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5人が驚き過ぎて呆然としている間に、子供達はその日の仕事を終えお金と作物を受け取り帰っていくが、今日はもう一度院長先生達も全員連れて戻ってくるように言われている。
夕食を全員で食べると言われたので、仕事帰りだというのにいつもよりみんなの足が速い。エアの作る料理はとても珍しくておいしいので楽しみなのだ。
「はっ!? あれガキどもは!?」
「だから~、口が悪いんだって! ガキじゃなくて子供って言えよ!」
正気に戻って開口一番が"ガキ"ですよ……ホント口が悪い……思わずザックさんも注意する。
「ギルドでサブマスにも言われたけどよ~、無理だって~」
「自信もって無理って言うなよ……まあいいや、今日ここで夕飯食ってけよ。エアがたくさん作ってくれたらしいから」
「マジ? 良いのか?」
「はい! たびぇちぇっちぇ~♪」
ザックさん達の親しい人で、口は悪いし厳つい見た目だけど、子供達を気に掛ける良い人だから歓迎しますよ!
「きょうにょごはんは、みちゃめじぇびっくりしましゅけじょ、あじはおいちいはじゅ!
かりゃかっちゃりゃいっちぇにぇ?」
子供用に甘口、大人用に中辛をかまどに取り出す。辛口もあるんだけど、これは希望があってから出すことに。
「凄い色だな……エアの作る料理に間違いはないが……」
「とても食欲が刺激される匂いですね」
「エアちゃん、ちょっとからい……でもおいし~よ!」
「ありゃ、こりぇまじぇちぇみちぇ?」
半熟の茹で卵を半分に切ってからトッピング。とろ~り黄身と食べれば……
「からくなくなった~!」
〔なんとも深い味だ、うまい!〕
〔このちょっと辛いのがたまりません〕
〔〔からくないよ? すっごくおいしい♪〕〕
子供達とソラ・ツキは子供用カレーだけど、ソラとツキは辛いのに強いのかな? 子供達は辛いって言ってるけど"どこが?"って感じ。
「すげぇうまい! なんだこれ、辛いけど美味い」
「なぁ……今、その従魔喋ったよな!?」
「あれ~、言ってなかった~? この子達喋るんだよ~」
「「「「「はあぁぁぁぁ~!?」」」」」
「カレーっていろんな食べ方があるんだな!」
ザックさん達はビャク達従魔の説明を聞き、あまりの事に呆然としている5人を放置してバクバクと食べ進めているけど、いいのそれで!? わたしは良いけどね!?
「エアさん、もしよろしければ作り方を教えていただけませんか?」
「いえ! それよりもこの料理も商業ギルドに登録した方が良いのでは?」
料理人としてはやっぱり気になるんだろうね、マルセルさん達はず~っとカレーの研究をしながら食べてたけど残念ながらわからなかったみたい。
ま、さすがにね~、数種類のスパイスが入ってるからわからないか~?
それにしても、登録か~。ここ最近ポーションをはじめとして、飴ちゃんやポテトチップスなどなど登録申請しっぱなしだよ。
わたしは冒険者だから本当は冒険がしたいんだけどなぁ~、この街以外にも行きたいし。落ち着いて旅に出られるようになるのはいつの事になるやら……。
〔あの魔物除けがこんなに美味しい物になるとはな〕
〔本当に側で見ていたのに不思議です〕
「……え? 魔物除けって……前に買ってたあの魔物除けか!?」
ギンとアサギが材料の話を始めたのを聞いて、大人たちが驚きざわざわとしはじめる。
「う? しょうでしゅ。おいちいでちょ? まもみょよけにょおみしぇちょ、がりゃしゅやしゃんに、しゃしいりぇちにゃきゃ~」
「これが魔物除け!? 美味いんだけど……?」
「はちか、く~ちゅるいまじぇまちた」
でも、登録した所で……売れるのか? 今ここにいる人は美味しいって言ってくれてるけど……ぼそっと呟いたら
「「絶対買う! でも作り方が簡単ならだけど、でもこれうまいよな~」」
「"エアの店"の2階で食堂するんだよな!? そこで出さないのか?」
なるほど……それ賢い! まずは知ってもらってからカレー粉やルゥの販売をすればいいんだ!
カレーはもちろん、様々なトッピングを準備していたのに(カツや玉子、揚げ野菜など)ほぼ完食で、最初は出していなかった辛口カレーも男性陣の"美味しいけどちょっと物足りない"との意見で取り出したところ大好評♪
ザックさん達に出会ってから思っていたけど、この世界の人って男性も女性も良く食べるんだよ。例外なく子供もね……よくそんなに入るな。
翌日、3つの味を小鍋に取り分けた物を持って差し入れに。
「こんにちは~」
「はいよ~っと、お? 嬢ちゃんは……この魔物除けを食べるって言ってた……」
「はい! しゃしいりぇでしゅ! じょりぇがいいでしゅか?」
ほんのちょっと味見用にティースプーンで甘口から順に差し出す。見た目から食べ物に見えなかったんだろう、食べられるものだと必死に説明をしてようやく納得してもらえたけど、ビクビクしつつ口に運んだ瞬間……カッ!!
目を驚きでこれでもかと見開き、口の中のほんの少しのカレーを味わって……ホウ~ッとなんだかウットリ
「3番目だな、でも2番目のも良いな~。で? 嬢ちゃん、これは?」
「こりぇが、ここじぇかっちゃにょでちゅくりまちた」
「……は? これが言ってたやつなのか? 魔物除け……信じられん旨さだ」
中辛と辛口のカレーを差し入れとして渡した後、使って減ったスパイスの買い足し。前回からそんなに日が経ってないので心配したけどちゃんと追加されていたので、今回も安心して大量購入したよ~♪
店主のおじさんにはカレー以外にも使い道は色々あるが、特に前回と今回購入したものは今後もしっかり仕入れて欲しいとお願いしといた。
すべてはカレーのためだ、努力を惜しんではいけないのだよ!
「しゅみましぇ~ん」
「はい? あらエアちゃん、いらっしゃいませ」
「こりぇ、しゃしいりぇでしゅ~。まもにょよけでちゅくりまちた」
「以前言っていた食べ物ね!?」
ここでもスパイス屋さん(魔物除け屋さんです)の時と同じく味をチェックしてもらって、ご主人は辛口で、奥さんは甘口と中辛だったので、3つともプレゼントしてここでもガラス瓶とお皿を追加で買い物。
結局カレーは両ギルドにも持ち込み味見をしてもらった結果、マルセルさん達の希望通り登録となったのは勿論、大興奮で食堂メニューに入れる事も決まった。(ギルマスとサブマスの目が怖かったよ~)
その後冒険者ギルドで依頼ボードを覗いてみるが、これといって興味を引かれる物がない……時間的にみんなが受けた後だもんね~。
『良いのがないね~、外に出たかったんだけどな~』
〘ただの散歩ではだめなのか?〙
『そっか、そうだよね!? ビャクやギン達が一緒なんだもん問題ないね!』
そうと決まったら早速行動開始♪
ザックさん達にはイヤーカフで報告を。絶対に欠かせないんだよ! もし忘れて外に出たりしたら、鬼が出るからね!
『魔物の気配は……おっ! ビャク~向こうに何かいる。会った事のない気配だ!』
〔あれはグランデシープだな。魔物だが、人を襲う事はないはずだ〕
〔あ奴らは逆に人に襲われやすいぞ?〕
「え!? にゃんで!?」
〔魔物という事で、必要以上に怖がっている事もだが、毛を求めているのも理由だろう〕
『け? ああ! シープ、羊だもんね! でも襲ってこないのに殺されるのか~。ねえ? ちょっと行ってみよう、言語理解でお話し出来たら交渉してみるよ♪』
〔〔こうしょう?〕〕
『そう! 定期的に毛刈りをさせてもらえたらな~って。モフモフだと思うんだよね♪』
〔〔〔〔もふもふ……〕〕〕〕
〔そういえば昔見たのは、とんでもない大きさだったな〕
なんだかビャクの"とんでもない大きさ"というのが気になるけど、遠くからでも見てみたいと気配をたどって移動……した先にいたのは。
『……動く山かな? 小さい山だけど。なんて名前だったっけ?』
ひときわ大きな山が一つ、それよりは小さいけどそれなりの大きさが一つ、それの半分くらいの大きさが4つのモゴモゴと動く山。
〔グランデシープだ。前に見たのはこれよりまだ大きかったか?〕
『グランデ……確か大きいとかの意味があったような、じゃあ単純に"大きい羊"まんまか~い。
襲ってこないんだよね? 性格が穏やかなのかな?』
〔たとえ穏やかでも、命の危機なら戦うだろう? だが、以前見た時は戦っていなかったように見えたのが気になっていたのだ〕
? どういう事だろう。
[人間の気配がする。子供達よ、急いで隠れなさい]
[……はい……]
[ここまではやって来ないだろうと思っていたのだが……]
言語理解は正常に働いてくれていて、グランデシープの言葉がちゃんとわかるのは良いんだけど……話している内容が戦うとかじゃなく、子供は隠して大人は逃げも隠れもしない(出来ない)ってだけのように感じる。
先に聞いたビャクの"戦っていなかった"と合わせると、なんだか嫌な答えにたどり着きそうな気がする。
「あにょ~、おにぇがいがありゅんでしゅけじょ、けをかりゃしぇちぇもりゃえましぇんか?」
[お願い? 毛? どういうことか、我らを殺しに来たのではないのか?]
やっぱり殺されると思ってたんだよね? なのに逃げる事も戦う事もしない……。
「こりょちまちぇんよ!? ⦅ビャク~、伝えて?⦆」
〔お前達は、この子を襲うか? しないだろう? ならば我々はお前たちを殺す必要はない〕
間違いなく強い力を持っているビャク達が殺さないと言い切った事で、ようやくグランデシープは緊張を解いたのが分かった。
〔ところで聞きたいのだが、なぜ殺されるかもしれないと思いながら、逃げる事も戦う事もしなかったのだ?〕
[我らのこの姿。これは毛が伸び続けているせいなのだが、とても重いのだ。
風魔法が使えるが、この重い毛をほんの少し浮かせられる程度でしかない。
早く移動することも攻撃する事も出来ず……幸いこの毛が邪魔をして中々刃物が通りにくいのでな、仔を逃がすことが出来るかもしれん希望にかけているのだ]
う~わぁ~。もしかして……と思っていたそのままの答えにエアのお目目がウルウルしはじめる。
「もち、よけりぇば、うち、きましゅか?」
あ、警戒した。そりゃそうだよね~、誰かを守るために捨て身だったんだもん。
[どういう事だ? 大体なぜ、強い力を持っていながら人と一緒にいるのだ?]
〔エアの持つ土地の中なら、命の危険はないぞ? 適度に毛を刈って貰えば体が重く苦しむこともないだろうし、家族なり群れなりがあるのなら、相談をしてみるといい。
それと我らは皆この子、エア・ルミナードの従魔なのだ〕
〔エアといっしょ、たのしいよ!〕
〔あなた方の事は、私達が守りましょう。何も心配はいりません。世界が変わりますよ?〕
ビャク達が説明説得を繰り返し、ようやくグランデシープが納得してくれたようだけど、まだ1頭だけ。これから仲間にも説明が必要だから、納得してもらえるまでにかなり時間かかるかも。
でも、上手くいけばモフモフ天国が更に最強な物になる♪
夕食を全員で食べると言われたので、仕事帰りだというのにいつもよりみんなの足が速い。エアの作る料理はとても珍しくておいしいので楽しみなのだ。
「はっ!? あれガキどもは!?」
「だから~、口が悪いんだって! ガキじゃなくて子供って言えよ!」
正気に戻って開口一番が"ガキ"ですよ……ホント口が悪い……思わずザックさんも注意する。
「ギルドでサブマスにも言われたけどよ~、無理だって~」
「自信もって無理って言うなよ……まあいいや、今日ここで夕飯食ってけよ。エアがたくさん作ってくれたらしいから」
「マジ? 良いのか?」
「はい! たびぇちぇっちぇ~♪」
ザックさん達の親しい人で、口は悪いし厳つい見た目だけど、子供達を気に掛ける良い人だから歓迎しますよ!
「きょうにょごはんは、みちゃめじぇびっくりしましゅけじょ、あじはおいちいはじゅ!
かりゃかっちゃりゃいっちぇにぇ?」
子供用に甘口、大人用に中辛をかまどに取り出す。辛口もあるんだけど、これは希望があってから出すことに。
「凄い色だな……エアの作る料理に間違いはないが……」
「とても食欲が刺激される匂いですね」
「エアちゃん、ちょっとからい……でもおいし~よ!」
「ありゃ、こりぇまじぇちぇみちぇ?」
半熟の茹で卵を半分に切ってからトッピング。とろ~り黄身と食べれば……
「からくなくなった~!」
〔なんとも深い味だ、うまい!〕
〔このちょっと辛いのがたまりません〕
〔〔からくないよ? すっごくおいしい♪〕〕
子供達とソラ・ツキは子供用カレーだけど、ソラとツキは辛いのに強いのかな? 子供達は辛いって言ってるけど"どこが?"って感じ。
「すげぇうまい! なんだこれ、辛いけど美味い」
「なぁ……今、その従魔喋ったよな!?」
「あれ~、言ってなかった~? この子達喋るんだよ~」
「「「「「はあぁぁぁぁ~!?」」」」」
「カレーっていろんな食べ方があるんだな!」
ザックさん達はビャク達従魔の説明を聞き、あまりの事に呆然としている5人を放置してバクバクと食べ進めているけど、いいのそれで!? わたしは良いけどね!?
「エアさん、もしよろしければ作り方を教えていただけませんか?」
「いえ! それよりもこの料理も商業ギルドに登録した方が良いのでは?」
料理人としてはやっぱり気になるんだろうね、マルセルさん達はず~っとカレーの研究をしながら食べてたけど残念ながらわからなかったみたい。
ま、さすがにね~、数種類のスパイスが入ってるからわからないか~?
それにしても、登録か~。ここ最近ポーションをはじめとして、飴ちゃんやポテトチップスなどなど登録申請しっぱなしだよ。
わたしは冒険者だから本当は冒険がしたいんだけどなぁ~、この街以外にも行きたいし。落ち着いて旅に出られるようになるのはいつの事になるやら……。
〔あの魔物除けがこんなに美味しい物になるとはな〕
〔本当に側で見ていたのに不思議です〕
「……え? 魔物除けって……前に買ってたあの魔物除けか!?」
ギンとアサギが材料の話を始めたのを聞いて、大人たちが驚きざわざわとしはじめる。
「う? しょうでしゅ。おいちいでちょ? まもみょよけにょおみしぇちょ、がりゃしゅやしゃんに、しゃしいりぇちにゃきゃ~」
「これが魔物除け!? 美味いんだけど……?」
「はちか、く~ちゅるいまじぇまちた」
でも、登録した所で……売れるのか? 今ここにいる人は美味しいって言ってくれてるけど……ぼそっと呟いたら
「「絶対買う! でも作り方が簡単ならだけど、でもこれうまいよな~」」
「"エアの店"の2階で食堂するんだよな!? そこで出さないのか?」
なるほど……それ賢い! まずは知ってもらってからカレー粉やルゥの販売をすればいいんだ!
カレーはもちろん、様々なトッピングを準備していたのに(カツや玉子、揚げ野菜など)ほぼ完食で、最初は出していなかった辛口カレーも男性陣の"美味しいけどちょっと物足りない"との意見で取り出したところ大好評♪
ザックさん達に出会ってから思っていたけど、この世界の人って男性も女性も良く食べるんだよ。例外なく子供もね……よくそんなに入るな。
翌日、3つの味を小鍋に取り分けた物を持って差し入れに。
「こんにちは~」
「はいよ~っと、お? 嬢ちゃんは……この魔物除けを食べるって言ってた……」
「はい! しゃしいりぇでしゅ! じょりぇがいいでしゅか?」
ほんのちょっと味見用にティースプーンで甘口から順に差し出す。見た目から食べ物に見えなかったんだろう、食べられるものだと必死に説明をしてようやく納得してもらえたけど、ビクビクしつつ口に運んだ瞬間……カッ!!
目を驚きでこれでもかと見開き、口の中のほんの少しのカレーを味わって……ホウ~ッとなんだかウットリ
「3番目だな、でも2番目のも良いな~。で? 嬢ちゃん、これは?」
「こりぇが、ここじぇかっちゃにょでちゅくりまちた」
「……は? これが言ってたやつなのか? 魔物除け……信じられん旨さだ」
中辛と辛口のカレーを差し入れとして渡した後、使って減ったスパイスの買い足し。前回からそんなに日が経ってないので心配したけどちゃんと追加されていたので、今回も安心して大量購入したよ~♪
店主のおじさんにはカレー以外にも使い道は色々あるが、特に前回と今回購入したものは今後もしっかり仕入れて欲しいとお願いしといた。
すべてはカレーのためだ、努力を惜しんではいけないのだよ!
「しゅみましぇ~ん」
「はい? あらエアちゃん、いらっしゃいませ」
「こりぇ、しゃしいりぇでしゅ~。まもにょよけでちゅくりまちた」
「以前言っていた食べ物ね!?」
ここでもスパイス屋さん(魔物除け屋さんです)の時と同じく味をチェックしてもらって、ご主人は辛口で、奥さんは甘口と中辛だったので、3つともプレゼントしてここでもガラス瓶とお皿を追加で買い物。
結局カレーは両ギルドにも持ち込み味見をしてもらった結果、マルセルさん達の希望通り登録となったのは勿論、大興奮で食堂メニューに入れる事も決まった。(ギルマスとサブマスの目が怖かったよ~)
その後冒険者ギルドで依頼ボードを覗いてみるが、これといって興味を引かれる物がない……時間的にみんなが受けた後だもんね~。
『良いのがないね~、外に出たかったんだけどな~』
〘ただの散歩ではだめなのか?〙
『そっか、そうだよね!? ビャクやギン達が一緒なんだもん問題ないね!』
そうと決まったら早速行動開始♪
ザックさん達にはイヤーカフで報告を。絶対に欠かせないんだよ! もし忘れて外に出たりしたら、鬼が出るからね!
『魔物の気配は……おっ! ビャク~向こうに何かいる。会った事のない気配だ!』
〔あれはグランデシープだな。魔物だが、人を襲う事はないはずだ〕
〔あ奴らは逆に人に襲われやすいぞ?〕
「え!? にゃんで!?」
〔魔物という事で、必要以上に怖がっている事もだが、毛を求めているのも理由だろう〕
『け? ああ! シープ、羊だもんね! でも襲ってこないのに殺されるのか~。ねえ? ちょっと行ってみよう、言語理解でお話し出来たら交渉してみるよ♪』
〔〔こうしょう?〕〕
『そう! 定期的に毛刈りをさせてもらえたらな~って。モフモフだと思うんだよね♪』
〔〔〔〔もふもふ……〕〕〕〕
〔そういえば昔見たのは、とんでもない大きさだったな〕
なんだかビャクの"とんでもない大きさ"というのが気になるけど、遠くからでも見てみたいと気配をたどって移動……した先にいたのは。
『……動く山かな? 小さい山だけど。なんて名前だったっけ?』
ひときわ大きな山が一つ、それよりは小さいけどそれなりの大きさが一つ、それの半分くらいの大きさが4つのモゴモゴと動く山。
〔グランデシープだ。前に見たのはこれよりまだ大きかったか?〕
『グランデ……確か大きいとかの意味があったような、じゃあ単純に"大きい羊"まんまか~い。
襲ってこないんだよね? 性格が穏やかなのかな?』
〔たとえ穏やかでも、命の危機なら戦うだろう? だが、以前見た時は戦っていなかったように見えたのが気になっていたのだ〕
? どういう事だろう。
[人間の気配がする。子供達よ、急いで隠れなさい]
[……はい……]
[ここまではやって来ないだろうと思っていたのだが……]
言語理解は正常に働いてくれていて、グランデシープの言葉がちゃんとわかるのは良いんだけど……話している内容が戦うとかじゃなく、子供は隠して大人は逃げも隠れもしない(出来ない)ってだけのように感じる。
先に聞いたビャクの"戦っていなかった"と合わせると、なんだか嫌な答えにたどり着きそうな気がする。
「あにょ~、おにぇがいがありゅんでしゅけじょ、けをかりゃしぇちぇもりゃえましぇんか?」
[お願い? 毛? どういうことか、我らを殺しに来たのではないのか?]
やっぱり殺されると思ってたんだよね? なのに逃げる事も戦う事もしない……。
「こりょちまちぇんよ!? ⦅ビャク~、伝えて?⦆」
〔お前達は、この子を襲うか? しないだろう? ならば我々はお前たちを殺す必要はない〕
間違いなく強い力を持っているビャク達が殺さないと言い切った事で、ようやくグランデシープは緊張を解いたのが分かった。
〔ところで聞きたいのだが、なぜ殺されるかもしれないと思いながら、逃げる事も戦う事もしなかったのだ?〕
[我らのこの姿。これは毛が伸び続けているせいなのだが、とても重いのだ。
風魔法が使えるが、この重い毛をほんの少し浮かせられる程度でしかない。
早く移動することも攻撃する事も出来ず……幸いこの毛が邪魔をして中々刃物が通りにくいのでな、仔を逃がすことが出来るかもしれん希望にかけているのだ]
う~わぁ~。もしかして……と思っていたそのままの答えにエアのお目目がウルウルしはじめる。
「もち、よけりぇば、うち、きましゅか?」
あ、警戒した。そりゃそうだよね~、誰かを守るために捨て身だったんだもん。
[どういう事だ? 大体なぜ、強い力を持っていながら人と一緒にいるのだ?]
〔エアの持つ土地の中なら、命の危険はないぞ? 適度に毛を刈って貰えば体が重く苦しむこともないだろうし、家族なり群れなりがあるのなら、相談をしてみるといい。
それと我らは皆この子、エア・ルミナードの従魔なのだ〕
〔エアといっしょ、たのしいよ!〕
〔あなた方の事は、私達が守りましょう。何も心配はいりません。世界が変わりますよ?〕
ビャク達が説明説得を繰り返し、ようやくグランデシープが納得してくれたようだけど、まだ1頭だけ。これから仲間にも説明が必要だから、納得してもらえるまでにかなり時間かかるかも。
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