日本国転生

北乃大空

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7話 暗躍する天使達 その3

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2031年6月

 韓国軍のミサイル攻撃により多数の被害者が出たことで、日本国内は一気に韓国への憎悪が深まるとともに、また日本国内にいる在日韓国人の排斥運動が一気に高まり、ヘイトデモが日本各地で勃発した。

 そのデモが始まった頃、韓国政府から在日韓国人に対して、1年以内に本国に韓国人として在住しなければ非国民とみなし、現在与えている韓国籍を取り消しするという大統領令が発せられ、短期在留者は無論帰国を急ぎ、長期在留者も同様であった。
 しかし、特別永住者と一般永住者は在日韓国人の排斥運動やヘイトデモ等の迫害にもめげず、殆どの者が日本に残った。


2031年7月

 衆参院同時選挙実施。
 韓国軍のミサイル攻撃を含めた韓国側の一連の行為は、日本人の心にあった愛国心に火を付け、衆参両院共に保守系与党と右翼系政党の圧勝で、憲法改正反対を唱えていた野党は、衆参両院共に殆ど議席を失った。


2031年9月

 憲法改正発議。
 衆参両院共に満場一致に近い可決数。
 その他、各種法律等改正案可決。


2031年10月

 憲法改正発議による国民投票実施。
 投票数は有権者の9割強で、8割以上が改正に賛成。

 憲法改正で一番論議されたのは第9条の取り扱いであったが、国民も我慢の限界であったのだろう。

 つまり、韓国軍のミサイル攻撃を事前に防ぐことが、現行憲法では不可能に近いものであった。
 韓国側はあくまで故意ではなく事故と嘯くが、明らかに日本国に対する戦争行為を仕掛けていることは間違いなく、このまま日本が憲法改正しないでずるずると専守防衛状態であったなら、韓国側の更なる武力的な脅しに屈して援助金という名目の金をむしり取られていたに違いない。


2031年11月

 改正憲法発布
 ガイアとしては、日本を覇権国家とする上で一番障壁となっていたのは日本国憲法であり、この憲法改正が達成出来たことが一番嬉しいことであった。


改正前憲法(第9条関係のみ抜粋)

第9条

 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

第9条2項

 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。
 国の交戦権は、これを認めない。


改正後憲法(第9条関係のみ抜粋)

第9条

 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争及び国家等を脅かす行為に対し、可能な限り平和的外交手段を用いて解決に努め、これで解決出来ない場合は、諸外国及びその他武力勢力等に対して、武力による威嚇、又は武力の行使を含めた交戦権を認める。

第9条2項

 前項の目的を達するため、国は陸海空軍その他の戦力を保持し、それらの軍等については、法律で定める。


 因みにたったこれだけの条文改正で、日本が軍隊を保持して交戦権を得ることが可能なわけである。

 如何に今までの平和憲法が、頭の中がお花畑チック&丸腰でお姫様的な憲法であったことが理解出来ると思う。
 また今回の改正条文に軍隊の名称をあえて定めていなかったのは、日本国の政治状況に応じて名称を変更することを容易にするためであった。


2031年12月

 日本国憲法改正に伴い、防衛関係法令が大幅に変更され、主な改正点は次のとおりであった。

・防衛大臣から国防大臣に役職名称変更し、国防大臣は文官とする。

・防衛省から国防総省に名称変更し、その長は国防大臣とする。

・防衛装備庁を国防装備庁と名称変更する。

・国防装備庁の監督省庁を、防衛省から国防総省に移管する。

・国防装備庁の長官は技官とする。

・国防総省の下に陸軍省、海軍省、空軍省を設置する。

・陸軍省、海軍省、空軍省の三省は庁と同格とし、それぞれ長官制とする。

・陸海空軍三省の長官は文官とし、それぞれ陸海空軍を監督する。

・日本国自衛隊を日本国防軍(以下国防軍又は日本軍に略)に名称変更する。

・国防軍を三軍とし、陸海空自衛隊は陸海空軍とする。

・陸上自衛隊水陸機動団は海兵隊に昇格させる。

・海兵隊は海軍の監督下におき、主に上陸時での陸戦部門を任務とする。

・陸海空軍三省の武官の最高位は幕僚長とし、階級は大将とする。

・陸海空軍三省の幕僚長を統括する幕僚総長を置く。

・幕僚総長の階級は元帥とし、国防総省に所属して国防大臣の指揮下に入る。

・自衛隊から軍に名称変更するに伴い、自衛官を軍兵士(軍人)とする。

・軍兵士等の階級名称等については、別途定める。

 防衛関係法令の改正に伴い、戦争犯罪人を法的に裁判する軍事裁判関連等の法律が新設された。


2031年12月24日

 月軌道L2ポイント上の宇宙船内にて

「フフフ、やっと日本国の憲法改正がかなったわ」

 ガイアは憲法改正後の日本が、敵対国に対してどのような武力行使をするかを注目していた。


 そして彼女は日本国の憲法が改正されたことについて、今まで活躍してくれた天使達を労うために、皆を呼び寄せて感謝の宴を開いていた。

「天使の皆さん、ご苦労様でした。
 これで神々の計画である歴史改変への一歩が前進しました。
 今宵は私をいつも手伝ってくれている天使達への感謝の気持ちと人類の未来の変化することを期待し、乾杯の挨拶と致します。それでは乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 宴の翌日、人間体と同等の身体であるバイオロイド体であるため、酒を飲み過ぎると二日酔いになることはごく当然であった。

「ウウウ、頭が痛ーい!」

「ウプッ、気持ち悪い。吐きそうだわ!」

「なぜ、ガイア様とガヴリエル姉様はかなり深酒しているはずなのに二日酔いになっていないのかしら?」

「それはね、事前にコレを服用していたからよ」

 ガヴリエルが他の天使達に見せたのは或る薬用カプセルであった。
 このカプセルは、アルコール類分解促進酵素の働きと同等のナノマシン入りカプセルで、一度服用すると体内にナノマシンが常駐し、どんなに深酒しても瞬時にアルコール類を分解し、人間体等を二日酔いにさせない効能があるモノであった。


「いやー、この身体になって酒が飲める喜びを感じることはウレシイのだが、同時に飲み過ぎるとこの二日酔いが地獄の苦しみなのね」

「ミカエル姉様、我慢しないでコレを飲んで下さいませ」

「有り難う、ガヴリエル」

「お姉様、私にも下さいませ」

「ハイハイ。全員分の酔い止めカプセルはありますから、慌てないで」

「ガイア様。こういう便利な薬があるのに、私達が酒を飲む前に処方することなく、あえて私達に二日酔いの苦しみを与えたのは何故なのでしょうか?」

「なかなか生意気なことを質問するのね、ミカエル。
 それはですね、お前達に酒の特性を知って欲しいためと、人間達が味わっている二日酔いの苦しみを体験して欲しかったからですよ」


 ガイアはミカエルに対して笑顔で疑問に答えていた。
 その瞬間、ミカエルはガイアの笑顔に黒い感情を感じ取ると、一気に恐怖感が心を満たし、このままでは自分は必ず断罪されると思い、即座に謝罪した。

「ハッ!失礼致しましたガイア様。そのような深謀遠慮を知らずに生意気なことを質問してしまいました。
 この私の失言、どのような罰でも構いませんので、罰して下さいませ」


 ミカエルは例え二日酔いで頭の働きが鈍っていたとて、神に対する反逆とも思えるような発言をガイアに質問したからであった。
 つまり、自分勝手に酒を飲み過ぎたのに、二日酔いにさせたのはお前のせいだと言っているのと同じことであった。

 ミカエルは自分の生命がここで絶たれても不思議では無かった。
 何故ならば、過去の様々な自分の悪行をガイアやガヴリエルに始末させた事が何度かあり、ガイア自身もミカエルの代わりになる新たな天使候補を検討中であるとの噂を耳にしたことがあったからである。
 彼女はガイアの前に跪き、身体を震わせながら頭を下げて謝罪し、半ば死への覚悟を決めていた。

「判ったわ、ミカエル。頭を上げなさい。貴女に罰を与えます。
 貴女は早急にアメリカに飛び、米国政府と米軍幹部に接触して日本への武器供与の交渉をして欲しい」

「それは罰ではなく、任務ではないのですか?」

「そう、コレは貴女への任務という罰よ」

「ううう、有り難うございます。ガイア様」

 ミカエルは大粒の涙をこぼしながら顔中を涙で濡らしていた。

「そういえば、貴女の泣き顔を初めて見たわ」

「ガイア様、少し前までは私達はアンドロイド体の身体だったので、泣くことが出来なかったのですよ」

「あ、そうだったわね。ガヴリエル」


 ガヴリエルの納得行く一言がその場の重苦しい空気を一掃し、ガイアを中心に全員に笑いと笑顔が広がって行った。

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