Another Dystopia

PIERO

文字の大きさ
上 下
62 / 105

2033年 6月 宣戦布告(転)

しおりを挟む
『では、自己紹介をしようか。
俺はFR創造派の頭領『教授』だ。いや、偽名などもはや必要ないか。
訂正しよう。俺の名は時崎良吉だ。よく覚えておくがいい』

 空に映し出された映像から時崎は見下すように私たちを見る。その瞳は氷のように凍てつき、感情の全てを封じているように見える。
 しかし、私はその様子に不自然さを感じた。これは演技ではないかとあるいは何者かに洗脳されてしまっているのではないかと期待を込めて勝手に想像してしまう。だがその考えは無情にも切り裂かれる。

「相変わらず教授の目つきは凄まじいな。俺ですら背筋が凍るぜ」

『戯言はよせチープハッカー。お前にそんな機能は搭載していない。
それと、何やら期待しているような輩が一人いるからあえて言うが、これは俺の意思だ。洗脳も脅されてもいない。下手な期待はするな』

 その言葉に私は僅かな期待を裏切られ、ショックを受ける。だが、それならそれで敵と割り切り、私は教授、時崎に問いを投げかける。

「なら、私の質問ぐらい答えなさい。一体何をする気なのかしら」

『質問する前には考えてから質問しろとあれほど注意していただろう。
だがまあいい。お前には礼がある。チープハッカー、計画を実行しろ』

 チープハッカーは行動に移ろうとした直後、チープハッカーの両膝関節に銃弾が撃ち込まれる。チープハッカーは恨めしい表情で銃弾を放った相手を睨む。

「鮫島さん。長い付き合いだろう?
これくらいは見逃してもらえたら嬉しんだけど…」

「そうだねぇ~。むかしのよしみでそれいじょうなにもしないならぁ~なにもしないよぉ~。
でもぉ~、これいじょうなにかするっていうなら…容赦しないよ?」

「ヒュー。久しぶりに聞いたね。マジボイス。
だけど、一つ勘違いしてる。この程度で動かなくなると思ったかい?」

 チープハッカーはそのまま立ち上がり、普通に歩き始める。本来、両膝を撃ち込まれたなら歩くことはおろか、立ち上がることもできない。
だがそれ以前にチープハッカーは異常だ。頭部は陥没し、内臓はボロボロ。腹部に至っては穴が開いている。常人や超人でも倒れるはずだ。にもかかわらずこの男は立ち上がっている。その事実に流石のFBIも驚きを隠せなかった。

『チープハッカー。お前、まだ言っていなかったのか?』

「ん?言う必要があったかい?俺は必要ないと判断して言わなかったんだが…」

『なるほど。ならお前について少しばかり機能説明をしておこうか。
だがその前に、さっさと仕事をしろ』

 はいはいと適当に返事をしたチープハッカーは機械を作動させる。チープハッカー以外のメンバーが何をするのか警戒する。だが、唯一私だけは何故か知らないが、その機械が何か直感で感じ取っていた。
 作動した機械はレーザー光で円を描き、幾何学的な紋様を庭に刻み始めた。全てを刻み終えたことを確認するとチープハッカーが映像に映し出されている時崎に合図を送る。すると先ほど刻んだ円が光始め、その場を白く染め上げる。光がやんだ時、刻まれた円の上には鉄くずが置かれていた。
 魔法ともいえるその技術を見て私は確信する。

「これは…私が大学の時に書いたテレポーターなの?」

『やはり設計者は察しがいいな。
最も、白橋が書いたような家庭用ではなく転送用に特化したものだがな』

「じゃあ、あの設計図は先生が盗んだの?」

『少し語弊があるな。盗んだのではない。拾っただけだ。
あんな片付けられていないゼミ室に所有物を持ってくる方がおかしいというものだ』

 その言葉に私は怒りを感じぜずにはいられなかった。学生の時の落書きとはいえ、真剣に考えた設計図だ。それを拾ったなどと、おこがましいにもほどがある。
 何より気に入らないのはそれが是であると言わんばかりの表情である。今の言葉で私は確信した。時崎は私たちに関心を持っているのでもなく興味を持っているわけでもない。私たちを見下している。それだけの感情があの表情だったのだ。

「転送が完了したぜ教授」

『そうか。なら、さっさとそれを喰らえ。万全な状態になったらアップデートする。
お前にもう善心プログラムは必要ないからな』

「そうかい。では、いただきます」

 チープハッカーは鉄くずに手を突っ込む。一体何をしているのかと警戒する中、映像に映し出され時崎は表情一つ変えずに言葉にする。

『では、お前らが気になっていたチープハッカーについて説明するとしよう。
まず、彼は人間ではない。最も、対峙したお前ら全員がそう思っているがな。
では、その正体とは何か?エーリアンや人工的に作られた生命などといったSF小説の所詮くだらない妄想の怪物ではない。
AIロボット。それがチープハッカーの正体だ』

 その言葉にこの場に皆が信じられない表情だった。事実、AIのロボットの開発に携わった私たちも目の前のチープハッカーがAIロボットということに信憑性がなかったからだ。
 だがその正体の概念に気が付いたのはやはり彼だった。

『…ナノマシンロボット。それがこのAIの根幹というわけか』

『ほう。察しがいいな。
やはりお前だけはそこいらのボンクラとは違うか。嘉祥寺』

 皆の視線がいつの間にか現れた嘉祥寺に集まる。だが、今の嘉祥寺は考えることはできない状態の筈だ。嘉祥寺はどや顔をすると時崎の言葉に反応する。

「我の考えなどと愚行極まるな。
今の発言は我ではない。
我が兄弟、ベクターの意見にほかならぬ」

『そういうことだ先生。
いや、時崎教授』

 この場に電話を繋いで話している弁田はそのまま自身の考察を述べ続ける。

『嘉祥寺の話からチープハッカーの話は聞いていた。
目に見えない斬撃、血を流さない肉体。そして体が陥没しようと欠損しようと貫通しようと動き続ける精神力。はっきり言ってそれはもう人間じゃない。エーリアンとかと勘違いするのもよくわかる。
だがここの部分は一緒だが、エーリアンとかそういった空想の怪物は存在しない。そう考えれば間違いなく、ロボットだ。
だが、どんなロボットなのかと悩んでいた。
そして今確信を持った。鉄くずを食べるという比喩。いや、実際に喰らっているのだろう。それこそナノマシンロボットがな』

 その言葉に無表情だった時崎の眉がピクリとわずかに動く。確信を言われたからかあるいは自信作が看破されたからか。それとももっと別の感情か。だが、弁田の考察は続く。

『ここからは俺の考察だが、話を続けさせてもらう。
普通なら極小単位のロボットを作るなんてどうやって人間の手で作るのは不可能に近い。
だからロボットに作らせたんだろ?人間の手から作りだしたロボットに対してさらに小さい本体のロボットを。それをずっと繰り返して、目的のサイズにするにはかなり時間がかかったんだろう』

『流石だな弁田。お前の考察通り。最初はうまくいかなかった。
それこそ失敗が十何年も続いたからね。研究費用のために別の論文を書きながら開発するのは手間だったよ。
だが、君は二つ勘違いしている。
一つは目的のサイズに至るまでの時間だが、君が思っているほど時間はかからなかったよ。
そしてもう一つ。ロボットのサイズについてだが、ナノではない。ピコ単位だ。それだけは間違わないようにしてほしい』

 その言葉を聞き、弁田の言葉が聞こえなくなる。おそらく絶句しているのだろう。すると今まで無表情だった時崎は口角を上げ、弁田に話しかける。

『弁田聡。俺の部下になれ。お前はこの地球上に必要な人間だ』

『断ります。目的もわからない組織に入るのはごめんですので』

『それもそうだな。っと、丁度チープハッカーの修復が終わったようだな』

 先ほど転送させられた鉄くずの山は半分以上なくなっていた。まさかと思い私はチープハッカーを見る。チープハッカーの陥没していた顔は完全に修復され、貫通していた腹部も何もなかったかのように完治していた。さらに余った鉄くずで服装をこしらえたのか、ボロボロだった黒色スーツが新品の白銀色のスーツに着替えている。

「話は終わったかい教授?それと、勧誘はしっかりしてほしいね」

『勧誘ではない。ただの冗談だ。それよりもプログラムを更新するぞ』

「オーケー。教授はそのまま話を続けてくれ」

 するとチープハッカーは胡坐をかき、目を瞑る。敵だらけの中、一体何をするのかと思った直後、チープハッカーの全身から凄まじい熱を感じ取った。
 一つ一つのピコマシンをアップデートしているからか、膨大な熱が放出されとてもではないが近寄ることができない。その様子に映像に映し出されている教授は何か思い出したかのように話し始める。

『言っておくが、この状態で攻撃するのはおすすめしない。
今のチープハッカーはほぼ無意識でね。何かあったら即座に反撃するようにしてある。全滅したくなければ大人しくすることだな』

「ぼくたちにそれをいうのかい?きょうじゅとよばれているにはちょっとぼくたちのじつりょくをはあくしていないんじゃないかなぁ~」

『別に取り押さえてもいいさ。最も、この屋敷だけでなくほかの近所に死傷者が出てもいいならな』

 その言葉に鮫島は言葉を紡ぐ。無理もない。この言葉は本当に関係ない周囲の人間を人質に取られたようなものだ。
 誰も動けないことを確信した教授は『さて』と呟き、話を続ける。

『俺の派閥の目的。言うなれば俺の目的。それを言うことを忘れていたな。
俺の目的はただ一つ。この世界を一度壊し滅ぼし、創りなおすことだ』

 その言葉が冗談のようには感じられなかった。無表情だった顔つきもこの発言に対しては強い信念があるのか何かを込めているような目つきで私たちを見る。
 そして時崎は言葉を続ける。

『今をもって、FR創造派はお前たちFBIに、人間に、世界に敵対する。
邪魔をするというのであればそれ相応の対処を取らせてもらう。だがもし滅びを受け入れるというのであれば、苦痛なく殺してやろう』

 宣戦布告。時崎はFBIを前にしてそれを言う。その態度に流石にFBIのメンバーも苛立ちが収まり切れなかったのか、鮫島が笑いながら時崎に話す。

「そのせんせんふこく。うけてたつよぉ~。だけどねぇ~、こっちもひとついわせてもらおうかねぇ~。
FBIなめんなよクソガキ。笑っているのも今の内だ」

 中指を立て、鮫島は画面に映し出されている時崎に受け答えをする。その態度を見て時崎は鼻で笑っている。するとアップデートが終わったのかチープハッカーが突然立ち上がり、周囲を見渡す。

「さてと、アップデートは完了した。…っと、その前にこれは必要ないか」

 チープハッカーは突如左手を切り落とす。そして切り落とした左手を鉄くずに突っ込む。おそらく切断した部分を再生しているのだろう。視界を切り落とした左手に注目すると奇妙な光景が目に映る。
 切られた左手だけが鉄くずに向かって動いているのだ。まるでホラー映画のような光景に一瞬悲鳴を上げたくなったが、切られた左手を足で踏みつけ、動けなくしたのはチープハッカーだった。

「っち。まだ意識があるか。そらよ。善人は善人同士、仲良くしろよ」

 突如、左手を投げられ私は少しだけ悲鳴を上げる。この場に似つかわしく反射的に声を上げてしまったが、私はすぐに思考を切り替える。
 すると先ほどまで体力の限界だった嘉祥寺が話しかける。

「キョウカンよ。
その左手は我があずかろう」

「ええ、そうして頂戴。流石にちょっと無理」

 汚物のように私はそれを掘り投げる。その際、左手は中指を立てていたような気がしたが、気のせいだろう。私は目の前の障害に警戒する。
 さっきのやり取りでチープハッカーの左手が回復したのか、よっこらしょという言葉と同時に立ち上がり、画面に映し出されている教授に話しかける。

「それで、教授。俺はどうすればいい?」

『帰還しろ。もうこいつらは終わっている。
では、生きていたらまた会おう』

 そこで映像は終わる。一体何をする気だと構える。だがチープハッカーは何もしないような態度で手を振る。

「ちょっと待てよ。俺は何もしないよ?宣戦布告したのも全部教授だから俺に振られてもすごい困るんだけど?」

「そのことばがしんようできるとおもっているのかい?」

「まあ、ないわな」

 チープハッカーは手刀を作り、即座に振り下ろす。すると手刀の先にいたFBIの戦闘員が袈裟に切られ、ずるりと落ちる。たった一瞬の動作。それだけで命が一つ消えたのだ。

「きみぃ~!」

「言っておくが、お前たちじゃあ俺には勝てない。部下を守りながら戦うっていうのはかなりきついだろうしね。それに君たちは俺なんかよりももっと気をつけないといけないものがあるんじゃないかな?」

 チープハッカーは空を指す。一体何を指しているのかと思いそ空を見上げると、太陽が見えなくなった。一体どこにと太陽を探すとそれはあった。
 雲一つない青空に一点だけ見える黒の汚点。その汚点は徐々に近づいている。それが何なのか理解した瞬間私は呟くことしかできなかった。

「うそ…。隕石…なの…」

「正確にはスペースデブリだな。ここ最近、うちの派閥にロケットと飛ばしまくる輩がいたのでね。少しだけ細工させていただいた。
今度こそ、俺の予言を覆してくれよ。では」

 ゴキゲンヨウとチープハッカーは転移陣に乗り姿を消した。スペースデブリがこの場所に落下してくるまであと十数分。その間に何か対策を打たなければ死ぬ。
 そんな状況の中、私はどうすればいいのか考える余裕がなくなりつつあった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

俺たちは嘘の世界に飽き飽きして

ドルドレオン
SF
虚構の世界、真実の世界。 人類はどうなるのか。どうあるべきか

再び君に出会うために

naomikoryo
SF
僕たちは宇宙の中で存在している、地球上のものでいえばエネルギー生命体に近い存在だ。星間塵(せいかんじん)を糧として、宇宙空間であれば何万光年も生きていける。 気の合う同じ種族の異性とは合体することで一つの生命体となり、気持ちが変われば分裂して個々となり、離れて行く。言葉は持たないが一種のテレパスを使って感情を伝え合うことができる。 僕たちは、とある彗星に流され引力を持つ星に、途中で分裂させられながら降りてしまった。宇宙に戻ることも出来ず、ただ少しずつエネルギーを失いながら消滅するしかなくなっていた僕は、最後にもう一度彼女と出会うことを望んでテレパスを送り、何とか移動し続けるしかなかった・・・

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

オワコン・ゲームに復活を! 仕事首になって友人のゲーム会社に誘われた俺。あらゆる手段でゲームを盛り上げます。

栗鼠
SF
時は、VRゲームが大流行の22世紀! 無能と言われてクビにされた、ゲーム開発者・坂本翔平の元に、『爆死したゲームを助けてほしい』と、大学時代の友人・三国幸太郎から電話がかかる。こうして始まった、オワコン・ゲーム『ファンタジア・エルドーン』の再ブレイク作戦! 企画・交渉・開発・営業・運営に、正当防衛、カウンター・ハッキング、敵対勢力の排除など! 裏仕事まで出来る坂本翔平のお陰で、ゲームは大いに盛り上がっていき! ユーザーと世界も、変わっていくのであった!! *小説家になろう、カクヨムにも、投稿しています。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界日本軍と手を組んでアメリカ相手に奇跡の勝利❕

naosi
歴史・時代
大日本帝国海軍のほぼすべての戦力を出撃させ、挑んだレイテ沖海戦、それは日本最後の空母機動部隊を囮にアメリカ軍の輸送部隊を攻撃するというものだった。この海戦で主力艦艇のほぼすべてを失った。これにより、日本軍首脳部は本土決戦へと移っていく。日本艦隊を敗北させたアメリカ軍は本土攻撃の中継地点の為に硫黄島を攻略を開始した。しかし、アメリカ海兵隊が上陸を始めた時、支援と輸送船を護衛していたアメリカ第五艦隊が攻撃を受けった。それをしたのは、アメリカ軍が沈めたはずの艦艇ばかりの日本の連合艦隊だった。   この作品は個人的に日本がアメリカ軍に負けなかったらどうなっていたか、はたまた、別の世界から来た日本が敗北寸前の日本を救うと言う架空の戦記です。

星間の旅人たち

阪口克
SF
空を覆い尽くすほどに巨大な星間移民船マザー。今から数千年の昔、多くの人々をその胎内に抱え、マザーは母星を旅立った。 未知の移住星を求めて彷徨う巨大な移民船。この船を護り未知の移住星を開拓するため、マザーセントラルには強大な力を持った護衛軍が存在する。 護衛軍探索部第3課に所属するハイダ・トール軍曹は、ある星での”事件”をきっかけに、出航時刻に間に合わなくなってしまう。 飛び立つマザーを必死に追いかけるハイダ軍曹は、指揮官の助言に従い、船の最末端部から内部へと侵入することに成功した。 しかしそこは、護衛軍の力の及ばない未知の領域だった。 マザー本体から伸びる長大な柱……その内部はセントラルの管理が及ばない世界。何千年もの歴史を積み重ねた、移民たちによる異文明が支配する地であった。 セントラルへの帰還を目指すハイダ軍曹は、移民世界での試練と人々との邂逅の中、巧みな交渉力や戦闘技術を駆使し苦難の旅路を行く。しかし、マザー中心部への道のりは険しく遠い。 果たして、ハイダ・トール軍曹は無事帰還を果たすことができるのだろうか。

処理中です...