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第三章
ガサ入れしてやりました。
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「こちらをマザー様に献上しましたら……きっとユリア様は困った立場に追いやられますよね」
脇の甘いユリア様のこめかみがヒクヒクと痙攣します。
「私にこれ以上、何をさせたいのよ」
この女神様との交信スポットは、恐らくユリア様が『個人的に』お調べになったのでしょう。はっきりした理由は分かりませんが、マザー様を出し抜こうとしたのは明白。その証拠である地図を記録させた水晶は、さぞかし大切な……命の次に大事なお品のように思います。
きっと、この件が露見すれば、ユリア様は失脚程度では済まなそうですし。まあ、これは今の彼女の顔を見れば一目瞭然。
「では、まずその箱に施されている、もう一つの封印を解いて頂けますか?」
別に脅しているのではありません。お願いしているのです。
「な、ん……そんなの、ないわ。ほら、中身は空じゃない。二重底にもなってないわ、触って確認してちょうだい」
あまり装飾はされていない簡素な作りの箱ですが、そこにあります錠には見覚えがあったのです。
そのような薄っぺらな嘘は一刀両断です。
「私、このお品を商いに来られた方に教えて頂きましたの」
開いた蓋をパンと閉じてやります。すると錠には触れずとも、もう蓋は開きません。
「こちらの錠に埋め込まれた小さな石が、使用状況を示しているのですよね。何も入っていないなら、このように美しい色はしていませんわ」
普通の錠とパッと見に違いなどございませんが、立派なマジックアイテムで、封印を施した同一人物でないと解除されない仕組みになっております。
故に魔術や魔法の心得がありませんと使用出来ません。例え心得があろうと別人が開こうとしますと、箱の底に小さな次元の穴が生まれ、蓋を開ける前に中身はこの世から消えてしまうそうでございます。
脇の甘いユリア様のこめかみがヒクヒクと痙攣します。
「私にこれ以上、何をさせたいのよ」
この女神様との交信スポットは、恐らくユリア様が『個人的に』お調べになったのでしょう。はっきりした理由は分かりませんが、マザー様を出し抜こうとしたのは明白。その証拠である地図を記録させた水晶は、さぞかし大切な……命の次に大事なお品のように思います。
きっと、この件が露見すれば、ユリア様は失脚程度では済まなそうですし。まあ、これは今の彼女の顔を見れば一目瞭然。
「では、まずその箱に施されている、もう一つの封印を解いて頂けますか?」
別に脅しているのではありません。お願いしているのです。
「な、ん……そんなの、ないわ。ほら、中身は空じゃない。二重底にもなってないわ、触って確認してちょうだい」
あまり装飾はされていない簡素な作りの箱ですが、そこにあります錠には見覚えがあったのです。
そのような薄っぺらな嘘は一刀両断です。
「私、このお品を商いに来られた方に教えて頂きましたの」
開いた蓋をパンと閉じてやります。すると錠には触れずとも、もう蓋は開きません。
「こちらの錠に埋め込まれた小さな石が、使用状況を示しているのですよね。何も入っていないなら、このように美しい色はしていませんわ」
普通の錠とパッと見に違いなどございませんが、立派なマジックアイテムで、封印を施した同一人物でないと解除されない仕組みになっております。
故に魔術や魔法の心得がありませんと使用出来ません。例え心得があろうと別人が開こうとしますと、箱の底に小さな次元の穴が生まれ、蓋を開ける前に中身はこの世から消えてしまうそうでございます。
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