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「沈黙」という話/「東アジアの思想」という話
「沈黙」という話-16
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「沈黙」という話-16
【信教の自由】
日本には信教の自由があり、どのような宗教であれ信じることも、また信じないことも自由ですし、保障されています。
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。
他にとってどれだけ愚かであろうとも、本人にとって理不尽であろうとも、信じることも信じないことも自由ですし、保障されています。
ですから、日本にはいろいろな宗教の人がいます。神道・仏教・キリスト教・イスラム教・ユダヤ教etc.
ユダヤ教といえば、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』にあるように、第二次世界大戦前に「命のビザ」を発給した杉原千畝によって、多くのユダヤ人が日本に来ています。
杉原千畝とそのビザをつなげた根井三郎は、日露協会学校(後のハルピン学院)を卒業しており、そのモットーに後藤新平が定めた《自治三訣》があります。
《自治三訣》
・人のお世話にならぬよう
・人のお世話をするよう
・そして報いを求めぬよう
うるうる泣けますね。
なお、人道的な見地からユダヤ人を助けていますが、杉原千畝はかなり優秀な外交官であり、したたかに将来まで考えていたことは言うまでもありません。
さて、多くの日本人は複数の宗教に関わっています。キリスト教のように洗礼はしなくても宮参りや七五三はするでしょうし、亡くなったらたいてい仏教です。神道・仏教とハレ・ケ・ケガレについては、別の機会にしましょう。
ともあれ、多くの日本人の神道と仏教のダブル信教はデファクトスタンダードです。敬虔なキリスト教徒やイスラム教徒にとっては異様な世界です。
※"De facto standard"は「事実上の標準」を意味します。
そもそも個人が二つの宗教を信じているということは異常です。しかし、これが日本です。日本には、そうしたあやふやで、もろいものが沢山あります。ままこれは、宗教が力を持てばどうなるか、一向一揆に苦しめられた織田信長などの過去の施政者が嫌というほど体験したためです。
【パスカルの賭け】
人間を「考える葦」と語ったフランスの哲学者ブレーズ・パスカル(1623年―1662年)は、神の実在に関する確率を述べています。
・神実在→信仰→天国
・神実在→不信→地獄(あるいは煉獄かともかく最悪)
・神不在→信仰→何もなし
・神不在→不信→何もなし
実際に、神がいたとして信じていれば大丈夫ですが、信じていなければ最悪です。逆に、神がいなければ、信じていようがいまいが、何も変わりません。
別な書き方をしましょう。
・信仰→神実在→天国
・信仰→神不在→何もなし
・不信→神実在→地獄(あるいは煉獄かともかく最悪)
・不信→神不在→何もなし
信じていれば大丈夫か何もなし、信じていなければ最悪か何もなしです。
別に神がいようがいまいが、信じているほうが確率が高いということになります。流石、確率論の創始者は伊達ではありません。
【フローレンス・ナイチンゲール】
確率論は深く統計学に関わっていて、近代的な統計学を駆使したのが、フローレンス・ナイチンゲールです。看護師として有名ですが、実際には統計学者です。
クリミア戦争(1853年―1856年)の時代、看護師の身分はとても低いものでした。良家の娘として、素晴らしい教育を受けたフローレンス・ナイチンゲール(1820年―1910年)は、従軍し、「白衣の天使」として、看護師の地位を向上させました。家族に反対され、どう生きるべきか悩んでいた時に相談したのが、パーキンス盲学校の校長サミュエル・グリドリー・ハウ(1801年―1876年)でした。ハウは、ナイチンゲールを励まし、看護師の道へと歩ませました。意外かも知れませんが、実際に看護婦として奉仕したのは、戦争中の二年間だけです。英雄としての名誉をためらったナイチンゲールは、人知れず帰国し、豊かな教養から、統計に基づく医療衛生の改革を推進しました。
『「フランダースの犬」解説――風車が燃えた秘密――』
https://www.amazon.co.jp/dp/B00B149S8E/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_nn5TybWEZXJ63
世界を窯変させるには、天才の努力があったのです。なお、ナイチンゲール自身は、赤十字社に反対していました。どんなに高尚な理念でも、自己犠牲(ボランティア)に頼ってばかりでは、長く続かないからです。
【アン・サリヴァンとヘレン・ケラー】
パーキンス盲学校は、アン・サリヴァンとヘレン・ケラーの出身校です。ヘレン・ケラーのアメリカン・ジョークがありますね。
電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルは、三重苦のヘレン・ケラーと友だち。
かなりブラックなジョークですが、事実です。ベル(1847年―1922年)が、ヘレン・ケラー(1880年―1968年)に紹介したのが、「奇跡の人」"The Miracle Worker"アン・サリヴァン(1866年―1936年)です。
よく勘違いされますが、ヘレン・ケラーは「奇跡の人」ではありません。彼女に生きる光を与えた「奇跡を起こした人」"The Miracle Worker"がアン・サリヴァンです。
【信教の自由】
日本には信教の自由があり、どのような宗教であれ信じることも、また信じないことも自由ですし、保障されています。
日本国憲法(昭和二十一年十一月三日憲法)
第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。
他にとってどれだけ愚かであろうとも、本人にとって理不尽であろうとも、信じることも信じないことも自由ですし、保障されています。
ですから、日本にはいろいろな宗教の人がいます。神道・仏教・キリスト教・イスラム教・ユダヤ教etc.
ユダヤ教といえば、手塚治虫の『アドルフに告ぐ』にあるように、第二次世界大戦前に「命のビザ」を発給した杉原千畝によって、多くのユダヤ人が日本に来ています。
杉原千畝とそのビザをつなげた根井三郎は、日露協会学校(後のハルピン学院)を卒業しており、そのモットーに後藤新平が定めた《自治三訣》があります。
《自治三訣》
・人のお世話にならぬよう
・人のお世話をするよう
・そして報いを求めぬよう
うるうる泣けますね。
なお、人道的な見地からユダヤ人を助けていますが、杉原千畝はかなり優秀な外交官であり、したたかに将来まで考えていたことは言うまでもありません。
さて、多くの日本人は複数の宗教に関わっています。キリスト教のように洗礼はしなくても宮参りや七五三はするでしょうし、亡くなったらたいてい仏教です。神道・仏教とハレ・ケ・ケガレについては、別の機会にしましょう。
ともあれ、多くの日本人の神道と仏教のダブル信教はデファクトスタンダードです。敬虔なキリスト教徒やイスラム教徒にとっては異様な世界です。
※"De facto standard"は「事実上の標準」を意味します。
そもそも個人が二つの宗教を信じているということは異常です。しかし、これが日本です。日本には、そうしたあやふやで、もろいものが沢山あります。ままこれは、宗教が力を持てばどうなるか、一向一揆に苦しめられた織田信長などの過去の施政者が嫌というほど体験したためです。
【パスカルの賭け】
人間を「考える葦」と語ったフランスの哲学者ブレーズ・パスカル(1623年―1662年)は、神の実在に関する確率を述べています。
・神実在→信仰→天国
・神実在→不信→地獄(あるいは煉獄かともかく最悪)
・神不在→信仰→何もなし
・神不在→不信→何もなし
実際に、神がいたとして信じていれば大丈夫ですが、信じていなければ最悪です。逆に、神がいなければ、信じていようがいまいが、何も変わりません。
別な書き方をしましょう。
・信仰→神実在→天国
・信仰→神不在→何もなし
・不信→神実在→地獄(あるいは煉獄かともかく最悪)
・不信→神不在→何もなし
信じていれば大丈夫か何もなし、信じていなければ最悪か何もなしです。
別に神がいようがいまいが、信じているほうが確率が高いということになります。流石、確率論の創始者は伊達ではありません。
【フローレンス・ナイチンゲール】
確率論は深く統計学に関わっていて、近代的な統計学を駆使したのが、フローレンス・ナイチンゲールです。看護師として有名ですが、実際には統計学者です。
クリミア戦争(1853年―1856年)の時代、看護師の身分はとても低いものでした。良家の娘として、素晴らしい教育を受けたフローレンス・ナイチンゲール(1820年―1910年)は、従軍し、「白衣の天使」として、看護師の地位を向上させました。家族に反対され、どう生きるべきか悩んでいた時に相談したのが、パーキンス盲学校の校長サミュエル・グリドリー・ハウ(1801年―1876年)でした。ハウは、ナイチンゲールを励まし、看護師の道へと歩ませました。意外かも知れませんが、実際に看護婦として奉仕したのは、戦争中の二年間だけです。英雄としての名誉をためらったナイチンゲールは、人知れず帰国し、豊かな教養から、統計に基づく医療衛生の改革を推進しました。
『「フランダースの犬」解説――風車が燃えた秘密――』
https://www.amazon.co.jp/dp/B00B149S8E/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_nn5TybWEZXJ63
世界を窯変させるには、天才の努力があったのです。なお、ナイチンゲール自身は、赤十字社に反対していました。どんなに高尚な理念でも、自己犠牲(ボランティア)に頼ってばかりでは、長く続かないからです。
【アン・サリヴァンとヘレン・ケラー】
パーキンス盲学校は、アン・サリヴァンとヘレン・ケラーの出身校です。ヘレン・ケラーのアメリカン・ジョークがありますね。
電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルは、三重苦のヘレン・ケラーと友だち。
かなりブラックなジョークですが、事実です。ベル(1847年―1922年)が、ヘレン・ケラー(1880年―1968年)に紹介したのが、「奇跡の人」"The Miracle Worker"アン・サリヴァン(1866年―1936年)です。
よく勘違いされますが、ヘレン・ケラーは「奇跡の人」ではありません。彼女に生きる光を与えた「奇跡を起こした人」"The Miracle Worker"がアン・サリヴァンです。
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