圏ガク!!

はなッぱち

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蜜月

冬季奉仕作業組

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 翌日から冬休みは本格的に始動する。

 先輩の部屋で過ごした翌日の日課である早朝ランニングをこなし、缶詰朝食を腹におさめ、少し遅めの午前八時に奉仕作業組は下山する。

 奉仕作業はご指名を受けた生徒のみ参加すると聞いていたので、小吉さんとオレと先輩の三人だけだろうと思っていたのだが、何故か三馬鹿も同行するらしく、朝から先輩に窘められるという愚行を犯した。まあ、あいつらが全部悪いので反省は最小で済ます。

 オレらの引率の教師は担任で、他の生徒を連れて来るのは圏ガク教師では比較的温和な中島の担当らしい。もう一人残っている教師も居るには居るが、霧夜氏なので当然の事ながら学校で留守番だろう。

 稲っちがソワソワしていたので、冬休みも女神の来訪がありそうだが、今年は何もやらかしていないので、霧夜氏の糧である本の搬入を買って出る気はない。二人でやるには重労働すぎるが、惚れた女の前で張り切る童貞には丁度いい量なはずだからだ。

 そんな感じで生徒六人に教師一人という割と大所帯になったおかげで、軽トラ下山は回避され、圏ガク内にある乗り物の中では一番安全を確保出来るワゴン車(窓が全部まともにある)で下山出来る事になった。

 暖房が効かないのは当たり前の仕様なので、車内も凍えそうに寒いが、野郎が詰め込まれた状態なので生ぬるい空気よりはマシと言える。

 行く前は、先輩と軽トラの荷台に乗り込むのも朝っぱらからスリリングを味わえていいじゃないかと思いもしたが、外気を遮断しているにもかかわらず、吐く息が白いのを見てしまうと、腹の立つ奴らではあるが三馬鹿を許容出来てしまうくらい、まともな車での下山はありがたかった。

 しかし、担任の荒っぽい運転は健在で、こっそり先輩が体を支えてくれていたにも関わらず、いつもの公民館に到着した直後は地面が揺れていた。夏の間、この運転での送り迎えを重ねる事で、体は慣れていたはずなのに、たった数ヶ月のブランクでその経験はリセットされたようだ。

「おはようございます。あら、全員出勤とは私も見る目あるわね」

 ガラガラの駐車場で、打ち上げられた魚みたくへばっているオレらを出迎えたのは、相変わらず元気そうな自称村長の村主さんだった。少し顔を上げると、ド派手なスポーツカーが、場違いな公民館の駐車場にデーンと止まっている。

「おはようございます。こちらの都合でこのような形になり申し訳ない」

「あーいいんですよ。お気になさらないで。元々、そちらのご厚意に甘えている所がありますので、持ちつ持たれつで参りましょう」

 野村がいないせいで、大量の労働力が自習に費やされる事を言っているのだろう。担任が来て早々、頭を下げているのを見て、オレも謝った方がいいんだろうかと真剣に悩む。

 十人以上の代わりになるかと言われると自信はないが、その十人が大した十人ではないのでなんとかなるかと、開き直って申し出ようとすれば、察したのか先輩の手がストップと言いたげにオレの頭を揺らす。

「俺も頑張るから、セイシュンは心配しなくていい」

 頼もしい事を言ってくれる。オレが頑張っても精々香月たちの代わり程度だが、先輩が頑張ってくれるなら正に百人力だ。

「じゃあ、まずは朝ご飯にしましょうか。お手伝いの内容については、食べながら説明するわ」

 オレが地味に感動していると、村主さんは生徒たちを呼び寄せ、公民館の中へと誘導した。出入り口の横にある事務所の隣、扉のプレートに掠れた文字で『会議室』と書かれた部屋へ入ると、中は石油ストーブが焚かれていて温かかった。

「君たちには二つのグループに分かれて、それぞれ違うお手伝いをして貰います」

 机の上にはコンビニで調達してくれたのか、インスタントのスープと総菜パンがそれぞれ三つずつ。あとペットボトルのお茶も人数分用意されていた。ストーブの上で湧かされたヤカンのお湯をそれぞれのスープへと注ぎながら、村主さんは説明を続ける。

「園芸部グループと仲良し三人組グループに分けようと思うんだけど、問題ないわよね?」

 豪快に注がれた湯は、ちょっと少なかったが、机に飛び散った湯の量を見ると『ちょっと』の追加を頼めば確実にカップから溢れる量を追加されそうだったので、大人しく濃い目のスープを味わう。ぽってりしていて、これはこれで美味しい。

「園芸部グループのリーダーは小吉君。金城君の方が先輩だろうけど、今までの活動実績を考慮して小吉君に任せたいの」

「はい、俺もそれがいいと思います。小吉は頼りになる」

 もちろんオレも異存はない。なんせ園芸部グループだしな。聞かれてもいないが、同意を示す為に一人で頷いていると、隣から「お、おぉぉ……」と小吉さんの唸り声が聞こえてきた。

「ぐるーぷりーだー……お、おれにやれるかな」

 既に総菜パンをペロリと二個食べ終わっている小吉さんは、三個目をジッと見つめて自問自答中だ。
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