転生令嬢の幸福論

はなッぱち

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第三章

将来に不安を覚えてやりました。

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 ビシッと天高く上げました人差し指で空を指し、今後書き加えられるであろう輝かしい経歴を披露します。

 色々と問題はあるのですが『エレノア嬢』が『フィア嬢』として、どの程度完成しているのか、探る必要もあったので、あえて高らかに宣言してやったのですが、サリー様の反応は冷ややかです。

「なるほど、しっかり仕事の話は聞いてたって訳だね。上等だよ」

 私の妄言とも思われる言葉に何一つ訂正が入りません。

 と、言うことは、エレノア嬢には『聖女としての能力がある』のでしょう。それは、ありがたくも、少々困ります。

 なんせ、私にはとんと思い当たることがないのです。どのように奇跡の力を行使するのか、皆目検討がつきません。

「あの、サリー様。つかぬことを伺いますが、人を癒やす奇跡の力ってどういうモノだと思われます?」

「あぁん? 人を癒やす奇跡なら女神の加護のことだろうね。それがどうしたい」

「私にそんな力がありますの?」

「あるわきゃねーだろ、アタイらみたいなのに付き合うほど、神様も暇してねぇよ」

 酷く侮辱された気分になる視線を向けられてしまいました。しかも、これまた困った事実と一緒に。

「私、聖女ではありませんの?」

「アンタが聖女なら、そこら辺の娘っ子みーんな神の使いだよ。おいおい、いい加減にしとくれよ。アタイに何を言わせたいんだい」

 いけません。ここまで数時間で築いてきたサリー様との関係性が崩れかかっております。

 あまり良い印象の方ではございませんが、魔獣が出たら体を張って守って下さるそうなので、出来れば友好な関係を保っておきたい所です。

「私、部屋を出る前に申した通り、医療の心得はありませんの。ですから、教会の方々が受け入れて下さるか心配で心配で」

 口元を隠しながら、少し目を伏せ上目遣いで不安を伝えてみました。

「あぁ? 何が『心配で心配で』だ。今回の仕事なんざ、アンタの独擅場だろうが」
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