転生令嬢の幸福論

はなッぱち

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第一章 

遺書をしたためてやりました。

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拝啓、親愛なるお父様。

お父様の溺愛する一人娘である私、アリシアの先立つ不孝をお許し下さい。

今日、この日。
天高くおわします守護神ユリア様ですら、昨日まで垂れ込めておりました雲を払い祝福するかのような、晴れ渡る空の下、アリシアは生きる意味を失いました。

我が国、すべての民が祝福するであろう、お二人が結ばれる、その時。
アリシアはこの身の置かれる世界を儚み、旅立つことに決めたのでございます。

今まで抱えきれないほどの過剰な愛情をありがとうございました。
何一つ報いることなく、逝くこと心苦しく思いますが、アリシアの最後の願いを叶えること、今日のお空のように広いお父様のお心で、どうか寛大にお許し下さいまし。

何度も申し上げた通り、アリシアにとって、エイダンと共に生きてゆけぬ世界こそ、まことの不幸なのでございます。

淑女として育てて頂いた手前、化けて出るなどもってのほかですので、この最後の手紙に少しばかり気持ちを書き記したいと思います。心してお読み下さいまし。

いくら我が国の危機を救った救世主様か知りませんが、幼少より大切に絆を深めてきた婚約者の私との話合いの場を一つとして持たせず、エイダンに婚約を破棄させるなど非常識ではありませんか。

救世主様の行儀の悪さにも憤りを感じましたが、お父様もお父様です。なぜ抗議の一つもして下さらなかったのでしょう。

本当だったら、今この時、エイダンの隣に立っているのは私のはずだったのに。
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