圏ガク!!

はなッぱち

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圏ガクの夏休み!!

初夜

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 頭の芯から蕩けそうな感覚のせいか、唇から先輩の体温が離れていく時、思わず「あっ」と声が漏れた。

 もっとしていたい、もっと先輩に触れていたい。

 隠す必要のなくなった剥き出しの欲求が、腕を伸ばし強引に引き寄せようとしたが、嬉しそうな顔で耳まで真っ赤になった先輩を見てしまうと、さっきまで平気だったのにオレまで照れが移ってしまう。

 先輩との関係が深まった事を実感して、体が喜んでいるのか、今すぐ廊下に飛び出して叫びながら全力疾走したい気分になる。

 きっと先輩も同じ気持ちに違いないと、一緒にひとっ走り行かないか誘おうとしたのだが、オレが口を開く前に先輩が動いていた。

「……もう、寝るか」

 そう言うと先輩は「電気消すぞ」とベッドから立ち上がり、スイッチのある医務室の入り口付近へ一人で行ってしまった。

 ヤバイ! 寝るに電気消すってヤバイだろ! 先輩、完全にやる気だ。走りに行こうと誘う前に、一発ヤろうと誘われちまった!

 パチンパチンと一つずつ、まるで焦らすみたいに室内の電気が消えていく。心の準備はだいぶ前から完了しているが、よく考えたらオレ……どうしたらいいのか、全然わかんねー!

 男同士ってどうすんだ? オレ、どうすりゃいいんだ? てか、オレはどっちなんだ?
 サイズ的に言えば、オレが掘られる方か。オレの方が身長小さいもんな。まあ、しゃーねぇな。女役をやるのか……やっべ、全く想像できねぇ。

 ケツを掘るんだよな……他に穴ねーし……ん、待てよ。ケツの中って……普通に考えて、汚れてたりするんじゃねーのか! 外に付いてる事はねーだろうが、中がクソ塗れだったらどーすんだ! マジでヤバイ、先輩のちんこが危険だ! びょ、病気になったりとかするかも……いや、その前に死ぬほど恥ずかしい!

「セイシュン、足が痛み出したら、ちゃんと言うんだぞ。あと、朝晩は少し冷えるから、腹だけでも布団かけて寝ろよ」

 少し離れた場所に一つだけ灯りを残し、暗くなった部屋の中を先輩が戻って来る。一人ベッドの上で悶えていたオレに、薄手の布団をかけると、先輩は少し迷ってから、オレの口端に軽くキスをした。

 そして、隣のベッドを軋ませ「おやすみ」と呟きながら横になった。

「…………」

 隣に寝転ぶ大男の静かな呼吸を聞きながら、オレは頭の下に敷いた枕を引き抜き、思い切り隣へ投げつけてやった。バフッと見事に命中した音を聞き届け、のそのそと布団から這い出す。

「いきなり何するんだ。セイシュン、枕投げはまた今度な。遊ぶのは、ちゃんと足が治ってからだ」

 先輩の顔面へ命中した枕を回収して、隣のベッドに飛び乗ってやる。ベッドが盛大に軋むが無視して、先輩を端へ追いやるよう押し退けながら寝転んだ。 

 大の男が一つのベッドに二人並ぶと、色んな所が当たって非常に狭く寝にくい。おかげで隣から「狭い」と切実な文句が聞こえてくる。

「セイシュン、ベッドなんてどれも一緒だぞ。まあ場所を交換するくらい構わんが」

 勝手にベッドから起き上がろうとする先輩の首根っこを引っつかみ、隣に引き戻しながら、今日はこの状態で寝ると明言してやった。てか、なんか前にも似たような事をやったなオレ……確か、遠足の前の晩だったかな? 進歩ねぇなぁ。

「先輩が全くやる気ないのは分かった……けどなぁ、オレは一瞬でかなり期待しちまって、頭ん中が大変な事になってんだよ。こんな状態で一人寝なんて無理だからな。添い寝くらいさせろ!」

 ビシッと要求を主張すると、先輩は心底嫌そうな溜め息を吐きやがった。

「やる気ってお前……隣の宿直室で谷垣先生がいるのに本気か? 何事だーって最中に踏み込まれるぞ絶対に」

「夜中に見回りに来たりしないよ。確実に酒飲んで寝てるし、気付かれねぇって」

 そんな下らない不安は消してやろうと、期待を再燃させつつ答えれば、先輩は小さく体を揺すってベッドを軋ませた。

「寝返り一つでもこれだけ軋むんだ。二人が上に乗って暴れたら壊れるぞ」

 ベッドぶっ壊すくらい激しいのか、先輩……ヤバイちょっと勃ってきた。

「それにお前、声デカイからなぁ」

「はぁ!? なんだよそれ! オレ別にデカイ声なんか出さねぇし! てか、いつの話だよ。見てきたみたいに言うな!」

 あまりに不本意な事を言いやがるので、全力で反論してやる。勝手に妄想すんな! とか思ったが、先輩は派手に声を出されるのが好きなのかと、即座に切り替え心にメモってしまった。

「前に俺が手でした事あっただろ? セイシュンは薬で朦朧としてたろうから、覚えてないのも無理ないけどな」

 記憶にない! そんな盛大に喘いだ記憶はない! って事にしたかった。思い出してしまうと、途端に顔から火が出る。

「…………そんなに酷かった?」

 恐る恐る聞いてみたら、力強く頷かれてしまった。もうちょっと言葉を選んで聞けばよかった。先輩が引くくらい酷かったんだ、オレの喘ぎ方……ショックと恥ずかしさで、思わず頭から布団を被った。

「まあ、そういう訳で、ここでは何もしない。残り少ない夏休みを反省室では過ごしたくないしな」

 布団の上から頭をポンポン叩かれる。「わかった」と答えるのが悔しくて、一人唸っていると、オレの傷ついている姿がおかしいのか、先輩は笑いながら、容赦なく布団をめくりやがった。

 頬杖をついて見下ろしてくる先輩は、オレの方へ手を伸ばし、くすぐったくなるような幸せそうな顔で笑っている。

「あの日は真山も学校に泊まり込んでたから、気付かれるんじゃないかと冷や冷やで心臓に悪かったしな」

 いい笑顔でトドメを刺された。もう、恥ずかしがるのも馬鹿らしいくらい、清々しい気持ちで悟った。

「もう二度と、そんな情けない声上げねぇ」

 乾いた声で笑うと、何故か先輩に唇を指先で摘ままれた。口を開けぬまま「何?」と聞くが、先輩は難しい顔で黙ってしまう。そして、唐突に膝を使って器用にオレの股間をグリグリと弄りだした。

 別になんてことはない、単に膝が当たっているだけなのに、期待の分だけしっかり膨らんでいるせいか、擦れる度に甘い快感が走り呼吸が妖しくなる。

 先輩に摘ままれた唇の隙間から、くぐもった声が漏れて耳に届く。焦れったさが、切なさを加速させて、もっと激しくしてくれと訴えるように、声も次第に大きくなった。

 オレの反応に満足したのか、先輩はゆっくりと唇を押さえていた指を離してくれる。口の中が唾液でいっぱいになって、今にも溢れそうだ。自分の満たされなかった欲求が爆発しそうで、オレは情けなさを自覚しながらも甘ったれた声で「もっと」と強請る。

 先輩はオレの反応を見て、ウンウンと確認するように頷くと、人差し指を口の前に立てた。

「お前のその声、俺は好きだよ。すごく……そそる。だから、もっと、聞かせて欲しい」

 親指の腹で頬骨の辺りを撫でられる。そうするのが当たり前のように、オレは目を閉じて先輩が動くのを待つ。

「…………でも、それはまた今度な」

 興奮という熱を含んだ色気のある声は、一瞬でカラッと爽快な声に変わる。目を瞑ったまま、情けない顔を晒したまま、オレは先輩の言葉を聞いて硬直した。

「隣で寝るのも勘弁な。ほぼ間違いなく、お前に蹴り落とされるから、俺は隣のベッドで寝るぞ」

 先輩はベッドを軋ませ立ち上がると、オレを少し引っ張り真ん中に寝かせ、さっきやったみたいに軽く布団をかけて、そそくさとオレが寝ていたベッドへ回り込んだ。

「それじゃあ、今度こそ本当に寝るぞ」

 呆気にとられて隣を見ると、先輩はしっかりオレに背中を向けて、横になっていた。

 煽るだけ煽って、そりゃねーだろ! と怒鳴る寸前、背中越しに先輩がボソッと呟く。

「続きは、誰の邪魔も入らない時に……な」

 やり場のなくなった憤りを飲み込み、興奮を散らすように一人バタバタと悶えていると、散らすどころか更に集まって、頭おかしくなるような一夜を過ごす羽目になったが、明日は絶対にやるんだと、自分の股間に言い聞かせ、先輩の言葉を信じてやり過ごした。
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