Another Dystopia

PIERO

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2033年6月 それぞれの未来(下)

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「いやーまさか堀田が来るとはぼくちんは思わなかったよ!これはずいぶんと楽しい会話になるね。最も、そこの弁田程度がいなければの話だけどね」

「うるせぇ。俺だって行きたくなかった。
だが嘉祥寺が一緒に来いって言ったからついてきただけだ」

「フーン。嘉祥寺君は時折ぼくちんには理解できない行動をするよね。
まあ、関係ないけど。あと、このお会計は全部弁田がやってね」

 待ち合わせのファミレスで待つこと数分後、寺田はスキップしながら現れた。しかし、普段と違って上機嫌でかなりテンションが高い。 
 しかし、相変わらずうざい一人称と傲慢な態度にイラつきが隠せない。その様子は普段自己中な堀田が協調的に見えるぐらいだ。しかし、嘉祥寺はその態度に対して一切笑っていない。
 しびれを切らしたのか、あるいは話題がなかったからなのか、寺田から話を切り出してきた。

「それで、このぼくちんから何を聞きたいんだい?」

「雪花伊吹の居場所についてだ。俺が今一番知りたい情報の一つだ」

「いいよ。教えてあげる。それくらいは情報でも何でもないしね。
明日はきっとこのあたりの店にいるんじゃない?時間は分からないけど、毎週必ずと言っていいほどこの店に来ているからね。他には?」

「FR人類守護派で暗躍している人間について知りたい。コードネームだけでも構わない」

「いいよ。全部教えてあげる。それくらい友人だからね」

 俺の時と違ってあっさりと情報を提供する姿に俺は怒りを感じる。加えてそれを面白がっているのか時折俺の方に視線を向け今の表情を観察している。本当に癪に障る野郎だ。
 情報を全て言い終えた寺田は楽しそうに嘉祥寺に質問する。

「他に何か聞きたいことはあるかい?」

「お前、裏切り者だな」

「そうだね。ある意味裏切り者っていうべきかな?
ああ、誤解しないでほしいけど、本心で裏切ったわけじゃないから」

 その発言は流石に聞き流せなかった。俺は寺田に問い詰めるために失礼だが会話に割り込む。

「どういうことだ?おい、寺田」

「はあ、せっかくの楽しい会話を打ち切るなよ。せっかちだな。だから弁田程度なんだよ。
まあ、ここには嘉祥寺君と堀田がいるから大目に許してやるよ」

 偉そうにと俺はその言葉を飲む。下手に反抗すればきっと情報を言ってくれないだろう。その表情が面白かったのか寺田の煽りはますますヒートアップする。

「いいね。無様で。せっかくだ。ここで土下座して『情報教えてください寺田様』っていえば考えなくもないかな?まあ、やらないなら別にいいけど」

「…てめぇ」

「そういえば、堀田は相変わらず痩せすぎだね。体重五キロも落ちてるんじゃないか。
今度ぼくちんと一緒にご飯食べに行かない?もちろん、そっちもちで」

 俺の文句を無視、あるいは本当に聞いていないのか話題を堀田に振る。すると堀田は少し考えてからその誘いを返答する。

「寺田氏、せっかくの誘いざんすけど、某はやりたいことが溜まっているざんす。
それを解決するまではまだ遊ぶ気になれないざんす」

「…そっか。前々から堀田は夢中になるとこのぼくちんの誘いを断ってでも集中したがるからね。
いいよ!それが堀田のためになるなら全然ぼくちんは構わないよ」

「申し訳ないざんす」

 堀田が珍しく謝る姿を見て俺は気が狂いそうになった。常人なら会話をすることが困難な嘉祥寺、天上天下唯我独尊を地で行く寺田。そして自己中心的の究極系である堀田。
 正直この場には長い間いたくないと思う。そうでなければこっちの精神が死んでしまいそうだ。
 そんな空気の中、嘉祥寺は未だ真剣な表情で寺田に話し続ける。

「寺田。最後に一つ。
裏切り者の情報を売ってくれ」

「売ってくれなんて言わないでもいいの…。ぼくちんと君の中だぜ?それくらい…」

「いや、これは筋と寺田の安全の問題だ。
この後、逃亡するならそれなりの資金が必要だろ?」

 嘉祥寺の言葉に寺田の笑っている表情がぴたりと止まる。手で目元を隠し大きな溜息を吐く。

「なんでわかっちゃうのかな?はぁー、流石というべきかな」

「大学だけの付き合いだが、大体わかる。これ以上は危ないから雲隠れする前に最後に会いに来てくれたんだろ?」

「まあね。こう見えて、仲間に対する思いはそれなりにあるから」

 すると寺田は持ってきたリュックを嘉祥寺に渡す。中を確認すると分厚い本が入っていた。表紙には『顧客情報』とわかりやすく書いてある。それを受け取ることを確認すると寺田は安心したのか席を立ち、店を後にしようとする。

「口座は来週までは使う予定だからそれまでに振り込んでもいいよ。
それじゃあ、ぼくちんは高みの見物をさせてもらうよ。
ああ、そうだ。言っておくけど、嘉祥寺が求めているデータは恐らくまともに探したら見つからないから頑張ってね。あと、処理はそっちに任せるよ」

 じゃあね!っとうざい笑顔で寺田は店を後にする。
 結局嫌味を聞くしかできなかった俺は水を飲み、嘉祥寺に問う。

「なあ、嘉祥寺。寺田が雲隠れするっていうのはどういうことだ?俺には理解できなかったんだが…」

「そのままの通りだ。小林が消えたことからこの展開になることは読めていた。そして全ての情報は寺田が握っている。同時に寺田の情報はかなり的確だ。だから敵も多い。
この場でFRの情報を話したことで、寺田もおそらくレッドリストに登録されているだろう。
だからほとぼりが冷めるまで、雲隠れをするのだろう」

 その理由に納得するが、もう一つ理解できないことがある。嘉祥寺が正気の状態だからこそ、俺は胸の奥に溜め込んでいた疑問をぶつける。

「前々から思っていたが、嘉祥寺は寺田がなんで俺に対してあんなに突っかかってくるのか知っているのか」

「知っているがあまり詮索しないでくれ。それに…。いや何でもない」

 嘉祥寺は席を立ち、堀田もそれにつれて席を立つ。二人はそのまま店を出ようとした直後、俺は二人の肩を握り歩みを止める。

「なにするざんすか?さっさと弁田氏の部屋に戻るざんす」

「その前に、だ。お前ら、金払え。俺にいつも負担させるな」



 割り勘で店を出て、家に戻った俺たちは早速手に入れたデータをアスクレピオスたちに共有する。ファイルのデータを展開し、顧客データを展開し俺たちは裏切り者のデータを検索する。
 今になってだが、寺田の言っていた裏切り者という言葉の意味を理解する。彼は情報屋故に、こちらの情報を流さざる得なかったのだろう。情報を渡さないという選択肢もあったと思うが、その選択は情報屋としての信頼が落ちる選択だ。

「全く。考えれば考えるほど、むかつく奴だ。
気に入らない奴だが、奴なりに嘉祥寺たちの安否を心配しているということか。
全く仕方ないし、気に食わないがな」

 顧客ファイルの情報を一枚一枚めくり、情報を探す。一人の顧客に対して数ページから十数ページまで情報がびっしりと書いてある。そのせいで、裏切り者の情報を探すのに苦労している。
 USBで情報を纏めてくれたなら探すのはかなり楽になるが、ないものをねだっても仕方ないと割り切り、情報を漁る。

「ベクターよ。
禁忌の伝承を獲得できたか?」

「いや、まだだ。その様子だと、嘉祥寺もまだ発見できていないようだな」

「その通りだ。
我のブレインを活用しても、なかなか獲得することができん。
これで五冊目だが、今一度情報の整理と暇を獲得する必要があると思うぞ」

 嘉祥寺の言葉を聞き、俺は時計を見る。どうやら裏切り者のデータ探しに三時間も経過してしまったようだ。俺はまだ余裕があるが、他のメンバーは既に集中力が切れつつある。

「そうだな。ここいらで情報共有とこれからのことについて話しておくか」

 俺は資料探しをしているメンバーに一度情報共有と休憩をすると伝える。皆、かなり疲弊しているのか、背を伸ばしたり、欠伸をしたりと既に集中力が切れている状態だった。
 この調子で情報共有しても漏れが発生する可能性があるかもしれない。そう思い、俺は台所に向かい、コーヒーを入れ始める。

「飲み物のリクエストがあれば一緒に作るが、何かあるか?」

「我は戦友と同じコーヒーを所望する」

「私も同じものをお願い。あと、ミルクと砂糖も入れてちょうだい」

「某は紅茶で」

「あたいと弟号はいらねぇ。必要ないだろ?」

「アカネさん…。まあ、いいでしょう。別に飲まなくても問題ありませんので」

 アスクレピオスは少しがっかりしていたが、アカネの威圧感に押されて意見を言えずにいた。今のニューマンは飲食はできないが、未来のニューマンは飲食ができるのか?と疑問に思ったが、皆の飲み物を入れる準備に思考を切り替える。
 数分後、皆の飲み物を用意した俺はそれぞれみんなの前に置き、情報共有の会議を始める。

「それじゃあ、早速だがみんなの進捗…いや、裏切り者の特定だな。
その情報に断片でも手に入れたものがいれば是非話してくれ」

 しかし、誰も手を上げない。資料は皆と分断して合計十部以上見ていたはずだが、全て外れたのかと考えてしまう。
 残りも数冊と僅かだが、ふと一つの予感がよぎる。もしかして寺田は情報を渡していないのではないかと。
 可能性がないとは言い難い。だが、俺に対してならともかくあれほどHOMEを大切にしている寺田がそんなことをするはずがない。何か見落としているのではないか。そう考えるが全て仮説の域に出ない。

「戦友よ。
何を考えているのだ?
情報を手に入れたのか」

「いや、少し考え事をしていた。
まだ情報が見つかっていないなら、引き続き探すことにしよう」

「ねえ、思ったんだけど寺田に連絡したらどうなのよ。
そうすれば一発でわかるんじゃないかしら」

「一回やった。だけど残念ながら連絡がつかない。もう傍観するって決め込んだだろうな」

 白橋の提案に俺は既にやったことを伝えると少し不満そうに口をとんがらせる。
 雲隠れすると言った時から連絡が取れない可能性はあるだろうと考えていた為、これは想定内だ。最も、連絡したところで素直に答えるわけがないが。

「寺田も不親切ね。せめて何ページに情報があるって伝えてくれればこんなに時間を浪費する必要がないのに。
嘉祥寺、寺田は何か言わなかったのかしら?」

「ふむ。
確か寺田は常識にとらわれるなと告げていたな。
だが、深く考えず普通に探してしまったな。
…ちょっと待てキョウカン。
何故鋼の拳を用意しているのだ?
我は何もおかしなことは言っていないはずだが…」

「そういう情報は最初に言ってほしいわ。もう怒る気すらなくなったわ。
でも常識にとらわれるな、ね。一体どういう探し方かしら?」

 白橋は溜息を吐き、資料を見る。そういえばそんなことを言っていたなと思い出すが、時間が惜しい。俺はもう一つのテーマについて議論を広げようとする。

「もう一つ、話し合いたことがある。
アスクレピオス。何故雪花伊吹を見つける必要がある?この騒動を解決する鍵を握っていると言っているが、どういう意味なのか改めて説明してくれ」

「わかりました。では手短に説明させていただきます」

 堀田以外の視線が集まったことを確認すると、アスクレピオスは何故雪花伊吹の力が必要なのか語り始めた。

「理由は大きく三つ。
一つは小林組に堂々と入りやすくするため。わたしの記録では説得に三十分ほど時間がかかり、作戦が大幅に遅れてしまったと聴かれています。
二つ目は純粋に護衛のため。白橋さんは別格ですが、他のメンバーは正直戦力外ですので、白橋さん一人で守るにも限度があるためです。
最後に三つ目は雪花伊吹は裏切り者の顔を知り、その裏切り者によって殺されたから。それが要因で護衛する人がいなくなり、小林さんが殺されます。
以上で簡単な理由の説明を終わりますが、質問はありますか?」

 手短に話してくれたおかげで内容がすらすらと理解できた。するとアカネが一つ疑問を感じたのかアスクレピオスに質問する。

「なあ、弟号。その雪花っていう奴は裏切り者の顔を知っているんだろ?
なら、聞けば一発で裏切り者を判明することができるんじゃないか?」

「…アカネさん。雪花伊吹に裏切り者のことを訪ねても顔がわからないと話すらできないですよ」

「ああ、そっか。悪い。無駄な質問だった。
だけど、裏切り者の情報が必要な理由はなんとなく理解できた。
忠告するつもりなのか?」

 アスクレピオスは無言で頷く。確かに忠告することで雪花伊吹が殺される可能性は大幅に下がるだろう。だが、それも裏切り者のデータを手に入れてからでなければ始まらない。

「とりあえず、理由は分かった。それじゃあ早速続きを始めるとするか」

「了解ざんす!某も頑張るざんす!」

 堀田は勢いよく席を立つと近くに置いてあった紅茶が全てこぼれてしまう。あ、っと思ったが既に時遅し。近くに置いてあった資料は全て紅茶にかかってしまい、紅茶の色が徐々に浸食し始めている。
 白橋とアカネは呆れ、アスクレピオスは唖然する。俺も呆れつつも貴重な資料がこれ以上浸食しないように台所に行き、何か拭き取るものをとりに行こうとした直後、嘉祥寺の声が荒げた。

「いきなりどうした?何か思い出したのか?」

「ベクターよ。
これを見ろ!」

 嘉祥寺は濡れている一枚の資料を手にして俺に見せる。特に変わったものはないし、内容も全てFRに関係するものではない。何を言いたいのか今一つ理解できなかった。

「見ろって。ただの資料じゃないか?」

「違うぞ戦友!
ベクターの魔眼はそこまで落ちたのか!?
は!?
まさか、既に敵によって著しくおかしくなっているのか!?」

「嘉祥寺、俺は正常だ。むしろ、お前の方がおかしいんじゃないか?
大体、いつまで濡れたその資料を持って…」

 ふと違和感を感じた。嘉祥寺が今持っているのは濡れている資料。そのはずなのに何故紅茶の色が浸食していないのか。
 その疑問に到達した時、せき止められた水が一気に流れるかのように思考が加速する。その様子に嘉祥寺も察したのか何も言わなかった。

「まさか…この資料は全てフェイク?木を隠すなら森の中とは言うが、そうやって見つけるなんて思いもよらなかった」

 その資料を触ってみると若干だが、材質が違う。外国の紙幣と同じプラスチックの材質だろう。めくるだけだったから今までわからなかったが、念押しに触れてみると確かに違うと理解できた。

「よし、みんなこの資料を色が付いた何かで濡らしてくれ。
変色しなかった資料がおそらく当たりだ」

「ちょっと!?本当にいいの!?間違っていたら…」

「その時はその時だ。だが、問題ない。
寺田のことだ。他の情報の処分も含めて見越した手段なんだろう」

 少し疑っている白橋だったが、渋々実行する。他のメンバーたちも若干疑いながらも水にぬらし、浸食した資料としなかった資料とで分別する。
 分別作業すること数十分。分別した資料からようやくお目当てのものを発見することができた。

「まさかこんな形で見つけるとは思ってもいなかったわ」

「これは某の手柄ざんす!!そうざんすよね!?」

「ハイハイ。スゴイネー。
それで、この情報はどうするつもり?
流石に鮫島さん?に情報共有したほうがいいんじゃないかしら?」

 俺は一考する。他のメンバーには伝えるべきだが、鮫島さんは少し怪しいと感じる。何故ならその裏切り者の名前を俺は知っていたからだ。その名前を見た時、驚愕したが幸いなことに表情には出なかった。俺の気づいたとしても嘉祥寺ぐらいだろう。

「いや、鮫島さんには悪いけど伝えないでおこう。
他のメンバーに関しては俺から伝えておく。そういうことでいいか?」

「弁田君がそういうなら別にいいわ。
それじゃあ私はまた明日から研究所に言ってテレポーターの研究をするわ」

「ああ、白橋。ちょっと待ってくれ。
研究に戻る前に明日ちょっと付き合ってくれ」

 すると白橋は少し不満そうに溜息をつく。きっと自身の研究を進めたいと思っているが、こればかりは彼女にしか頼めない。

「それで、頼むって何よ?
変なこと言ったらぶっ飛ばすわ」

「簡単なことだ。明日、雪花伊吹に会いに行くがその護衛をしてほしい。
まあ、言葉を変えるならデートか?」

 その言葉に白橋はぽかんと言葉を理解できなかったのかぼーっとしている。直後、顔を赤くして戸惑い「え?え?」と可愛らしい仕草をした後、距離が遠くなった。
 その様子に堀田は鬼の形相でこちらを睨み、それ以外のメンバーは意味深な表情でこちらを見つめていた。
 だが、そんな視線を向けられても俺は判明した裏切り者の名前をずっと見つめていた。

(まさか、こんなところであの遺言が巡ってくるとはな)

 裏切りのもの名はチープハッカー。かつて俺が所属していた会社PSでお世話になり、FRの改革派幹部であった木野田部長が注意すべき人物として挙げられた敵だ。
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