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蜜月
待ての出来ない後輩
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「先輩が嫌なら止めるけど?」
ストーブのおかげで暖まっているとは言え、一人で何も身に付けず寝るには寒すぎる。止めると言われたら、服を着て温かい飲み物でも要求しよう。
ぜんざいは飽きるくらい食べたので、今はシンプルに温かいお茶が飲みたい。そんな事を考えながら、先輩を強引に脱がす事を諦め全裸で胡座を掻いていると、バサッと何かが頭の上に投げ捨てられた。やっと観念したかと、オレは先輩の服を握り締め思い切り嗅ぎながら、布団に寝転がる。
「嫌な訳ないだろ」
オレが先輩の服で盛っていると、独り言のような声が聞こえ、絶賛吸い込み中の服をグイッと引っ張られた。素直に渡してやる気にならず、握り締めたまま少しだけズラして視界を確保する。すると、隣に座りオレを見下ろす先輩と目が合った。
何も言わず困ったように笑う顔を見ていると、ジワジワと胸が熱くなる。服なんて生ぬるいモノじゃあなく、先輩を全力で吸い込みたくなる。
握り締めた手を緩めれば、服はするりと取り上げられた。そして、オレの欲求を見抜いたのか、先輩は先輩自身を与えてくれる。無茶して切れた唇を気遣うような、軽く触れるだけのキスを。
「そんなんじゃ、ぜん、っぜん足りねぇから」
焦れったさも時には良いかもしれないが、全裸で待機している身としては今じゃあないと言う以外ない。先輩に任せておけず、オレは再び起き上がり先輩にのしかかる。
少々血の味が混ざろうと、貪るように先輩の唇と舌を吸う。
「こうしてると、お前に食われるんじゃないかと思う時がある」
オレが満足するまで吸い尽くすと、先輩は少し赤く腫れた口元を拭いながら言った。先輩を押し倒して、その腹の上で馬乗りになっている状態で聞いてしまうと『誘われているのでは?』と電光石火で自分の願いが導き出されてしまう。
「先輩……しても、いい?」
ゴクリと唾を飲み込み尋ねると、先輩は小さく首を傾げた。察しが悪いだけか、それとも純情な後輩を煽って内心楽しんでいるのか……多分前者だろうが、それすらもオレの興奮を燃え上がらせる。
「オレ言ったじゃん……先輩を……抱きたいって」
つい欲望が言葉になって出てしまった。それが絶対的な失敗だったと、声にした瞬間に悟る。隙だらけとも言える、オレに馬乗りを許していた先輩の体が急に硬直した。要するにさっきまであった隙は消え、先輩が臨戦態勢に入ってしまった。
「今日は、まだ、そういう気持ちには、アレだ。なってない」
何がどうなったのか、理解出来ない速度でオレらの攻守は逆転した。
先輩の上に乗り見下ろしていたはずなのに、オレは背中を布団に預け、先輩を見上げている。しかも、至近距離に顔があるのに目が合わない状況だった。先輩は気まずそうにオレから視線を逸らせていた。
どうしても嫌なのかと、思わず声に出そうだった不満を飲み込む。自然とむくれる顔を放置して、先輩の頬に穴を作る勢いで見つめてみる。さすがに無視出来ない圧を感じてか、観念したように先輩と目が合った。
「セイシュン……ん……こういう雰囲気になると、その、毎回挟む事になるのか、このやり取り」
絞り出すような声で、しっかり抗議してきやがる。全力で頷こうかと思ったが、少し考えて「萎える?」と聞いてみた。表情からも明らかだったが、力強く頷かれるとオレの心境も穏やかじゃあなくなる。
「じゃあ……がまん、する」
拒否られた傷心を見て見ぬ振りして、強引に欲求を引っ込めると、ちょっと呆れたような表情を浮かべて先輩が口を開く。
「俺の気持ちが動くまで待ってくれないのか?」
自分から言い出した事だが、無限に湧いてくる有り余る性欲を甘く見ていたと認めざるを得ない。
「待つよ! 待つ、けど……せめて期限が欲しい。ほら『卒業までに』とか」
一方的に負けを認め、情けなさを全開にして譲歩を求める。すると、あっさり「分かった」と返ってきた。
「ん、期限はセイシュンの言うように卒業までにしよう。ただし……」
ビシッと先輩の指がオレの鼻先に向けられる。
「俺じゃあなくお前が卒業するまで、だ」
「長いよ! 二年後じゃん!」
「俺の卒業だと短いんだ。あと二ヶ月しかないんだぞ」
そこをなんとか!
「セイシュン……そこまで言うなら、今からでも一思いにやってくれないか」
介錯でもさせられんのかってテンションで言われて、大喜びでケツ掘れる奴だと思われてんのか、オレは!
冗談ではなく本気の顔を見せられると、嫌でも冷静さが戻ってくる。二人で夜を迎える度にこのやり取りをするのは、先輩と同じくオレも萎える。
「分かった。先輩が口にするまで、この話題には触れないようにする。期限は……先輩の言うようにオレの卒業まで。これでいい?」
疑うような視線を向けられるが、嘘偽りないと正面からそれを受け止める。すると、遠慮気味に額をぶつけられた。
「お前の事が嫌な訳じゃあないからな」
「うん……あ、でもさ……ちょっと不安になったから、今から証明して欲しい。ちゃんと先輩に好かれてるのか、知りたい」
「ん、俺も知りたい。お前にどう思われてるのか」
ケツ掘りたいくらいに好きだけど、それを待てと言われたら二年くらい余裕で待てるくらい好きだ。
そう伝えようとしたが、余計な事を言わせない為か、口を塞がれたので断念した。
ストーブのおかげで暖まっているとは言え、一人で何も身に付けず寝るには寒すぎる。止めると言われたら、服を着て温かい飲み物でも要求しよう。
ぜんざいは飽きるくらい食べたので、今はシンプルに温かいお茶が飲みたい。そんな事を考えながら、先輩を強引に脱がす事を諦め全裸で胡座を掻いていると、バサッと何かが頭の上に投げ捨てられた。やっと観念したかと、オレは先輩の服を握り締め思い切り嗅ぎながら、布団に寝転がる。
「嫌な訳ないだろ」
オレが先輩の服で盛っていると、独り言のような声が聞こえ、絶賛吸い込み中の服をグイッと引っ張られた。素直に渡してやる気にならず、握り締めたまま少しだけズラして視界を確保する。すると、隣に座りオレを見下ろす先輩と目が合った。
何も言わず困ったように笑う顔を見ていると、ジワジワと胸が熱くなる。服なんて生ぬるいモノじゃあなく、先輩を全力で吸い込みたくなる。
握り締めた手を緩めれば、服はするりと取り上げられた。そして、オレの欲求を見抜いたのか、先輩は先輩自身を与えてくれる。無茶して切れた唇を気遣うような、軽く触れるだけのキスを。
「そんなんじゃ、ぜん、っぜん足りねぇから」
焦れったさも時には良いかもしれないが、全裸で待機している身としては今じゃあないと言う以外ない。先輩に任せておけず、オレは再び起き上がり先輩にのしかかる。
少々血の味が混ざろうと、貪るように先輩の唇と舌を吸う。
「こうしてると、お前に食われるんじゃないかと思う時がある」
オレが満足するまで吸い尽くすと、先輩は少し赤く腫れた口元を拭いながら言った。先輩を押し倒して、その腹の上で馬乗りになっている状態で聞いてしまうと『誘われているのでは?』と電光石火で自分の願いが導き出されてしまう。
「先輩……しても、いい?」
ゴクリと唾を飲み込み尋ねると、先輩は小さく首を傾げた。察しが悪いだけか、それとも純情な後輩を煽って内心楽しんでいるのか……多分前者だろうが、それすらもオレの興奮を燃え上がらせる。
「オレ言ったじゃん……先輩を……抱きたいって」
つい欲望が言葉になって出てしまった。それが絶対的な失敗だったと、声にした瞬間に悟る。隙だらけとも言える、オレに馬乗りを許していた先輩の体が急に硬直した。要するにさっきまであった隙は消え、先輩が臨戦態勢に入ってしまった。
「今日は、まだ、そういう気持ちには、アレだ。なってない」
何がどうなったのか、理解出来ない速度でオレらの攻守は逆転した。
先輩の上に乗り見下ろしていたはずなのに、オレは背中を布団に預け、先輩を見上げている。しかも、至近距離に顔があるのに目が合わない状況だった。先輩は気まずそうにオレから視線を逸らせていた。
どうしても嫌なのかと、思わず声に出そうだった不満を飲み込む。自然とむくれる顔を放置して、先輩の頬に穴を作る勢いで見つめてみる。さすがに無視出来ない圧を感じてか、観念したように先輩と目が合った。
「セイシュン……ん……こういう雰囲気になると、その、毎回挟む事になるのか、このやり取り」
絞り出すような声で、しっかり抗議してきやがる。全力で頷こうかと思ったが、少し考えて「萎える?」と聞いてみた。表情からも明らかだったが、力強く頷かれるとオレの心境も穏やかじゃあなくなる。
「じゃあ……がまん、する」
拒否られた傷心を見て見ぬ振りして、強引に欲求を引っ込めると、ちょっと呆れたような表情を浮かべて先輩が口を開く。
「俺の気持ちが動くまで待ってくれないのか?」
自分から言い出した事だが、無限に湧いてくる有り余る性欲を甘く見ていたと認めざるを得ない。
「待つよ! 待つ、けど……せめて期限が欲しい。ほら『卒業までに』とか」
一方的に負けを認め、情けなさを全開にして譲歩を求める。すると、あっさり「分かった」と返ってきた。
「ん、期限はセイシュンの言うように卒業までにしよう。ただし……」
ビシッと先輩の指がオレの鼻先に向けられる。
「俺じゃあなくお前が卒業するまで、だ」
「長いよ! 二年後じゃん!」
「俺の卒業だと短いんだ。あと二ヶ月しかないんだぞ」
そこをなんとか!
「セイシュン……そこまで言うなら、今からでも一思いにやってくれないか」
介錯でもさせられんのかってテンションで言われて、大喜びでケツ掘れる奴だと思われてんのか、オレは!
冗談ではなく本気の顔を見せられると、嫌でも冷静さが戻ってくる。二人で夜を迎える度にこのやり取りをするのは、先輩と同じくオレも萎える。
「分かった。先輩が口にするまで、この話題には触れないようにする。期限は……先輩の言うようにオレの卒業まで。これでいい?」
疑うような視線を向けられるが、嘘偽りないと正面からそれを受け止める。すると、遠慮気味に額をぶつけられた。
「お前の事が嫌な訳じゃあないからな」
「うん……あ、でもさ……ちょっと不安になったから、今から証明して欲しい。ちゃんと先輩に好かれてるのか、知りたい」
「ん、俺も知りたい。お前にどう思われてるのか」
ケツ掘りたいくらいに好きだけど、それを待てと言われたら二年くらい余裕で待てるくらい好きだ。
そう伝えようとしたが、余計な事を言わせない為か、口を塞がれたので断念した。
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