は、平原があった。平坦な場所が、淡々と続く。特に難なく超えていった。天国と地獄が隣り合わせなのは、知っていた。俺も、昔、地上で幼少時に聞いたことがあった。確か、母が子守唄で、そう言っていたのだ。あの世と地獄は、繋がっていると。俺もそれを聞いて、驚いていた。実際、驚くに決まっている。俺にとって、地上での苦しみは、地獄での苦しみとは違っていた。地上では、散々な目に遭った。苦労もした。俺が経験した苦労は、実際、果てない。でも、今はいい。もう終わったことだ。今は、天国にいる。地獄とは隣り合わせの。俺は、自分の人生に、一切後悔はないと思っている。夜が必ず明けるように、この地獄での夜や闇も、必ず明けるのだ。そう思っていた。俺の確信である。半ば、自分に言い聞かせている類の……。(以下次号)
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