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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―
シルバーカリスキングレオとシルバーカリスレオがこの街に……
この情報を聞いた時には耳を疑った。
シルバーカリスキングレオは神獣様だ。そのような方が突然なぜ? なに、じゅうま? じゅうまってなに? まさか従魔じゃないよね!?
だって神獣シルバーカリスキングレオだよ!? まさか、あっはっは~……従魔なの? それならその主を探して話を……
どうするべきかと検討していると、冒険者・商業両ギルドから報告のための面会希望を受け了承したら、なんて事だ神獣シルバーカリスキングレオだけでなく神獣フェンリルまでこの街にいて同じ主に仕えているだと!?
しかもシルバーカリスキングレオには番と仔が2匹も一緒だと!?
なのに探すことも何もかも止めるように言われたが、なぜだ!?
相手は神獣様方と共にあるのなら、ぜひこの街と国のためにお力を……今すぐの事ではないがもしもの為に挨拶をしたいと思うのは当然だろう。
なのに!≪2度目≫ なぜだ、いつもは言葉を遮るような事もない者達が、神獣様方はもちろんその主にも関わるな、関われば怒りを買い命はもちろん街どころか国がなくなると……それはもう今までに見た事もないほどの真剣な訴え……
で、では力をお借りしようとは思わないが、せめてご挨拶だけでも(なんだかこの4人、今日もの凄く怖いんだけど?)……ダメだろうか?
おぅ……。そうか、主であるその方が貴族をお嫌いとは……確かに貴族は嫌われやすいからな、で、でもさすがに陛下に報告が必要なんだが? どうしよう……
え!? 報告して良いの? ああ……神獣様方の怒りを買わないよう注意の為にか……神獣様方が大切に思う方々以外はどうでもいいって……さすがにそれは…………そ、そうか……気を付けよう。
あと1つの報告にあった事だが、明日冒険者ギルドで開かれる審議会の言い逃れをさせない確実な証拠が気になる。この証拠については何度となく聞いたが教えて貰えなかった。
それは明日……最終手段と言っていたが、審議の結果も気になるから見に行こう。
ところで、いつもなら敬語なんてそんなに使わないのに、なんか変だぞ?
変じゃないって何処がだよ! 全部変だろ? ブルックなんか丁寧に話すなんて……天変地異の前触れか!?
結局、変じゃないって事で報告は終わって帰って行ったが、気になるのは最後の一言。
―― ご自分で考えてください ――
どういう意味だ?
なんか数日前から様子がおかしいんだよ、ビクターだって、敬語は使いながらも親近感を感じられたし、ブルックなんかは時々不敬? ってこともあったのに……今じゃ完全に一線引かれてる感じ。その反対で4人の結束は固まっているように感じる。
どうしても貴族、領主って事で気安く話しかけてくれる人が少ない中で、あの4人は言いたいことをハッキリ意見を言ってくれる本当に信頼できる貴重な失いたくない存在だ。
神獣様の事がどうにも気にかかり、執事に指示を出した。
"神獣様方と、そのご家族を遠くからで良いので見守り報告を! 絶対に手は出すな!"
これでしばらくしたら情報が入って来る事だろう。
すぐに情報は届いたが何という事だ、神獣様方の主は女の子、それも3歳の!! ありえんだろう!? 幼女が神獣様と従魔契約を結んだのか!?
……? 主が貴族嫌いって言ってなかった? 3歳の幼女がもうすでに貴族を嫌うような事があったのか?
気になる……幼女が気になる……報告では、とても可愛い幼女で、3歳でありながら既に冒険者登録をしていて、今日なんか神獣様に守られているとはいえ、依頼で街の外に出ていたらしい。
そして神獣シルバーカリスキングレオの家族と遭遇し、契約したようで共に帰って来た……だからなんで!?
ちょっと依頼を受けて街の外に出ただけで、神獣様に会えるの? おかしくない!? 3歳で冒険者も、街中じゃなく外の依頼を受けるのもおかしいけど!!
わからない事だらけだ、もう少し観察してもらおう。いくら貴族嫌いでも根本的に3歳の幼女が冒険者って事がおかしい。
それに……3歳の子にまで嫌われる貴族って……どんだけ~。せめて貴族も悪い者ばかりではないと知ってもらいたい!
何か理由があるのかもしれないが、神獣様方を抜きにしても子供は保護されるべき存在だ、何かあれば助けなければ!
特にこの街は辺境で黒の森に面している。強い魔物がいて人は集まりやすいがその反面、親を亡くした子が多いのが問題で孤児院を造り運営費を出してはいるが……もう少し増額するべきだろうか?
しまった! ブルック達に相談すればよかったな……どうしても立場と仕事の忙しさで街の様子を見に行く機会が無い。それぞれ他の貴族や役人に任せて報告だけの事もある、街の様子を知っているブルックたちの意見なら参考になったのに……明日の審議会の後にでも相談してみるか?
それにしても……どれだけ考えてもわからん……ブルック達が怒るようなこと何かしたか? 明日相談しに行って冷たくされたらどうしよう、不安だ……。
不安過ぎて眠れなかった…………寝不足で只でさえ疲れてるのに、以前から指示を出している新たな孤児院の建設について、遅々として進まないのでもう少し予算を……と、街の貴族ではあるが、ど~~しても好きになれないブクブクと太った男が突然訪ねてくるし!
貴族なら来訪前に知らせを出すべきだろうに、いきなり来るとは……やはり好きになれん!!
予算の追加は検討すると言って帰らせたが……孤児院は必要だ! いくら追加すべきか?
審議会に着くと大勢の見物客の中に異質と言える存在を見つけた。
3メートルくらいある大きな美しいフェンリルの背中に、とても特徴のあるグラデーションの髪を持った可愛い女の子の姿。
身に付けている物はとても高価に見える。周りにはシルバーカリスキングレオはもちろん、その番もいて、女の子の腕の中には2匹の仔がいる。やはり間違いなくあの幼女が神獣様方の主だ。
見ていても幼女と神獣様方従魔がお互いを思い合っているだろうことは容易に察せられた。そしてもう一つ気付いた事だが、幼女と従魔を囲うように4人の男たちが立ち常に気を配り見守っているのだが、どういう関係なのだろうか?
なに!? 幼女と神獣様方と共にいた者たちが"蒼の剣"なのか? 黒の森でオーク4匹だけでなくブラックマンティス2匹をなすり付けられ無事に帰って来た!? それも森の奥から? 彼らはAランクとの事だが、それほどの強さなのか……。
それ程の強さを持っているから、あの幼女も安心しているのか? とても仲が良さそうでニコニコと笑顔を見せ楽しそうに笑っている……挨拶だけでもしたいところだが……貴族が嫌いとの事だしやめとこうか……
まったくどこの馬鹿貴族があんな可愛い幼女に嫌われるような事をしたんだ!? もし見つけたら懲らしめてやらねば!!
ブルック達にちょっと相談事があるからと時間をもらった。賠償金額を決めたりとする事は山積みの中時間を割いてもらったので、ここ最近の対応の冷たさの事もあり少々居心地が悪い……
「あ~、忙しい時にすまんな。実は折り入って相談があるんだが……孤児院の件でな?」
「「「「孤児院!?」」」」
ん? なんだろう、急に部屋の温度がものすごく下がった気がする……さむっ!!
「実は昨日お前達に神獣様方の唯一の方の話を聞いた後、関わることは禁止した上で一応情報だけ集めたんだ。
もちろん貴族をお嫌いとの事なので絶対刺激することはしないぞ! ただ情報だけな? そうしたらまだ3歳の幼女だと聞いて、挙句その子は冒険者というし心配になってな。
この街はどうしても親を失う子供が多い……かなり前から新しい孤児院の建設指示を出しているんだが追加予算ばかり要求されて一向に完成しないんだ。
自分で孤児院に出向くことが出来れば一番なんだが、どうしても忙しくなかなか出来ん。そこで聞きたいんだが、今までも孤児院に毎月運営費を出しているんだが……もちろん少ないのはわかっているぞ? ただなかなか多くは出せんのでな、どうしたらいいと思う?」
なぜか相談内容をツラツラ話していると4人の顔がまぬ……(ゲフンゲフン)唖然としていたが、無視して最後まで話し切った。なぜ無視したか? 答えは簡単、冷たい態度で"ご自分で考えてください"って言われたら悲しくなるだろう!?
「運営費を打ち切ったんじゃなかったのか!?」
「切られたのは先月ですが、それ以前から徐々に減っていたと聞きましたが!?」
「何を言っているんだ? 打ち切りなどするはずないだろう!? 正直今の運営費でも足りないのはわかっているんだが、かといって簡単に多く出す事も出来ずに困っているんだ」
打ち切る訳ないだろう、子供は守らねばならない存在だぞ?
「先ほど指示を出していると言われましたが、どなたに指示を出しておられるんですか!?」
「お忙しいでしょうが、今日必ず孤児院にお寄りください。いえ、今から我々と一緒に行きましょう!!」
我に返った途端、堰を切ったように詰め寄ってこられたが……いったいどうした?
「い、今からか? 別に構わんが……」
はよイケ、すぐ行け、サッサと行けと急かされながら来てみたのは……あちこち崩れ落ち、古びた建物。
「おい……ここが孤児院だと? 確かに場所はそうなんだろうが……毎月の運営費はもちろん建物の修繕だなんだと今までかなりの額を出してきたんだぞ?
それなのに、こんな崩れかけた状態……真新しい状態とは思わないが、それでもこれは酷すぎる、人が住める状態じゃない!!」
「ここで騒げば孤児院の方に迷惑になる。運営費や修繕費の事についてはきちんと調べてから対処しろ。その後、そのつもりはなくてもこれだけの状態にさせてしまったんだ、孤児院には謝罪するしかない」
「なあ。お前達この状態を知っていたのか? まさかそれで冷たい対応だったのか!?」
「「「「……」」」」
4人共が視線を逸らすが、それこそが答えだろう。たとえ他の貴族に指示を出していてもその指示が通っているかどうかの確認が必要だったのにそれを怠った。
毎月の運営費も、たびたび言われて出した修繕費はおそらく奴の懐に入ったに違いない……今更だろうがキッチリ調べて裁きにかけてやる!
「そうなんだな、それで"ご自分で考えてください"って言葉なんだな」
「私達も数日前に偶然知ったんです。それまでこの辺りに来ることもほとんどなかったもので……」
「いや、お前達のせいじゃない……」
領主邸に戻ってすぐ、この街の貴族を全員調べるよう指示を出した。
貴族の中には、"平民は貴族のために働き税を納めろ""貴族のために……"という言葉を平然と使う者がいる。
奴らは馬鹿なのだ、確かに貴族は地位と権力また財産を持っているが自身の能力ではなく与えられたものだ、ならばそれをもって威張り散らすのではなく果たすべき義務が生じる事に気付いていない。
そして今回、この街でその馬鹿な行為が平然と行われていたのだ。忙しさを理由に確認を怠ったせいで守らなければならない子供が犠牲になった……絶対に許さん! せいぜい首を洗って待っていると良い。
今年もよろしくお願いします。
― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ― ・ ―
シルバーカリスキングレオとシルバーカリスレオがこの街に……
この情報を聞いた時には耳を疑った。
シルバーカリスキングレオは神獣様だ。そのような方が突然なぜ? なに、じゅうま? じゅうまってなに? まさか従魔じゃないよね!?
だって神獣シルバーカリスキングレオだよ!? まさか、あっはっは~……従魔なの? それならその主を探して話を……
どうするべきかと検討していると、冒険者・商業両ギルドから報告のための面会希望を受け了承したら、なんて事だ神獣シルバーカリスキングレオだけでなく神獣フェンリルまでこの街にいて同じ主に仕えているだと!?
しかもシルバーカリスキングレオには番と仔が2匹も一緒だと!?
なのに探すことも何もかも止めるように言われたが、なぜだ!?
相手は神獣様方と共にあるのなら、ぜひこの街と国のためにお力を……今すぐの事ではないがもしもの為に挨拶をしたいと思うのは当然だろう。
なのに!≪2度目≫ なぜだ、いつもは言葉を遮るような事もない者達が、神獣様方はもちろんその主にも関わるな、関われば怒りを買い命はもちろん街どころか国がなくなると……それはもう今までに見た事もないほどの真剣な訴え……
で、では力をお借りしようとは思わないが、せめてご挨拶だけでも(なんだかこの4人、今日もの凄く怖いんだけど?)……ダメだろうか?
おぅ……。そうか、主であるその方が貴族をお嫌いとは……確かに貴族は嫌われやすいからな、で、でもさすがに陛下に報告が必要なんだが? どうしよう……
え!? 報告して良いの? ああ……神獣様方の怒りを買わないよう注意の為にか……神獣様方が大切に思う方々以外はどうでもいいって……さすがにそれは…………そ、そうか……気を付けよう。
あと1つの報告にあった事だが、明日冒険者ギルドで開かれる審議会の言い逃れをさせない確実な証拠が気になる。この証拠については何度となく聞いたが教えて貰えなかった。
それは明日……最終手段と言っていたが、審議の結果も気になるから見に行こう。
ところで、いつもなら敬語なんてそんなに使わないのに、なんか変だぞ?
変じゃないって何処がだよ! 全部変だろ? ブルックなんか丁寧に話すなんて……天変地異の前触れか!?
結局、変じゃないって事で報告は終わって帰って行ったが、気になるのは最後の一言。
―― ご自分で考えてください ――
どういう意味だ?
なんか数日前から様子がおかしいんだよ、ビクターだって、敬語は使いながらも親近感を感じられたし、ブルックなんかは時々不敬? ってこともあったのに……今じゃ完全に一線引かれてる感じ。その反対で4人の結束は固まっているように感じる。
どうしても貴族、領主って事で気安く話しかけてくれる人が少ない中で、あの4人は言いたいことをハッキリ意見を言ってくれる本当に信頼できる貴重な失いたくない存在だ。
神獣様の事がどうにも気にかかり、執事に指示を出した。
"神獣様方と、そのご家族を遠くからで良いので見守り報告を! 絶対に手は出すな!"
これでしばらくしたら情報が入って来る事だろう。
すぐに情報は届いたが何という事だ、神獣様方の主は女の子、それも3歳の!! ありえんだろう!? 幼女が神獣様と従魔契約を結んだのか!?
……? 主が貴族嫌いって言ってなかった? 3歳の幼女がもうすでに貴族を嫌うような事があったのか?
気になる……幼女が気になる……報告では、とても可愛い幼女で、3歳でありながら既に冒険者登録をしていて、今日なんか神獣様に守られているとはいえ、依頼で街の外に出ていたらしい。
そして神獣シルバーカリスキングレオの家族と遭遇し、契約したようで共に帰って来た……だからなんで!?
ちょっと依頼を受けて街の外に出ただけで、神獣様に会えるの? おかしくない!? 3歳で冒険者も、街中じゃなく外の依頼を受けるのもおかしいけど!!
わからない事だらけだ、もう少し観察してもらおう。いくら貴族嫌いでも根本的に3歳の幼女が冒険者って事がおかしい。
それに……3歳の子にまで嫌われる貴族って……どんだけ~。せめて貴族も悪い者ばかりではないと知ってもらいたい!
何か理由があるのかもしれないが、神獣様方を抜きにしても子供は保護されるべき存在だ、何かあれば助けなければ!
特にこの街は辺境で黒の森に面している。強い魔物がいて人は集まりやすいがその反面、親を亡くした子が多いのが問題で孤児院を造り運営費を出してはいるが……もう少し増額するべきだろうか?
しまった! ブルック達に相談すればよかったな……どうしても立場と仕事の忙しさで街の様子を見に行く機会が無い。それぞれ他の貴族や役人に任せて報告だけの事もある、街の様子を知っているブルックたちの意見なら参考になったのに……明日の審議会の後にでも相談してみるか?
それにしても……どれだけ考えてもわからん……ブルック達が怒るようなこと何かしたか? 明日相談しに行って冷たくされたらどうしよう、不安だ……。
不安過ぎて眠れなかった…………寝不足で只でさえ疲れてるのに、以前から指示を出している新たな孤児院の建設について、遅々として進まないのでもう少し予算を……と、街の貴族ではあるが、ど~~しても好きになれないブクブクと太った男が突然訪ねてくるし!
貴族なら来訪前に知らせを出すべきだろうに、いきなり来るとは……やはり好きになれん!!
予算の追加は検討すると言って帰らせたが……孤児院は必要だ! いくら追加すべきか?
審議会に着くと大勢の見物客の中に異質と言える存在を見つけた。
3メートルくらいある大きな美しいフェンリルの背中に、とても特徴のあるグラデーションの髪を持った可愛い女の子の姿。
身に付けている物はとても高価に見える。周りにはシルバーカリスキングレオはもちろん、その番もいて、女の子の腕の中には2匹の仔がいる。やはり間違いなくあの幼女が神獣様方の主だ。
見ていても幼女と神獣様方従魔がお互いを思い合っているだろうことは容易に察せられた。そしてもう一つ気付いた事だが、幼女と従魔を囲うように4人の男たちが立ち常に気を配り見守っているのだが、どういう関係なのだろうか?
なに!? 幼女と神獣様方と共にいた者たちが"蒼の剣"なのか? 黒の森でオーク4匹だけでなくブラックマンティス2匹をなすり付けられ無事に帰って来た!? それも森の奥から? 彼らはAランクとの事だが、それほどの強さなのか……。
それ程の強さを持っているから、あの幼女も安心しているのか? とても仲が良さそうでニコニコと笑顔を見せ楽しそうに笑っている……挨拶だけでもしたいところだが……貴族が嫌いとの事だしやめとこうか……
まったくどこの馬鹿貴族があんな可愛い幼女に嫌われるような事をしたんだ!? もし見つけたら懲らしめてやらねば!!
ブルック達にちょっと相談事があるからと時間をもらった。賠償金額を決めたりとする事は山積みの中時間を割いてもらったので、ここ最近の対応の冷たさの事もあり少々居心地が悪い……
「あ~、忙しい時にすまんな。実は折り入って相談があるんだが……孤児院の件でな?」
「「「「孤児院!?」」」」
ん? なんだろう、急に部屋の温度がものすごく下がった気がする……さむっ!!
「実は昨日お前達に神獣様方の唯一の方の話を聞いた後、関わることは禁止した上で一応情報だけ集めたんだ。
もちろん貴族をお嫌いとの事なので絶対刺激することはしないぞ! ただ情報だけな? そうしたらまだ3歳の幼女だと聞いて、挙句その子は冒険者というし心配になってな。
この街はどうしても親を失う子供が多い……かなり前から新しい孤児院の建設指示を出しているんだが追加予算ばかり要求されて一向に完成しないんだ。
自分で孤児院に出向くことが出来れば一番なんだが、どうしても忙しくなかなか出来ん。そこで聞きたいんだが、今までも孤児院に毎月運営費を出しているんだが……もちろん少ないのはわかっているぞ? ただなかなか多くは出せんのでな、どうしたらいいと思う?」
なぜか相談内容をツラツラ話していると4人の顔がまぬ……(ゲフンゲフン)唖然としていたが、無視して最後まで話し切った。なぜ無視したか? 答えは簡単、冷たい態度で"ご自分で考えてください"って言われたら悲しくなるだろう!?
「運営費を打ち切ったんじゃなかったのか!?」
「切られたのは先月ですが、それ以前から徐々に減っていたと聞きましたが!?」
「何を言っているんだ? 打ち切りなどするはずないだろう!? 正直今の運営費でも足りないのはわかっているんだが、かといって簡単に多く出す事も出来ずに困っているんだ」
打ち切る訳ないだろう、子供は守らねばならない存在だぞ?
「先ほど指示を出していると言われましたが、どなたに指示を出しておられるんですか!?」
「お忙しいでしょうが、今日必ず孤児院にお寄りください。いえ、今から我々と一緒に行きましょう!!」
我に返った途端、堰を切ったように詰め寄ってこられたが……いったいどうした?
「い、今からか? 別に構わんが……」
はよイケ、すぐ行け、サッサと行けと急かされながら来てみたのは……あちこち崩れ落ち、古びた建物。
「おい……ここが孤児院だと? 確かに場所はそうなんだろうが……毎月の運営費はもちろん建物の修繕だなんだと今までかなりの額を出してきたんだぞ?
それなのに、こんな崩れかけた状態……真新しい状態とは思わないが、それでもこれは酷すぎる、人が住める状態じゃない!!」
「ここで騒げば孤児院の方に迷惑になる。運営費や修繕費の事についてはきちんと調べてから対処しろ。その後、そのつもりはなくてもこれだけの状態にさせてしまったんだ、孤児院には謝罪するしかない」
「なあ。お前達この状態を知っていたのか? まさかそれで冷たい対応だったのか!?」
「「「「……」」」」
4人共が視線を逸らすが、それこそが答えだろう。たとえ他の貴族に指示を出していてもその指示が通っているかどうかの確認が必要だったのにそれを怠った。
毎月の運営費も、たびたび言われて出した修繕費はおそらく奴の懐に入ったに違いない……今更だろうがキッチリ調べて裁きにかけてやる!
「そうなんだな、それで"ご自分で考えてください"って言葉なんだな」
「私達も数日前に偶然知ったんです。それまでこの辺りに来ることもほとんどなかったもので……」
「いや、お前達のせいじゃない……」
領主邸に戻ってすぐ、この街の貴族を全員調べるよう指示を出した。
貴族の中には、"平民は貴族のために働き税を納めろ""貴族のために……"という言葉を平然と使う者がいる。
奴らは馬鹿なのだ、確かに貴族は地位と権力また財産を持っているが自身の能力ではなく与えられたものだ、ならばそれをもって威張り散らすのではなく果たすべき義務が生じる事に気付いていない。
そして今回、この街でその馬鹿な行為が平然と行われていたのだ。忙しさを理由に確認を怠ったせいで守らなければならない子供が犠牲になった……絶対に許さん! せいぜい首を洗って待っていると良い。
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