Another Dystopia

PIERO

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2043年4月 プロローグ:Another Dystopia

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 あたしが住んでいた場所は都内から少し離れた小さな村。その中で少しだけ大きな木製の家。生きていた両親の言葉曰く、あたしが生まれてくる前のご先祖様が立てて長年使ってきた家らしい。
 そこで父と母、そして弟と私の四人で仲良く暮らしていた。小さなコミュニティーだからかあたしは外の世界に出ることに憧れていた。最も、それが可能のは中学生になってかららしい。だからこそあたしは早く大人になることを望んでいた。
 都会に出て、学友を増やし、素敵な人に出会い、恋をして、子供を作り、余生を楽しむ。そんな他愛ない人生を望んでいたのだ。
 だがあの日、あたしと弟の日常が崩壊した。両親はニュースで話題になっていたロボットにより殺された。あたしたちをかばうため、その身を挺してあたしたちを守ったがその結果命を失った。
 すべてが終わったとき、村はロボットによって崩壊していた。のどやかな空気が一変し、殺伐とした雨にあたしたちは包まれていた。村の知人は潰され、肉体が溶け、生きているものは誰一人として存在しなかった。
 そして次の日、あたしは体調を崩した。雨にあてられていたからだろう。あたしは高熱を出し、呼吸することすら困難になってしまう。だが、それでもまだ守るものがいた。
 一歳にもなっていないたった一人の肉親の弟。それを守るためにあたしは気力を振り絞っと何とか一日を過ごす。
 その一日が過ぎたとき、ようやくあたしに転機が訪れる。瓦礫の中からあたしたちを救出してくれた二人はあたしを助け出した。これで助かる。そう思っていた矢先に奴が現れた。
 あたしたちの村を壊滅させたロボット。今度こそあたしたちを殺すために攻撃しようとする。もうだめかとあきらめたがその直後、あたしの心の中に疑問が浮かび上がる。
 何も抵抗しなくてよかったのか、このまま殺されてしまえばあたしが守ったすべてが無駄になって市馬うのではないかと。そう思ったとき、あたしはロボットに対して咄嗟に手を伸ばしていた。
 直後、ロボットは地面にたたきつけられる。ロボットは何かに拘束されたかのように身動き一つとることができなかった。
 それをチャンスと見た二人はすぐさま車に乗り込み、その場を後にする。ロボットが視界から消えたことで安堵したのかあたしはそのまま意識を失い、その後の記憶は途切れてしまっている。
 その後最初に目を覚ましたのは病院だった。どうやらあたしたちの村ではワクチンがまだいきわたっていなかったらしくそのせいで何人かは肉体が溶けてしまったらしい。当時のあたしは正直なところ、仕方ないでは済まないと大声で当時の担当医に怒鳴ってしまった。だが、そこで問題が一つ発生する。それはその遺体の近くにあたしがいたことだ。もしかしたらそのウイルスに完成している可能性があると判断され、あたしは精密検査を行った。
 結果、あたしの体はかなり異常な状態であることが判明した。ウイルスには感染しているが、何かのきっかけでウイルスと共存できている状態であるという奇妙な状態になっているらしい。
 それが判明して以降、あたしはしばらくの間病院内で定期検診を行い、体調に問題ないか体に異常がないか観察されていた。しばらくそんな生活をしているとあの日あたしたちを助けた人物が現れる。
 その人物はその時二つの選択肢を出してくれた。その人の養子になるか、孤児院にあずかるか。孤児院にあずかるならば平穏な生活を過ごせるかもしれないと言われ、その人の養子になるならば衣食住と弟の安全を保証する代わりに今起きているあたしの体内で何が起こっているのかを研究するといった。
 その時、あたしの選択はたった一つだった。そしてその選択を選び、八年が経過した。



 あたしは鳴り響く目覚まし時計と止め、瞼をこする。随分と懐かしい夢を見ていたような気がする。時刻は五時半。朝日はまだ昇っていないが、あたしにとってはこの時間が普段の起床時間だ。
 あたしがいるこのマンションはあたしを拾ってくれた人物が購入したマンションらしく空き部屋は嫌というほどあるから好きなところを使っていいということで一室を借りている。家賃云々については俺の子供だからまだ気にするなと言われ払っていないが、いずれ払うつもりでもある。
 布団にまだ入っていたいという気持ちを殺し、あたしは布団からでて洗面所に向かう。顔を洗い、ランニングウエアに着替えた後、部屋で準備運動した後、あたしは部屋を出て一階のフロントに向かう。

「ん?よう。随分とはえぇじゃねぇか。今日もランニングか?」

「アカネさん。おはようございます。
一応あたしにとって重要なモーニングルーティンですから」

 一階に到着するとソファに座っている人物、アカネが缶コーヒーを飲んでいた。あたしはアカネさんに挨拶すると軽く手を振って反応してくれる。見た目はかなりヤンキーのような感じで少しだけ怖いが長年話していると実は心優しい人物である。

「そか。今日は日曜だから学校は休みか。なら二度寝もできるか!
ああ、でも確か今日はその特異体質の研究の手伝いだっけな?まあ、ほどほどにしておけよ」

「わかりました。それじゃあ、行ってきます」

 あたしは挨拶を済ませ、外にへと走りに行く。八年という膨大な時間の中であたしは学校の勉強だけでなく、いろんなことを学んだ。
 今の世界に対する状態や人類の敵であるロボットについてそしてアカネさんを含むニューマンと呼ばれる人間に最も近い人工知能を搭載したロボットもいることも。
 そしてあたしの体質についても判明した。あたしは自身の心につけられているトリガーを引く。直後、あたしの体はランニングしている先にある電柱に引き寄せられる。ある程度近くなるとそのトリガーを止め、引き寄せられたままあたしは走りだす。そして別の電柱に同じように引き寄せられるようにとあたしは徐々に自分の力を使う。
 そう、あたしは体内のヒュドラウイルスを一時的に活動させることでいわゆる超能力を使うことができる。今できることは物体に重力を付与させることだけだが、ほかにも応用が利くのではないかとあの人は考察している。
 能力を使いながら走ること三十分、あたしは汗を流しマンションに辿り着く。自室に戻り部屋に備え付けられているシャワーを使って汗を流して髪の毛を乾かし、軽装に着替えると今度はもう一台の目覚まし時計が鳴り響く。
 するとこの部屋のもう一人の住人が目を覚ましうとうととした状態で挨拶をする。

「おはよう姉ちゃん」

「おはよう。ほら、顔洗って、着替えて」

 もう一人の住人、あたしの弟の和貴はのんびりとした返事をして顔を洗いに行く。その姿を見て愛らしいと感じつつもあたしは今のうちに洗濯を済ませる。しばらくすると顔を洗い終え、着替え終えた和貴があたしの服の裾を掴む。
 用意ができたことを確認したあたしは和貴と一緒に最上階へ向かう。最上階に辿りついたあたしは防弾ガラスに設定されている認証を通過する。その先にある部屋にあたしたちは入ると部屋の中がいい香りで充満している。

「おはよう。よく眠れた?」

「おはようございます。よく眠れました」

「そう、ならよかったわ。来たところで悪いけど、これ運んでくれないかしら?」

 料理を作っていたのはあたしたちの母親にあたる人物、白橋鏡花さんだ。彼女はあの日あたしたちを助けてくれた人物の一人である。普段は事務作業をこなしながらいろんな企業の情報を集めているらしい。また、彼女はとあるマシンの担当者らしいがそれをあたしはまた見たことがない。
 あたしはお義母さんの言われた通り、和貴と一緒に料理を運ぶ。全ての料理が運び終えたとき、ガチャリと扉が開かれる。

「あ、パパおはよう!」

「おお、和貴か!朝から元気だな!いやー相変わらずかわいいな
うん。綾華も近寄っていいんだぞ?」

「あははは…お断りさせていただきます」

「しょぼん。パパ、寂しいぞ」

 一言で言ってしまえば残念なこの人物こそあたしたちを引き取った第一人者、嘉祥寺侯文だ。引き取った当初はまだかっこいいという印象が強かったが一緒に暮らしていく中でその評価は逆転する。
 日常生活においてはこの通り、ただの親ばかである。最も、それだけ大切にしているということなのだろうが。

「それよりも早くご飯食べなさい。今日は綾華の時間を使って研究するんでしょ!?」

「おっとそうだった。
それじゃあ、まずは朝食を食べるとしよう」

 朝食を食べ終わったあたしたちは研究室へと向かっていった。街中は日曜日ということもあって賑やかではあるがお義父さん曰く、昔はもっと賑やかだったらしい。
 そんな街中を歩き続けているとあっという間に研究室へと到着する。シェルターの役目も務めている地下研究室に足を踏み込むといきなり長身の男性があたしに向かってとびかかってくる。

「うお!!!綾華たん!久しぶりざんす!」

 そのとびかかりに対してあたしは襲い掛かった変態に対して無慈悲に蹴り上げる。鳩尾にうまく入ったのか、とびかかった不審者はその場でうずくまり、ぽつぽつと感想を述べる。

「…いい、…いいざんす。
アカネたんには及ばないけど中々素晴らしい蹴りざんす」

「…毎度毎度このやり取りをしないとダメなんですか?」

「ダメざんす!痛みは某にとって快楽ざんすから!!」

 自信満々に言われてあたしは少しだけ交代する。この不審者であり、変態である研究者このラボの技術を取り締まっているともいえる重要人物堀田ジョージアである。
 技術だけならば世界最高峰といっても過言ではない。事実、ニューマンの骨組みを創ったのは彼らしい。だが、天才とバカはなんとやらというべきだろう。それ以外がまずひどい。
 性格は最低、美少女ならだれでもとびかかる。まさに犯罪予備軍という言葉が等しいだろう。

「堀田君?あたしのかわいい娘に手を出したら…もぐわよ?」

「そんなことはしないざんす。某は紳士故」

「…はあ、本当に何かしたらただじゃすまないから。
それよりも実験の準備はできているかしら?」」

「問題ないざんす。それじゃあ綾華たん。こっちにくるざんす」

 堀田に呼ばれたあたしは不本意ながら案内されながら広いところに出る。普段はそこであたしの能力の実験をするらしいが、今回はあたしの能力がどこまで引き出せるかという実験らしい。
 手伝いのニューマンがあたしの全身にいろんな装置をつける。これであたしの体内で何が起こっているのか究明するらしい。
 今までにも似たような実験はしたが一体今回は何をするのかと思った直後、部屋の奥から冷たい風がぶつかる。あたしはこの感覚をよく知っているあたしは全身に冷や汗を流す。そしててちてちと部屋の奥から現れた人物にあたしは顔を青ざめる。

「フフフ、おはよう綾華。ちゃんと、鍛錬はしているかしら?」

「し、師匠…」

 あたしの恐怖の象徴でもあり、トラウマでもあり、そして最も尊敬している先生の一人、小林佐夜がそこには現れた。だが今の彼女は明らかに普段の会話している時とは違い、臨戦態勢になっている。持っているものは木刀だがあの木刀によって何度気絶したかと思い出した直後、今回の研究テーマの意図を理解した。

「お、お義父さんもしかして今回のテーマって…」

「そうだ。今まで様々な条件下で能力を発動させてみたが、環境的要因では能力に変化はなかった。だから今回は精神的な要因について研究しようと考えている。
つまり、がんばれということだ。何、今回は特別に一本取るか綾華が気絶するまでという条件もある気にせずがんばれ」

「無慈悲なこと言わないでよ!あたしが師匠から一本すらとったことないのに!」

 直後、背後から悪寒を感じとり咄嗟にしゃがむ。すると先ほどあたしが立って居場所に風が奔った。木刀のはずなのに何本か髪の毛が切れ、あたしは顔色を青くする。

「もう実験は始まっているのよ?よそみ、禁止よ」

 そういって小林は木刀をあたしに向かって投げ捨てる。これを使えという意図なのはすぐに理解できたあたしは泣きながら叫ぶ。

「くそ!やってやるわよ!」

 そして十分弱続いた虐殺はあたしの気絶という形で実験が終了した。意識を取り戻すとあたしは周囲を見渡す。近くには伊吹さんともう一人、師匠の娘の雪花仁美がいた。

「綾華姉が起きたよパパ」

「ん?そうか。気分だどうだ?」

 あたしはゆっくりと体を起こし、体の調子を確認する。擦り傷や打撲はあるがそれは全て自分が招いたものであり、目立った外傷はない。あたしはそれを確認すると伊吹さんにお礼を言う。

「ありがとうございます。気分は大丈夫です」

「よかった。まあ、気を落とすことはないよ。
むしろ、動きは前やった時よりはよくなっているから。実際、五割程度の斬撃を何度か見切っていたからね」

 あれで五割なのかと呆れてしまう。それに斬撃を見切ったなどということはできていない。なんとなく来るであろうということを予感して攻撃を避けていた。前半はそれで避けていたが、後半からはそれを踏まえて斬撃を当ててきたのだからどうすればいいのかわからない。

「まだまだです。少なくとも師匠に一本取れるようになるまで頑張ります」

「うん。その調子だ。
ああ、それから、嘉祥寺が呼んでいたよ。なんでもデータについて報告があるとか言っていたな」

「わかりました。それじゃあ行ってきます」

 あたしは部屋から出るとあたりを見渡す。居住エリアに運ばれていたことを理解したあたしはすぐさま研究エリアに戻る。すると先ほど研究していた三人と師匠が画面を見てデータを観察していた。
 そしてあたしの復帰に最初に気づいたのはやはりこの人だった。

「綾華たん!大丈夫ざんすか!?」

「はい。大きなけがは特にないです。それよりもお義父さん。今回の実験について何かわかったことがあったのですか?」

 するとお義父さんは書き上げたレポートをあたしに渡す。そのレポートを読んでいると気になるデータが目に留まった。

「お義父さん。ここだけあたしの能力の出力が高まっているような気がするんだけど…」

「そうだ。今までになかった反応だ。その時間帯、何があったのか確認したところ丁度小林が綾華を仕留めようとしたときに急激に出力が高まった。
そしてそれ以降、能力の平時出力が微量だが少しだけ高まった。このことからおそらく能力の出力を上げるには命の危機を感じたときと考えている。そしてそれは恐らく能力を獲得するときも同様の条件があると俺は思っている。
最も、後者に関しては考察の範囲を出ないがな」

「…いえ。それだけでも充分です。ありがとうございました」

 あたしはここにいるメンバーに対してお辞儀をする。もしこの研究をしなければなぜあたしだけが能力を使えるのか理解できなかった。だが、これで研究が少しでも進歩するかもしれない。
 するとこの場にいるメンバーはあたしに対して笑顔で答える。

「いや、気にすることはない。いずれあいつを打倒するときが来たら…」

 突如お義父さんの雰囲気が変わる。するとその違和感をすぐに理解したのかお義父さんはまた普段通りに戻り、明るい声で話しかける。

「いや、綾華は気にすることない。いずれ、な。
さて、今日の実験は終わりだ。あとは隙に過ごしてほしい。それともこのまま実験に付き合うか?」

「それはそれでわたしは問題ないわよ。
ちょっと色々指導したいこともあるからね」

 フフフと黒い笑みを浮かべる師匠を見てあたしは直感的に逃げることができないことを理解する。徐々に恐怖に染められる直前に何とかあたしは言葉を絞り出す。

「お、お手柔らかに…」

「それは綾華次第よ。じゃあ、始めましょうか」

 その後の記憶をあたしはよく覚えていない。ただ覚えていることはあたしを殺しに来ようとしている師匠の斬撃を何とか回避しつつ気絶しないように立ち回ったが、一歩間違えた瞬間に気を失い、そして無理やり起こされるという地獄のような三時間を過ごしたという事実だけである。
 地獄の稽古が終わり、疲労感が蓄積したあたしはそのまま自室に戻りベットにダイブする。これがあたしの今の日常、学校があれば学校に通い、残りの時間は宿題と稽古をするだけの日常。友達がいないわけではないがその日々が何よりの幸福である。
 そしてあたしは知らない。その日常を与えてくれた大切は人物がいるということを。今あたしが過ごしているこの日常は何者かによって支配されたもう一つの世界かもしれない。だが、そんな日常でもあたしはこうして幸福に生きている。
 だがもし、あたしの幸福を奪うものがまた現れたときかつての先駆者に見習ってきっと戦うのだろう。その先にどんな未来が待ち受けているとしてもそれはきっと正しいのだから。

「なんてね。そんな未来訪れないことが一番なんだけどね。
はあ、もう…寝よ…」

 そしてあたしの意識は徐々に暗く沈んでいく。肉体に蓄積された疲労を回復するためあたしは夢の世界へと旅立っていく。
 この時、あたしはまだ知らない。数か月後に世界の命運をかけた戦いに巻き込まれるという事実を。



 月面基地の中に画面越しで観察している人物、寺田は苛立ちを隠せなかった。そしてその苛立ちはやがてものへと当たっていた。

「何でだ。なんで嘉祥寺君の隣に別の奴が居座っている…。
あのガキは誰だ?嘉祥寺君の隣にいるのは俺のはずなのに…」

「おお、随分とこじらせているな。
まあ、それがあんたの魅力なんだがな」

 突然背後から声を掛けられ、寺田は振り向く。するとそこにはかつて共闘し裏切りあった仲間のチープハッカーがそこにいた。

「なんだい。ぼくちんは今機嫌が悪いんだ。雑談なら後にしてくれないかな?」

「おいおい、悲しいこと言うなよ。
あんたにとっても悪い話じゃないものを持ってきたのにさ」

 するとチープハッカーは胸元からハードディスクを取り出しそれを寺田に投げ渡す。それを受け取った寺田は舌打ちしながらも中身を確認する。もしつまらないものがあったらすぐに破壊しようと考えていたが、その考えはすぐに切り替わる。
 そしてそのレポートを呼んだ寺田はにやりと笑う。

「へえ、特異点ね。
あのガキが?笑わせてくれる」

「そういって乱雑に扱わないってことは何か特別な感情を抱いているのかい?
っと、シツレイ。別に心を読もうとしたわけじゃなかった。ただ、表情がかなり不満そうだからね」

「ふん。まあいい。それでこの特異点をどう使うつもりなんだい?」

 するとチープハッカーは面白そうな表情で自身の計画を述べる。

「簡単な話さ。
八年前、ある程度人類を間引いたのなら次は進化を促す必要があると思ってね。そして、その進化にはこの特異点が必要になってくる。
なんでも俺のウイルスを取り込んでも死ななかったらしいからな。その情報を使って全人類の肉体を無理やり進化させる」

「ちみの目的は人類の滅亡だろう?それになんのメリットがあるんだい?」

「いや、メリットはないさ。だが思ったんだ。
ただやみくもに人類を滅亡させても面白くない。そこで少しアプローチを変えてみたんだ。
もし進化した人間同士が戦わせたらもっと面白いことになるのではとね」

 その言葉を聞き、寺田はにやりと笑う。これは寺田が興味を持ったという表情である。すると寺田は椅子を回転させ、体の向きをチープハッカーのほうへと向ける。

「じゃあ、聞かせてくれその計画とやらを。
一体どんな方法で人類に影響を与えるんだい?」

「おっと、手段を説明する前に大事なことがあるだろ?それを尋ねられないと計画は答えられないな」

 すると寺田はああ、と過剰なリアクションをして改めてチープハッカーに問いかける。

「失敬。失念していたよ。じゃあ、改めて。
その計画の名前は?」

 するとチープハッカーは高らかに嗤いながら己が考えた人類滅亡のその計画の名前を宣言する。

「『Dystopia Grow』。俺が支配した社会の中で臨むべく形で育てる計画さ」
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感想 2

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みんなの感想(2件)

2021.08.31 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

PIERO
2021.08.31 PIERO

応援ありがとうございます!
まだまだ物語は続きますので、ぜひご愛読下さい。

解除
スパークノークス

お気に入りに登録しました~

PIERO
2021.08.15 PIERO

ありがとうございます!
引き続き頑張って投稿していきますので、よろしくお願いします!

解除

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