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蜜月
転がりだしたら止まらない
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「先輩はオレとするの嫌なの?」
ザーメンをぶっかけて貰えない事がこんなに悲しいなんて思わなかった。あぁ、自分の思考ながら意味不明すぎて泣ける。
「そんな訳ないだろ。何を言い出すんだ本当に……って、こんな事で泣くなセイシュン! お前が寝ちまってから、ちゃんとしてる! 俺を信じろセイシュン」
「じゃあこれからは証拠を残してくれよ。中だししてくれたら信じる」
先輩が黙ったままオレの両頬を抓ってきた。痛いくらい引っ張られ、ロクに喋れなくなる。
「中に出したら、腹が痛くなるって聞いたぞ。それでもいいのか?」
それでもいいと言おうとするが、オレが答える前に「俺は嫌だ」と先輩が続けるよう答えた。
「休みの日くらいセイシュンと一緒に何かしたいんだ。腹を抱えて苦しそうなお前を看病するだけで終わるのは嫌だ」
中だしのダメージってそんなに酷いんだろうか。また柏木に聞いてみるか。
「セ、イ、シュ、ン」
オレの思考を読んだのか、先輩は頬から手を離し、今度は拳骨で頭を挟み込んだ。
「ぃいだだだだだだだだ!」
頭蓋骨を削るがごとく、ゴリゴリと拳がめり込んでくる。必死で抵抗するが、先輩はビクともせず、拳骨でオレの頭を拘束しながら溜め息を吐く。
痛みのせいで勝手に溢れる涙を見て、拘束が少し緩んだ。オレは涙を拭って、困った顔をする先輩を見据える。
「オレじゃあ先輩を満足させられないって思ってる?」
「違う」
「じゃあ、なんでオレを使ってくれないの」
柏木に指摘されて気付けたのだ。先輩がしてくれたセックスは、明らかに前までと違っていた。その違いは、ケツ穴を念入りに慣らした程度で埋まるモノじゃあないと。
「俺がお前に、その……全力で乗ると、お前の体に大きな負担をかける事になる。それを避けたいって思ってる。次の日も一緒に遊びたいって思うから」
「オレとのセックスより、遊ぶ方が大事なのかよ」
しゅんとする先輩に遠慮なく詰め寄る。
「セイシュンは違うのか? 明日は栗拾いに行くんだぞ。腰を庇って全力を出せないなんて悲しいだろ」
確かに明日は小吉さんに誘われた園芸部主催の『わくわく栗拾い』の日だ。色々と美味しいらしいと噂なので、密かに楽しみにしていたが、そんなモノを引き合いに出されても答えは同じだ。
「栗拾いなんて来年でも出来るじゃん!」
セックスと比べられるようなモノじゃあない。鼻息荒く迫るが、先輩は困ったように笑った。
「ん、そうだな……でも、俺には今年しかないんだ。来年は一緒に栗拾い出来ないから、俺には明日が大事なんだ」
「あんなの言われたら、もうそれ以上ヤリたいなんて言えないだろ」
オレは栗拾いを完遂し、高校生として健全すぎる思い出を一つ手に入れ、再び悪の巣窟に自ら飛び込んでいた。
栗拾いに参加した褒美にと貰った栗菓子を持って生徒会室に訪れ『接待』をめぐる先輩とのやり取りを一通り愚痴り倒した。
「金城先輩の言い分に納得したのではないのですか? 栗拾いは楽しかったのでしょう」
すげぇ楽しかった。小吉さんと担任だけかと思ったら、新館のシェフらしいオッサンや小吉さんに絡む三馬鹿も一緒で無駄に喧しかったけど。
「栗は沢山拾えましたか?」
「うん、まあ……あ、これ土産だって」
「おや、渋皮煮ですねぇ。なら、今日は緑茶にしましょうか」
柏木が席を立った後、小さな瓶に入った栗を一つ取り出し頬張った。(拾った後の処理からは逃げたが)三馬鹿と阿呆みたく競いながら拾った物だと思うと、その美味しさは三割増しで自然と頬が緩む。先輩も褒めてくれたしな。
柏木の用意してくれた緑茶も美味しくて、それだけで大満足だったのだが、そんな事をしに来た訳ではなかったと、頭を切り替える。
「先輩の言い分って、要するにオレに接待まがいの行為をしてるって事実を認めて開き直ってるだけだろ。納得なんて出来るか」
オレが本題を切り出すと、柏木は申し訳なさそうな顔をしながら言う。
「金城先輩の心遣いを性接待だと指摘してしまったのは、僕の失言だったと反省しています。夜伽の内容など、本来ならば赤の他人が口を出す事ではありません。それで、納得はして頂けませんか?」
到底納得出来るはずもなかった。気付いてしまったからには、先輩に甘えるだけの関係では終われない。
「オレも先輩を接待したいんだ!」
「あぁ、なんて事でしょう」
オレの宣言に柏木がガクッとうなだれる。きっと、先輩から説教を受けたであろう柏木にとっては頭の痛い話だろうと覚悟したが、顔を上げた奴は涙をたたえながら大真面目に「やりましょう」とオレの手を取った。
「金城先輩に対する奉仕の精神。それは肉便器と自称する者しか持ち得ない尊厳です。先達として、君を全力でサポートする事をここに誓います」
納得してはいけない部分を多分に含んだ物言いだが、他に相談出来る相手がいない今、オレはあえてその部分には目を瞑った。踏み込んだが最後、沈むしかない沼に足を突っ込む感覚のような気もするが、男同士のあれこれに関して、変態集団である生徒会の右に出る者はいまい。
「では金城先輩に全力でお楽しみ頂く為に、まずはコンセプトから考えていきましょう」
そしてオレはこの日、危険な一歩を踏み出してしまったのだった。
ザーメンをぶっかけて貰えない事がこんなに悲しいなんて思わなかった。あぁ、自分の思考ながら意味不明すぎて泣ける。
「そんな訳ないだろ。何を言い出すんだ本当に……って、こんな事で泣くなセイシュン! お前が寝ちまってから、ちゃんとしてる! 俺を信じろセイシュン」
「じゃあこれからは証拠を残してくれよ。中だししてくれたら信じる」
先輩が黙ったままオレの両頬を抓ってきた。痛いくらい引っ張られ、ロクに喋れなくなる。
「中に出したら、腹が痛くなるって聞いたぞ。それでもいいのか?」
それでもいいと言おうとするが、オレが答える前に「俺は嫌だ」と先輩が続けるよう答えた。
「休みの日くらいセイシュンと一緒に何かしたいんだ。腹を抱えて苦しそうなお前を看病するだけで終わるのは嫌だ」
中だしのダメージってそんなに酷いんだろうか。また柏木に聞いてみるか。
「セ、イ、シュ、ン」
オレの思考を読んだのか、先輩は頬から手を離し、今度は拳骨で頭を挟み込んだ。
「ぃいだだだだだだだだ!」
頭蓋骨を削るがごとく、ゴリゴリと拳がめり込んでくる。必死で抵抗するが、先輩はビクともせず、拳骨でオレの頭を拘束しながら溜め息を吐く。
痛みのせいで勝手に溢れる涙を見て、拘束が少し緩んだ。オレは涙を拭って、困った顔をする先輩を見据える。
「オレじゃあ先輩を満足させられないって思ってる?」
「違う」
「じゃあ、なんでオレを使ってくれないの」
柏木に指摘されて気付けたのだ。先輩がしてくれたセックスは、明らかに前までと違っていた。その違いは、ケツ穴を念入りに慣らした程度で埋まるモノじゃあないと。
「俺がお前に、その……全力で乗ると、お前の体に大きな負担をかける事になる。それを避けたいって思ってる。次の日も一緒に遊びたいって思うから」
「オレとのセックスより、遊ぶ方が大事なのかよ」
しゅんとする先輩に遠慮なく詰め寄る。
「セイシュンは違うのか? 明日は栗拾いに行くんだぞ。腰を庇って全力を出せないなんて悲しいだろ」
確かに明日は小吉さんに誘われた園芸部主催の『わくわく栗拾い』の日だ。色々と美味しいらしいと噂なので、密かに楽しみにしていたが、そんなモノを引き合いに出されても答えは同じだ。
「栗拾いなんて来年でも出来るじゃん!」
セックスと比べられるようなモノじゃあない。鼻息荒く迫るが、先輩は困ったように笑った。
「ん、そうだな……でも、俺には今年しかないんだ。来年は一緒に栗拾い出来ないから、俺には明日が大事なんだ」
「あんなの言われたら、もうそれ以上ヤリたいなんて言えないだろ」
オレは栗拾いを完遂し、高校生として健全すぎる思い出を一つ手に入れ、再び悪の巣窟に自ら飛び込んでいた。
栗拾いに参加した褒美にと貰った栗菓子を持って生徒会室に訪れ『接待』をめぐる先輩とのやり取りを一通り愚痴り倒した。
「金城先輩の言い分に納得したのではないのですか? 栗拾いは楽しかったのでしょう」
すげぇ楽しかった。小吉さんと担任だけかと思ったら、新館のシェフらしいオッサンや小吉さんに絡む三馬鹿も一緒で無駄に喧しかったけど。
「栗は沢山拾えましたか?」
「うん、まあ……あ、これ土産だって」
「おや、渋皮煮ですねぇ。なら、今日は緑茶にしましょうか」
柏木が席を立った後、小さな瓶に入った栗を一つ取り出し頬張った。(拾った後の処理からは逃げたが)三馬鹿と阿呆みたく競いながら拾った物だと思うと、その美味しさは三割増しで自然と頬が緩む。先輩も褒めてくれたしな。
柏木の用意してくれた緑茶も美味しくて、それだけで大満足だったのだが、そんな事をしに来た訳ではなかったと、頭を切り替える。
「先輩の言い分って、要するにオレに接待まがいの行為をしてるって事実を認めて開き直ってるだけだろ。納得なんて出来るか」
オレが本題を切り出すと、柏木は申し訳なさそうな顔をしながら言う。
「金城先輩の心遣いを性接待だと指摘してしまったのは、僕の失言だったと反省しています。夜伽の内容など、本来ならば赤の他人が口を出す事ではありません。それで、納得はして頂けませんか?」
到底納得出来るはずもなかった。気付いてしまったからには、先輩に甘えるだけの関係では終われない。
「オレも先輩を接待したいんだ!」
「あぁ、なんて事でしょう」
オレの宣言に柏木がガクッとうなだれる。きっと、先輩から説教を受けたであろう柏木にとっては頭の痛い話だろうと覚悟したが、顔を上げた奴は涙をたたえながら大真面目に「やりましょう」とオレの手を取った。
「金城先輩に対する奉仕の精神。それは肉便器と自称する者しか持ち得ない尊厳です。先達として、君を全力でサポートする事をここに誓います」
納得してはいけない部分を多分に含んだ物言いだが、他に相談出来る相手がいない今、オレはあえてその部分には目を瞑った。踏み込んだが最後、沈むしかない沼に足を突っ込む感覚のような気もするが、男同士のあれこれに関して、変態集団である生徒会の右に出る者はいまい。
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