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日誌・114 月杜に宿るモノ
しおりを挟む「胴ーッ!! 」
「面ーッ!籠手!! 」
ピリピリとした空気が広がる。これは本当に稽古か?凄まじい。まさにその一言に尽きる。三吉は見慣れたはずの稽古風景が道場を変わるとこうも違うのかと、ある意味関心していた。
「凄いだろう。何せ、総司と歳の立ち合いだからなあ。 」
うむうむと隣で近藤が頷く。確かに凄い。自分とは格がまるで違う。
「お。見かけぬ顔だな。新入りか? 」
急に声をかけられたので、まじまじとその顔を見つめてしまう。
「な、なんだ?何か顔にでも付いているのか? 」
ぼーっと見つめたままでいるとその男は徐々に焦り出した。
「ハッ...!い、いえ。急に声をかけられたので驚きまして。失礼致しました。 」
見た所この男は此処の馴染みのようなので、三吉はしっかりと詫びる。粗相があってはいけない。
「永倉君、彼は先代の友人の息子さんの三吉君という。はるばる伊予から此方まで剣を学びに来たのだ。よろしく頼む。 」
「え...。もう此処で稽古をするのは決まったことなのですか____。 」
「そうかそうか!なら少し私と手合わせ致そうではないか。 」
わくわくと楽しそうな顔を作りながら、永倉は準備を始める。
「えと、永倉様。私、剣の心得はあまりないので先ずは稽古の様子を見させて頂きたいと思っていたのですが。 」
三吉は先程の二人の試合を思い出し、身震いした。なんとしてでも、永倉との手合わせを避けねばなるまい。永倉があの二人のような強さを持っていることは容易に想像できるからだ。
「心配するな。三吉。極力手加減致そう。 」
そう言い放つと永倉は防具を着け始めた。
「おお。三吉君のお手並み拝見といこうじゃないか。 」
近藤もにこにこと笑みを浮かべて、乗り気である。
「土方さん、一度手を止めて見てみましょう。何やら面白そうですよ。伊予から来たということですと、原田さんと同じだ。 」
「なんだか、見るからにひょろひょろとして弱そうだがな。まぁ、茶漬け程度にはならねえことはねえか。 」
汗を拭きながら、土方沖田の両名も集まってくる。三吉はとうとう後に引けなくなっていた。
「永倉様。ご勘弁を。 」
三吉は咄嗟に土下座の体勢を取った。それを見ていた全員が目を見開き驚いていると、三吉は堰を切ったように言葉を零した。
「実は私、伊予に居た頃に剣術道場に通っていましたところ、師範に道場を追い出されたのです。”お前の様な甘ったれた人間は要らぬ“と。確かに私はその様な人間なのです。ですから、永倉君と手合わせなぞ出来るような器など持ち合わせては___。 」
「なら、此処で、天然理心流で鍛えりゃ良いじゃねえか。その甘ったれとやらを叩き直しゃあ、お前も胸を張って国許にも帰れるし、一端の剣士として道場の師範も見返せるってもんだ。...永倉やれ。 」
土方は三吉の言葉を遮り、捲し立てるように話す。その言葉につ、と三吉は顔を見上げた。
「私の身の上は全て筒抜けなのですね...。 」
「承知。 」
その言葉を皮切りに、永倉は物凄い気迫を纏った。
三吉が次に目を覚ましたのはそれから三日後の夕刻であったそうな...。
「面ーッ!籠手!! 」
ピリピリとした空気が広がる。これは本当に稽古か?凄まじい。まさにその一言に尽きる。三吉は見慣れたはずの稽古風景が道場を変わるとこうも違うのかと、ある意味関心していた。
「凄いだろう。何せ、総司と歳の立ち合いだからなあ。 」
うむうむと隣で近藤が頷く。確かに凄い。自分とは格がまるで違う。
「お。見かけぬ顔だな。新入りか? 」
急に声をかけられたので、まじまじとその顔を見つめてしまう。
「な、なんだ?何か顔にでも付いているのか? 」
ぼーっと見つめたままでいるとその男は徐々に焦り出した。
「ハッ...!い、いえ。急に声をかけられたので驚きまして。失礼致しました。 」
見た所この男は此処の馴染みのようなので、三吉はしっかりと詫びる。粗相があってはいけない。
「永倉君、彼は先代の友人の息子さんの三吉君という。はるばる伊予から此方まで剣を学びに来たのだ。よろしく頼む。 」
「え...。もう此処で稽古をするのは決まったことなのですか____。 」
「そうかそうか!なら少し私と手合わせ致そうではないか。 」
わくわくと楽しそうな顔を作りながら、永倉は準備を始める。
「えと、永倉様。私、剣の心得はあまりないので先ずは稽古の様子を見させて頂きたいと思っていたのですが。 」
三吉は先程の二人の試合を思い出し、身震いした。なんとしてでも、永倉との手合わせを避けねばなるまい。永倉があの二人のような強さを持っていることは容易に想像できるからだ。
「心配するな。三吉。極力手加減致そう。 」
そう言い放つと永倉は防具を着け始めた。
「おお。三吉君のお手並み拝見といこうじゃないか。 」
近藤もにこにこと笑みを浮かべて、乗り気である。
「土方さん、一度手を止めて見てみましょう。何やら面白そうですよ。伊予から来たということですと、原田さんと同じだ。 」
「なんだか、見るからにひょろひょろとして弱そうだがな。まぁ、茶漬け程度にはならねえことはねえか。 」
汗を拭きながら、土方沖田の両名も集まってくる。三吉はとうとう後に引けなくなっていた。
「永倉様。ご勘弁を。 」
三吉は咄嗟に土下座の体勢を取った。それを見ていた全員が目を見開き驚いていると、三吉は堰を切ったように言葉を零した。
「実は私、伊予に居た頃に剣術道場に通っていましたところ、師範に道場を追い出されたのです。”お前の様な甘ったれた人間は要らぬ“と。確かに私はその様な人間なのです。ですから、永倉君と手合わせなぞ出来るような器など持ち合わせては___。 」
「なら、此処で、天然理心流で鍛えりゃ良いじゃねえか。その甘ったれとやらを叩き直しゃあ、お前も胸を張って国許にも帰れるし、一端の剣士として道場の師範も見返せるってもんだ。...永倉やれ。 」
土方は三吉の言葉を遮り、捲し立てるように話す。その言葉につ、と三吉は顔を見上げた。
「私の身の上は全て筒抜けなのですね...。 」
「承知。 」
その言葉を皮切りに、永倉は物凄い気迫を纏った。
三吉が次に目を覚ましたのはそれから三日後の夕刻であったそうな...。
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