日本国転生

12話 女神ガイアと天使達との日本転移の事前会議

2035年10月

「よし、PW地球における現代日本の憲法改正が成立して、韓国を戦争で敗北させ、さらに軍事力が増強出来るぞ。そして後は2040年の日本と1940年の日本を重ねることが出来るわけだな」

「ガイア様、国土同士を重ね合わせるとどうなるのですか？
　国家転移は過去に何度か目にしたことがありますが、国土を重ね合わせると一体どのようになるか想像が付きません」

「そうか、ガヴリエル。其方もこの国土の重ね合わせは初めてか。
　まあ良い、この重ね合わせはPCデータの上書きみたいなモノだが、或る意味では『国家転移』というより『国家転生』といえるかな」

「上書きだと、古いデータが新しいデータに入れ替わるわけですよね。
　そのやり方だと、古い建物は新しい建物に替わるわけで、物は問題無いけど古い時代の人間はどうなるのですか？」

「良い質問だ、ガヴリエル。
　都会みたいな場所は四六時中建物が入れ替わっているから、殆どの場所では新しい建物が建っている。
　田舎は空き地や山林、田畑、原野等が残っているから、案外古い時代の建物が林立するかもな。

　そして、人について古い建物が残った場合はその建物内にいて、新しい建物に入れ替わった場合は、その場所に近くの場所前に移動するわけで、決して建物の下敷きにはならないんだ」

「なるほど、了解です。それともう一つ質問ですが、現代日本で100才以上の者が転移して当時０才児前後だった者と出くわした場合、タイムパラドックスは起きないのですか？」

「コレは皆が勘違いするところだな。
　今回の国家転移はタイムトラベルやタイムスリップではない。
　あくまでパラレルワールド同士の地球で、若干年代が違うだけのことだ。

　例えば正史地球で1940年の日本の首相は『米内光政』であるが、PW地球の1940年の日本の首相は『米内光正』なんだ。
　それ故に同じような世界だが微妙に人物や物等に若干の違いがあり、タイムパラドックスは起きないわけよ」

「ありがとうございます、ガイア様。今の説明で疑問が解けました」

「私自身も国家の重ね合わせは１万年ぶりで、その時点では古代国家で1000年程度の違いがあるものを重ね合わせたが、低文明同士だったから殆ど問題は起きなかったけど、今回は高度文明同士だから、人々が混乱することを心配をしているところなんだ。ガヴリエル、何か良い知恵は無いか？」

「ガイア様、国家転移の件を事前に人々に知らせてみては混乱が少ないのではありませんか？」

「ガヴリエル、それは良い考えだ。私も転移関係に没頭していたから、そういう細かいところには気付かなかったな。改めて礼を言う、ありがとう」

「ガイア様のお褒めの言葉、勿体ないです」

「あのう済みません、ガイア様。お話し中で申し訳無いのですが」

「何じゃ、レミエル？」

「先程から２人の話を聞きながら、転移システムの微調整をしていましたが、若干問題点が２つ浮上してきたのです」

「何じゃ、その２つの問題点は？」

「ハイ、まず１つ目は、、、、、」

　レミエルは、国家転移における問題点をガイアに説明し始めた。

　まず１つ目の問題点は、国土同士が重なる場合、土地が余るはずなのだが、その土地は何処に行くのか。

　次の２つ目は、現代日本では在日外国人が約250万人強で、訪日旅行者は約300万人、コレに不法滞在外国人を加えると約1000万人前後が日本の国土上に存在している。
　転移先の日本では、アメリカを含め世界中の国々と戦争をしており、これらの外国人が在日米軍の軍人と一緒に転移したら、戦争をする以前に国内暴動が起きる可能性が高いことであった。

「ふむふむ、まず１つ目については、、、、、、」

　ガイアは最初の問題点について回答を始めた。

　まず転移先での建物等以外の土地については、土壌の良い部分が残り、不良な土壌は主に海底、特に海溝を埋めるような形になるということだった。
　次にその埋まった分の帳尻を合わせるように、日本海溝のプレート境界等が移動して日本の地震が極めて少なくなるとのことであった。

　２つ目については、ガイアも頭を悩ませていた現代日本の外国人の存在であり、この解決方法にレミエルに尋ねていた。

「ガイア様、転移システムを調整中に気付いたのですが、人物特定欄に国籍があるんですよ。つまり国籍データを転移システムにインプットすれば、転移先の日本には外国人が存在しなくなるわけです」

「そうか、その手があったか。レミエル、ありがとう」


　ガイアは、天使達に日本の転移関係についての詳細な説明を始めた。

・日本人は転移するが、特別、一般永住者を含めた在留外国人や外国人旅行者は転移しない。

・海外出張者は日本に戻り、転移する。

・在外邦人の内、外国籍を取得した永住者若しくは帰化邦人は転移しない。

・日本人の外国旅行者は日本に戻り、転移する。

・日本国土上の動産、不動産類は転移する。

・在日米軍の兵器、建物は転移するが、米国人は転移しない。

・沖縄県の国土と沖縄県人は転移しない。

・沖縄県内の在日米軍、国防軍の兵器類は沖縄県以外の基地に分散転移する。

・転移時、悪質だったものは良質に変わる。
　例えば、1940年以前から公害汚染された物は、現代日本で改善された物に入れ替わる。
　また、現代日本で汚染が進んだ湖沼や河川は、昔の良質なモノが残る。
　但し、ダム、堤防、埋立地等の人工物は現代のモノに入れ替わる。

・干拓地、埋立地の中で政策的に失敗していると思われる現代の人工物は転移しない。
例：長良川河口堰、八郎潟干拓、諫早湾干拓等

・北方領土は転移しない。
　ロシアに不法占拠されて相当年数が経ち、ロシアの建物や軍事施設等が存在し、ロシア国民が北方領土を汚染しているため。

・竹島は転移しない。
　日韓戦争にて奪還した領土であるが、韓国占領時の建物等で穢された領土を転移先の島に上書きする必要が無いため。

・済州島は転移する。
　日韓戦争の占領政策で割譲した領土で国際経済特区に指定しており、世界中の国々の資本投入で、済州島全体は一大リゾート地として発展していたため、コレを古い済州島に上書きすることで、更なる発展が望めるから。
　また、在日韓国人の内で済州島出身者は島と共に転移する。

・海については、海岸線は現代日本のモノだが、それ以降の海は昔の汚染されていない海水が残る。
　但し、陸から離れた漁具やEEZ内の設備等は一緒に転移する。

・転移先のPW地球には、ウラン等の核分裂物質（アクチノイド系）は存在しない。
　但し、ラジウム等の天然放射性物質は存在する。
　コレは地熱発生や地球内部コアによる磁気発生メカニズムでヴァン・アレン帯を維持するために必要であるため。
　また、現代日本上の原子力施設全てから核燃料物質、放射能物質、過去発生した原子力事故等の放射能汚染について、汚染物質を全て除去する。

・転移した在日米軍の兵器類に、核爆弾や劣化ウラン弾を含めた放射性物質が含まれていた場合は、コレを消去する。

・転移先世界の油田分布及び埋蔵量を変更する。

　中東地域全ての石油を０に変更する。
　全体埋蔵量を正史地球の1/100に変更する。
　ロシア、南米等の石油を全て０に変更する。
　アフリカ諸国等の石油を全て０に変更する。
　アラスカのプルドーベイ油田の埋蔵量はそのままとする。
　アメリカ国内埋蔵量を1940年当時での消費量ならば残り２年で０にする。
　北海油田は既存と同等の埋蔵量とする。
　満州大慶油田は既存と同等の埋蔵量に変更する。
　中国国内他の石油は全て０とする。
　樺太はカザフスタンのテンギス油田並の埋蔵量に変更する。
　北海道石狩・留萌の日本海側から苫小牧の太平洋側までの間の油田を、サウジアラビアのガワール油田並の埋蔵量に変更する。
　秋田・新潟間の日本海側の油田を、クウェートのブルガン油田並の埋蔵量に変更する。
　
　以上の変更で、日本は石油消費国から石油産出国に変貌する。
　日本が軍事的に世界的覇権を掌握し、エネルギーコントロールすることで、コレを地球温暖化防止のための布石とした。

　中東地域を０にした理由は、何もない砂漠ならば戦争は起きづらいため。
　なお、既に石油産出している油田は埋蔵量を残り１年とした。
　アメリカの埋蔵量をアラスカを除いた国土では、残り約２年とした。
　アメリカは1940年当時で、現代日本の石油消費量より消費していた。
　超浪費大国であり、石油を武器にした覇権を止めさせるために、世界全体の石油埋蔵量を1/100以下とし、特にアメリカの超浪費国家を改めさせる予定であった。
　また、隣国のメキシコではアメリカとは逆に転移前油田の1/100の埋蔵量であったが、アメリカに石油を高値で売り付けるためにある程度存在していた。

・転移先のPW地球の地下鉱物資源は全世界に偏り無く分布していたが、日本の地下鉱物は正史地球の約100倍の埋蔵量に変更していた。

・石炭の埋蔵量は世界中で1/100の埋蔵量とした。
　当時の技術では、製鉄にはコークスが必要であり、石炭は欠かせない存在であったから。
　また、日本国内の有数炭田が集中する北海道夕張・釧路地域や、九州三池・筑豊地域では、正史地球ではかなりの深度まで掘削しないと産出しない石炭層であったが、これらの石炭層は露天掘り可能な表層まで石炭層が盛り上がっていた。

　また金、銀、銅、鉄等の主要金属の他、正史地球では中国にしか存在しないレアアースや希少金属は中国国内から無くなり、全て日本で産出するよう変更されていた。
　なお、日本で唯一産出しない鉱物はボーキサイトであったものの、南洋諸島でボーキサイトが産出しており、他に満州国でもアルミナ原料が産出していた。

・日本国籍の人工衛星も一緒に転移する。
　例えば、ひまわり、放送衛星、通信衛星、情報収集衛星、みちびき等
　但し、GPS衛星はPW地球では全て無くなるため、日本が早急に航法衛星を転移後に打ち上げる必要があった。


「それじゃ、レミエル。日本転移先のPW地球の調整を宜しくね」

「任せて下さい、ガイア様」

「（これらを残り５年以内に準備させないとね）」

　ガイアは、これらの事を誰に伝えれば日本国がパニックにならずに済むかを検討を始めていた。