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移動中に朝ギルドで話した、ワイバーンの続きと、ゲイルさんにも声を掛けてもらうようにお願いしておく。この様子なら、問題なく祭りが行えそうなので今からワクワクするし、ビャク達も楽しみなようで足取りがとても軽い。
ツキとソラは〘はやく~はやく~〙と騒ぎ始めたが、さすがに今は早すぎると宥めたけどね。
孤児院の前にはこれぞ貴族用って感じの馬車が止まり、数人の恐らく護衛だろう人の姿も見える。
案内されるまま近付いてみると孤児院を背に院長先生が立ち、その前に上等そうな服を来た男性……後ろ姿しか見えないが多分領主様かな?
その中間より少し院長先生よりの所には、ブルックギルマスとビクターギルマス、ハリスサブマスが見えた。
「あっ、エアさん!」
最初に気付いたのは院長先生(もちろん護衛の人たちは気付いていたが)、何と領主様を放置して私の方に走ってきた!! 良いのか!?
「申し訳ありません。‹どうしても隠し通すことが出来なくて……›」
あ~、わたしの名前を出すしかなかった事を悔やんでるのかな? 問題ないよと伝えるために、笑顔で院長先生の手を握る……伝わったようでちょっとだけホッとした様子。
残されていた人たちの中でも、ギルマスとサブマスは院長先生と同じで呼び出してしまった事で申し訳なさそうな顔をしてるけど、領主様とその護衛の人たち……特に護衛の人たちは良く分からないけど(悪意はない)ザワザワとしてる。
領主様は何か……なんて言うのかな? どうわたしたちに声を掛けるのが良いか悩んでるっぽい? それで、側にいるギルマスとサブマスに助けを求めるみたいに、チラチラと視線を投げているんだけど完璧に無視されてる!?
ええ~!? なんかこれどうなの!? 院長先生の場合は分かるんだよ? 領主様に対する礼儀よりなにより、わたしへの申し訳なさが勝ってたんだろうけど、他の人の領主様に対する対応が……なんかちょっと可哀想?
チョッピリ可哀想になりつつも、相手は貴族、油断ならんと気合を入れ直す!
『確か貴族とかって、下の者から声掛けちゃダメなんだっけ?』とか思いながらも側にたどり着いたので、一応礼儀としてビャクの背中から降りて頭を下げておいた方が良いだろう。
「エア・ルミナードでしゅ」
3歳の幼女が頭を下げる姿は、正直言ってその身長のせいだろうが、頭を地面に打ち付けるんじゃないかと想像させる物があり、若干周囲にいる者の肝が冷えた。
「…………?⦅ねえ、わたしから何か言った方が良いのかな?⦆」
家族の紹介は勝手にするよりも、貴族様に聞かれてからの方が良いかと思いしばらく待ってみたが……無言なんですけど~!? 不安になってイヤーカフでザックさん達に質問した丁度その時。
「いつまで無言で見つめ続ければ気が済むんでしょうか!?」
「エアさんが困ってしまっているのが、お分かりになりませんかね!?」
ギルマス2人のちょっと低い声が……なんか怒ってる!?
「!? ゴホン! 急に呼び立てて申し訳ない。私はこのザーリアの街を含むレザリア領の領主でアドルフ・フォン・グスマン・レザリアだ。
院長、このまま外で話すべきことではないので中に入らせてもらってもいいだろうか?」
建物の中に入ってすぐ、わたし達は何の違和感もなかったが、領主様はキョロキョロと周りを見回しては、しきりに首を傾げ何か言いたそうにギルマス達をチラチラ……でも誰も気付かない(気付かないフリ?)ついに我慢の限界が来たのだろう。
「失礼を承知で尋ねるが、運営費が削られていた事で、建物が酷く傷んでいるのは分かるのだが、なぜ内部はこんなにキレイなのだろうか?」
「修繕が行われたからですが? 以前現状を知らずに訪れた時は、それはもう酷かったですよ。
壁や天井が壊れ雨漏りの跡があちらこちらに……温かい服もなく、院長先生方が繕いをされていたのでしょうがボロボロの服で、隙間風で寒いのに寒さをしのぐ寝具さえない」
「当然食事も満足には出来ず、子供達は広場で食べ残しを探していたようですし」
何を今更言ってんだ!? という感じにハリスさん達に返された挙句、耳に痛い事を聞かされて自身の監督不行届きを自覚しているだけに、身の置き所がなくなり徐々に小さくなっていく……領主様しっかり~!!
「エアさんとおっしゃいましたね? まず先に彼らと……そちらの従魔の事を聞いても?」
食堂に到着(ビャク達大きいからね)すると、まず最初の質問は思った通りだったけど、実は相談して決めてあったんだ~、話に参加し答えるはザックさん達ってね! 3歳の幼女には大変だもんね~♪
「私が説明させていただきます、この子は3歳なので。
私達は冒険者Aランクパーティー"蒼の剣"で、この子達はエアさんの従魔です。
先日監視を付けておられた様なのでお分かりだと思いますが、神獣フェンリルと神獣シルバーカリスキングレオとその番、そしてその仔2匹でエアさんの家族です。」
「かんち? まちでみょ、ぎりゅじょでみょ……じゅっちょ、じりょじりょ?」
「そうですよ、恐らくギルマス達から報告を受けていただろうにも拘らず、街中やギルド内でエアさんの事をジロジロと見ていた方がいたでしょう?
ま~、今回は見られる事はあっても、手を出されていませんので我慢しましたが……神獣様方も私達もかなり不愉快な思いをしました」
おお……カイルさん少々怒ってます。言葉の端々に棘がありますね。
「ぐっ! も、申し訳ない、いや、申し訳ありませんでした!
確かに両ギルマス、サブマスには聞いていましたが、何もしない訳にもいかず……一切の接触を禁じての確認を指示しました。
明日、本日捕縛した者を王都に連れて出発する予定になっています。
そして謁見にて国王陛下に神獣様方の報告をさせていただきますが、皆さんへの不要な接触は禁止である事は必ず約束していただきますので、ご安心ください」
ビャク達を含めみんなが不愉快だったと聞き、冷や汗を浮かべて必死に謝罪と今後について約束してくれたので⦅そろそろ許してあげようか?⦆ってみんなでアイコンタクト。
でも王都で王様に報告か~。今まで以上に用心しなきゃね~。
「ところで今後の孤児院の事で……」
取り囲む人たちの雰囲気が緩やかになった事に気付いた領主様は、気を取り直して次の話題を切り出したが、途端に院長先生が必死に訴えだす。
「実はエアさんがいらっしゃる前に説明させていただきましたが、現在エアさんの助けで普通に……いえ、普通以上の生活が送れるようになりました。ですので、今後運営費をいただかなくても良くなったのです。
子供達も自分達が働く事でお金の大切さが更に良く分かったようですし、エアさんが良ければ今後もお手伝いをと考えています」
「院長からこの話を聞いて、詳しく聞きたいと思ったんだが……子供達が働いているとは、何をしているのだろうか?」
「エアさんの持つ農園での作物の栽培収穫、動物の世話ですよ。
それと院長先生、もちろん今後もよろしくお願いします。相変わらずエアさんも忙しくしていますし」
カイルさんの返事を聞いて院長先生はホッとして、領主様は……農園? って感じなのか首をひねっている。
「農園の仕事で院長の言うような普通以上の生活が?」
「エアさんは農場で働く子供だけじゃなく、孤児院に残って子供のために働く私共にも給金を支払い、農場で採れた作物も持たせてくださいます。
おかげで子供達がお腹いっぱいに食べることが出来るようになり笑顔が増えました」
などなど、領主様からの質問にはカイルさんや院長先生が答えてくれるので、わたしはただ良い子にしていればいいんだけど……チョ~ヒマ!! 本当なら今日はアイスを作る予定だったのに~!
「⦅ね~、わたし必要ないよね? 帰っても良いかな? アイスクリーム作りしたいんだけど? それにもうすぐお昼だし~⦆」
「⦅いや、エアはここにいるって事が大事なんだぞ!?⦆」
「⦅……アイスクリーム……でも⦆」
みんなも帰りたいと思っても相手は領主様だし……てことで質問に答えているんだろうけど……うぅぅっ!
「あにょっ! かえっちぇいいでしゅか!? もうしゅぐ、おひりゅだち……」
右手をしっかり挙げて発言します。領主相手になんてこと! とお思いでしょうか? でもね、アイスが作りたいんだよ~! ツキとソラにも約束したし!
わたしは3歳の幼女だもん、子供には面白くない話し合いは辛すぎます。
いきなりの帰宅願望に、それまでイヤーカフでやり取りしていたメンバーもギョッ! としていたが、そんな物はどうでもいいんです!
ハッキリ言ってもうギルマス達が知っている事なら何でも話していいから開放して欲しい~!
「たしかに、そろそろいいでしょう。エアさんには無理を言って参加してもらいましたしね」
「エアさんは3歳なのにね~。我慢をさせてしまいました」
ハリスさんとハンスさんが話を合わせてくれたので、スムーズに帰宅できることになりルンルン♪
「‹わたちのこちょ、はにゃちてみょいいでしゅよ›」
お礼にコソッと伝えておく。ギルマスとサブマスの判断に任せておけば大丈夫だろうと思うしね。
「エアさん「エアでいいでしゅよ?」……良いのかな? (チラリ)ありがとう、ではエア……エアちゃんと呼んでも?」
なぜか呼び方を決めるのに、周囲に視線を流してからだったのが不思議だが、まぁいいか。
「私の監督不行届きでエアさんには迷惑をかけてしまった事、そして私が出来なかった事を代わりにしてもらった事本当に感謝している。ありがとう。
今後私に出来る事があれば何でも言って欲しい。とは言え、出来る事は限られるのが辛い所なのだが」
ギルマス達が良い領主って言うだけはあるのかな? 3歳の幼女にキッチリ頭を下げるその姿勢は好感が持てる。
「⦅それなら~、子供達に勉強教えることが出来る先生が欲しいな~。お願いしてみて、ザックさん!⦆」
「⦅またここで俺か!? カイルじゃなく!?⦆」
「「「「⦅だってリーダーだから!⦆」」」」
「あの、以前から相談していた事なんですが、子供達に読み書き算術くらいの勉強を指導してくれる方を探しているんです。給金は検討中なんですが人材に心当たりはありませんか?」
「エアさん、それはどこで行う予定なんですか?」
「人数はどのくらいで?」
おや? 話したのはザックさんなのに、わたしに質問が来たぞ~? 助けて、ザックさ~ん!
「人数は孤児院の子供25人、スラムから来た中には17人、うちにはエアを除いて9人。
うちの子供の中には冒険者登録していた子もいるので、参加するかどうかは分かりませんが……場所は昨日準備した所でと考えています」
「なかなか多いな……だか探してみよう。時間をもらえるかな?」
お!? 反対せずに検討してもらえる!? やった~!
「いずれは……と考えていた事なので急いでいません」
「もし勉強が始まれば、子供達の仕事はどうします?」
「収穫などは朝が良いでしょうから午前中に仕事、午後は勉強。給金はちょこっとだけ減らしますが、その代わり昼食は必ずこちらで用意するのはどうでしょう? これはまだ考え中の事ですよ?」
「読み書きと算術が出来るようになれば、子供達の進む道が広がります」
知らないからって騙す人もいるだろうしね~、そんなとき読み書き計算が出来たら強いよね!
「それはとても素晴らしいお話です。給金が減る事より、この先の財産です。ただ、エアさん……予定でも結構ですが、いくら給金が減るのか今ここであらかじめ決めていただけます?
エアさんは甘すぎるので、皆さんがいらっしゃる時に決めてくださいな」
「おおぅ……(院長先生が怖いです~! どうしよう……そうだ、あの手があった!)
きめまちた! へんこうはちまちぇん! どう、ごまいでしゅ!」
ふふふ、お店の名前の時のダニエルさんを真似してやったぜ!
「「「「「「銅貨……5枚だけ!?」」」」」」
ツキとソラは〘はやく~はやく~〙と騒ぎ始めたが、さすがに今は早すぎると宥めたけどね。
孤児院の前にはこれぞ貴族用って感じの馬車が止まり、数人の恐らく護衛だろう人の姿も見える。
案内されるまま近付いてみると孤児院を背に院長先生が立ち、その前に上等そうな服を来た男性……後ろ姿しか見えないが多分領主様かな?
その中間より少し院長先生よりの所には、ブルックギルマスとビクターギルマス、ハリスサブマスが見えた。
「あっ、エアさん!」
最初に気付いたのは院長先生(もちろん護衛の人たちは気付いていたが)、何と領主様を放置して私の方に走ってきた!! 良いのか!?
「申し訳ありません。‹どうしても隠し通すことが出来なくて……›」
あ~、わたしの名前を出すしかなかった事を悔やんでるのかな? 問題ないよと伝えるために、笑顔で院長先生の手を握る……伝わったようでちょっとだけホッとした様子。
残されていた人たちの中でも、ギルマスとサブマスは院長先生と同じで呼び出してしまった事で申し訳なさそうな顔をしてるけど、領主様とその護衛の人たち……特に護衛の人たちは良く分からないけど(悪意はない)ザワザワとしてる。
領主様は何か……なんて言うのかな? どうわたしたちに声を掛けるのが良いか悩んでるっぽい? それで、側にいるギルマスとサブマスに助けを求めるみたいに、チラチラと視線を投げているんだけど完璧に無視されてる!?
ええ~!? なんかこれどうなの!? 院長先生の場合は分かるんだよ? 領主様に対する礼儀よりなにより、わたしへの申し訳なさが勝ってたんだろうけど、他の人の領主様に対する対応が……なんかちょっと可哀想?
チョッピリ可哀想になりつつも、相手は貴族、油断ならんと気合を入れ直す!
『確か貴族とかって、下の者から声掛けちゃダメなんだっけ?』とか思いながらも側にたどり着いたので、一応礼儀としてビャクの背中から降りて頭を下げておいた方が良いだろう。
「エア・ルミナードでしゅ」
3歳の幼女が頭を下げる姿は、正直言ってその身長のせいだろうが、頭を地面に打ち付けるんじゃないかと想像させる物があり、若干周囲にいる者の肝が冷えた。
「…………?⦅ねえ、わたしから何か言った方が良いのかな?⦆」
家族の紹介は勝手にするよりも、貴族様に聞かれてからの方が良いかと思いしばらく待ってみたが……無言なんですけど~!? 不安になってイヤーカフでザックさん達に質問した丁度その時。
「いつまで無言で見つめ続ければ気が済むんでしょうか!?」
「エアさんが困ってしまっているのが、お分かりになりませんかね!?」
ギルマス2人のちょっと低い声が……なんか怒ってる!?
「!? ゴホン! 急に呼び立てて申し訳ない。私はこのザーリアの街を含むレザリア領の領主でアドルフ・フォン・グスマン・レザリアだ。
院長、このまま外で話すべきことではないので中に入らせてもらってもいいだろうか?」
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壁や天井が壊れ雨漏りの跡があちらこちらに……温かい服もなく、院長先生方が繕いをされていたのでしょうがボロボロの服で、隙間風で寒いのに寒さをしのぐ寝具さえない」
「当然食事も満足には出来ず、子供達は広場で食べ残しを探していたようですし」
何を今更言ってんだ!? という感じにハリスさん達に返された挙句、耳に痛い事を聞かされて自身の監督不行届きを自覚しているだけに、身の置き所がなくなり徐々に小さくなっていく……領主様しっかり~!!
「エアさんとおっしゃいましたね? まず先に彼らと……そちらの従魔の事を聞いても?」
食堂に到着(ビャク達大きいからね)すると、まず最初の質問は思った通りだったけど、実は相談して決めてあったんだ~、話に参加し答えるはザックさん達ってね! 3歳の幼女には大変だもんね~♪
「私が説明させていただきます、この子は3歳なので。
私達は冒険者Aランクパーティー"蒼の剣"で、この子達はエアさんの従魔です。
先日監視を付けておられた様なのでお分かりだと思いますが、神獣フェンリルと神獣シルバーカリスキングレオとその番、そしてその仔2匹でエアさんの家族です。」
「かんち? まちでみょ、ぎりゅじょでみょ……じゅっちょ、じりょじりょ?」
「そうですよ、恐らくギルマス達から報告を受けていただろうにも拘らず、街中やギルド内でエアさんの事をジロジロと見ていた方がいたでしょう?
ま~、今回は見られる事はあっても、手を出されていませんので我慢しましたが……神獣様方も私達もかなり不愉快な思いをしました」
おお……カイルさん少々怒ってます。言葉の端々に棘がありますね。
「ぐっ! も、申し訳ない、いや、申し訳ありませんでした!
確かに両ギルマス、サブマスには聞いていましたが、何もしない訳にもいかず……一切の接触を禁じての確認を指示しました。
明日、本日捕縛した者を王都に連れて出発する予定になっています。
そして謁見にて国王陛下に神獣様方の報告をさせていただきますが、皆さんへの不要な接触は禁止である事は必ず約束していただきますので、ご安心ください」
ビャク達を含めみんなが不愉快だったと聞き、冷や汗を浮かべて必死に謝罪と今後について約束してくれたので⦅そろそろ許してあげようか?⦆ってみんなでアイコンタクト。
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「ところで今後の孤児院の事で……」
取り囲む人たちの雰囲気が緩やかになった事に気付いた領主様は、気を取り直して次の話題を切り出したが、途端に院長先生が必死に訴えだす。
「実はエアさんがいらっしゃる前に説明させていただきましたが、現在エアさんの助けで普通に……いえ、普通以上の生活が送れるようになりました。ですので、今後運営費をいただかなくても良くなったのです。
子供達も自分達が働く事でお金の大切さが更に良く分かったようですし、エアさんが良ければ今後もお手伝いをと考えています」
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「エアさんの持つ農園での作物の栽培収穫、動物の世話ですよ。
それと院長先生、もちろん今後もよろしくお願いします。相変わらずエアさんも忙しくしていますし」
カイルさんの返事を聞いて院長先生はホッとして、領主様は……農園? って感じなのか首をひねっている。
「農園の仕事で院長の言うような普通以上の生活が?」
「エアさんは農場で働く子供だけじゃなく、孤児院に残って子供のために働く私共にも給金を支払い、農場で採れた作物も持たせてくださいます。
おかげで子供達がお腹いっぱいに食べることが出来るようになり笑顔が増えました」
などなど、領主様からの質問にはカイルさんや院長先生が答えてくれるので、わたしはただ良い子にしていればいいんだけど……チョ~ヒマ!! 本当なら今日はアイスを作る予定だったのに~!
「⦅ね~、わたし必要ないよね? 帰っても良いかな? アイスクリーム作りしたいんだけど? それにもうすぐお昼だし~⦆」
「⦅いや、エアはここにいるって事が大事なんだぞ!?⦆」
「⦅……アイスクリーム……でも⦆」
みんなも帰りたいと思っても相手は領主様だし……てことで質問に答えているんだろうけど……うぅぅっ!
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右手をしっかり挙げて発言します。領主相手になんてこと! とお思いでしょうか? でもね、アイスが作りたいんだよ~! ツキとソラにも約束したし!
わたしは3歳の幼女だもん、子供には面白くない話し合いは辛すぎます。
いきなりの帰宅願望に、それまでイヤーカフでやり取りしていたメンバーもギョッ! としていたが、そんな物はどうでもいいんです!
ハッキリ言ってもうギルマス達が知っている事なら何でも話していいから開放して欲しい~!
「たしかに、そろそろいいでしょう。エアさんには無理を言って参加してもらいましたしね」
「エアさんは3歳なのにね~。我慢をさせてしまいました」
ハリスさんとハンスさんが話を合わせてくれたので、スムーズに帰宅できることになりルンルン♪
「‹わたちのこちょ、はにゃちてみょいいでしゅよ›」
お礼にコソッと伝えておく。ギルマスとサブマスの判断に任せておけば大丈夫だろうと思うしね。
「エアさん「エアでいいでしゅよ?」……良いのかな? (チラリ)ありがとう、ではエア……エアちゃんと呼んでも?」
なぜか呼び方を決めるのに、周囲に視線を流してからだったのが不思議だが、まぁいいか。
「私の監督不行届きでエアさんには迷惑をかけてしまった事、そして私が出来なかった事を代わりにしてもらった事本当に感謝している。ありがとう。
今後私に出来る事があれば何でも言って欲しい。とは言え、出来る事は限られるのが辛い所なのだが」
ギルマス達が良い領主って言うだけはあるのかな? 3歳の幼女にキッチリ頭を下げるその姿勢は好感が持てる。
「⦅それなら~、子供達に勉強教えることが出来る先生が欲しいな~。お願いしてみて、ザックさん!⦆」
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「エアさん、それはどこで行う予定なんですか?」
「人数はどのくらいで?」
おや? 話したのはザックさんなのに、わたしに質問が来たぞ~? 助けて、ザックさ~ん!
「人数は孤児院の子供25人、スラムから来た中には17人、うちにはエアを除いて9人。
うちの子供の中には冒険者登録していた子もいるので、参加するかどうかは分かりませんが……場所は昨日準備した所でと考えています」
「なかなか多いな……だか探してみよう。時間をもらえるかな?」
お!? 反対せずに検討してもらえる!? やった~!
「いずれは……と考えていた事なので急いでいません」
「もし勉強が始まれば、子供達の仕事はどうします?」
「収穫などは朝が良いでしょうから午前中に仕事、午後は勉強。給金はちょこっとだけ減らしますが、その代わり昼食は必ずこちらで用意するのはどうでしょう? これはまだ考え中の事ですよ?」
「読み書きと算術が出来るようになれば、子供達の進む道が広がります」
知らないからって騙す人もいるだろうしね~、そんなとき読み書き計算が出来たら強いよね!
「それはとても素晴らしいお話です。給金が減る事より、この先の財産です。ただ、エアさん……予定でも結構ですが、いくら給金が減るのか今ここであらかじめ決めていただけます?
エアさんは甘すぎるので、皆さんがいらっしゃる時に決めてくださいな」
「おおぅ……(院長先生が怖いです~! どうしよう……そうだ、あの手があった!)
きめまちた! へんこうはちまちぇん! どう、ごまいでしゅ!」
ふふふ、お店の名前の時のダニエルさんを真似してやったぜ!
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