上 下
32 / 62
コミケへ行こう!

32:コミケ初日、その時あの2人は

しおりを挟む
私は今激怒している。
本来今日は私がイベントに出る日じゃなかったからだ。
ちなみにイベントはコミックマーケット、通称コミケ、ここで行われるのだけどVtuber達は東京本社にある各部屋で行われる。
ちなみに今日の私はオフでコミケに行く予定だった。
ゆかちゃん達のブースは初日だったからね。


私たちいまなんじは企業ブースにてグッズの販売、更にSNSで応募してくれた人の中から抽選でブース内で開かれる特別イベントの招待券が貰えるというキャンペーンを行っている。

その特別イベントがバーチャル握手会。
と言っても1人3分程度の雑談が出来るサービスのようなもの。
各日10人の選ばれたVtuberの中で自分の推しを選択して抽選に応募。
当日に企業ブースへ向かい推しに会うだけ。
このイベントは時間の指定があるので忘れないようにするのも大事。

そして私は2日目に参加予定だった。
な!の!に!
「なんで私が急に1日目に移動になってるんですか!」
「本当に!本当にごめんなさい!」
マネージャーが必死に謝ってきているが、ゆかちゃんのブースの本とボイスを買えないなんて流石に酷い!

「私何度も何度もルートの確認して、うぅ・・・」
思わず泣きそうになった。
「あなたの欲しかった新刊とシリアルコードはなんとかして手に入れるから!本当にお願い!」

「というかなんで私に伝えた日程と私との握手会の日付が違うのおおおお!
・・・明日明後日は大丈夫ですよね?」
「それは大丈夫!約束するわ!」

「じゃあ新刊セットだけはなんとかして・・・でも転売屋からだけは買わないでくださいね、それだけは徹底したいから。手に入らなかったら私は恨みますけどね!」
「知り合いが現地参戦だから頼んでおくわ・・・」

「頼みましたからね!
じゃあ行ってきます・・・」
「本当にごめんなさい!!!!」

「絶対ゆるさないもん!!!
・・・でも来てくれてる人の為にも手は抜かないから大丈夫です。これでも大物Vtuberだから私。」
そう言って私は用意された部屋へ入っていった。

------
お盆休みを利用してわたしは初めてコミケに参戦する事にした。
もちろん目的はゆかちゃん本とド本命であるゆかちゃんのASMRボイス!
これを買わずして何を買うと言うのか!
ただ、両親にはモデルのお仕事が東京であるからって誤魔化して来ちゃった。
まぁ実際には明日にあるから!
嘘では無いし!うん!
1日早く来ちゃっただけだから!

そしてわたしはネットで事前に情報を見て戦慄していた。
今回の来場者数は100万人を見込んでいるとか。
こんなに人が来るんだコミケって・・・

でもわたしは負けない!
絶対にゆかちゃん本を手に入れるんだ!

「あつい・・・」
わたしは今どこにいると思う?
え?東京ビッグサイト?
違う違う。

地獄。
太陽の光差し込む人混みの中という地獄。

「日焼けしちゃいけないからってこんな服着てこなければよかった・・・」
そう、モデルであるわたしに日焼けは厳禁。
こんな時期でも長袖にロングスカート。
もちろん腕や顔にも日焼け止めを塗ってダブルで保護。

「始発最速で来たのはいいけど体力持つかなぁわたし。」
会場が開くまでわたしは地獄で待機することになる。

そして待つ事数時間、熱中症予防に大量の水分を持ってきていて本当によかったと思った。

何故かって?
わたしの近くで暑さを軽く見ていた人たちがバタバタと倒れたから。
あれを見て予防の大切さを知ったよね。

それと今の気温見て目が飛び出るかと思った。
何よ38度って体温より高いよ。

そんな事を言っていたら周りから拍手が巻き起こった。
何これ、よくわかんないけどわたしも拍手しとこ。

それから列が前に進み始めた。
やっと入れるんだ!
でもこの汗臭くなってるわたしを見てもらうのはなんか嫌だな・・・

そして1時間かけて目的のゆる先生のブースへ到着。
待ち人数もかなり多く、売り切れないか心配だけど、大丈夫かな。

列の進みが思っていたよりも早くて30分ほどでわたしの番になった。

わたしの前にいるのはよくわからない女性。
ゆる先生ではないみたいだけど誰なんだろう?
売り子さんって言う人かな?

「新刊セットぷらすを1つください!」
「はい!新刊セットぷらすを一つですね!1500円になります!」
わたしは用意していた1500円を渡す。

「ありがとうございます!こちら新刊セットぷらす一つになります!」
「ありがとうございます!」

るんるん気分でわたしは会場を後にした。
流石にここに長時間いたら死んじゃうからね・・・
でもゆかちゃんに会ってみたかったなぁ・・・
写真だけ並んでる時にささっと撮ったけど、やっぱり近くで撮りたいよね。

そしてホテルに戻ったわたしはシャワーを浴びていざASMRボイスを聴く事にした。
眠っても大丈夫なようにベッドでスマホを充電しながら聴いておこう。

既にワクワクが止まらない。
再生ボタンをぽちっと押したら
『お姉ちゃん、お疲れさま。』
ゆかちゃんの声が聴こえてきた。

『凄く疲れた顔してるけど、大丈夫?』

『えっ?一緒に寝たいの?どっちがお姉ちゃんかわからないね、これじゃ。』
ふふっと小声で笑うゆかちゃん。
この時点で悶えそう。

『はいっ、こっちにどーぞ!』
ふぁさっと布団を動かす音がする。
まるで隣にゆかちゃんがいるような、そんな錯覚を覚えるわたし。

『いつもボクのためにお仕事頑張ってありがとね、お姉ちゃん。』
『ボクにはこんな風にお姉ちゃんを癒してあげることしか出来なくてごめんね。』

『くすぐったいよお姉ちゃん!』
何をやってるのそっちのわたし!?

『そんな事無いって?なら、いいんだけど・・・』
髪の毛に触れるような音が聴こえる。
『いきなり頭撫でないでよお姉ちゃん、えへへ。』
どうやらゆかちゃんの頭を撫でる音だったようだ。
『でもありがとう、大好きだよお姉ちゃん♪』

あ、もう無理死ぬ。

『そ、それじゃあお姉ちゃん、おやすみなさい!』
慌てたように布団を被るそんな音がしたかと思えばゆかちゃんの息遣いが聴こえてくる。

『すぅ・・・すぅ・・・』
「すぅ・・・すぅ・・・」
気付けばわたしもゆかちゃんに合わせて眠ってしまっていた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

男女比がおかしい世界に来たのでVtuberになろうかと思う

月乃糸
大衆娯楽
男女比が1:720という世界に転生主人公、都道幸一改め天野大知。 男に生まれたという事で悠々自適な生活を送ろうとしていたが、ふとVtuberを思い出しVtuberになろうと考えだす。 ブラコンの姉妹に囲まれながら楽しく活動!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ウザい先輩と可愛げのない後輩

黒姫百合
恋愛
「本当に君は可愛げのない後輩だな」 高校一年生の春、北野真希(きたのまき)は高校三年生の鈴木紗那(すずきさな)に絡まれる。 紗那は真希と仲良くなりたいと思うものの、他人に興味がない真希は紗那をウザがる。 でも何度も話しかけられるたびに真希の方も無視するよりも適当に相手にする方が、時間を浪費しなくて済むことに気づき、少しずつ紗那との交流が増えていく。 そんなある日、紗那とキスをしてしまい……。 ウザイ先輩と可愛げのない後輩が紡ぐ、ラブコメが今、始まる。

好感度MAXから始まるラブコメ

黒姫百合
恋愛
「……キスしちゃったね」 男の娘の武田早苗と女の子の神崎茜は家が隣同士の幼馴染だ。 二人はお互いのことが好きだったがその好き幼馴染の『好き』だと思い、恋愛の意味の『好き』とは自覚していなかった。 あまりにも近くにいすぎたからこそすれ違う二人。 これは甘すぎるほど甘い二人の恋物語。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...