まさか転生? 

花菱

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 王城の謁見の間には朝から王都中の貴族が集まっていた。


 昨日のうちに王城より緊急の知らせが届いたのだが、全貴族が王都にいるわけではない。各領地などにいる貴族の元には魔道具により謁見の状況が伝えられる事となった。

 この魔道具はとても貴重な物なので当主のみに渡されていて、使えるのは王家からの許可を得た時であり、その許可を貰うのにも厳しい制限付き。

 そんな大変な物を使用してまで謁見を行う事に、貴族たちは落ち着かない夜を過ごし今日を迎えたのだが、この謁見の間に到着してみたが、周りの貴族たちも訳が分かっていないようで落ち着かない。



「国王陛下がいらっしゃいます」

 宰相の一言で一瞬でその場が静かになり、一人の男の姿が見えると恭しく頭を下げ迎え入れ、玉座に座るのを待つ。

「皆、面を上げよ」

「この度、ザーリアの街の貴族が役人を使い不正を行っていたことが分かった。罪状を確認の上、爵位を剥奪し犯罪奴隷とし、その妻と子も許されぬ犯罪を行っていた事で同様の措置を行う事とする!」

「民を守るべき者が権力を使い苦しめるとは、決して許される事ではない。今後このような事がないよう精査せよ」

 宰相の報告で一瞬ざわつくモノの、陛下の威厳ある言葉に全員が静まり厳かに返事を返す。

「「「はっ!」」」

「それからもう一つ、同じくザーリアの街の事ですが、神獣様が2体顕現されました」

「「「神獣様が!?」」」

「詳しくは、レザリア領主グスマン公爵」 

「はい。何とか神獣様にご挨拶させていただくことが出来ました」

「「おお!!」」

 おそらくこの場にいる者は神獣と聞き、大きな期待を持っただろう。当然な反応だとは思うからこそ、この後の反応が手に取るようにわかる……。


「神獣様が何もなく突然人の街で暮らす訳はありません。あるじと定める方と共に街に来られたのです。しかしその方が貴族など権力を持つ者を特に嫌っておられます。
 私も挨拶させていただくのが大変でした、そしてその時《あるじと定めるのはただ一人。守るものはあるじあるじの心である。それが害された時は容赦しない》と言われましたので、この国を守るためにも、陛下には貴族を含む権力者の一切の関わりを禁じていただきたいと思います」

「お待ちください! なぜです、せっかく神獣様がこの国に来てくださったのです、その者に言う事を聞かせれば神獣様も……」

「何を言っておる?」

 今の話の後によくそんなことが発言できるな……この男、伯爵でありながら馬鹿なんだな。

「聞こえなかったのか、もう一度問う。何を言っておるのだ?」 

「メイツ伯爵、答えなさい」

「え、あ……の」

「"言う事を聞かせる"とはどういう事か!? そなたは話を聞いていなかったのか!?」

 覇気の力を乗せて声を発せば、謁見の間にいる者たち(状況を理解している物と警備を除く)が顔色を悪くし身体を震わせ出す。
 普段ならここまでの事はしない、今回は特別な事でたった1回のミスで国を失うかも知れぬのに愚かな考えを……。


「神獣様とそのあるじとなれば、神の使徒であり神だ。その方々に対し"言う事を聞かせる"などと……そなたは何だ、神にでもなったつもりなのか?」

 覇気の力に耐えられなくなったのか、愚かな発言をしたメイツ伯爵が膝を付き頭を垂れた……

「も、申し訳ありませんでした。こ、この国の為にお力をお借りできればと……お許しを……」

「はぁ、今回は許そう。よいか、皆よく聞け!
 神獣様とそのあるじ様、またその周りには此方からの一切の関わりを禁じる、抱えの商人等に対しても同じと心得よ!
 これ以降、神獣様の怒りを買うような事があった場合、それは個人の責任ではあるが、誰が指示した事なのか徹底的に調査を行うこととする!」

「「「「はっ!」」」」

「では間違いが起こらないように、神獣様の特徴を………………」

 その後、宰相から神獣様に関する現時点で分かる情報の公開を行い謁見は終了。



「何とか決まったが……さて、どうなるか……馬鹿は馬鹿ゆえに……な……」 

 馬鹿が多いのは……今更仕方ないが、どうか今回の情報を下に、穏やかに過ごせると良いが。

「しかし陛下、あの場にも数名馬鹿がいたようですね」

「まったくだ……私にも、もしもの時の助力を願う気持ちや、ただお会いしてみたいという気持ちはあるが……いう事を聞かせるなどという発想は無かったぞ?」

「注意した方が良いかもしれませんね。さて、話もまとまりましたし、我が領から連行した大馬鹿の処理も済みましたので、帰ります」

「!? まあもうちょっと良いではないか、アドルフ? その者の周辺も調べる必要があるのだし」

 いかん! 今帰られてしまえば、どのタイミングでザーリアの街に行けるか分からんのだ! 何とか誤魔化しつつ共に向かえるように段取りをせねば!

「いえいえ、私が居ても役には立ちませんのでご迷惑をお掛けする前に失礼します、はっはっは」

「え!? おいちょっと待て、待たんか、コレ!」

 アドルフめ~!! 制止を全くの無視で帰って行きおって~!


「宰相! 何とかザーリアの街に行く方法考えてくれ」

「何をおっしゃっているのでしょうか? ザーリアの街に行く? はっはっは、またそんな冗談を!」

「え、いや冗談……」 

「はっはっは、冗談が出るほどお元気なようですので、こちらの書類を確認していただきましょうか?」

 しまった! 出かける準備に取り掛かりたかったのに……仕事がふえた……。






「どうしたモノでしょうな? 神獣とは……」

「まったくだ、だが下手に手を出せば怒りを買うぞ?」

「しかし、神獣を手に入れられれば間違いなく王家に近付ける……」

「だいたい神獣のあるじというのは何者なんだ? まったく報告にもなかったではないか!
 息子に……いや待て……従わせることが出来れば………………」

「おお、成程……それはいいですな」

「では必要な物を集める時間が要りますな……なかなか難しいかもしれませんが」

「本当に神獣であるならば、使わぬ方がどうかしているのだ」

「まったくですな~」

 どこかの貴族の屋敷内で交わされる、あまりよくない話。だが、それを聞いて止める者はその場には誰一人としていない。
 





「か、かりゃあげ~!!」

「……逃がさない!」

「おいおいエア、それにライルも……」

「凄いよね~、唐揚げってさ~、相手イビルバイパーだよ?」

「下手に強いので、負ける気がしませんからね。でも最初の一回目に見た時は驚いていたのに、今は唐揚げの連呼ですからね……成長が早いです」

「カイル、そんなシンミリした話じゃないからな? あの2人はただ食い意地だ!」

 その頃エアは……まさか王都の貴族に怪しい考えを持っている者がいるなど、露程の想像をすることなくただ食欲の赴くまま肉を狩り食材を増やしていた。





「うふふふふ、⦅今日は植えてた自然薯が収穫できるほど成長したから、お好み焼きにしよ~♪⦆」


 まずはカボシュを刻みましょ~。前世ではお好み焼きのキャベツを超細い千切りにしていた時は、絡まりは良いけど食感が弱かったんだよね。
 途中から普通の千切りやみじん切りにしたりと切り方を変えて、最終的に粗みじん切りになったんだよ。

 ほんのちょこっと彩りにキャロも入れようかな?

 それから! 大豆があったから作ったんだ~♪ 緑豆があるとまたちょっと違うんだけど。

 オーク肉を細切れとスライスに切り分けて、細切れは軽く炒めてっと。

 小麦粉と卵、塩コショウに鶏ガラと水を混ぜて、オーク肉のスライス以外をぜ~んぶ投入、すり下ろした自然薯もたっぷりと!

 温まった鉄板に生地を乗せたら、スライスオーク肉を乗せて焼く!

 ジュ~ジュ~いい音と匂いがしてきたよ~、焼けたらひっくり返して……上に乗せてたオーク肉が焼ける事で更に美味しい脂が出てくるから、たまりません!


 自然薯が入っているからだろうけど、見た目にもふっくらしてるのが目の毒だね~、ビャク達もだけど、ライルさんがさっきから鉄板の前から離れないんです!
 分かるよ、その気持ちは良く分かる。でもね、正直邪魔なんだよ? ごめんね?


 途中からカイルさんとアーロンさんが焼くのを交代してくれたので、ちょっと前にライルさんの事を邪魔って言ってたのを、完全に棚の奥にしまい込み鍵も掛けてなかった事にして2人並んで鉄板を見守る。いい匂い♪


 鰹節も青のりも無いし、紅しょうがの代わりに手作りガリだけど、ソースとマヨネーズはあるから問題な~し♪



 幼女の身体にはお好み焼きだけで十分だろうと思うけど、ザックさん達は足りないだろうから、この際お好み焼きを主食にしてサラダやお肉のおかずを出して準備OK!

「!! おいし~い! 何これ~! フワフワしてる~」

「はふっ! ん! ウマッ、なんだこれ!?」

「これは美味しいですね~、気に入りました。また食べたくなる味です」

〔〔これもすき~!〕〕

 ソラとツキは本当に正直で、だって、かわいい~!

 ライルさんは口に合ったんだろうね、無言でアツアツのお好み焼きに食らい付いてたよ……火傷しないのかしら?



 
「はぁ~、食べた~。エア、これまたしような!」

「あのソースという物は色は凄いですが、美味しいですよね」

「はい、おいち~にょ♪」

「上に乗ってる肉がカリカリしてるくらいのが、特に美味しいよね~」

「……もうちょっと食べたかった」 

 いやいやいやいや! ライルさん20枚くらい食べてたからね!? 
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