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第二十二章 贈り物
22-2 奇跡
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気がつけば。
世界は、また変わっていた。
ただただ真っ白な空間。上下左右も分からなくなりそうなそんな空間に、美邑は一人投げ出されていた。
「わたしが直接知ってるのは、ここまで」
唐突に声がして振り返ると、いつの間にか女がいた。――トモエだ。
不思議と、驚きはなかった。ただ、そういうものだとして受け止めている自分を、美邑は感じた。
「朱金丸様は、わたしの身体と、息子を連れて『裏側』に行き、自ら眠りについた。
初彦は……なんとか娘を取り戻してくれて、嫁に出せるようになるまで立派に育ててくれた。代わりに、社は時彦のものになって……彼の歪んだ考えのまま、言い伝えが受け継がれていってしまったけど」
「全部、朱金丸様が眠りながら知覚したのを、聞いただけだけど」と、トモエが微笑む。
「貴女をここに呼んだのは、わたし。朱金丸様に頼んで、私の魂と貴女を、同調させてもらったの」
「同調……」
最後に聞いた、蛇鬼――いや、朱金丸の言葉も確か、「どうちょうさぎょう」というものだった。どうちょうさぎょう――つまり、同調作業ということか。
「でも……なんで」
美邑の呟きに、トモエは少し困った顔をした。
「おばあちゃんの、老婆心――ってところかしら」
本当はおばあちゃんどころじゃないけれど、と。少しだけ冗談ぽくつけ加えてくる。
「わたしはね。貴女の存在が、とても嬉しいの」
「あたしの……存在が?」
トモエの顔に笑みが浮かぶ。その目は暖かく、ほんのりと弓を描いて美邑を見つめていた。
「わたしと、朱金丸様……結ばれていた時期は、短かったけれど。二人の間に生まれた子が、その血が――長い長い時を経て、こうしてあるということが。奇跡のように、嬉しいの」
その言葉を聞いて。
自分はこの人の子孫なのだということを、強く感じる。
過去のあのとき。
トモエと朱金丸がいなければ――結ばれなければ。
それだけではない。
初彦が、二人の子供を育てなければ。育った子が、また伴侶を見つけて子を産まなければ。その連面とした繋がりが――いつか、父母に行き当たって。そうして、美邑が生まれたのだと。
その全ての時の流れが、美邑の存在を祝福してくれているのだと。
それだけのことだけれど。それだけのことにようやく気がついて、美邑は涙が出た。
「それでね」と、トモエが美邑の両手を、そっととる。
「貴女を、助けたい」
「え……?」
ぐすり、鼻をすする美邑に、トモエがふんわりと笑いかけた。
「貴女は、人間の世界に未練がある……そうでしょう?」
「そ……れは」
確かに。
優しい両親の元に戻りたい。もう、心配しなくても良いよと。ごめんねと。そう、抱きついて話したい。
だが、それ以外に未練があるだろうか?
唯一の友人だと思っていたモモは、自分の脳内が造り出した妄想の産物だった。
理玖との関係はもう長いことこじれてしまっていて――もう、どう想ってもらっているのか、自分が理玖をどう想っているのかすら、よく分からない。
「あたし、は……」
「強がらなくて良いの。わたしは、貴女のおばあちゃんみたいなものなんだから」
そう、頭を撫でてくる手に、何故だか身体の力が抜ける心地がした。見た目は、大して年齢も替わらないはずなのに。幼い頃、母や祖母に抱き締めてもらったときのような。そんな安心感がある。
「心に過るものがあるのなら、それは良かれ悪しかれ、確かに未練よ。朱金丸様は、子孫である貴女が自分達の元へ来るのを、楽しみにしていたみたいだけれど。わたしは、貴女には自由に生きてほしい」
「自由に……」
「そうよ」とトモエが優しく頷く。
「わたしはね。朱金丸様と私の子らや、それに連なる貴女には、幸せであってもらわないと困るの。そうでないと心配で心配で……大好きな朱金丸様と、ゆっくり眠ってることすらできないでしょ?」
茶目っ気たっぷりにそう言うトモエは、すでに亡くなった存在であるにも関わらず、それこそ自由に見えて。美邑は苦笑し、トモエに言われた言葉を考えた。
自由。
それは、どこか自分からかけ離れた単語のように聞こえた。
理玖にも、前に言われた――へらへらと笑って、その場をしのいで。そうしてこの十年、あちこちに壁を作り、壁から周りの反応を伺ってはまた怯えて隠れるというのを繰り返してきた。
「自由に、とか。今更、よく分かんないっていうか……」
「それは、貴女の気持ち一つ。でしょう?」
そう言ってのけるトモエは、眩しい。美邑はつられるようにして、わずかに口の端を持ち上げた。
「でも……鬼に成ったら、もう戻れないって。鬼に成ることも避けられない、摂理なんだって、朱金丸さん――えっと、あの。朱金丸さんと同じ名前なんですけど、顔に刺青のある鬼で……」
「……二代目ね」
承知済みなのか、トモエが頷く。
「二代目?」
「あの子はね……なんと言うか。朱金丸様とわたしの、三人目の子供みたいなものなの」
「子供」と、美邑は口の中で繰り返した。それは、予想外の言葉ではあったが。
(だから……あんなに似てるんだ)
二人の朱金丸。雰囲気こそ違うが、言われればなるほど、納得である。
「正確には、ちょっと違うのだけれど」
トモエは言葉を探すように、宙に視線をさ迷わせた。
「……わたしと朱金丸様が眠ってからしばらく経って。丘に、鬼灯が生えたの。それは、眠るわたしたち――特に朱金丸様の力を栄養にして育って、やがて、実をつけるようになった。それが、貴女も食べた、特別な実。朱金丸様の妖質がつまった、禁断の実」
「あの実……」
今でも思い出す――あの芳醇さ。トモエが、小さく苦笑する。
「やがてね。その実をつける鬼灯自体に、妖質が巡って――鬼へと変じた。それが、二代目の朱金丸なの」
それを聞いた瞬間、思い出したのは。幼い頃の美邑が実を食べたことを、自分にも責任があるのだと言った、朱金丸の顔だった。
「朱金丸さんが……あの、鬼灯」
「朱金丸様の力を宿した鬼が生まれたことで、かつて朱金丸様の眷族だった鬼たちが大騒ぎ。二代目として担ぎ上げられて、中には彼を先導に仕立て上げて、『表』の世界に再び戻ろうと言う鬼らまで出てくる始末で」
――何故、我らがいつまでも『裏側』に閉じ込められねばならぬのか。
――何故、愚かしい人間どもにおもねり続けねばならぬのか。
それはおそらく、主と主の妻を理不尽に喪った鬼らにとって、飾ることない本音だったのだろう。
だが、朱金丸の残滓は、それを是としなかった。代わりに、二代目の頬に、消えぬ証を刻んだ。
――我の力を持ち、我と愛しき者の墓場より生まれし鬼よ。混沌を世に呼びかねないそなたは、生まれながらにして罪の者よ。
「そんな……」
そんなのおかしい。美邑はついさっき、生まれてきたことそのものが、奇跡で祝福なのだと、そう知ったばかりだったのに。
なのに彼は、「二代目」だと勝手に持ち上げられ、名前まで継がされ、更には親のような存在から、「罪の者」と烙印を押されて――。
美邑の両目から、涙がぽろぽろと溢れ出た。悲しいのではない。ただ、悔しい。あまりにも、悔しい。
「……話を戻すとね」
そんな美邑を、どこか嬉しそうに見つめながら、トモエは再び口を開いた。美邑は涙を両腕で拭い、正面から彼女を見る。
「貴女が実を食べてしまったあの日。貴女を帰す際に、二代目は貴女に、自分の力の欠片を託したの」
「力の……欠片?」
意味が分からず、おうむ返しになってしまう美邑に、トモエがこくりと頷く。
「鬼に変じる定めを負ってしまった貴女が、少しでも、孤独でないようにと」
「それ……って」
この十年間。
美邑が孤独を感じずに生きてこられたのは、両親と――そして、唯一の友人のお陰だった。
「えぇ」と、トモエが頷く。
「モモは、貴女の単なる妄想なんかじゃない。二代目から貴女への、贈り物よ」
世界は、また変わっていた。
ただただ真っ白な空間。上下左右も分からなくなりそうなそんな空間に、美邑は一人投げ出されていた。
「わたしが直接知ってるのは、ここまで」
唐突に声がして振り返ると、いつの間にか女がいた。――トモエだ。
不思議と、驚きはなかった。ただ、そういうものだとして受け止めている自分を、美邑は感じた。
「朱金丸様は、わたしの身体と、息子を連れて『裏側』に行き、自ら眠りについた。
初彦は……なんとか娘を取り戻してくれて、嫁に出せるようになるまで立派に育ててくれた。代わりに、社は時彦のものになって……彼の歪んだ考えのまま、言い伝えが受け継がれていってしまったけど」
「全部、朱金丸様が眠りながら知覚したのを、聞いただけだけど」と、トモエが微笑む。
「貴女をここに呼んだのは、わたし。朱金丸様に頼んで、私の魂と貴女を、同調させてもらったの」
「同調……」
最後に聞いた、蛇鬼――いや、朱金丸の言葉も確か、「どうちょうさぎょう」というものだった。どうちょうさぎょう――つまり、同調作業ということか。
「でも……なんで」
美邑の呟きに、トモエは少し困った顔をした。
「おばあちゃんの、老婆心――ってところかしら」
本当はおばあちゃんどころじゃないけれど、と。少しだけ冗談ぽくつけ加えてくる。
「わたしはね。貴女の存在が、とても嬉しいの」
「あたしの……存在が?」
トモエの顔に笑みが浮かぶ。その目は暖かく、ほんのりと弓を描いて美邑を見つめていた。
「わたしと、朱金丸様……結ばれていた時期は、短かったけれど。二人の間に生まれた子が、その血が――長い長い時を経て、こうしてあるということが。奇跡のように、嬉しいの」
その言葉を聞いて。
自分はこの人の子孫なのだということを、強く感じる。
過去のあのとき。
トモエと朱金丸がいなければ――結ばれなければ。
それだけではない。
初彦が、二人の子供を育てなければ。育った子が、また伴侶を見つけて子を産まなければ。その連面とした繋がりが――いつか、父母に行き当たって。そうして、美邑が生まれたのだと。
その全ての時の流れが、美邑の存在を祝福してくれているのだと。
それだけのことだけれど。それだけのことにようやく気がついて、美邑は涙が出た。
「それでね」と、トモエが美邑の両手を、そっととる。
「貴女を、助けたい」
「え……?」
ぐすり、鼻をすする美邑に、トモエがふんわりと笑いかけた。
「貴女は、人間の世界に未練がある……そうでしょう?」
「そ……れは」
確かに。
優しい両親の元に戻りたい。もう、心配しなくても良いよと。ごめんねと。そう、抱きついて話したい。
だが、それ以外に未練があるだろうか?
唯一の友人だと思っていたモモは、自分の脳内が造り出した妄想の産物だった。
理玖との関係はもう長いことこじれてしまっていて――もう、どう想ってもらっているのか、自分が理玖をどう想っているのかすら、よく分からない。
「あたし、は……」
「強がらなくて良いの。わたしは、貴女のおばあちゃんみたいなものなんだから」
そう、頭を撫でてくる手に、何故だか身体の力が抜ける心地がした。見た目は、大して年齢も替わらないはずなのに。幼い頃、母や祖母に抱き締めてもらったときのような。そんな安心感がある。
「心に過るものがあるのなら、それは良かれ悪しかれ、確かに未練よ。朱金丸様は、子孫である貴女が自分達の元へ来るのを、楽しみにしていたみたいだけれど。わたしは、貴女には自由に生きてほしい」
「自由に……」
「そうよ」とトモエが優しく頷く。
「わたしはね。朱金丸様と私の子らや、それに連なる貴女には、幸せであってもらわないと困るの。そうでないと心配で心配で……大好きな朱金丸様と、ゆっくり眠ってることすらできないでしょ?」
茶目っ気たっぷりにそう言うトモエは、すでに亡くなった存在であるにも関わらず、それこそ自由に見えて。美邑は苦笑し、トモエに言われた言葉を考えた。
自由。
それは、どこか自分からかけ離れた単語のように聞こえた。
理玖にも、前に言われた――へらへらと笑って、その場をしのいで。そうしてこの十年、あちこちに壁を作り、壁から周りの反応を伺ってはまた怯えて隠れるというのを繰り返してきた。
「自由に、とか。今更、よく分かんないっていうか……」
「それは、貴女の気持ち一つ。でしょう?」
そう言ってのけるトモエは、眩しい。美邑はつられるようにして、わずかに口の端を持ち上げた。
「でも……鬼に成ったら、もう戻れないって。鬼に成ることも避けられない、摂理なんだって、朱金丸さん――えっと、あの。朱金丸さんと同じ名前なんですけど、顔に刺青のある鬼で……」
「……二代目ね」
承知済みなのか、トモエが頷く。
「二代目?」
「あの子はね……なんと言うか。朱金丸様とわたしの、三人目の子供みたいなものなの」
「子供」と、美邑は口の中で繰り返した。それは、予想外の言葉ではあったが。
(だから……あんなに似てるんだ)
二人の朱金丸。雰囲気こそ違うが、言われればなるほど、納得である。
「正確には、ちょっと違うのだけれど」
トモエは言葉を探すように、宙に視線をさ迷わせた。
「……わたしと朱金丸様が眠ってからしばらく経って。丘に、鬼灯が生えたの。それは、眠るわたしたち――特に朱金丸様の力を栄養にして育って、やがて、実をつけるようになった。それが、貴女も食べた、特別な実。朱金丸様の妖質がつまった、禁断の実」
「あの実……」
今でも思い出す――あの芳醇さ。トモエが、小さく苦笑する。
「やがてね。その実をつける鬼灯自体に、妖質が巡って――鬼へと変じた。それが、二代目の朱金丸なの」
それを聞いた瞬間、思い出したのは。幼い頃の美邑が実を食べたことを、自分にも責任があるのだと言った、朱金丸の顔だった。
「朱金丸さんが……あの、鬼灯」
「朱金丸様の力を宿した鬼が生まれたことで、かつて朱金丸様の眷族だった鬼たちが大騒ぎ。二代目として担ぎ上げられて、中には彼を先導に仕立て上げて、『表』の世界に再び戻ろうと言う鬼らまで出てくる始末で」
――何故、我らがいつまでも『裏側』に閉じ込められねばならぬのか。
――何故、愚かしい人間どもにおもねり続けねばならぬのか。
それはおそらく、主と主の妻を理不尽に喪った鬼らにとって、飾ることない本音だったのだろう。
だが、朱金丸の残滓は、それを是としなかった。代わりに、二代目の頬に、消えぬ証を刻んだ。
――我の力を持ち、我と愛しき者の墓場より生まれし鬼よ。混沌を世に呼びかねないそなたは、生まれながらにして罪の者よ。
「そんな……」
そんなのおかしい。美邑はついさっき、生まれてきたことそのものが、奇跡で祝福なのだと、そう知ったばかりだったのに。
なのに彼は、「二代目」だと勝手に持ち上げられ、名前まで継がされ、更には親のような存在から、「罪の者」と烙印を押されて――。
美邑の両目から、涙がぽろぽろと溢れ出た。悲しいのではない。ただ、悔しい。あまりにも、悔しい。
「……話を戻すとね」
そんな美邑を、どこか嬉しそうに見つめながら、トモエは再び口を開いた。美邑は涙を両腕で拭い、正面から彼女を見る。
「貴女が実を食べてしまったあの日。貴女を帰す際に、二代目は貴女に、自分の力の欠片を託したの」
「力の……欠片?」
意味が分からず、おうむ返しになってしまう美邑に、トモエがこくりと頷く。
「鬼に変じる定めを負ってしまった貴女が、少しでも、孤独でないようにと」
「それ……って」
この十年間。
美邑が孤独を感じずに生きてこられたのは、両親と――そして、唯一の友人のお陰だった。
「えぇ」と、トモエが頷く。
「モモは、貴女の単なる妄想なんかじゃない。二代目から貴女への、贈り物よ」
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