転生令嬢の幸福論

はなッぱち

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第三章

神のおわす場所に到着してやりました。

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 教会は古くから医院に駆け込めぬ貧しい方たちの為、無償で治療を施す場所でもあります。その際に必要な薬を私たち商家が、これまた無償で提供いたします。それ故、教会に提供しました物資は課税対象になりません。

 お父様が何をしているのかは、詳しくは存じませんが、教会のお偉方を選ぶ選挙と呼んでよろしいのでしょうか、そんな時期ともなれば、せっせとご援助を運んでおられるのを知っているのです。

 俗世と切り離せぬ教えに、救いを求めようとは思えぬもの。そのような側面を幼い頃より身近に見て参りましたので、私の不信心は致し方ないことでございます。

 初めてお目にかかった聖職の御方が、正にそういった腐敗の象徴のような方でしたので、正直な所、教会に良いイメージというものが全くありません。

 それを言い訳には出来ませんが、私はサリー様と同じく、教会という表面上は神聖な場所での礼儀作法に疎いのです。

「薄汚い傭兵が、貴様らここで何をしている。施しならば、表の立て札を見よ! 外に仮設のテントが立っているであろうが、えぇい早くそちらに向かわぬか」

 正面から教会の扉を開きますと、この有様でございます。

 清貧な一種神々しい建物の空気を掻き消すように、慌ただしく司祭の方でしょうか、肥え太った家畜のような御方が喚きながら近づいて来ます。

 あら、いやだ。その御方は幼い私の信仰心を枯渇させた、我が家とも縁深い『蒼穹の眼』ことシーザライ様でありました。

「あぁん? なんだいオッサン。アタイらは施しを受けに来たんじゃないよ。昔なじみに会いに来ただけさ。ユリアを出しとくれよ」

「ユリアだと。あの女狐めが、どこまで我が住処を貶めれば気が済むのか! 忌々しい、目障りだ、失せよ! 失せよ!」

 手に持った豪奢な杖を振り回しながら、シーザライ様は喚き続けます。

 サリー様がクイッと捻って黙らせて下さらないものかしらと期待しておりましたが、その必要はありませんでした。

「神のおわす神聖な場所を『我が住処』などと、よく言えたものです」
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