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蜜月
結果発表?
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冬休み前の補習があるので、答案の返却は早い。試験最終日、昼休みを挟んですぐに全教科返ってくる。翌日には補習がスタートする為だ。
「試験結果は夜に見せ合おう」
先輩にそう言われたので、その日の放課後は皆元のフォローに回った。今更感が半端ないが、補習は追試をクリアしたら抜けられるシステムなので、多少は助けになるだろう。決して購買のカレーパンを机に積まれたからではないが、カレーパンは美味しかった。
先輩の点数が気になると言えば気になるが、最低ラインの赤点回避は確実なので気は楽だった。仮に赤点でも、今の先輩なら受験組に合流しなくても大丈夫だと思う。基礎は出来ているはずなので、補習中の追試で十分クリア可能なはずだ。
「でも、赤点だったらショックだろうな。セックスを封印されている今、どうやって慰めたらいいんだろ」
エロマンガを思い出しながら、その方法を探るがエロ方面全力で参考にならなかった。
夕食と風呂を終え、いつもより少し早めに、旧館の空き部屋へ向かう。心配はしていないとは言え、場合によっては守峰と直談判で先輩の冬休みを勝ち取らなければならない。そのせいか、オレは少し緊張していた。
「……セイシュン、今日は早いな」
先輩をどう迎えようか、一人悩みながら部屋に入ると、出迎えられてしまった。その表情は微妙に暗い。ついでに、昨日はなかった絆創膏が頬に貼られていた。
「先輩、その顔どうしたの?」
「あぁ、別に大した事ないんだが、ここに来る途中でじいさんに見つかってな」
じいちゃんが貼ったのか。どうりで、無駄に大きいと思った。大丈夫だと笑うので、それ以上は触れずオレも先輩の向かいに座る。
「試験、どうだった?」
オレが軽い調子で尋ねると、先輩は暗い表情に戻ってしまった。そして、深々と頭を下げてきた。
「すまん。あんなに助けて貰ったのに、追試を受ける事になっちまった」
「そんなの謝るなよ。オレの力不足でもあるんだ。オレの方こそごめんな。満点取らせるなんて偉そうな事言ったのに」
先輩の返却された答案を受け取る。圏ガクの赤点は五十点以下だったはずだ。傾向を見るに半分を基礎問題、残りを応用問題に振っている教師が大半だったので、やはり赤点が多ければ冬休みの補習を免れないだろう。一教科でもクリアしていたら、その点をアピールして冬休みの補習をオレに任せて貰えるよう説得出来るのだが……。
「あれ、てか、すげぇじゃん。ほとんど、七十以上あるんだけど……なんで追試なんて……」
先輩の点数は、どの教科もかなり良かった。赤点なんて一つもない、どころか最後の一枚はなんと満点だった。
「先輩! これ満点じゃん!」
「ん、それなんだが……駄目なんだ。カンニングならしくて、追試だって言われちまった」
「は?」
先輩が何を言っているのか、本当に分からず妙な声が出た。先輩がカンニング?
「満点取れて、セイシュンが言ってたみたいにな、満点取れて、ちょっと嬉しくてな……いつもなら避けるんだけど、木刀も軽く掠っちまった」
指先で絆創膏を掻きながら先輩は眉をハの字にして笑う。木刀という物騒な言葉でオレは状況を理解した。先輩の満点の答案、その問題を確認して、オレは思わず野村の怠慢を握りつぶした。
「先輩が事前に同じ問題を解いていたからカンニングだって言ったのか」
「知らなかったんだから、そんなの仕方ない事だ。追試を受ければ済むらしいから、大丈夫だ」
オレの声が震えていたせいか、先輩は慌てて大丈夫だと明るい声を出した。
大丈夫……ではない。先輩の努力をカンニング呼ばわりした奴をオレは許さない。図書室で貸し出されている参考書から問題を丸写しした試験を作る教師に、オレは断固抗議する。
満点の答案を掴み、部屋を飛び出す。夏休みには、旧館食堂で晩酌をしていたのを思い出し、駄目元で飛び込むと、そこに奴は居た。
飲んだくれている教師たちに大股で近づき、机に並べ立てた空き缶を払い落とし、野村の目の前に先輩の答案を叩きつけてやった。ついでにイスに立てかけてあった木刀を出入り口の方へぶん投げると、追いかけてきた先輩が白刃取りした。
「先輩はカンニングなんてしてない! あんたが手ぇ抜いた試験を作っただけだろ!」
用件をぶちまけると、野村は酒で赤かった顔を更に濃くし、吠えるような声を上げ、オレの首に掴みかかってきた。酔っているせいか、怒りのせいか、何を言っているのか分からない罵声を浴びせられ、隣のテーブルに投げ捨てられる。
「セイシュン!」
背中から叩きつけられると思ったが、いつの間にか駆け寄ってくれた先輩が抱き止めてくれた。転けずに済んだので、一矢報いてやろうと野村に飛びかかろうとしたが、それを読まれていたのか先輩は公衆の面前だと言うのに抱擁を続行した。というか、いつの間にか羽交い締めにされていた。
「試験結果は夜に見せ合おう」
先輩にそう言われたので、その日の放課後は皆元のフォローに回った。今更感が半端ないが、補習は追試をクリアしたら抜けられるシステムなので、多少は助けになるだろう。決して購買のカレーパンを机に積まれたからではないが、カレーパンは美味しかった。
先輩の点数が気になると言えば気になるが、最低ラインの赤点回避は確実なので気は楽だった。仮に赤点でも、今の先輩なら受験組に合流しなくても大丈夫だと思う。基礎は出来ているはずなので、補習中の追試で十分クリア可能なはずだ。
「でも、赤点だったらショックだろうな。セックスを封印されている今、どうやって慰めたらいいんだろ」
エロマンガを思い出しながら、その方法を探るがエロ方面全力で参考にならなかった。
夕食と風呂を終え、いつもより少し早めに、旧館の空き部屋へ向かう。心配はしていないとは言え、場合によっては守峰と直談判で先輩の冬休みを勝ち取らなければならない。そのせいか、オレは少し緊張していた。
「……セイシュン、今日は早いな」
先輩をどう迎えようか、一人悩みながら部屋に入ると、出迎えられてしまった。その表情は微妙に暗い。ついでに、昨日はなかった絆創膏が頬に貼られていた。
「先輩、その顔どうしたの?」
「あぁ、別に大した事ないんだが、ここに来る途中でじいさんに見つかってな」
じいちゃんが貼ったのか。どうりで、無駄に大きいと思った。大丈夫だと笑うので、それ以上は触れずオレも先輩の向かいに座る。
「試験、どうだった?」
オレが軽い調子で尋ねると、先輩は暗い表情に戻ってしまった。そして、深々と頭を下げてきた。
「すまん。あんなに助けて貰ったのに、追試を受ける事になっちまった」
「そんなの謝るなよ。オレの力不足でもあるんだ。オレの方こそごめんな。満点取らせるなんて偉そうな事言ったのに」
先輩の返却された答案を受け取る。圏ガクの赤点は五十点以下だったはずだ。傾向を見るに半分を基礎問題、残りを応用問題に振っている教師が大半だったので、やはり赤点が多ければ冬休みの補習を免れないだろう。一教科でもクリアしていたら、その点をアピールして冬休みの補習をオレに任せて貰えるよう説得出来るのだが……。
「あれ、てか、すげぇじゃん。ほとんど、七十以上あるんだけど……なんで追試なんて……」
先輩の点数は、どの教科もかなり良かった。赤点なんて一つもない、どころか最後の一枚はなんと満点だった。
「先輩! これ満点じゃん!」
「ん、それなんだが……駄目なんだ。カンニングならしくて、追試だって言われちまった」
「は?」
先輩が何を言っているのか、本当に分からず妙な声が出た。先輩がカンニング?
「満点取れて、セイシュンが言ってたみたいにな、満点取れて、ちょっと嬉しくてな……いつもなら避けるんだけど、木刀も軽く掠っちまった」
指先で絆創膏を掻きながら先輩は眉をハの字にして笑う。木刀という物騒な言葉でオレは状況を理解した。先輩の満点の答案、その問題を確認して、オレは思わず野村の怠慢を握りつぶした。
「先輩が事前に同じ問題を解いていたからカンニングだって言ったのか」
「知らなかったんだから、そんなの仕方ない事だ。追試を受ければ済むらしいから、大丈夫だ」
オレの声が震えていたせいか、先輩は慌てて大丈夫だと明るい声を出した。
大丈夫……ではない。先輩の努力をカンニング呼ばわりした奴をオレは許さない。図書室で貸し出されている参考書から問題を丸写しした試験を作る教師に、オレは断固抗議する。
満点の答案を掴み、部屋を飛び出す。夏休みには、旧館食堂で晩酌をしていたのを思い出し、駄目元で飛び込むと、そこに奴は居た。
飲んだくれている教師たちに大股で近づき、机に並べ立てた空き缶を払い落とし、野村の目の前に先輩の答案を叩きつけてやった。ついでにイスに立てかけてあった木刀を出入り口の方へぶん投げると、追いかけてきた先輩が白刃取りした。
「先輩はカンニングなんてしてない! あんたが手ぇ抜いた試験を作っただけだろ!」
用件をぶちまけると、野村は酒で赤かった顔を更に濃くし、吠えるような声を上げ、オレの首に掴みかかってきた。酔っているせいか、怒りのせいか、何を言っているのか分からない罵声を浴びせられ、隣のテーブルに投げ捨てられる。
「セイシュン!」
背中から叩きつけられると思ったが、いつの間にか駆け寄ってくれた先輩が抱き止めてくれた。転けずに済んだので、一矢報いてやろうと野村に飛びかかろうとしたが、それを読まれていたのか先輩は公衆の面前だと言うのに抱擁を続行した。というか、いつの間にか羽交い締めにされていた。
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